今日会いに行きたい!気になる土偶#033縄文の学び舎 小牧野館
「パーティ仕様でお願いしま~す」
美容室の受付ですれ違った若い女性、
ラメ入りのキラキラの目元、弾んだ声…これからクリスマスの楽しい時間が待っているようです。
フォーマルな装いに合わせた髪型も、今は〝さりげなく、ふんわり艶感〟がトレンドのようで、以前のようなゴージャスに盛った髪型は殆ど見かけなくなりました。流行っておもしろいですね。
さて、縄文時代にも流行があったのか?というと、やはりあったのではないかと考えられています。
東北地方や北陸地方の遺跡からは、漆塗りの櫛や鹿骨製のヘアピンなどが見つかっていることから、髪にさまざまなアレンジが加えられていたと推測できるようです。
そしてその様子は土偶の頭上に表されていると言われています。
土偶の髪型
縄文時代晩期(今から約3,200年前)頃に、東北地方~北海道南部にかけて結髪土偶が多く作られました。
結髪…あまり聞きなれない言葉ですが、髪を束ねることやその髪を表す、今で言うヘアスタイルにあたるでしょうか。
この土偶は結髪土偶であるとは言われていませんが、そのヘアスタイルは結髪土偶そのものです。
顔よりずっと大きくヨコに張り出し、中央で分けて結い上げた姿は結髪土偶の特徴です。
下の方から見ると、顔よりも前方に大きくせり出しているのが見て取れますね。
そして中央の少し凹んだ逆T字部分は赤くなっていて、この土偶が漆で赤く塗られていたことがわかります。
このユニークな結髪土偶のような髪型は、遮光器土偶の流れを汲んでいると言われています。
下記・左の遮光器土偶と右の遮光器土偶の後に出現した土偶を比べてみると、あまり似ていないように見えますが、遮光器土偶を簡素化した土偶であると考えられています。
右の土偶は、遮光器土偶から結髪土偶への移行期に作られたようです。
独特に誇張された頭頂部や遮光器のような目の表現が、シンプルで写実的な装いに変化しています。
この土偶は後ろ姿も素敵です。
高くきれいに結い上げられたスタイルは、古代中国の宮廷の女性や日本の花嫁の文金高島田で知られる島田髷の髪型を思い出させてくれます。
遮光器土偶から結髪土偶へと変化が進みますが、どちらとも言えない土偶や両方の特徴を持っている土偶、さらに全く違う土偶の特徴を合わせ持っている土偶も多くあります。
こちらの土偶は2本の角が生えているように見えますが、これもヘアスタイルのようです。
ちょっと控えめな小さな王冠のようなヘアスタイルは、どちらかといえば遮光器土偶の仲間と言えるのかもしれません。
大きな2つのお団子スタイルは、この地域のトレンドだったのでしょうか?
昔から高貴な人々の間では、髪を高く大きく結うことはその身分を表すような意味もあったようです。
土偶に表されたヘアスタイルは、特別な存在であった祈りの道具に、当時の風俗を映し〝より特別感〟を出したのでしょうか。
もし今、土偶を作るとしたら、いったいどんな髪型になるのかしら?…なかなか簡単には決まりそうもないですね。
*参考図書
はじめての土偶 武藤康弘 監修 世界文化社
縄文の美 出土品図録第2集 八戸市埋蔵文化財センター
最後までお読みいただき有難うございました☆彡