5/9-5/31のオリジナルCS環境デッキに関する小考察
まえがき
前回の記事が好評だったため、二回目としてGW以降の5月の入賞デッキについて執筆する。今回も期間中の入賞結果を集計し、その中で入賞数が10以上であったデッキのリストを抽出し、考察していく。
前回同様のデッキが入賞しているケースもあるため、解説内容が被ることもあるがそこはご容赦いただきたい。
なお、本記事は北方(@northdir)氏の入賞デッキまとめを参考にしている。オリジナルCSの入賞結果を即日で出してくれる非常に便利な記事なので、ぜひCSに行く際の参考にしてほしい。
1.赤単我我我(入賞数60)
前回に引き続き、二位にダブルスコアをつけるぶっちぎりの入賞トップとなった。
今の環境全体が【赤単我我我】を筆頭とするアグロデッキ、それを受ける【5Cネバー】などのコントロールデッキ、そのコントロールを破壊する【青t黒スコーラー】などのソリティアやコンボデッキという三すくみである。
その中でも生半可なコントロールを突破する赤単というデッキの出力の高さを、この入賞数が物語っていると言えるだろう。
多少の受けを苦にしないなら、最大の赤単への対策は受けを大量に積むことである。しかし、当然ながらそういった受けを積み過ぎることはデッキのパフォーマンスを大きく下げることにもなるため、ミラーマッチなどで不利になる。
こういった受けの限界というジレンマがあり、また4ターン目にビッグアクションを持つデッキが多い以上、3キルという強みを持つ赤単が強い環境はまだしばらく続くと予想される。
今回も様々なタイプのリストが見られたが、テンプレ的なリストとそれ以外のリストをいくつか取り上げる。
1コス16枚、手札補充7枚、メタ8枚のテンプレ的な構築。
最近は”逆悪襲ブランド”を1枚程度入れている構築もあるが、今回はこちらのまま紹介する。
赤単同型の中でも安定した出力と抑止力が売りで、”こたつむり”及び”赤い稲妻 テスタロッサ”が対面のビッグアクションを許さず、”カンゴク入道”と”コダマンマGS”で手札補充も安定する。
豊富な1コストクリーチャーによって3tのブランド系統着地も安定するため、赤単を組むならまずはこれ、といって差し支えないだろう。
上記の構築から”グレイト S-駆”を抜いて”一番隊 チュチュリス”を投入、テスタロッサを削ってコダマンマGSと"轟車 G-突"を追加したタイプ。
チュチュリスを入れることでブランド系統の複数着地が安定し、G-突が強力な打点補強となるため、即時打点の生成能力で他のタイプと差を付ける。
以前の記事でチュチュリスが通った時の打点生成の強力さについて述べたが、それを最大限に活かすため2コスのリソース補充手段を最大枚数取っているのが特徴である。
"秩序の意志"や”カクシ・レシピ”など、1枚のカードで”我我我ガイアールブランド”のアタックを封じることを狙う対面に特に強力な構築と言えるだろう。
”罰怒ブランド”を全抜きし、”デュアルショック・ドラゴン”と”逆悪襲ブランド”を3投したタイプ。シールドこそ多く削れるものの”G-突”と違って制限無しの2打点であり、突破力に優れる。
手札補充をストライクバックによる展開に置き換えているため、手札の枚数が多いほど出しやすい罰怒ブランドよりも手札を削ることで召喚できる逆悪襲を優先しており、盤面に”Disジルコン"などのブロッカーを建てる【アナカラー墓地退化】のようなデッキに強く出やすくなっている。
勿論、ストライクバックは召喚であるため"罰怒ブランド"との相性も良く、一概にどちらの採用が良いとは言い切れない。3マナあればコダマンマ→デュアルショック→罰怒ブランドで5打点になるため、事前に1点通せばジャスキルが通るからである。
今期の入賞はこれ1つではあったが、コダマショック型も中々面白い構築であり、今後も可能性はあるかもしれない。
2.5Cネバー(入賞数29)
”ナウ・オア・ネバー”→”ザーディクリカ”→"ロスト・ソウル"による最速4ターン目の全ハンデスというビッグアクションを軸に制圧するコントロールデッキの最右翼。
全ハンデスが刺さらない対面というのは殆どないため、一度ロストを打てば相手の動きを大きく縛って勝利を目指すことができる。
”ナウ・オア・ネバー”がトリガーでかつ、”ドンドン火噴くナウ”や”灰燼と天門の儀式”といった優秀な受け札もあるため、ビートダウンや動きの遅いデッキ全般に強い。
”天災 デドダム”、”お清めシャラップ”、”フェアリーミラクル”という3コスブーストの安定感もあり、盤石な基盤を元に多くのデッキに対抗可能な対応力が魅力。
赤単に次ぐ第二位の入賞数は、極めて妥当と言えるだろう。
ほぼテンプレ的な構築。
下段の”ヴィオラの黒像”と”ドラゴンズ・サイン”が自由枠であり、メタゲームに合わせて各種カードの4枚目、5枚目以降、または”希望のジョー星”、”大地門ライフ・ゲート”などと入れ替えていくことになる。
フィニッシュは”魔天降臨”によるランデスと”本日のラッキーナンバー!”でのトリガー封じで、反撃を許さない超過打点を叩き込むことが多い。逆に言えば明確に完全なフィニッシュ手段がないデッキではあった。
そこで見てほしいのが、ここ最近入賞を伸ばしている次のような構築である。
”ザーディクリカ”や”マニフェストⅡ世”が水のコマンドであることを活かし、”S級宇宙 アダムスキー”と”禁断機関 VV-8”でライブラリアウトを狙う構築である。
シールドに触れることなく勝利することができるため、フィニッシュとしては従来の物よりより安全で、少しずつ入賞母数を増やしている。
従来よりも青が増えたため、デドダムをプレイしやすくなったのも1つのストロングポイントとして挙げられるだろう。
ただし、このデッキの特徴である対応力は多少減らしてしまっているので、それに留意されたい。ビートダウンよりは、コントロール同型に強い構築と言えるだろう。こちらの型の今後にも要注目である。
3.アナカラー墓地退化(入賞数27)
"バルカディアNEX"への退化によって呪文をロックし、そのまま大型クリーチャーを呼び出してワンショットを狙う【墓地退化】デッキの一種。
”天災 デドダム”や”Dis ジルコン”などの優秀なリソース札、”生命と大地と轟破の決断”、”ダンディ・ナスオ”などの強力な殿堂入りカードを無理なく積み込める基盤の強さがあり、妨害からの立て直しや動きの安定感、そして豊富な自由枠が特徴。
環境に”ゲンムエンペラー”や”ギョウ”、”vol-val-8”を貫通する受けギミックは増えているものの、依然としてそのフィニッシュ力は揺るがずにいる。
受けが強靱なわけではなく過信は禁物ではあるが、多くのデッキに対応できる応用力とフィニッシュの強力さを兼ね備え、今期も多くの入賞を果たした。
オーソドックスな”地龍神の魔陣”入りのタイプ。マナが伸ばしやすいことによって1ターンにできる動きが広くなり、”お清めシャラップ”などの墓地メタにも対処しやすい。ロングゲームに特に強い型と言えるだろう。
最近の特徴としては、”サンマックス”の搭載か。アグロ対面ではデドダムやジルコンに載せて逆にリーサルを狙ったり、タップインを強要される”プチョヘンザ”を除去したりと、見た目以上にユーティリティなカードである。
こういった多様なカードの搭載による拡張性もアナカラーの強みと言えるだろう。
似たような方向で、次の構築も紹介する。
”フェアリーReライフ”と”奇天烈 シャッフ”を搭載し、【青t黒スコーラー】や5C、また2ブーストから繋ぐことで赤単我我我にもシャッフを通すことで妨害するタイプ。
一見アナ退化に入りにくそうなカードでも、環境によっては投入することで結果を出せるという点で、驚異的な拡張性の好例と言えるだろう。
4.ドロマー墓地退化(入賞数25)
"白騎士の精霊 HEAVEN・キッド"とそれに伴う白のカードを搭載することで呪文メタへの耐性が高まった【青黒墓地退化】の派生デッキ。
GW期から徐々に隆盛しているデッキタイプだったが、ここに来て【赤単我我我】、【JO退化】などのアグロ対面に比較的強いこと、キルターンが【アナカラー墓地退化】よりも多少早いことなどに差別化点を見出し、入賞上位へ躍進した。
模索中だった構築もかなり定まってきており、現在では以下のような形が多くなっている。
”終末の時計 ザ・クロック”を受けの軸にし、”エマージェンシー・タイフーン”と”サイバー・チューン”を計10投することで手札交換と墓地肥やしを達成し、退化を目指す。
【JO退化】の”アルカディアス・モモキング”に対しても、”影世界のシクミ”と”HEAVEN・キッド”がロックをすり抜けるため、【青黒墓地退化】のように完全に詰む、ということは少なくなっている。
【アナカラー墓地退化】と比べての欠点として、白のカードが少ないため色配分が苦しいこと、マナが伸びないため墓地メタに比較的弱いことなどが挙げられる。
要するに、コントロールに強く継戦能力のある【アナカラー墓地退化】と、受けが強いがリソース補充能力の脆い【ドロマー墓地退化】という明確な差別化が成されているため、今後も一定の評価ができるデッキタイプと言えそうである。
5.黒覇道(入賞数24)
以前からぽつぽつと入賞していたが、今期になって一気に母数を伸ばしたアーキタイプ。
それまでの【ガイアッシュ覇道】のギミックを残しつつも、今までのそれとは大きく異なる構築となっている。
解説の前に、まずはサンプルリストを見てみよう。
”天災 デドダム”や”ロスト・ソウル”などの黒を入れる理由となる強力なカードに加え、大きな特徴は”一王二命三眼槍”の投入である。
【墓地退化】系統を墓地メタのみで受けるのではなく、”切札勝太&カツキング”と”プチョヘンザ”のタップインによる盤面制圧で対処する。
その前に攻撃を受けた場合も一度”一王二命三眼槍”で受けて返しに”流星のガイアッシュカイザー”を着地させて”クラッシュ覇道”で攻めるなど、【JO退化】などの他の攻めるデッキにも受けることを可能とする、柔軟な構築になっている。
また、「”ガイアッシュ・カイザー”を建てて終了」という従来のシータ覇道にありがちだった間を解消する、”ロスト・ソウル”というアクションを搭載できたことも大きい。
これによって、”龍装チュリス”が殿堂入りして以降のシータ覇道には無かった「自分の動きの押しつけ」を実現させた、かなり革命的な構築となっている。
要するに、黒覇道は「カツキング&革命チェンジによるコントロール」、「ロスト・ソウルの押しつけ」、「ガイアッシュ&覇道によるカウンター」の3つに「一定水準の受け」を加えたデッキである。
デッキパワーが高く、自由枠もそれなりにあってカスタマイズ性も高いため、今後も多く見かける構築になるかもしれない。こちらも今後要注目のデッキタイプである。
6.JO退化(入賞数23)
リストが殆ど固まっているデッキタイプなので先にテンプレ的構築を掲載
”禁断英雄 モモキングダムX”を使ってデッキから”モモキングJO”をサーチし、それを退化させることでJOの能力を活かした打点を押しつけつつの3-4キルを目指すデッキ。
最速3tに”アルカディアス・モモキング”や”キャンベロ〈レッゾStar.〉”などでのロックを絡めたワンショットを狙える、いわば「質の高い攻撃力」が特徴。
これによって【赤単我我我】などのアグロよりも更に高いトリガー耐性を持っていると言える。
また、踏み倒しを軸にするにも関わらず”バッドドッグ・マニアクス”によってある程度のメタを退かすことが出来るのが特徴。自分の動きの中でメタを排除できるというのも、このデッキの強みと言えるだろう。
これだけだと最強デッキのように見えるかもしれないが、実際にはある程度穴のあるデッキではある。
3-4tで動くためにはモモキングダムX、自壊札、そして進化先を引き込むためのルーターが必要になってくるわけだが、動けない時はとことん動けない。事故との戦いになるケースもあるわけである。
また、マニアクスで退かせないメタも比較的キツい。”オニカマス”はキャンベロでJOをアンタップしつつダムXの禁断解放で退かせるが、【青魔導具】の”ガル・ラガンザーク”は完全にお手上げであり、”アルカディアス・モモキング”のロックが通じないことも相まってかなり厳しい対面である。
とはいっても強力なデッキであることには疑いなく、環境にマッチすれば結果を出しやすい。5/29の入賞数がなんと11と赤単と並ぶ数字であったのも、【5Cネバー】などの比較的JOを苦手とするアーキタイプが増えたのと無関係ではないだろう。
7.青t黒スコーラー(入賞数21)
こちらもリストのほぼ固定されたデッキであるため最初にリストを掲載
”月下旋壊 ド・リュミーズ”で呪文カウントを稼ぎつつ墓地を肥やし、”魔導管理室 カリヤドネ”で”堕呪 ウキドゥ”を連打して対面をLOさせるデッキ。
シールドトリガーなどの受けを一切許さない4キルを特徴とし、ループ手順も難しくないという安定感も備えている。
その性質上4ターン目以降にビッグアクションを持つ【5Cネバー】や有象無象の受けを主体としたデッキ、また4キル率が高いわけではない【アナカラー墓地退化】などには滅法強い。
逆に受けはかなり貧弱なため、【赤単我我我】には滅法弱い。デッキの基本が水の呪文のため、【JO退化】の”アルカディアス・モモキング”は建てられたら詰みである。
このように相性差が極端なため、環境を読んで使うことで真価を発揮するデッキである。上記のような低速デッキの多い環境には非常によく刺さるだろう。
ただし、最近では様々なデッキに”DG-パルテノン 〜龍の創り出される地〜”などの露骨なソリティアメタが増えており、立ち位置はかなり悪くなっているかもしれない。
今後も環境にメタが少なくなった時は見かけることのあるデッキだろう。
8.青魔導具(入賞数17)
様々なタイプがあるが、今回はフルパワー型のリストを掲載
”卍 新世壊 卍”下で水の魔導具呪文を4枚プレイすることで無月の門99を起動し、”月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍”を唱えて”凶鬼卍号 メラヴォルガル”などのドルスザクを召喚することで勝利に向かうデッキ。
”卍 新世壊 卍”が呪文メタを無効化するため呪文ロックを備えるデッキには強く、近年になって獲得した”ガル・ラガンザーク”によって逆に踏み倒しをメタりつつ動くことが可能になった。
多少のトリガーは突破してくる【赤単我我我】とは相性が悪いものの、追加ターンと効果ブレイクによって攻めるため5C系統などの受けの厚いデッキには非常に強い。
安定感と現在の環境との相性の良さもあり、「赤単を対策したデッキを食う」という立ち位置を確立していると言える。今後もよく見かけるデッキだろう。
9.樹食墓地ソース(入賞数15)
五月前半は使用者が少なかったが、月末になるにつれて着実に入賞数の増えてきたアーキタイプ。
以前の型と比較した時の違いは、殆どの構築で”天幕船 ドンデンブタイ”がテンプレとして定着したこと。
コスト7以上のクリーチャーであるため”巨大設計図”で回収でき、かつノーコストで召喚できて追加ドローできる優秀なカードである。
従来非常に不利だった【赤単我我我】に対しても、後攻1ターン目の”ブレイズ・クロー”を巨大設計図による手札補充から出したこれで咎めることが出来るようになったのは大きく、かなり相性を改善できている。
単純に手札の質も上がるため”樹食の超人”とそこから繋がる大型の着地もさせやすくなっており、デッキとして一段階強化されたような印象を受けた。
サンプルリストがこちら
"SMAPON"の採用不採用、”ドマンモ龍樹”の枚数、”龍装者 ジスタジオ”、”ナンバーナイン”などのロックカードの採用といったところで細かい違いが出るが、多くがこのようなリストである。
大まかな動きとしては、”巨大設計図”によって大量に増やした手札をコストに”樹食の超人”を召喚して大量に墓地を肥やして”暴走龍 5000GT”や”大魔王 ウラギリダムス”を出し、後は”ブラキオ龍樹”や”大樹王 ギガンディダノス”を召喚して対面をロックする。
強みは大型クリーチャーを多用するデッキではあるが、いずれも正規のコストを支払っているためメタが効きにくいこと。ロックがはまった時の制圧能力も高く、特に【墓地退化】系統のデッキに強く出やすい。
他の対面も以前と比べてかなり改善されているため、今後の伸びしろに期待できるデッキである。
10.マッド・デッド・ウッド(入賞数13)
四月ごろから環境に現れ、根強い使用者の多いコントロールデッキ。
とにかく防御力に特化していることが特徴であり、”終末の時計 ザ・クロック”や”メヂカラ・コバルト・カイザー”、”戯具 ヴァイモデル”などの防御札を使い回すことによって時間を稼ぎ、最後は"Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド"から出した大量のクリーチャーで山を削り、”水上第九院 シャコガイル”で安全にフィニッシュする。
受けと安全なフィニッシュという点で競合する【デイガライオネルStar.】やソリティアによって受けを否定する【青t黒スコーラー】などの対抗馬によって一時期よりかなり入賞数は減ったものの、一定の立ち位置は堅持している。
5月中旬まででよく見た構築。”Dis ゾロスター”や”天災 デドダム”でリソースを稼ぎ、適宜相手の攻撃を受けつつ耐久してフィニッシュに向かうという、オーソドックスなリストである。
弱点としては【JO退化】の”キャンベロ〈レッゾStar.〉”による展開制限が厳しく、複数ターンに渡って【JO退化】側にこれを投げられることによって受けが磨り潰されることが課題であった。
良くも悪くも受け特化、ということだが、5月下旬から以下のようなタイプが増えてくる。
見ての通り、”アイアン・マンハッタン”が入った構築である。元々受ける過程で盤面に一定のクリーチャーが並ぶデッキであるため、逆にこちらからロックを掛けつつワンショットを狙うことができる。
赤を多く取った事によって”一王二命三眼槍”も入っており、受けも増強しつ「攻め」のプランも可能になった。
不器用ではあるが粘り強く、対面していて厄介なデッキタイプであり、まだまだ発展の余地を残したアーキタイプであると言える。今後も要注目である。
11.5Cバラモルド(入賞数13)
こちらも受けデッキとして以前から一定の立ち位置を確保しているアーキタイプ。
現在の主流は”切札勝太&カツキング”と革命チェンジのギミックを軸にしたタイプ。
”プチョヘンザ”による盤面制圧でのコントロールと、大量に積まれたガードストライクとシールド・トリガーによって受けも充実している。
サンプルリストがこちら。
”一王二命三眼槍”や”ハムカツ団の爆砕Go!”など、様々な対面に対応できるトリガーが採用されており、環境全体を見て構築されていることが分かる。
盤面に5色揃っていればトリガーを全て封殺する”石像男”が搭載されているのも特徴で、どうしても5点を一気に入れるためトリガーをケアしにくい”Volzeos-Balamord”の欠点を綺麗に補うことが出来ている。
5色特有のパワーカードを大量投入できるデッキとしての強さに加え、リソースの補充、デッキを回転させる力、ビッグマナ特有の制圧力と受けを兼ね備えており、今後も一定の活躍が見込めそうである。
12.デイガライオネル.Star(入賞数11)
新弾で登場したタマシードを最大限に活用する中速デッキ。
”スロットンの心絵”と”正義星帝〈ライオネル.Star〉”のコンボを活かした展開力と、豊富なシールド・トリガー持ちのタマシードに”禁断英雄 モモキングダムX”を組み合わせた受けを特徴として持つデッキ。
フィニッシュは”モモキングダムX”の下にカードを貯め込めることを利用した”無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース”による特殊勝利であり、攻防に充実したデッキである。
サンプルリストがこちら。
基本の動きとしては、”カーネンの心絵”などで手札を整えつつ”モモキングダムX”を設置し、受けの準備をする。
受けのメインになるタマシードは”ライオネル.Star”と共に大量展開のできる”スロットンの心絵”、一体破壊とリア二メイトを持つ”ヴィオラの黒像”、多色カード、もしくは5コス以下のクリーチャーというかなり広い除去範囲を持つ”ロマネス仙鬼の封”である。
これらがレクスターズが一定数出ることで発動する全体除去を持つ”モモキングダムX”とシナジーすることで、「呪文やクリーチャーに一切依存しないカウンター」という強みを獲得している。
また、”グーゴル〈XENOM.Star〉”と”アルカディアス・モモキング”を採用し、盤面の制圧をしつつ時間を稼ぐこともできる。
受けの固くないデッキであれば”ライオネル.Star”と共にこれらを展開するだけでも十分押し切ることができるため、無理に特殊勝利を狙う必要もない。
総じて、ソリティア系統以外の多くの対面に互角に出られるといった評価はできるだろう。
また、最近見かけるのが次のようなタイプ。
”マガン金剛〈Nワル.鬼〉”を投入したタイプ。
cipで山上2枚を墓地に置き、その中のタマシードの数だけランダムハンデスを行うという能力を持つ。が、このデッキにおいて重要なのはハンデスというよりも「4コスで相手を妨害できる、闇のレクスターズ進化である」という点である。
従来の型は闇が非常に少なく、またどの進化クリーチャーもライオネル.Starの効果による踏み倒しを前提としていたため、盤面にクリーチャーを展開するのは自分からだと5ターン目であった。
そのため進化クリーチャーのコスト軽減を持つ”正義星帝”などを採用していたわけだが、”マガン金剛”であれば闇を増やしつつ一応の打点にもなる、とある程度は動きが整う、というわけだ。
総括すると、新弾以降も十分強化される下地のあるデッキ、といったところである。現在は使用率も下火になりつつあるデッキだが、今後の研究に期待したい。
13.ラッカマナ退化(入賞数10)
影でじわじわと入賞を伸ばし、最終日に丁度入賞数10に到達したため、急遽取り上げることにした。
サンプルリストがこちら。
”竜魔神王 バルカディア・NEX”などの強力なクリーチャーを進化元にして”ブレードグレンオー・マックス”を出し、それを"HEAVEN・キッド"で退化させることで勝利を目指す。
似たようなコンセプトを持つ【墓地退化】系統のデッキとの差別化点は大きく分けて2つ。
「比較的妨害されにくいマナゾーンに退化先を置けること」と、「圧倒的なデッキ掘削能力」である。
まずは一つ目のポイントについて。【墓地退化】というギミックは墓地進化クリーチャーを起点として退化するため、先に”お清めシャラップ”などの墓地メタを打たれると大きなテンポアドバンテージの損失になる。
しかし、こちらが使うのはマナ進化であるため、進化元はマナゾーンに置いておけばいい。相手のマナに触ることができるカードはかなり限られており、現環境で採用されているのはせいぜい”魔天降臨”くらいである。
そのため、一度退化先をマナに逃がしてしまえば、あまり心配をする必要はなくなる。これはそれなりのストロングポイントと言えるだろう。
二つ目についてだが、このデッキのルーターは”オボロカゲロウ”、”十・二・神・騎”、”T・T・T”、”イザナギテラス”である。”オボロカゲロウ”は初手で”バルカディア”を埋められれば4枚の手札交換が可能であり、他も3-5枚デッキを見ることができる。
退化の成立条件はバルカディア、ブレードグレンオー、HEAVEN・キッド、そして同時出しに必要な”瞬閃と疾駆と双撃の決断”の4枚というかなりの要求だが、2-3-4のルーターを全てプレイすればデッキを16枚程度掘削することができる。
一見厳しい条件が、かなり達成しやすくなっているのである。
また、”決断”でバルカディアに二回攻撃を付与したり、”ドラゴ大王”や”アルファディオス”を呼び出すことで殆どのトリガーをケアすることができるなど、見た目以上に面白い動きができ、中々強力である。
踏み倒しがデッキの軸になるため【赤単我我我】に非常に弱い(というかほぼ無理)ことは気になるが、動きは悪くないため今後も一定の入賞数は出ると思われる。
あとがき(6/2時点)
今回も様々な種類のデッキを取り上げたわけだが、1つポイントとして言及しておきたいのは、特にコントロールにおいてはある程度デッキの基盤は共通している、ということだ。
カツキングと革命チェンジのギミック然り、ロスト・ソウル然り、一王二命三眼槍+タマシード然り......「環境デッキを受ける」という点において、取れる方法は自ずと限られてくる。
逆に言えば、受けの基盤が共通していてこれだけ多くのアーキタイプが生まれるのが、現代デュエルマスターズの奥深さとも言えるだろう。
今後もそういった環境デッキの変遷を注視していきたいと改めて思いつつ、今回は筆を置くことにしよう。
なお、次回は新弾前の掲載を予定している。新弾直前の総括的な記事にできれば幸いだ。ではでは。