龍宮城「SHORYU(→↓↘+P)」を易経の視点から読む

【注意】
これはあくまでも1ファンの解釈であり、他の見方を否定するものではありません。
易経について記した内容は本の内容を要約したもので、表現は原著に従っています。なるべく正確に書いたつもりですが、誤りがあればご一報ください。

龍宮城「SHORYU(→↓↘+P)」は、MVやそのコメント欄でも見られるように、ストリートファイターシリーズをモチーフとした曲として知られている。
しかし、機会があり竹村亞希子「人生に生かす易経」を読んで以来「SHORYU(→↓↘+P)」は易経の視点からも読めるのではないかと感じ、この視点を共有したく筆を執った。

まず前提として、易経の基本的な考え方を記しておく。

易経は四書五経の一つで、占いのテキストとしての読み方と、人生の指針としての読み方がある。ここでは人生の指針として易経を活用する。
世界は陰(柔、小、月、女、-…)と陽(剛、大、日、男、+…)の二つに分けられる。一人の人間の中にも陰と陽が入り混じっており、その勢力は絶えず変化していくものである。陰と陽は互いに支えあって存在しており、どちらかだけで成り立つことはできない。

陰と陽の組み合わせから成る易は全部で六十四卦あり、竹村亞希子「人生に生かす易経」では、その中の一つである乾為天に出てくる龍の話から、人は一生をどのように過ごすべきか説いている。

龍は六段階に変化する。上の段階から下の段階に落ちてしまうこともある。
潜龍…まだ何物でもない。一生変わらないような固い志を打ち立てることが目標。
見龍…自分が学ぶべき大人に出会う。基礎と型を作ることが目標。
君子終日乾乾…量稽古の時期。自分なりの技術力を付け、応用することが目標。
躍龍…独自の世界を極め、飛躍となる時を待つ時期。
飛龍…様々なことを実現し、社会に大きな還元(=龍が雲を連れ、恵みの雨を降らせている様子)をする時期。
亢龍…成功を極め、衰退していく時期。

以下、歌詞の解説をしていく。(太字が歌詞、細字が解説)
※ここで出てくる戦士は、人生において様々な経験をした末、競技人生の終盤になって長年のライバルと最高の舞台で戦うことが叶った者、という設定。

巻き返せるかな?
→疑問が強めの内心

拳にキス 悪夢の始まり
→戦士が殴られているシーン。ここで言う「悪夢」は戦士人生の始まりを意味する。

必殺傷だらけのパンチライン
→研鑽を怠らず磨いてきた技のこと

昇龍出でませ昇りて
→潜龍~躍龍までの期間を1センテンスで示す

この身を裂く雷よ 交流合流
→交流電源の+と-を人間が持つ陰と陽に例え、ライバルである二人が戦うときそれが合わさる様子を示している

昇龍雲連れ踊りて この身を賭すお見事に直球勝負
→飛龍となった今、そのパワーでもって正々堂々と全力で戦う様子

この世に更なる意味を 心の砂漠に地図を
→中国の広大な砂漠と生まれたてのまっさらな心をかけて、そこに鍛錬によって地図を描いていく様子

あの日の空を掠めた 血と涙が告げる
→戦士が敗北の苦しさ、悔しさを力に変えてきたこれまで

振り切り上げて見えるもの
→潜龍~躍龍に至るまでの努力&それによって見えたもの

どうしても消えない傷跡を
→潜龍時代に立てた一生変わらないような固い志(この戦士がストリートファイターⅡのサガットの曲だとするなら、この「傷跡」はストリートファイターⅠでケンにつけられた胸の傷となる。本筋ではないので他のファンの解釈に期待)

誇れば強くなれば 昂る朝日は来たる いますぐ勝負!
→潜龍時代に立てた一生変わらないような固い志を忘れず、プライドを持って鍛練を重ねれば、気力が満ちた状態で朝(=あなたが活躍する時代)を迎えられる
(しかし戦士は亢龍となっているため、ここで敗北を喫する)

拳でキス
→戦士が殴り返している様子

悪夢を再開
→敗北を喫した後、そこから立ちあがり再び戦士としての人生を歩み始める様子

うなされてます あなたにやみつき
→君子終日乾乾の時代で向き合ったライバルに心動かされている様子

時間切れじゃもう足りない 足りないよ
→夜になって(=時間切れになって)、相手の技や自分の立ち回りについて考えている戦士。君子終日乾乾の時代には、このような内省がとても重要とされる。

ベガ立ち決め込むギャラリーマジ参観日
→自分は戦わず、見物を決め込む観客達を揶揄

たちまち巻き込むこのぶっぱワンパンチ
→パンチ一発で観客を巻きこむ戦士の気概と気合

神がかり 立ち回り 恥さらし?
→ギャラリーの賛否両論

やりにいかない奴が言うなし おい後出し!
→「見ているだけなら何とでも言えるよね」という戦士の心情

うだうだ書き込む人生ROM勢 虚無性を置き去りにすぐさま駆け出し超優勢
→自分の人生を一生懸命やっていないのに口だけ一丁前な人たちを、戦士が「死んだら終わり」という人生の虚無性すら置き去りにするほどの速さで走り追い抜く様子

サドンデスです 一進一退 さあ負けちゃいられない この拡がる景色に エアプじゃいられないのでね
→ライバルとの戦いがフルカウント、「先にとったほうが勝ち」まで来て、躍龍に至るまで鍛錬した結果広がった世界のことが頭をよぎり、戦士が改めて世界と自分の人生に対し、「エアプじゃいられないのでね」と感じている場面

喰らうのはさあ誰?あなた 暴れましょう大荒れの波を抜け 夢に見た世界 ああ目の前で観たいから 叶える何もかも 打ちぬくコマンド ↑↓↘+P
→夢に見た世界を目の前で見たい。だから人生の荒波をくぐり抜ける中で習得した必殺技「昇龍拳」をここで放つと決意した戦士

昇龍 出でませ昇りて この身を裂く雷よ 交流合流
昇龍 雲連れ踊りて 勇み立つお見事に直球勝負

→昇龍拳を放つ戦士

巻き返せるかな?
→歌い始めと違い、「絶対に勝ってみせる」という意思が滲む

この世にさらなる意味を 心の砂漠に地図を
あの日の空を掠めた 血と涙が告げる
振り切り上げて見えるもの どうしても消えない傷跡を
誇れば強くなれば 昇る朝日は来たる
いますぐ勝負 さあ、今すぐ勝負!

→再び飛龍となった戦士が(一番と段階が変わっているのは、「昂る朝日」と「昇る朝日」の違いを考慮している)「さあ、今すぐ勝負!」と長年のライバルに畳みかけている様子

この本を通じて、アヴちゃんの描く「SHORYU(→↓↘+P)」の世界をより深く理解できたと感じている。
他の解釈も見てみたいので、いろんな視点を教えてください。お待ちしております。


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