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ホテルの部屋料金はこう決まる!元ホテリエだから知っているビジネス戦略裏話

本日はホテルの宿泊料金がどのように決まっているのかを書いてみようと思います。


頻繁に価格が変わっているけどどうやって決めているの?


ホテルの宿泊料金は、客室の価格を需要と供給、時期、競合状況などに基づいて最適化し、収益を最大化するためにレベニューマネジメント(Revenue Management)という手法で管理されています。

これは、フライトの値段が日によって変動する原理と同じですね!

「フライトは料金に変動があるのに、なぜホテルは年間ずっと同じ料金でなきゃいけないんだ」という話は当時の上司である営業部長がよく口にしていました。

出だしからセールス思考な捨て台詞で幕開けしてしまいましたが、私たちホテル側の視点で価格設定の基本的なプロセスをご紹介していきます。


1. デマンド予測


過去のデータ分析:

過去の宿泊率、価格、イベントなどの情報を元に、未来の需要を予測します。特定の時期やイベント(お祭り、企業の会議、観光シーズンなど)は、宿泊需要が増加する傾向があります。

予約のペース:
早い段階で予約が埋まりやすい時期や、逆に埋まらない時期を予測し、早期予約や直前予約の動向を分析しています。

ゴールデンウィークやお盆など、毎年必ず同じ時期にやってくる大型連休は、みなさんだいたい事前に計画を立てるので、その動向に沿ったタイミングで値段決定をしています。


2. 競合分析


競合ホテルの価格調査:

周辺のホテルやグレードが類似のサービスを提供しているホテルの価格を定期的にチェックしています。競合より安く設定する場合もあれば、付加価値(サービスや設備)を提供して高い価格を維持する戦略を取る場合もあります。

 市場全体の価格動向:
市場全体が値上げに向かっているか、値下げをしているかを常にモニタリングし、それに応じて価格を調整しています。

当方は現在東南アジアにおりますので、物価の感覚が麻痺してきておりますが、昨今は円安で海外からのインバウンドが増加しているため、国内ホテルは全体的に価格が高騰していると思います。


3. セグメンテーション


 顧客層(セグメント)の分類:
ビジネス客、観光客、団体客など、顧客層によって異なる価格戦略を採用しています。たとえば、ビジネス客は平日に高めの料金を支払いやすい一方、観光客は週末やホリデーシーズンに多く訪れます。

営業部ではこのセグメンテーションによって営業担当者が決まっています。
自分のホテルの利用客はどのような層が多いのかをデータ分析し、そこから太客を割り出しておくと毎年確約できる利益を見出せますね。

チャネルの管理:
予約経路(公式ウェブサイト、オンライン旅行代理店[業界ではOTAと呼ぶ]、電話予約など)によって異なる価格を設定し、最も利益率の高いチャネルからの予約を増やす戦略を取っています。

おそらく一般的には予約サイトを利用している方がほとんどだと思いますが、ホテルとしては直接予約を推奨していますよ。


4. ダイナミックプライシング


リアルタイムでの価格調整:
空室状況に応じて価格をリアルタイムで調整します。客室が少なくなれば価格を上げ、多ければ割引を提供することで、適切なバランスを保っています。

ピーク時価格:
需要が最も高まる時期(例:年末年始、特定のイベント期間)には価格を大幅に引き上げることが一般的です。

スピッツのライブチケットがダイナミッックプライシングで販売されたことが話題になりましたよね。全く同じ戦略であり、ファンにはメリットとして評価されていました。

まさに、有名アーティストのライブ時などは料金をあげています。
福山雅治のコンサートがある時は、ファンの方なんだろうなぁと思われる女性たちからホテルに電話があり「○月×日に芸能人の方が宿泊しますか?」などという問い合わせの電話が増えるというのはホテル業界ではちょっと有名な話。

当たり前ですが、そういった情報は絶対に外部に漏らしてはいけないので、問い合わせがあったとしてもお答えはできかねます。


5. プロモーションと割引


早期割引や直前割引:

早めに予約を促進するための割引や、空室を埋めるために直前割引を設定することがあります。

これは、別の記事にも書いた「事前予約」のからくりと同じですね。

パッケージプラン:
宿泊と食事、観光ツアーなどのオプションを組み合わせたパッケージで、通常より高い価格を設定することができます。


6. パフォーマンスモニタリング


KPIの追跡:

ちょっと業界用語が並んでしまいますが…平均客室単価(ADR)、稼働率(Occupancy Rate)、客室売上総額(RevPAR)などの主要なパフォーマンス指標をモニタリングし、目標を達成しているかを常に確認しています。

営業マンはレベニューチームから降りてきた数字に基づいて提案書を作っているだけなので、このあたりの横文字についてはレベニューマネージャーと営業部長でのやり取りがほとんどでした。

フィードバックと調整:
市場の変化や予約のペースに応じて、価格戦略を柔軟に見直し、必要に応じて調整しています。


このように、レベニューマネジメントはデータに基づき、状況に応じて価格を最適化して収益を最大化する戦略を展開しています。

規模の大きなホテルではレベニューチームとレザベーションチーム、そしてセールス&マーケティングチームでこれらのビジネス戦略をあれこれ練っておりますが、小さなホテルではマネージャーが一括して業務を行っていることが多いと思います。

次回の記事では、ホテル選びをする予約者の疑問「各サイトから予約できるけど、結局どこからどう取るのが1番いいの?」にお答えしてみます。

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