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Appleに関するウワサ話を実際に検証(上)
ウワサ話についての話で予想外に引っ張ってしまいましたが、このシリーズも次回までです。ウワサ話が当たったり外れたりで一喜一憂しても仕方ありません。
むしろ、そうしたウワサが出てくる背景や、ウワサどおりの新製品が出ない理由、実際にAppleの社内でどういう考えで製品企画を行っているのかを推測することが重要です。
そこで、過去に行った予想の過程と、その結果をすり合わせてみましょう。
【過去の予想】iPhone Xの予想を振り返る
iPhone Xにかぎらないのですが、iPhoneに赤外線カメラを搭載するというのは、ほぼ予想ではなく「確信」に近いものがありました。
以前に、さまざまな人種の人々の顔写真を集めてmacOS内蔵の顔認識APIや、顔認識系のWeb APIを使ってテストをしたことがありました。
すると、
・欧米人(大人)の顔認識が一番得意。画像の解像度が低くても大丈夫
・おしなべてわれわれ東アジアの「平たい顔族」の顔認識は不得意。黒い髪と「影」の部分の識別が難しい
・子供の顔認識で各種サービス間の差が出た。iOS/macOS内蔵の機能は比較的子供の顔認識に強い
・アイドル写真、水着写真からの顔認識はMicrosoftのCognitive Serviceがズバぬけている
・集合写真からの顔認識は不得意。とくに、遠足や修学旅行などの写真に顔認識は難しい。家族のスナップ写真程度がターゲット
・予想どおり、肌の色が濃い人種の方々の顔認識は不得意
という結果が得られました。
この結果、目に見える光=可視光線で撮影した写真で顔認識を行うのは、そもそも原理的に無理があることが見えてきました。
コンピュータには、黒い色のモノと影のために暗くなっている部分は区別できないので、別の光に着目して撮影することが必要です。
写真で顔認識の精度を高めるなら、可視光線で撮影した画像とは別に「赤外線」で撮影した写真も撮っておく必要があるでしょう。
事実、Appleは「バースト撮影モード」や「動く写真」こと「Live Photos」で複数の写真を1つの写真として扱う仕組みを整備しました。この延長戦上に「可視光線で撮影した画像」と「赤外線で撮影した画像」をセットにして保存する仕組みを整備するはずです(たぶん)。
この「赤外線カメラで顔認識の精度を高める」ことがAppleにとって重要なテーマであるなら、iPhone X以外の機種でも赤外線カメラを装備することでしょう。一方で、Macには指紋認証のデバイスを付けることが望ましいでしょう。不用意に搭載カメラを増やすのはセキュリティー上望ましくありません。
では、ほぼ同時に発売されたiPhone 8でなぜ赤外線カメラが装備されていないかといえば、実際にAppleの幹部から語られているようにiPhone Xの出荷が予定よりも繰り上げられたためです。あとは、値段がまだ高いという事情も?
それでも、iPhone Xやその後継機種に搭載しておけば、ライバルメーカーが真似して自社の製品に採用し、自然に価格がこなれてくるという「読み」もあるのかもしれません。
かくして、iPhone Xに赤外線カメラが搭載されたわけですが、まさか顔の凹凸の判断を行いやすくするためにマイクロドット・プロジェクターまで装備するとは思いませんでした。これは、予想もできなかったことですし、久しぶりにAppleのハードウェア開発陣の底力を痛感したところです。