「三十三番土偶札所巡り」諏訪湖でナイーブ・アート楽しむ - 諏訪市博物館 -
「三十三番土偶札所巡り」
前回の山梨県に続き、今回は長野県諏訪市の諏訪市博物館を訪れました。
諏訪市を地図で見ると、日本海と太平洋に挟まれたほぼ真ん中。四方を山々に囲まれた盆地に位置し、長野県一大きな湖・周囲15.9㎞の諏訪湖に面しています。
この日は8月の終わりの土曜日、チラホラと観光客の姿も見られますが、喧騒とは無縁の静かで穏やか時間が流れています。
遊歩道にはこんなオブジェが点々と。
諏訪湖を散歩しながら、
先ずは湖畔にある小さな美術館を訪れました。
ここはナイーブ・アート(素朴派)が中心に集められている、ちょっと珍しい美術館。
ナイーブ・アートとは、正式な美術教育を受けていない画家の作品を言うもので、50才を目の前に画家となったアンリ・ルソーや、70代で絵を描き始めたグランマ・モーゼスなどに代表されます。
型にはまらない〝自由で素朴〟な作品からは、優しさや誠実さが心に静かに届きます。(残念ながらそれらの作品は撮影NG)
ロービーで最初に目にするのは、シュルレアリスム(超現実主義)で知られるサルバドール・ダリ作の『時のプロフィール』。
ナイーブ・アートとは天と地ほどかけ離れているようですが…。
ダリがカマンベールチーズを食べた時に発想したという〝柔らかい時計〟には、 ‐ 忙しい毎日の中、時が止まって欲しい、永遠を手に入れたい ‐ という思いが表現されているといいます。
作品にはダリの横顔も隠されているそうですが、
ダリを理解するのは…
私にはちょっと、いえ、かなり難しい。。。
この美術館の面白さはその建物にも!
展示室を廻るには外の廊下を通ったり、螺旋階段を登ったり、とかなりユニーク!
メインの2階にはいくつもの小部屋にナイーブ・アート、奥のガラス窓の向うにはだれかの顔が覗いています。
この廊下の先には…
外の通路からは諏訪湖の絶景が望めます。
この景色もアート作品の一部ですね。冬の沁み切った空気の中では、湖の向うに富士山が見えるそうです。
日本のナイーブ・アートで知られる「塔本シスコ」さんがここを訪れて描いた絵には、雄大な富士山が描かれていました。
一昨年の世田谷美術館での「塔本シスコ」展を思い出します。
この展覧会は各地で巡回されました。
この湖畔を望む絶景を、
実は約5000年前の縄文人も見ていました。
湖畔から急な坂を上って行くと、家々が立て込む中から諏訪湖を一望できる場所があります。
そしてこの右手にあるのが「殿村遺跡」。
今から約5000年前の縄文時代中期の住居跡には、レイクビューの竪穴住居がありました。
冬の澄み切った空のもとでは富士山も望める、超絶景の一等地であったようです。
この湖を望む遺跡があった縄文中期から遡ること約1万年、
もっと湖を身近に感じていた縄文人もいたようです。
こちらは約1万5000年前の後期旧石器時代後半~縄文時代草創期の「曽根遺跡」。
実際の遺跡は、ここから少し離れた水深2メールのところに水没していて、断層活動や地盤沈下で湖に沈んでしまった「湖底遺跡」として知られています。
人間が一か所に定住をはじめた頃のこと、
まだ竪穴住居はなく、洞窟や岩陰に住みながら少しずつ土器作りが行われ、人間らしい生活を送るようになっていった…そんな私たちの祖先がここに暮らしていたのですね。
いつまでも眺めていたい諏訪湖、
名残惜しさを抱きながら、土偶を見に諏訪市博物館へ向かいます。
この地域は約5000年前の縄文時代中期に最も栄えていた中部高地。博物館では、この時代・この地域独特の〝創造性豊かな〟縄文土器などの遺物が多く見られます。
湖の妖精? 昆虫のようにも爬虫類のようにも見えてきます。
繊細な造形が土器全体に施されています。
まるで仏様のようなお顔の土偶です。
大きな集落の跡から見つかった土偶は、両手を水平に広げ、女神然としています。
横からみると、随分と奥行きのある頭だと分かります。でもなんか、ちょっと違和感が…。
周辺の遺跡からは〝仮面を被っている土偶〟が見つかっていることを考えると、この〝顔〟はそういった類の可能性もあるのでしょうか?
〝お腹の赤ん坊に右手を添えている〟と考えられる土偶は、この地域で見られる造形です。
こちらは〝カオなしの妖精〟と言われる、縄文時代の終わりの頃・晩期の土偶です。
顔面は意図的に剥がされたようですが、どんな顔があったのか?あるいは顔がなかったのか?は分かりません。
水の中をすいすい動きまわるクリオネのようにも見えませんか?
この土偶たちにはあまり共通点がないような?…偶然かもしれませんが。
祈りの道具であった土偶ですが、諏訪湖の穏やかな景色を目の前にすると、その土偶に向い一心に祈る縄文人の姿はあまり思い浮かばれず…。
今の私たちと同じく、〝奇麗な景色をぼ~と眺める縄文人〟の姿を想像してしまいます。
気がつけばたくさんナイーブ・アートを鑑賞した一日。縄文土器や土偶はナイーブ・アートそのものですものね。
作り手が自分たちで考え生み出したアートは、何よりも尊く心に穏やかに伝わってきます。
最後に訪れたのは、〝諏訪〟の代名詞でもある諏訪大社上社前宮。
諏訪湖周辺は、4つの宮からなる諏訪大社がある歴史のある地域です。
昨年行われた7年に1度の〝御柱祭〟。その樹齢200年程の樅の巨木も、また人々の祈りが込められた造形物の一つであるように思えてきます。
最後までお読みいただき有難うございました☆彡
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