暖かくなるのはなぜか、後半〜ダウンウェア④〜
夏に説明した冷感(涼感)系素材、ウェアは主に下記の3つの現象を利用しています。
防寒はこの①②③の現象の逆になるようなことをやってます。
《冷感現象①②③》
①熱伝導率のいい素材を使って実際に肌に触れると熱が奪われひんやり感じられる。
②吸水(吸湿)速乾系素材で毛細管現象、気化熱などの現象を利用して表面体温を下げる(クールマックス、クールモーション、エアリズムなどなど、、、)
③糸、生地の工夫で肌との接触時間・面積を少なくして空気の通り道をつくってベタつかせない、こもらせない
前回、この冷感①②の逆の現象
防寒❶断熱材としてのダウン
防寒❷ダウンの吸湿発熱について
説明しました。
今回、続きの③からですが、その前にちょっと防寒❶の補足説明します。
(防寒では断熱材効果が主役になるので)
※補足説明】〜断熱材としてのダウン〜
どこで見聞きしたか忘れましたが、昔ダウンの断熱材としての役割について、私自身が一番しっくりきたのは家とか建物の壁に例えられている説明でした。
気候環境が厳しい地域ほど、建物の中と外の環境差が激しくなるケースが多いと思います。
冷暖房がしっかりしてれば外がどうであろうと「家の中は年間teeシャツですごせる」とかはよく聞く話です。
それを実現している重要な要素の一つが“断熱材“です。
もし家に壁がなかったら話になりませんが、かと言って壁が木の板一枚だけとか、トタンとかだけじゃあやっぱりダメそうです。
屋根や壁が雨・風は防いでくれますが、壁内部に断熱材を入れてないと熱伝導で結局、夏は激あつ、冬は激さむの家になってしまいます。
建物の断熱材にはグラスウールという繊維系のモノかウレタンやフェノールフォームなどの発砲プラスティック系の資材を使うようですが、いずれも要は空気の壁(デッドエア)を建物の壁内部につくるということです。
夏は冷房による建物内の冷たい空気を逃さず、冬は暖房のあったかい空気を逃さず、そして夏冬共に外気温を建物内に伝えない。
もっと身近でわかりやすい断熱材の例をあげれば発砲スチロール(発砲プラスティックの一種)がそうです。
発砲スチロールは体積の98%が空気で空気をしっかり固定(デッドエア)している状態の物質です。めちゃめちゃ軽いのもそのせいです。
発砲スチロールの箱は密封性も高いので冷たいモノを入れれば冷たい状態を、あったかいモノ入れればあったかい状態を長時間維持してくれます。
これらと同じことを洋服でやってるのが防寒衣類であり、その能力が高いのがダウンウェアです。
とはいえ、洋服の場合は人体自体が常に熱源なので断熱材ではあったかくすることしかできませんが、、、。
ダウンウェアは雨風防ぐ側生地(壁)の中に能力の高いダウン(断熱材)を充填することでデッドエア空間をつくり高い防寒性をだしてます。
それでは改めて続きの防寒❸についてです。
《冷感現象③》
●糸、生地の工夫で肌との接触時間・面積を少なくして空気の通り道をつくってベタつかせない、こもらせない
服の中に外部とつながる空気の通り道(効率よく循環する状態)をつくるとどんどん空気が入れ替わって熱も奪われ、涼しく(=寒く)なります。
この逆をやるには?
《防寒》❸
◉ウェア自体に雨風を防げるような密封性の高い素材と仕様を使って外部環境を遮断する。
ダウンが暖かい空気を保持してくれるので、ウェアの素材・仕様にはできるだけその空気が逃げてかないようにする工夫が必要になります。
アウターなしでウールセーターとかフリースを着ていて、風が強いと風が抜けてしまって寒いと言う経験が皆さんあるかと思います。
せっかくためようとしていた暖かい空気を全然保持できない状態です。
首や裾、袖口があきがちなインナーダウンだけだと同じような現象が起き、天候、環境によってダウンの力が発揮されない場合があります。
密封されて動かない空気のことを『デッドエア』と防寒業界ではよんでます。
それだけ聞くとなんかあんまりイメージよくない単語ですが、“体のまわりに『デッドエア空間』をつくって熱を逃さないようにする“ことが防寒には必要です。
この説明はダウン自体と側生地やパッキング技術、洋服としての構造(つくり)との合わせ技が大きく影響してくるので詳しくは一旦パスします。
(実はそれでも過剰な湿気だけはださないと逆に体温低下の原因になります。
となるとこういう性質の具体的な有名な素材名が浮かびます、『ゴアテックス』です、がそれはまた別で。)
<まとめ>
まず、前回からの「ダウンウェア③④〜ダウンがなぜ暖かくなるか〜」まとめです。
人は体内でつくられた熱を放熱することで体温をコントロールしてます。が、常に放熱状態なので周りが寒いとガンガン熱を持ってかれます。
『防寒』するにはどうするか?ダウンウェア内部では何が起きてるか?
❶ダウンがたくさんの空気を含んで熱伝導率の悪い『空気の壁(デッドエア)』をつくります。その壁が断熱材となって外気温を内部に伝えない、同時に内部の熱をためて外に放熱しない(これが防寒の主役)
❷ダウンの細かい小羽枝が人体からの水蒸気を効率よく吸湿することで発熱し、少しあったかくなっている(吸湿発熱現象、限界あるので“ほんのり暖か“くらいの発熱)
❸雨風を防げるような密封性の高い素材と仕様で外部環境を遮断してる
(デッドエア空間を保持。でも湿気は逃したい、、、)
=最後にダウンが暖かいということの総まとめ、復習です=
(なんとこちらに実はしっかりまとまってました。)