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春の記憶

さくら さくら いざ舞い上がれ 永遠(とわ)にさんざめく光を浴びて

森山直太朗の「さくら」の一節である。

ちょうど、私が高校卒業を間近に控えた頃(歳がバレる…)にリリースされたように記憶している。

当時、音楽CDは殆ど手に取ったことのなかった私の耳にも届くほどで、家族の間でも時々話題に上った歌。

耳に残りやすい心地よいリズムもさることながら、私を強く惹きつけたのはその歌詞だった。

特に衝撃を受けたのは、前述の一節に含まれた”さんざめく”という単語。

なんて綺麗な響きだろうと、口の中で何度もその一節を繰り返し口ずさんだものだ。

おだやかな春の風に揺れる桜花、日一日ごとに色濃くなる木々の葉から、宝石のようにきらきらとこぼれる陽の欠片。

「卒業式」と黒々と書かれたプレートが下げられたステージ、ずらりと並べられた卒業生と在校生用の椅子、来賓者用の席。

春のはじめで、ようやくぬくもりを帯び始めた空気。

ほどほどに充実していた高校生時代において、とりわけ印象深い光景のひとつである。

また、中学生時代に物語を読む楽しさに目覚め、ラノベを中心に本を夢中で読み耽っていた時期でもあり、自分の中の辞書に新しい語彙を書き加えるという行為に、心が明るくなるような心地を感じたのも覚えている。

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歌を聞くのは、本を読むことに似ている。

今まで知らなかった世界を知り、世界の見方が変わる瞬間。

自分の”セカイ”を変えるのは、たぶん、いつでも”自分”なんだ。

良い方向だけではない、いや寧ろ、悪いほうへ向かうことのほうがはるかに多い。

辛くて涙を流し、唇を噛むことが多いけれど、それでも私は、今日もまだ見ぬセカイを知るために、本を紐解く。


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