元カノに会った話(4)

真剣に私の話に耳を傾けた後、リズは、こう言った。
『私たちの関係は私たちで決めるもの。エリーと彼との関係も、2人で決めるものと思う。エリーと彼との間に、何かさらにコミュニケーションしなければならないことがあるのかもと思うけれど、2人の間のことは、私が何かを言うものではないと思うの。
私が言えるのは、私と彼との関係は、2人の間の、特別で、かけがえがないもの。そしてこれからも続いていくもの。でもそれは私と彼との間のことで、あなたたち2人の関係に干渉するものではないの。だから、安心して。私は今日彼が大好きなあなたに会えて、とても嬉しいと思ってる。私は彼が大好きだから、彼が共に時間を過ごしたい人と愛情にあふれた素晴らしい時間を過ごしていると知れたことが、なによりもうれしいの。』

彼女は真剣だった。私に向かって、彼と距離をとって、とか、彼のことをもっと信じてとか愛してとか、彼女の立ち位置から言えることはたくさんあったと思うけれど、リズは一貫して、彼を、条件なしに愛していて、また、私に対して愛を強制することもなかった。何がどうであれ、リズは彼を愛していて、彼はリズを愛していて、それはそれぞれの自由意志で、でもとても強固だった。リズは彼の目を見つめ、私の目を見つめ、真剣だった。

何かが吹っ切れた感じがした。
このあと、彼とリズとの関係がどうなっていくか私にはわからなかったけど、つまり、フィジカルな関係が深まっていくのかどうかわからなかったけど、自分ができることはしたと思えた。You know whoだったリズに会う勇気が持てた自分が誇らしかった。リズと彼が共にフィジカルも含めた愛情を深めていくとしたらそれはとても素晴らしいことと心から思えた。相手を拒否するような感情が少しずつ溶けていく将来が見えてきた。

彼は、リズの話を受けて、何が起きているのか把握できているのかいないのか、沈黙のあと、こう言った。
リズが言うように、これまで僕がエリーに言ってきたように、僕にとってのリズは唯一の存在(absolutely only one special in my world)なんだよ。なんの条件なしに僕はリズを愛しているんだ(I love her unconditionally)。

そしてエリーに出会ってから、僕にとってのエリーも同じように唯一の存在(absolutely only one special)になった。僕は何があってもエリーを無条件に愛している。自然のままのエリーを愛している(I love you as you are)。

リズはそんな彼を愛おしそうに見つめていた。彼のよく言う無条件の愛(unconditional love)の世界が目の前に広がっていた。あとは私がこの全てを目にして、自分の世界にそれをどう取り込んでいくのかということだと思った。取り込むのか取り込まないのかも私の自由。あまりに一気にいろんなことが起こったから、まだ何をどう解釈したらいいか(and 解釈したいか)わからないけれど、何かが進んでいくことになるだろう。

そのあと、リズと私と彼は少し冷めてしまった料理を分け合って食べて、ワインをもう一杯飲んだ。やっぱりこの店いい店。リズも賢くて愛情深くて前向きで本当にいい人。

そうこうするうちにリズは、今度私と彼とで企画しているパーティーに来たいと言った。私の友人たちもくるパーティーにリズが来たい、と。友人たちにどう説明していいかわからないし、彼もどちらに気を配ってとか大変じゃないかなと想像して彼を見ると、僕はいい考えだと思うけど、エリーによるよ。と言った。リズも、もしやっぱり嫌だったら、全然断ってねと言った。少しずつリズのことがわかってきて、親近感が湧いてきていたものの、私は、若干やっぱり、戸惑った。とはいえ、この暖かな雰囲気の中で断るのってとても心が狭い人みたい、とも思った。前代未聞だけれど、この勢いでこの新たな扉を開けなければ、また近い将来どこかで結局、執着の苦しみや、隠し事のある気まずさなど、自分の心の暗い部分に向き合うことになるだろうとも思った。後押しがある今ここで、一歩進んでしまった方が、どちらに転ぶにせよ、理解が深まり、きっといい未来につながる。

トイレに行って少し考えたあと、私はリズに、パーティー、是非来て!と明るく言った。リズはほんとに?ありがとう!とそれはほんとにほんとに嬉しそうに、私にぎゅっとハグした。お姉ちゃんにハグされたような変な感じだった。

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