「ガンジーセーター」と「フィッシャーマンズセーター」。ニットの名前(ニットの名前の由来〜ハンドクラフトニット④)
時期も時期なのでそろそろクラフトニットの話はやめようと思うのですが「ガンジーセーター」だけ最後に触れます。
「フィッシャーマンズセーター」というジャンルを聞いたことあるかと思いますが、その名の通りもともと漁師さんが作業用に着てたセーターです。
現在の感覚でいくとニットのセーターが漁にでるときの作業着ってなに?ですが、、
昔はナイロンだ、ポリエステルだ、撥水加工だ、ラバー(コーティング)だ、ゴアテックスだ、防寒中綿だ、なかったので
という特性をもつ“ウールのセーター“は厳しい環境の北方の海の上で作業するのにむいてるアイテムでした。(なのでウールのセーターはのちに短い期間ですが、屋外スポーツウェアとしても使われます)
そのため、北欧・イングランド・スコットランド周辺の島とか沿岸地域で編まれていたセーターは多かれ少なかれもとは「フィッシャーマンズセーター(海用作業着)」だったと思われます。
(前回までに紹介した「アラン」も「フェアアイル」も「ロピー」も「フィッシャーマンズセーター」と言われてます。)
そんなリアル作業着としてのフィッシャーマンズセーターのディティールをいまだに残してるのが「ガンジーセーター」です。
【ガンジーセーター】
イギリスとフランスの間にあるチャネル諸島のガンジー島が発祥地であり、名前の由来という説が有力です。
ガンジー島に典型的なガンジーセーターをつくっているメーカーが現在も2社あって、昔は時々扱ってたのですが、最近は本当にやらなくなりました。
・ガンジーウーレンズ
・ル トリコチュール
=場所とか伝説とか蘊蓄とかトータル情報網羅してくれてるサイト=
=“つくり“目線で解説してくれているサイト(セーターとしての特徴が説明してあります)=
「アラン」や「フェアアイル」では“独特の装飾的な編み地・柄が特徴“だと説明しました。が、「ガンジー」には“本当に作業着として使ってたんだなあ“という機能的なディティールが残ってます。
(実はこのディディール、古いマリンセーターやマリンシャツのディティールとよく似ています。私たちがよく“ボーダー(バスク)“とよんでるモノの原型です。また、さらにいうと、この特徴の一部はスウェットに引き継がれてたりもします。)
マジのガンジーセーターは作業着として割りきって使われていて、洗濯の頻度も低く、着っぱなしだったようです。(磯臭いモノだったみたい)
ほつれや破れなども頻繁に発生するため、補修しやすいよう袖・身頃の大半は天竺表目です。
編み地の装飾は防寒目的で厚みが必要だった首から胸周りだけのものが普通だったようです。
さて、最後にガンジーを紹介したのは「ガンジーセーター」が「フィッシャーマンズセーター」の原型で代表だからです。
前回までに紹介した「アラン」も「フェアアイル」も「ロピー」も「フィッシャーマンズセーター」と言われてます。(「ガンジー」が全てのもととなったという説もあります。)
が、結局ずいぶんそれぞれ特徴のある違うものになってます。
漁のための作業服だったものが
ことで、それぞれの地域ででてきた特徴が“より装飾的な編み地や編み柄“に進化したり、キャッチーなモノへと変化していったと考られています。
♢ ♢ ♢ ♢
で、最後にやっぱり名前(名称)の話です。
ある地域のクラフトニットの固有名詞であり、ニットの1ジャンルとしての一般名詞でもある「ガンジー」「アラン」「フェアアイル」「ロピー」セーターは実は「フィッシャーマンズセーター」という一般名詞のくくりにも入ってます。
さらに
「アラン」は「バルキーセーター(糸・形状、切り口)」でもあり、
「フェアアイル」は「シングルジャカードニット(編み方切り口)」でもあり、
「ロピー」は「ノルディックセーター(ジャンル)」の「丸ヨークニット(編み方)」でもあります。
一つのニットが「切り口」によっていろんな名称で呼ばれます。
それが私たちを混乱させる原因の一つかなと思います。
(ニットに限った話ではないですが、、、)
その辺はまた次回にします。