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「大貧民」のような学校経営

 校長同士が集まると、
「うちの学校の先生たちは、仕事に対する意欲が低い」
「教職員をまとめるリーダー的な存在がいなくて困っている」
 といった愚痴の言い合いになることがあるようだ。

 しかし、一般的な公立学校の場合だと、
「仕事がバリバリできる上に人柄がよく、子どもたちや保護者からの信頼も厚い」
 という教職員ばかりが集まっている学校など皆無だろう。

 なぜなら、「学校は、マンチェスター・ユナイテッドではない」からである。

 莫大な資金を使って世界中からスーパースターを集めるサッカーのビッグ・クラブと違って、一般的な公立学校の教職員はたまたま縁があってその学校に配属されただけなのである。

 もちろん、その中には前述したような「仕事がバリバリできる上に人柄がよく・・・」という「スター」のような先生もいることだろう。けれども、その一方で仕事に自信を失っていたり、育児や介護との両立に悩んでいたりするなど、様々な教職員がいるのが職員室というものなのだ。

 サッカーのチームにたとえるならば、マンチェスター・ユナイテッドでないのは無論のこと、Jリーグのレベルにもほど遠く、せいぜいが地域のクラブチームといったところだろう。


 ・・・という話をある現職の校長先生にしたところ、その先生は、
「私はトランプの『大貧民』だと思うようにしています」
 と言っていた。

「大貧民」(「大富豪」とも呼ばれる)の主なルール
・まず、プレイヤー全員にカードを同じ枚数ずつ配る。
・順番に手持ちのカードを場に出していき、手札を早くなくすことを競い合う。
・カードで一番弱いのは3で、最強は2(ジョーカーがある場合には、それが最強)である。すなわち、3→4→5→6→7→8→9→10→J→Q→K→A→2→ジョーカーの順に強くなる。
・カードを出すときは、場に出ている数より強いものを出さなければならない。出せないときにはパスをして、次の人に順番を回すことができる(出せるカードがあったとしても、あえてパスをすることもできる)。
・同じ数のカードを2枚以上出してもよい。その場合、次の人以降も同じ枚数のカードを出す必要がある。
※この他にも、細かいルールやローカル・ルールがある。

 このゲームをやった経験がある方には説明不要だろうが、最初にカードが配られた段階で、その手札には明らかに有利や不利があるものだ。しかし、たとえ不利な手札であっても、対戦相手の持ち札を予想し、場に出す順番を工夫することなどによって、接戦に持ち込んだり逆転をしたりすることが十分に可能なゲームなのである。

 冒頭に紹介した、
「うちの学校の先生たちは、仕事に対する意欲が低い」
「教職員をまとめるリーダー的な存在がいなくて困っている」
 という言葉は、「大貧民」にたとえると、
「エースやジョーカーが1枚もない」
「絵札は少ないのに、3や4が何枚もある」
 と嘆いているようなものである。しかし、本当はそこからがゲームの醍醐味なのだ。

「私は(学校経営のことを)トランプの『大貧民』だと思うようにしています」
 というのは、けだし名言である。そして、こういう考え方をする校長のもとでなら、教職員も力を発揮しやすいだろうと思う。

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