元カノに会った話(1)
彼は、今日はピックアップしていくよ、一緒に行こう、と言った。美しいビーチサイドをドライブして、15分前くらいに、ピアのカフェに着く。平日だからかすぐに席に通された。いつもは外の席を待つけど、その日は中の席にした。
彼は私のワンピースが気に入ったようで、今日はいつも以上に素敵だ、とニッコリした。落ち着かないのでレストルームへ行き、鏡で肩紐の位置を整え、リップを塗り直して、ハーフアップにした髪を心なしか整えて、座席に戻ろうとすると、”You know who”が、ちょうど座席につこうとするところだった。
ぎこちなく挨拶して、たわいない会話をして、時間を過ごす。リズは私に会えたのがとても嬉しいようだった。私の緊張には気付いてるようだったけど、気づかないふりをしながら、私が聞く、彼女のキャリアのこと、なんでロサンゼルスに戻ってきてるのか、などに、かなりオープンに答えてくれる。動画で見ていたように笑顔がとても明るくて、声は思ったより低くて、でも想定していた聡明さはそのまま。思ったよりダイナミックで、人をリードするのを楽しみそうなタイプ。自分の人生は、自分で決めて、生きている人、という感じがした。彼は、どちら側にも肩入れしすぎないように、絶妙な立ち位置で、会話に加わる。
リズは、彼がなぜか自分には、あなたの存在を長らく教えてくれなかったの。ようやく会えて本当に嬉しい!と言う。彼はたぶん、私のことを伝えて、リズとの関係が変わる可能性があることを怖がっていたのだと思う。リズに、前の彼女のことを話した時、リズはかなり取り乱した、と聞いたことがあったから。彼は前から私たちを会わせたがっていたけど、私のことを伝えると決めるのも、彼の中では、たぶんちょっと怖いことだったのかもしれない。
この人だったら、たぶん、ホントの気持ちでぶつかった方がいいな、と、夏野菜のカレーを食べながら、頭の後ろで考えた。
「彼とはどうして、別れちゃったの?」
私は前から気になっていた質問をそのままぶつけてみた。
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