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「主体的・対話的」な学びを支える環境

 東京学芸大学教職大学院の総合教育実践プログラムが運用している X(Twitter)に、4月24日付で次のような投稿があった。

 ある2年目の学卒院生(学部を卒業後に進学してきた教員未経験の院生)が、1年次の学びを振り返って綴ったものである。

 4回に分けて投稿された内容を繋ぎ合わせると、次のような文章になる。

【学卒院生が語る総合Pでの学び】
※「総合P」:総合教育実践プログラムのこと

 学部時代と比べた大学院での学びの一番の違いは、対話中心、アウトプットが多いことである。その中で身についた力は“話す力”だ。

 相手に自分の考えを伝える、他者の考えに耳を傾け、統合して新しい考えや問いに対する答えを生み出すなど、これまでやってきているつもりでできていなかった対話の力を身に付けることができた。

 グループで一人一人順番に考えを出し合うのが話し合いではなく、人の意見を聞いて新たに自分の考えをアップデートしたり、自分や他者の意見を繋げて考えて、広げていったりすることが本来の意味での話し合いだろう。

 対話は協働的な学びを生み出すための基本となる。子どもたちにそのような学び方を求めている今だからこそ、教師もその学び方で学んでみることが大切だと実際にやって感じた。やってみて初めて、どのような障壁があるのか、やることでどのように学びが促進されるかなどの気づきを得ることができた。

「グループで一人一人順番に考えを出し合うのが話し合いではなく」という部分は、先日の中教審・特別部会の審議を思い起こさせるが、今回はそれには触れないでおく。)


 こうした「対話的な学び」、そしてその前提となる「主体的な学び」を支えているものの一つに、その学習(学修)環境があるだろう。特に、
・机の配置
・ICT環境
・アナログの活用
 などが果たしている役割は大きいと思う。

 教職大学院棟には3つの講義室があるが、どこもレイアウトや備品は概ね同じである。3つの机を「T字型」に組み合わせて、3~6人がお互いの顔が見えるように向き合って座ることが基本だ。

 教職大学院の場合、1つの授業の受講者は多くても40名程度、少ない場合には数名である。学部時代のように受講者が100名を超えるような授業はない。

 少人数であることに加え、この「T字型」の机の配置が対話を活性化していることは間違いないだろう。もちろん、机と椅子は移動可能なので、活動の形態に合わせて自由にレイアウトを変更することもできる。

 院生たちは、各自がPCかタブレット端末を持参している。いわゆる、BYOD(Bring Your Own Device)方式だ。それぞれの講義室にはWi-Fiの環境が整備されているので、資料等の共有や成果物の提出などもクラウドを介して行われている。

 また、各講義室には複数台の大型ディスプレイが備えられており、グループ内で発表をするときなどに活用されている。

 その一方で、グループでの話し合いのときなどに重宝されているのが、この大型ホワイトボードだ。パワポのスライドなどを使ってまとめることもできるが、即時性や表現の多様性などの点で、現段階ではアナログのホワイトボードのほうに軍配が上がるだろう。話し合いの経過を「見える化」することで、その内容がより深まると言える。

 ・・・無論、話し合いのテーマや教員の問いかけなどによって、対話の質は大きく左右される。だが、その活性化にこうした環境面が寄与していることは間違いないと思う。


 学習指導要領の改訂に伴って、「主体的・対話的で深い学び」が重視されるようになってから数年が経つ。小・中学校や高校では授業改善が進んでいるが、依然として講義型の授業が中心になっている教室も少なくないようだ(もちろん、内容によっては講義型のほうが適した授業もあるだろう)。

「深い学び」になるかどうかは二の次として、まずは「主体的な学び」「対話的な学び」を進めていくために、環境面を改善していくことも大切だろう。少なくとも、机の配置を工夫することはどこの学校でも可能だし、GIGAスクール構想によって端末やWi-Fiの環境は整ってきたのだから。

 明治時代と同じような授業のスタイルをずっと貫いているのであれば、さすがにそれは見直しをするべきだろう。

国立教育政策研究所のWebページより

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