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今日の一冊vol.8&9

読了記録に長文は合わないなと思い、これからはまとめてアップすることにした。

はじめはならばいっそTwitterのみにしようかとも思ったけれど、Twitterに絞ると、後からふとした時にTLをたどる際、面倒で手間がかかるかと。

その点、noteならマガジンにその都度突っ込んでいけばそれで済む。

ほぼ自分用の記録になるけれど、これからもぽつぽつ続けていきたい。

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まずはこちらから

いつの間にか八巻…!世界観を共有する前シリーズ『からくさ図書館来客簿』から追いかけている身としては、何とも感慨深い。

一巻では文字通り狐の面を被ったようで表情に乏しかった晴明さんが、巻を重ねるごとに雰囲気がどんどん柔和になってるなぁとしんみり。今巻の表紙絵を目にして「そんなふうに笑ってついにポーズまで決めるようになったのか…」とまるで親戚のおばちゃんのような心持ちになってしまった。

以下ネタバレ含む感想


前巻で晴明さんへの恋慕をうっすらと自覚していた桃花。今回、ついに自分の想いを晴明さんに告げてしまう。桃花の行動の意味も、それを見た晴明さんの言動も、どっちも痛いほど分かるだけに、あの場面は息を殺してページを捲った。

年上男性への憧れを恋情と錯覚した、などと通り一遍の表現で流すことはできない。一読者としてもそれは強く思ったし、何より晴明さんがそんな言葉で枠にはめて、桃花の気持ちをはぐらかして流すはずがない。

最終的に桃花の気持ちへの返答として和歌を贈るのだけど、これがまた良い歌なんだ…思わず涙ぐんでしまったほど、印象的で素敵なシーン。

晴明さんの大きな決断も驚いた今作。仲町先生のあとがきから、おそらくクライマックスはそう遠くはない。二人の終着点を見るのがとても楽しみだ。

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次はこちらの作品

レーベルを移し、講談社文庫からの刊行となったシリーズ第三作。

今回は長編ということで、連作短編集だった前二作とは少しばかり趣の異なる雰囲気となっている。

私は久賀先生の作品は、この「奇譚蒐集家 小泉八雲」シリーズのみしか手に取ったことはないのだけど、すらすらと脳内に流れ込んでくる、端麗な筆致がとても心地よくて、とても好きだ。特に背筋をぞくりとさせるような、正体の分からぬものへの恐怖を掻き立てる怪異の表現が秀逸で、思わず周囲を窺ってしまうようなリアルさに満ちている。

さらに、主要人物であるパトリック・ハーンとオーランド・レディントンの関係性もこの作品の良さを引き立てるスパイスだ。今や気の置けない友人同士となった二人のやり取りやぽんぽんと容赦なくぶつけられる悪態は、ページを繰るこちらが思わずひやひやするほど遠慮や容赦がない。でも、底にはお互いへの確かな情があって、ゆえに中盤でふたりは衝突してしまうのだけど、パトリックの言い分も、オーランドの気持ちも分かるだけに心が苦しくなる。こういった関係性の見せ方の巧みさも、久賀先生の筆力の高さを物語るものと言える。

この作品で特筆すべきは史実とフィクションの絶妙のバランスだ。巻末にずらりと並ぶ参考文献リストは、久賀先生の作品への愛情と熱量をこれでもかと読者に伝えてくる。軽く熱を持ったようにぼうっとする頭でそっと頁を閉じて、文庫としてはかなりの厚みのある背表紙を眺めた読了後のことを思い出す。

次作の予定はあるのかとても気になる。

今読んでいるのは藤井太洋さんの「ワン・モア・ヌーク」。今はちょうど中盤あたり。これもすごい作品。読み終わったとして感想と言えるようなものが書けるか今からちょっと不安…。


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