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『ヴィンテージブライドル』と『第3世代フェイクレザー』を比べると ホワイトハウスコックス「ヴィンテージブライドル」シリーズについて⑤
これまで随分長いこと『ヴィンテージブライドル』に関してやりました。
・取扱い店が少ない珍しいシリーズ(ほぼ扱ってるお店がない)
・レザー自体が激レアで、独特でキャッチーな生産方法
・説明が必要そうな見た目と価格
ということもあり、たくさん説明してしまいました。
最終的には「業務用資材みたいな革」というデメリット情報?と
疑うような内容になりました。
・資材並みの厚さで堅牢性、耐久性のある革
・装飾的な加工をいれてない、荒くもみえる素の革らしい見た目とエイジング
・ほぼ100%ある個体差
ハンドクラフト系のものならともかく、信頼のあるブランドの既製品の皮小物としてはかなり珍しいです。
「均一性が求められる既製品」としてはホントはむいてない革です。
例えば最近のとってもよくできてる「フェイクレザー」なんかはその真逆にあたる素材と言えます。
●『第3世代のフェイクレザー』
『マイクロファイバーのフェイクレザーシリーズ』は
レザーの代替品ですが、ほんと見分けがつかないくらいレザーな感じです。
軽くて、耐久性もあり、当然ですが均一性もあります。
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偽物の革という事がどうでもいいくらい完成度高いです。
フェイクレザーの「第3世代」にあたるらしいのですが、現在の主流になりつつある素材です。
<第1世代>
“塩ビレザー“:「織物、編み物」をベースにポリ塩化ビニルコーティング
<第2世代>
“合成皮革“:「織物、編み物」をベースにポリアミド系・ウレタン系樹脂コーティング
<第3世代>
“人工皮革“:「不織布」のベースにウレタン充填し、ウレタン樹脂コーティング
天然皮革自体が実は「細かく複雑なコラーゲン繊維の不織布」と言ってもいい構造だそうです。
人工皮革はポリエステル・ナイロン・アクリル等の繊維で皮革繊維に似た構造の不織布をつくって、それを基盤にウレタン充填、ウレタン樹脂コートしています。
その上で天然皮革の「スムースレザー・スエード・エンボス等」の仕上げにそれぞれ似せて加工するそうです。(詳細は開発各社それぞれの独自技術のため不明です)
“繊維構造から似せてつくっている“というのが第3世代(新しい技術)なところです。どおりで完成度が高いです。
ちなみにこれはおそらく第二世代の合成皮革
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現行の合成皮革(第2世代)もかなりの完成度。(シュリンク調の仕上げ)
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裏側はニットの編み地らしき組織に。(正直、加工技術もすごくて第2世代、第3世代の区別もあやしいです)
下画像は上のマイクロファイバートレイの拡大です。
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白は染料がないので、例え天然皮革であっても顔料着色になります。
そうなるとフェイクレザーとの質感の差もさらにでにくく、見わけるのは困難。
下画像はホワイトハウスコックスのロンドンカーフ(天然皮革)
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“顔料着色、型押し、樹脂コート“
仕上げの仕方も似ていて、人工皮革はこういうタイプの革を真似るのは得意なはずです。
私レベルではすでに第2世代も含め、見ただけで見分けるのは無理になってきました。
革製品の弱点である
・重さ
・個体差(均一性、均質性のなさ)
・加工の手間と時間(クローム鞣しだって実は時間と手間かかってます)
・価格の高さ
を克服していてこの完成度です。
革小物、革バッグ、レザーアパレル用の代替素材としてとても優秀です。
今後ますます普及していくこと間違いなしです。
天然皮革はますます使われなくなっていくのかもしれません。
『ヴィンテージブライドルレザー』とは対極といってもいい素材です。
だからこそ
『ヴィンテージブライドル』はそこを全面的に押していくべきです。
●ヴィンテージブライドルレザーの『エイジングと希少性』
上記の革の弱点を全部兼ね備えている『ヴィンテージブライドル』。
「人工皮革」のような優秀な代替品があり、時代の流れ・社会潮流としてもフィットしにくくなってきた「天然皮革」ですが、その中でも「厚くて堅い革が資材として必要だった頃」の「手間と時間がやたらとかかる大昔からの生産方法」でつくられた「時代遅れ」になりつつある革です。
でも、だからこそそこが「1番の売りポイント」です。
①エイジング(経年変化)と個体差
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少し色抜けしてるでしょうか。細かい傷も入ってます。
が、全体的に心地のいい変化が見られます。(見た目、光沢感、透明感、馴染んでる感じ、、)
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サンプルのため変化が少ないですが、内側の革もいい感じです。
『加工の少ない天然皮革』は「“うまく言えないけどなんかいい“」という感覚(美意識)が共有可能なマテリアルなのだと思います。
(歴史的に相当長い付き合いの皮革は人類との親和性が高いからでしょうか?)
たぶん「建築や家具の木材の変化」や「デニムの経年変化」などと同様の、大勢の人が共感できるエイジングの心地よさ(触り心地も含め)を持ってます。
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こちらは同じ“コンカー“というカラーなのにかなりの「色ブレ」、表情もだいぶ違います。すごい個体差です。
いい事ずくめのフェイクレザーには、当たり前ですが、この「エイジングと個体差」がありません。そして、数年たてば徐々に劣化が始まってしまいます。
②いつの間にかの「希少性」
「ベーカー社のオークバークタンニングのレザー」は時代の変化に伴う生存競争を現在までやり方を変えずに生き残ってきた革です。
同業者が新しいやり方に変えたり、廃業したりで、いつの間にかすごく希少なものになっていたというケースです。(大変だからもう他で誰もやってない)
「その希少性と最高の品質」で今やとってもありがたがられる存在になってます。
「天然皮革の加工方法」や「人工皮革」が進化すればするほど、おそらく「希少性」は増していきます。
100年単位とかもっと大きな時間軸で考えるといずれどこかで廃れていくのかもしれません。が、とりあえずまだしばらくはこの価値観は共有できるはずです。
<ヴィンテージブライドルレザーと似たようなことになってる事例>
⚫︎ジョンスメドレー定番FF30Gのニット
(「FF=自動成型機」というニットマシンをつくってるメーカーがもうない。ジョンスメドレーがこの編み機を多数保有してるらしいです。日本では現状、新潟に1社のみという噂。)
⚫︎ジョシュアエルスのパイルカット生地
(ダッフルコートに使われる世界で4台しか残ってない「高級パイルカットを織る機械」を所有)
いずれも古い機械、やり方で頑張ってたらいつの間にか競走相手がいなくなってたパターンです。現時点ではおそらく、需要が供給を大きく上回っています。