アイスクリームのための王冠
世界中が見守る中、19日に英国のエリザベス女王の国葬が執り行われました。
連日多くの英国市民が、何キロも列をなしてウェストミンスターホールへ弔問に訪れる姿に、英国での女王の存在の大きさが表れているようでした。
ゴシック様式の壮麗な建築はもちろんのこと、女王の棺の上に置かれた紫を基調とした美しい大英帝国王冠にも注目が集まったようです。
報道によると、王冠を彩っているのは2,868個のダイヤモンドと273粒のパール、17個のサファイア、11個のエメラルド、5個のルビー、その中でも前部にあるダイヤモンドは317.4カラット…と、もはや想像すらできない世界です。
かつての大英帝国の強大な力を物語る一つ、と言えるでしょうか。
夢のようなダイヤで彩られた王冠…きっと生涯見ることは叶わないと思いますが、以前にとても美しい王冠を愛知県陶磁美術館で目にすることができました。
繊細な細工と涼やかなホワイト&ブルーの王冠の形をしたテーブルウェアは、1,800年頃のものと思われ、デンマークのロイヤル・コペンンハーゲン磁器製作所で作られた陶磁器製です。
その名も「アイス・ドーム」
アイスクリームを銘々の取り皿などに給仕するための専用容器です。
構造はというと、
下の受け皿に設けられた容器に氷を敷き、大きなドーム状のカバーすることで冷気を保ち、アイスクリームが配られる時まで溶けないように工夫されているものです。
ドーム状のカバーには、細かい葉文様に合わせて透かしが入れられ、その下部や受け皿には花文様がコバルトで描かれています。
華麗な中にも清々しさを感じる気品溢れる器です。
ロイヤル・コペンハーゲンの「ブルー・フルーテッド」と呼ばれる初期のシリーズで、現存する例が殆どない希少な作品の一つと言われています。
「アイス・ドーム」
ディナーコースの最後にこの器でデザートがサービスされたら、どんなに素敵なことでしょうか!
煌びやかな宝石を身に着けたヨーロッパの王族や貴族たちの、華やかな晩餐を飾ったであろう「アイス・ドーム」に、私たちが覗くことの出来ない憧れの世界が見え隠れてしているようです。
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