今日の一冊vol.4《鹿の王①〜④》
年明け前に購入し、年末年始の休みを利用して一気読みした。
それこそ貪るように、どっぷりと作品世界に全身を沈めるようなこの感覚は久しぶりだった。
「精霊の守り人」、「獣の奏者」に続く、まさしく傑作。
東呼瑠〈ツオル〉帝国との戦いに破れ、奴隷の身分におとされた戦士団”独角“の団長・ヴァンと、今は亡きオタワル王国王家の末裔であり、天才的な医術師・ホッサル。追うものと追われるもの、謎多き病・“黒狼熱”、国家の思惑と、複雑に絡み合った要素が物語に華を添える。
前述の2作と同じく、ハイ・ファンタジーでありながら、生活習慣や文化・食生活・土着の信仰など、人々の息遣いまで伝わってくるような、精緻極まる世界観は流石としか言いようがない。
また登場する料理の美味しそうなこと!どこか日本的な、懐かしい雰囲気もまた魅力のひとつだ。
今回は、死生観やひとの生き方など、現代社会にもつながる要素を深く掘り下げているのも特徴だ。
その重いテーマに、国家や権力者の思惑、そこに生きる人々のいきいきとした姿を絡め、さらに深みと奥行きのある世界を作り上げている。
個人的には、天涯孤独のヴァンに、ユナや旅の途中で出会ったトマとその家族をはじめ、あたたかな関係と絆が育まれていく様子がとても印象的だった。
ラストシーンは胸がつまる思いがしたが、もう彼は一人ではない、追いかけていく“家族”がいる。
もうひとりの主人公・ホッサルの、貴人特有の雰囲気と、黒狼熱の謎に真っ直ぐに向き合う内面のアンバランスさもまた魅力的である。
ホッサルに寄り添うミラル、柵に縛られつつもホッサルを補佐するマコウカンと、魅力的なキャラクターたち。
続編も早めに読まねば、と使命感めいた思いに駆られる。
アニメ映画化も決定している本作、手がけるのはProduction.IGということで、どんなふうに再構築してくれるのか楽しみだ。
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