達観

「はーい」とひとつ年下の弟がいつも持ってきてくれる
小学校の5、6年同じクラスだった杉山君の家に行くと
大袋に入ったお菓子を丸ごとくれる
もちろん杉山君も弟も自分のお菓子を袋ごと食べながら遊んでるわけで
ボクを含め3人には共通点があった
ぽっちゃりでルーズで動くのが嫌いなところだ
何度か行くうちにこのまま続けるとやばいんじゃないかと思いつつ
お菓子の誘惑にはやはり抗いがたく
ただ、彼らの方がちょっとひどいと思うところもあって
夏休みの自由研究で年子の強みを活かして同じものを提出していた
学年が違うとよほど話題にでもならない限り分からないので
そこを狙って兄弟で1年ごとにサボってた
ふたりのお互いに甘い体質をアメリカの映画会社にかけて
『なーなーブラザーズ』とボクは呼んでいたが

「はーい」と休みの日にはお茶を持ってきてくれる
杉山君のお父さんが「食べ過ぎるなよ」と笑いながら
夏にはちゃんと氷も入れて
「至れり尽くせりだなッ」とボクが言うと
「血は繋がってないけどね」と杉山君から返ってきた
「えッ」
「保育園の時、両親が離婚して
もうひとりの父親とは1か月に一度会ってる」
「………」
「3年前に母親が再婚して父親が二人になった」
「………」
「おかしい?」
「いやッ」
「子どもが二人いてもおかしくないよね」
「………」
「だったら父親が二人でも同じだろ」
「ボクもそう思ったッ」と、弟が加わった

なんか、変な言い方だけど
負けたと思った
だらしないとしか思ってなかった二人に
なんか………







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