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【本要約】2030年すべてが「加速」する世界に備えよ(第3部)

2030年すべてが「加速」する世界に備えよという本の全ての章を対象に印象に残った内容をまとめていきます。本書は大きく3部構成になっており、今回は第3部を投稿します。
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第3部 加速する未来

第13章 脅威と解決策

・5つのリスク
定期的に刊行する「グローバルリスクレポート」では人類が次の10年で直面する最も重大な5つの脅威を取り上げており、従来は石油危機、金融危機など経済的懸念が選ばれてきた。だが2018年のレポートでは経済に対する懸念は初めてトップ5に入らなかった。水危機、生物多様性の喪失、異常気象、気候変動、環境汚染と全てエコロジカルなものだという。
・水危機
今日、綺麗な飲み水を入手できない人は9億人にのぼる。水を媒介とする感染症は世界全体の死因の第1位だ。気候変動、人口爆発、一向に改善しない資源管理が事態をさらに悪化させている。国連によると、2025年には世界人口の半分が水不足に直面するという。水問題をめぐってテクノロジーのコンバージェンスが始まり、何千というプレイヤーが多種多様なアプローチを試みている。
スターリングエンジンを使った蒸気圧縮蒸留システム「スリングショット」わかりやすく言うとミニ冷蔵庫サイズの浄水器だ。動力は牛糞など可燃燃料なら何でもいい。消費電力はヘアドライヤーより少なく汚染された地下水、塩水、尿などどんな水でも浄化できる。「オムニプロセッサー」、人の排泄物から飲用に適した水と電力を生み出し、さらに灰から肥料まで作れる装置だ。スカイソース社は大気中から1日2000Lもの水を抽出できる装置を開発した。
・楽観主義者から見た気候変動
石油、石炭、天然ガスを燃やした際に発生する二酸化炭素は地球温暖化の主な原因だ。気候変動を止めるために私たちがまず出来ることはクリーンエネルギーへの転換だ。そして専門家の多くが転換プロセスは発電、蓄電、環境負荷の低い輸送手段の3つの部分に分かれると考えている。
・発電を変える
風力発電と太陽光発電はここ数十年、エクスポネンシャルな成長曲線を描いてきた。驚くほど一貫して価格下落と性能の向上が続いて来たのだ。材料科学が太陽光発電と融合しソーラーパネルの製法や性能が変わりつつある。エネルギーの変換効率を上げて生産性が高まっているのに対し、価格は下がっている。
今後のエネルギーについては資源の不足ではなく利用可能性に焦点が当たっていくだろう。
・蓄電を変える
再生可能エネルギーのスケール化には蓄電技術が不可欠だ。緊急事態に備えるため電池は重要な役割を果たす。だが必要とされる電池の量は尋常ではない。
テスラは世界のリチウムイオン電池の生産量を倍増させようと「ギガファクトリー」施策を計画中だ。他にも何十という蓄電の選択肢が登場しようとしている。タンクや地下の貯蔵設備に圧縮空気を送り込み伝統的な蓄電システムの半分のコストで30年以上使用できるバッテリーを作ろうとしている。他にも弾み車、熱エネルギー、揚水水力発電に対応した蓄電システムが実用化されようとしている。しかし問題は再生可能エネルギーの発電やその貯蔵方法ではない。それをどうやって世界規模に広めるかだ。好む好まざるとに関わらず、こと地球環境については人類は一蓮托生なのだから。
・加速するEV開発
自動車やトラック、飛行機、列車、船から排出される温室効果ガスの削減として電気自動車の開発が急ピッチで進められている。各国の政府も将来的には脱炭素を謳っている状況だ。EV車の走行距離はすなわちバッテリーの性能に直結するので開発資金の多くはバッテリーに投じられている。蓄電量の増量もそうだが充電時間の問題もある。将来的には100キロを走行するのに充電時間は3分にまで縮まる構想だ。充電装置の普及にも力を入れている。アメリカでは既に5億ドル以上の資金が投入されており2025年までには現在のガソリンスタンドと同じ数まで普及を行う見込みだ。
・生物多様性と生態系サービス
私たちが現在直面する重大な環境危機を語る上で種の大量絶滅と生態系の崩壊について触れないわけにはいかない。気候変動、森林破壊、環境汚染、魚の乱獲などが重なり合った結果深刻な生物多様性の危機が生じている。生態系サービスとは地球が人類に与えてくれる、人類が自ら生み出すことのできない様々な恩恵のことだ。例えば酸素の合成、食料や森林を育てること、植物の授粉など全部で36ある。生物多様性の喪失によってこうしたサービスが劣化し、長期的には持続不可能になる。生態系サービスを持続させることはできるのか?簡単な対策はないが役立ちそうな変化に注目しよう。
①ドローンを使った森林再生
地上で生物多様性を守る要となるのが森林だ。森林破壊が種の絶滅の最大の原因だ。これを解決するためAI誘導型の植林ドローンを開発した。ドローンはまず地域の地形データを収集し、植林に適した場所を特定する。それから生分解性素材でできたミサイルに種子ポッドを詰め込み地面に向けて発射する。その趣旨ポッドにはゼラチン状の成長培地が入っていて、その後の木の成長を促進する役割を果たす。
②サンゴ礁の再生
サンゴ礁は海の森林だ。つまり海の健康を取り戻したければサンゴ礁を回復させなければならない。デビッドボーン博士は組織工学の手法を応用して100年分のサンゴ礁の成長を2年足らずで再現する方法を開発した。また通常サンゴは25年から100年かけて成熟してから増殖していくが、ボーン博士の方法では2年目から増殖を始める。初めてサンゴ礁を急速に再生させる方法が見つかったのだ。
③水産養殖の改革
漁業は海洋生物の減少の主な原因の一つだ。現在、世界の漁業の3分の1は限界を超えた乱獲の状態にある。幹細胞からステーキを作るための組織工学技術はマグロなど海洋生物にも応用することができる。資源を増やすことで漁業しなくても良い世界になれば海洋生物を減らさずに済むだろう。
④農業の改革
植物や動物が育ち暮らしていくためにはスペースが必要だ。地上や海中に動植物のための人間の手の及ばない広大な生息地を確保する必要がある。培養肉、垂直農法、遺伝子組換作物など様々なイノベーションによってこれまでより遥かに少ない面積で多くの食料を生産できるようになる。だから話は簡単で、この余った土地を自然に返せばいい。
⑤閉ループエコノミー
環境汚染も私たちが直面する5大リスクのうちの一つだ。それに対し何ができるのか。再生可能エネルギーを中心とする経済への移行はプラスだが、それだけでは足りない。おそらく最も有効なのは「ゼロ・トゥ・ゼロ製造プロセス」の実現だ。これは製造業で出てきた廃棄物をゴミ処理場に送るのではなく廃棄物を完全にゼロにすることを意味する。
・ようやくイノベーションが追いついた
本章で見てきた解決策はいずれも複数の問題に効果がある。今すぐ、全力で取り組みを開始しなければいけない。少なくとも問題を解決するのに必要なテクノロジーは既に存在し、コンバージェンスのおかげで今後も改良されていくのは間違いない。イノベーションが問題にようやく追いついたのかもしれない。パズルに欠けているのは協働だ。必要なスピードで持続可能な経済への転換を進めるうえで、人類は障害であると同時に希望の星なのだ。
・自動化によって遥かに多くの雇用が生まれる
自動化が起きた場合でも私たちが想像するような悲惨な結果を引き起こすとは限らない。ATMの例を考えてみよう。1970年台末にATMが登場したとき銀行で大量解雇が起きるのではないかという懸念があった。だが実際にはATMによって銀行の運営コストが低くなったために拠点の数は40%増えた。拠点数が増えれば社員の数も増えることになり実際にこの時期に銀行員の数は増加した。
企業が業務の自動化を望む最大の理由は生産性だ。しかし生産性が高まるのは人間を機械で置き換えた時ではなく、人間が機械の性能を引き出した時であることは繰り返し証明されてきた。
・エクスポネンシャルテクノロジーは雇用にプラス
エクスポネンシャルテクノロジーが誕生するたびにインターネットと同じくらい途方もない機会が生まれる。こうした機会を活かすためには適応というプロセスが必要になり、それには従業員を再教育しなければならない。誤解の無いように言っておくと、いずれ消滅する仕事もある。自動運転車によりタクシードライバーや無人レジの発展でレジ係が消滅していく。問題はこの影響が社会全体に広がる前に労働者を再教育する時間があるかどうかだ。2018年7月時点でアメリカには670万人分の求人がある。かつてないほどの人手不足だ。こうした求人を埋めるために迅速に労働者を再教育することができるか。それこそが私たちの解決すべき課題だ。VRによる学習環境やAIによる自動学習カリキュラムの発展で雇用してから戦力になるまでの時間を大幅に効率化することを行なっていかなければいけない。(詳細は第2部の教育の章を参照)
・テクノロジーは人類を脅かすか
テクノロジーは人類を脅かすか。よく知られた例が自己複製可能なナノテクノロジーの暴走、遺伝子組み換え生物が生態系を破壊する、バイオハッカーがウイルスを武器化して都市部にばらまくといったシナリオもある。いずれもエクスポネンシャルテクノロジーの時代に潜む落とし穴だ。
この落とし穴にハマらないために、テクノロジーによって激化していく社会を広い「視野」を持って仮説を立て、それを未然に防ぐために「予防」策を検討し、きちんと施行する「統治」を行っていく必要がある。
・未来を楽観できる3つの理由
1つ目はテクノロジーによるエンパワーメントだ。500年前にはこのような世界規模の壮大な問題に立ち向かう能力を持っていたのは王族や貴族だけだった。30年前なら大企業か政府だけだった。だが今日そうした力を私たち全員が持っている。エクスポネンシャルテクノロジーは小規模な集団に大規模な問題に取り組む能力を与える。
2つ目の理由は機会だ。世界最大級の問題は世界最大級のビジネスチャンスである。環境、経済、人間の存在を脅かすリスクはいずれも起業家精神とイノベーションの発射台とも言える。
3つ目の理由がコンバージェンスだ。これから私たちが手にする最も強力なテクノロジーの多くは、まだようやく実用化されつつある段階だ。今後様々なテクノロジーが重なり合っていくことで、より多くの課題を解決できるようになっていく。

第14章 5つの大移動が始まる

・世界は人の移動で進歩する
人間社会と世界の発展の歴史を振り返ると大移動がどれほど社会の進歩の推進力となってきたかがわかる。大移動というレンズで人類の過去を見ると文化的フロンティアを超えた移動が、今日のようなグローバルで統合されたを生み出したことがわかる。人は移動する中で新たな環境や文化と出会い、適応を強いられ、新しい物事のやり方を生み出していった。思考体系やテクノロジーの発達、新たな農作物や生産方法の拡散は、移民の経験、あるいは移民との出会いを通じてもたらされることが多かった。
・移民こそイノベーションの原動力である
移民による影響は「製品再配置」からも確認できる。これは新たな製品やサービスが市場に登場し、古いものを退出させることを指し、経済学者のジョセフ・シュンペーターは創造的破壊と呼んだ。2001年から2014年の間に外国生まれの高度技能労働者を採用したすべてのアメリカ企業で製品再配置率を追跡したところ、極めて明確なシグナルが浮かび上がった。技能の高い外国人労働者を採用した企業はイノベーションのペースが高まり、そのイノベーションが市場に与える影響も増大した。
・移民は圧倒的な雇用を生み出す
移民がイノベーションに与えるのと同じ影響が起業分野でも確認されている。移民は元の住民から雇用を奪うと言われてきたが、データはその逆の結果を示している。移民は雇用を奪うどころか新たな雇用を生み出す傾向が遥かに高い。
前章で取り上げた様々な危機を克服するには相当なイノベーションが必要になる。環境リスクや人間の存在を脅かすリスクに立ち向かうための新たなアイディア、そしてロボットやAIによって消滅する仕事に代わる新たな仕事が必要だ。また新たなアイデアを実践するには世界的な協業と協調、そして国境や文化や大陸を超えた深い共感が不可欠だ。これから起こる5つの大移動によって、まもなくそうした条件は整っていくだろう。
・これからの100年を予測する
大規模な自然災害を避けるため、経済的危機を追求する為など、過去にも見られたような理由によるものもあるが、それがこれまでより遥かに短期間に起こる。一方、これまで人類が超えたことのない境界を超えていく移動もある。地球を離れて宇宙に出ていく、仮想現実に出ていくケースもあるだろう。最先端の脳コンピュータインタフェース技術がこれまでのようなペースで進歩していけば、個人の意識から飛び出し集合意識に移動することも可能になる。
・気候変動による7億人の移住
地球の気温が4度上昇すると、ロンドン、香港、リオ、ムンバイ、上海、ジャカルタ、コルカタなど世界の巨大都市の多くでは最も手っ取り早い移動手段は徒歩ではなく泳ぎになる。島国では丸ごと消滅するところも出てくる。地球温暖化は洪水だけでなく昔から人類を悩ませてきた干ばつの危険性も高める。人類が7万年ほど前にアフリカを離れる理由となった干ばつは未だに多くの人に移住を強いている。
歴史を振り返ると1947年のインドとパキスタンの分離は市場最大の強制移住を引き起こしたとされる。この時は1800万人が住み慣れた土地を追われた。一方、気候変動による移住は予測される最低水準に収まったとしても1億3000万人のグローバルな大移動になる。3800万人の人口を抱える東京都市圏の15倍の住民を移住させるのにどれほどのコストがかかるのだろうか。
前章で見てきたように気候変動への対応に必要な戦略やテクノロジーの大部分はすでに存在している。こうした解決策を遂行するのにどれだけのコストがかかったとしても、7億人に新たな住処を見つけるコストとは比較にならない。
・2050年、世界人口の70%が都市に住む
気候変動による7億人の移住は人類史上最大の大移動だ。しかし、これからの20年〜30年でほぼ全ての人が都市へと移動していくと予想される。経済的観点から言えば都市は産業活動にはうってつけだ。全米経済研究所が生産性と人口密度の関係性を調べたところ、人口密度が高いほど生産性は高まるとの結果が出た。移動距離の減少、交通手段の共有化、病院や学校、ゴミ収集サービスなど必要とされるインフラの効率化がその理由だ。結果、都市はより清潔になり、エネルギー効率は高まり、二酸化炭素の排出量は減る。一方、マイナス面はどうか。無計画な都市化が進めば、犯罪、疫病、貧困サイクル、環境破壊に繋がる。しかし本書からも明らかなように私たちはこうした課題を解決できるだけの手段を手にしている。難しいのは先見性のあるテクノロジーを、優れたビジョン、すなわち優れた統治制度や市民レベルの協業と結びつけることだ。
・バーチャル世界への移住
世界全体でビデオゲームに費やされる時間は、週30時間。アメリカではデジタルメディアの使用時間が1日11時間に達する。こうした人々は新たな大移動のパイオニアだ。
過去の大移動はいずれも外的要因がきっかけとなった。一方、VRへの大移動の引き金は内的な心理要因である。原因は中毒性のある神経科学物質で、それを防ぐ方法はまだ見つかっていない。中毒の根本原因はドーパミンと呼ばれる興奮剤で、没頭、興奮、世界を探究したいという欲求に結びついている。研究ではVR環境の没入感は従来のビデオゲームやデジタルメディアとは比較にならないほど一気にドーパミンの分泌量を増やすことが明らかになっている。ドーパミンは脳の報酬系神経伝達物質の一つに過ぎない。他にもノルアドレナリン、エンドルフィン、セロトニン、アナンドアミド、オキシトシンといった物質もある。デジタルメディアはドーパミン以外の分泌にはあまり効果がないがVRはその6つ全てに作用する。
・宇宙への移住戦争が始まる
宇宙移住への鍵を握るのはハイテク業界の大物経営者同士、つまりジェフベゾスとイーロンマスクだ。二人とも人類を揺り籠から連れ出し宇宙というフロンティアを開拓し、地球上で色々なことがうまくいかなかった時の「生物圏のバックアップ」として第2の人類文明を築きたい、という強い思いを抱いている。
この二人の宇宙競争の勝者がベゾスとマスクのどちらになるかに関わらず、一つ確かなことがある。人類がこの地球上で大切にしているものの多く、すなわち金属、鉱物、エネルギー、淡水、質の高い不動産、果てしない冒険、欲望と愛、充実感や生き甲斐といったものが宇宙には無尽蔵にあるということだ。闘争心旺盛な大富豪たちが目下繰り広げているのが、この宝の山を手に入れるための冒険であり、私たちが揺り籠を出て宇宙へと向かう理由はまさにここにある。
・ブレインコンピュータインタフェースという革命
過去数十年、パーキンソン病患者の治療には「脳深部刺激療法」が利用されてきた。患者が覚醒している間に頭蓋にドリルで穴を開け、脳の運動を司る領域に電気的刺激を送る装置を差し込む。既に治療法として定着しており、埋め込まれた装置の数は10万個を超えた。他のあらゆる治療法がなかった患者にとって脳深部刺激療法は運動を制御し震えを抑える唯一の手段だ。これには様々な副作用が生じるが、近年ハーバード大学の科学者チャールズリーバーはそれを極力防ぐ手段を開発した。この成果によってリーバーグループの名声は一気に高まり、その技術は野火のように広がった。この技術の進化の次の段階について熱弁をふるうイーロンマスクの動画もたっぷりある。マスクはそれをブレインコンピュータインタフェースと表現する。
・あらゆるテクノロジーの究極の交錯点
ブレインコンピュータインタフェースはコンバージェンスの究極の姿だ。バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、材料科学など本書で取り上げてきたほぼ全てのテクノロジーの交錯点にある。2014年、ハーバード大学の研究チームがインターネットを通じて脳から脳へ言葉を送った。専門用語で「ブレイン・トゥ・ブレイン・コミュニケーション」と呼ばれる。送信機にはワイヤレスでインターネットに接続したEEGヘッドセットを使い、受信機には脳へと弱い磁気パルスを送る経頭蓋磁気刺激装置を使った。被験者たちは思考を伝え合うまでには至らなかったがメッセージに相当する光の点滅を正確に読み取ることができた。それが2014年時点の話だ。2016年にはEEGヘッドセットを使ってテレパシーでビデオゲームをプレイ出来るようになった。2018年には頭で考えるだけでドローンを操縦できるようになった。
次のステップは人間の脳をクラウドを経由してシームレスにインターネットと繋ぐ方法を見つけることだ。
・個人の意識はクラウドに移行する
自分の脳をクラウドに接続すれば私たちの処理能力と記憶能力は大幅に高まる。そして少なくとも理論的にはインターネット上で地球上にあらゆる頭脳にアクセスできることになる。そこでは思考だけでなく感情や経験も互いにやりとり出来たとしたら?私たちはいつまでも自分だけの意識にしがみついているだろうか。それともインターネット上で進化し続ける集団意識に少しずつ移行するだろうか。
この問いに答える前に考えて欲しい点がある。まず私たち人間はどこまでも社会的な種だ。様々な研究によると孤独は現代人の最大かつ最悪の恐怖の一つだという。人間がこれまで経験した中で最もハイブマインドに近いのは「グループフロー」、つまり集団で共有するフロー状態だ。例を挙げれば最高のパフォーマンスが出来ているチーム、第4クォーターでの大逆転、劇場の屋根が吹っ飛ぶくらい盛り上がったバンドのコンサートなどだ。心理学の調査で被験者に好きな経験をリストアップしてもらうと、常にトップに挙がるのはグループフローだ。このグループフローをいつでもオンデマンドで経験できる機会があるとなれば、集団意識に移行する強力な動機付けになるだろう。
・100年で生物の限界を超えるメタ認知が生まれる
人間にとって受け身的なプロセスであった自然淘汰は急速かつ主体的な人間主導の進化のプロセスに変化している。つまりこれからの100年でテクノロジーの加速は産業や社会制度を破壊するだけでなく、地球上の生物学的知能の進化をも破壊する可能性があるということだ。メタ知能のイノベーションを加速させる強力な要因になるだろう。個別の頭脳が集団的組織の下で働くことによって、エクスポネンシャルテクノロジーのコンバージェンスというこれまでで最大のイノベーションの加速要因を生み出すことができたなら、ハイブマインドとなった人類、つまり優しく穏やかなボーグが誕生したなら何を生み出せるだろうか。別の言い方をすれば全人類が一つになって思考したら、未来はどれほど加速するだろうか。
・最後に(全文抜粋)
本書を読み終えて、少し不安な気持ちになったかもしれない。その原因を専門用語で「損失回避性」という。進化の過程で植え付けられた最も強力な認知バイアスの一つで、現在手にしているものと引き換えに未来に何か新しいものが手に入るとしても、後者の方がずっと価値が低いのではないかと疑念を抱くことだ。人が習慣を変えられないのも企業がなかなかイノベーションを生み出せないのも、そして文化の変容にこれほど時間がかかるのも、全てこのためだ。
もしかしたらハイブマインドに移行することで私たちはこの認知バイアスを克服できるかもしれない。だがそれまでエクスポネンシャルテクノロジーのコンバージェンス、それが引き起こす5つの大移動といったとんでもない話を読んで、頭がクラクラしてくるのも無理はない。恐怖を感じたり、ワクワクしたり、イマジネーションが際限なく膨らんでいくのも当然だ。
それは私たち著者も同じである。私たちに言えるのは、ここまで自らに言い聞かせてきた言葉だけだ。
深呼吸して、目はそらすな。
こちらの準備などお構いなしに、未来はもうそこまで来ているのだから。

本note筆者感想
僕は今を全力で生きているという自負があります。おおよそ一般の方々が悩みだと思うことをほとんど解決していて、今生きていることが楽しいです。
両親との関係も良好で、友達は多くはないけれど多分一生仲良く遊べると思う親友もいるし、仕事も自分がが好きなことに関与できていてパフォーマンスも発揮できています。持論ですが精神の安定は家族・プライベート・仕事の全てが一定のラインを超えていないと保てないと思っています。仕事がうまくいっていない時の休日は楽しくないし、仕事がうまくいっていても友達や親と喧嘩していたらストレスになります。
少し話が逸れました。僕がこの本を読もうと思った理由は未来に希望しかなく、その未来を少しでも見通して今出来る準備をしておこうと思ったからです。例えばまだまだ一般家庭に普及していないVRゴーグルを買ってみたり、仙豆やエリクサーみたいなのが開発されない限りは恒久的に自分のためになる栄養学を勉強してみたりなどです。
未来を予知することは出来ません。未来予知は出来ないけど、来るべき未来を予想することは出来ます。それが当たらずとも出来ることとすれば、現状に対してどう適応するかだけです。その準備や心構えを作っておくために、「2030年すべてが「加速」する世界に備えよ」を読んで良かったです。


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