生きていた事、生かされた命⑨
11月に入ってからのリハビリの内容も徐々に右足に荷重をかけていく動きになってきた まずは体重計を使って片足に少しずつ体重をかけて目盛りを見ながら負荷を確認
最初は10キロほど 1週間ずつ荷重を増やしていく感じだった
30キロまで荷重をかけられるくらいになってきて、歩行器を使い1歩1歩足を揃えながらのリハビリ
先生達も荷重制限には慎重に対応してくれていた
大部屋の生活はやはり緊張ばかりで1週間ほど経った時に目の前の若い男性と80歳位のおじいさんは退院した
でもすぐに新しい患者さんで部屋は埋まった
新しい患者さんはどちらも穏やかな感じでまだ話しかけやすかった
しかし騒ぎすぎないように 失礼のないようにと静かにしてました
やはり皆気を使っている雰囲気はあったし、夜中も物音を立てないようにしてる感じも凄く分かった
あ~皆同じ気持ちだよなぁ 当たり前だけど家とは違うわけだし慎重にもなるよ
そんな感じの緊張感がある雰囲気の病室のまま数日経った頃
大きな虹がかかっている日があって
おーー!奇麗だなぁと心の中で思っていた
入院してからよく虹を見る事はあったんだけど、見惚れるくらい奇麗でしばらく見てたら
俺の隣にいたおじいさんがベッドの隣まで来て外を見ながら
「いやぁhayatemaruさん大きな虹ですよ、綺麗ですねぇ」
え!?最初の挨拶してからあまり話した事が無かったのでびっくりしてしまって
「あ、はい!凄く綺麗ですよねずっと見てました」
このおじいさんはいつも本を読んでいたりノートの何か書いていたり、雰囲気もちょっと怖い感じもしていたからずっと緊張していたんだよね
でもこの会話がきっかけで一気に病室の雰囲気も変わって
おじいさんが何で最低限の挨拶しかしなかったのかという理由もここで分かって
おじいさんは病室を移動してきたんだけど前の病室で世間話をしていたり消灯後テレビを観ていたら他の患者さんに凄く怒鳴られて それがトラウマになって病室を移動した時にまた怒鳴られたりするのが怖いからおとなしくしておこうという理由だった
なんだ、そういう事だったのかとホッとした
「本当は皆さんと話したかったんだけど怖くてねぇ」
これを聞いて提案をしてみた
「皆さんそれぞれの生活習慣だってあっただろうし寝る時間だってテレビを観てた時間だってそれぞれ違うわけですから消灯後はプライベート時間として全然気を使わなくて良いですよ 皆さんも自由にゆっくりとギスギスする事もなく一緒に入院生活を送りましょ この病室になったのも何かの縁ですもんよろしくお願いします」
この話で皆穏やかな雰囲気にもなり冗談も言えるような病室にもなり
看護師さん達にも
「ここの病室は凄く雰囲気良くて穏やかだよね」
そう言われてました 最初はストレスの元凶の一つでもあった大部屋も徐々に居心地の良い場所になっていったのです
たった一言のきっかけって大きいですね