見出し画像

オークバークタンニングって何? ホワイトハウスコックスの『ヴィンテージブライドル』シリーズについて①

先日より、ホワイトハウスコックスの取扱商品が圧倒的に増え、
国内で他での取扱がほぼないシリーズをたくさん扱うようになりました。

中でも特に推しているのが『ヴィンテージブライドル』というシリーズです。

グリフィンインターナショナル様からも先日改めて商品説明いただきました。が、『ヴィンテージブライドル』の何がすごいのかをもう少し補足しようと思います。

それにはまず、ブライドルレザーというのがイギリス名物のロウ引き(加工)革だということがわかってないといけません。
イタリアといえばバケッタがあるようにイギリスといえばブライドルレザーです。
イギリスで発明された加工革の一種です。(他の国でも生産はしてますが、イギリス製のものが圧倒的に有名です)
悪天候が多いイギリスで、高い耐久性と防水性が必要な手綱やハミなどの馬具用の革として開発されました。
内部の保革成分を守り」「不純物が多い雨水が浸透するのを防ぐ」
ためにWAXを浸透させた加工革です。

そんなもともと馬具用に開発された(耐久性と防水性の高い)「ブライドルレザー」を使って生産してるのがW・H・COXの定番、「ブライドル」シリーズの革製品です。
独特の光沢感が特徴のW・H・COXといえば「ブライドル」と言われてる看板シリーズです。

では『ヴィンテージブライドル』シリーズとはなんなのか?
定番、看板の「ブライドル」シリーズと何が違うのでしょうか?

実は使用してる「ブライドレザー」の種類(生産方法)が違います。

「ブライドルレザー」はイギリス名物のWAXを浸透させた「ロウ引き革」だということはわかりました。
そんな「ブライドルレザー」を使ってつくってることに変わりはないのですが、「ヴィンテージブライドル」シリーズの製品は「J &F.Jベーカー社」というタンナーが生産してる特別な「ブライドルレザー」だけが使われてます。
W.H.COX社の中でも最上位グレードの特別なシリーズという位置付けなのが「ヴィンテージブライドル」シリーズです。

イギリスには日本でも知られるぐらい有名な「ブライドルレザー」のタンナー(工場)がいくつもあります。
「クレイトン」、「トーマスウェア」、「セドウィック」、「コスモポリタン(こちらはフィニッシャー)」などがそうですが、いずれも質の良い「ブライドルレザー」を供給するタンナー(キャリア)として、世界中で知られています

「J &F.Jベーカー社」というタンナーはそんなイギリスの一流の
ブライドルレザー」の供給元の中でも、ちょっと特殊な存在です。

「ブライドルレザー」は生産方法に手間がかかることでも、もともと知られる革ですが、「J &F.Jベーカー社」は「オークバークタンニング」という他ではほぼやってない、さらに手間のかかる、かなりレアな方法でレザーを生産しています。

「オークバークタンニング」というのは古代製法と言われるくらい大昔からやってる「革の鞣し方」のことです。

かなり以前にやりましたが「鞣し」とは「皮から革へ」の工程です。
※塩漬けの毛のついた状態の動物の「皮」を鞣し剤によって腐らない「革」に変化させて革製品への加工が可能な安定した状態にする工程。
※誤解のないよう言っておくと「鞣し」と「ブライドル(ロウ引き)加工」とは関係ありません。

鞣し剤に「カシ、ナラの木のタンニン成分」のみを使って、漬け込み製法で約1年鞣し、さらに後工程に3〜6ヶ月くらいかけて完成させるのが「オークバークタンニング」です。

この「オークバークタンニング」で鞣した革に後工程のどこかで、さらにブライドル加工を施して仕上げたのが J &F.Jベーカー社の「ブライドルレザー」です。

ちなみに 「J &F.Jベーカー社」はブライドル加工を施してないタイプの革が靴の高級底材として高級靴ブランドから引っ張りだこなタンナーでもあります。
「J &F.Jベーカー社」が現在、とっても有名なのはどっちかというとこっちのせいだと思います。

『ヴィンテージブライドル』とはブライドル加工というよりは
その前段階の「鞣し方」が特別な「ブライドルレザー」ということになります。

そこまで手間暇かけて、わざわざ長期間の漬け込み製法(ピット製法)でつくったこの「ブライドルレザー」には

・繊維密度が高く、コシが強くハリがある
・堅牢度が高く、耐久性がある(馬具用にはピッタリ)
・にもかかわらず、意外と柔軟性(粘り)がある
・革本来のナチュラルな風合いを生かした仕上げでエイジングの変化が大きい

という特徴とメリットがあります。

その反面、
・基本柔らかくはない(硬い革)
・キズ、シワ、血筋跡など原皮の表情がかなり残ってる
・だから色ムラ、色ブレなど、個体差が大きい(既製品の均一性は望めない)
・ナチュラルな仕上げで色抜け、色移りの可能性がある

という特徴とデメリットがあります。

※製法や特徴からすると「革好きな人むき」の製品ではあるものの、バックグラウンドが理解できればこだわりの逸品として、とてもプレミア感の味わえるシリーズだとも思います。

長くなってきたので続きは次回に。


<まとめ
・「ブライドルレザー」とは生産に手間のかるイギリス名物のワックス加工革
・耐久性と防水性があるため、もともと馬具用に開発された。
・「ブライドル」と「ヴィンテージブライドル」の違いは使ってる革の違い
・「ヴィンテージブライドル」シリーズは「オークバークタンニング」というさらに手間ひまかかるレアな鞣し方で、J &F.Jベーカー社が生産した「ブライドルレザー」だけを使ってる。
・「鞣し」とブライドル加工(ワックス加工)は全然別の工程
・W.H.COX社の中でも最上位グレードの特別なシリーズ

補足:実は現状、定番シリーズのブライドルレザーの供給元をホワイトハウスコックスは明かしてません。契約しているタンナー、ブライドル加工の工場さんがあるらしいんですが秘密的な扱いになってるみたいです。

世界的に牛原皮の質も落ちつつあり、一般的にブライドルレザーの質も不安定な状況と言われてます。
そんな中、品質維持のための細かなオーダーにも対応してくれる工場さんをいくつか確保して、クオリティコントロールしてるようなのですが、諸事情があるっぽく公表してません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?