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依頼を貰って「猫のファン」をしたら、「推しとは」「無償の愛とは」を理解した話
初めまして。天竜川ナコンと申します。
突然ですが、最近新しいチャレンジをしています。
ファンとして私が依頼者に憧れの言葉をかけ、依頼者は有名人になった気持ちになれる、という糞みたいなサービスです。
「Twitterにあげたら400いいね以上稼げたから、もういっか(笑)」
と思っていたら…
なんと本当に依頼が来ました。しかし、猫。
冷やかしかと思いつつ条件などを確認しましたが、あれよあれよと実現に向かって話が進みました。
ということで今日は、ファンとして猫を全力で推していこうと思います。
待ち合わせ時間に近づいたので、依頼者(飼い主さん)と猫を探します。
すると、写真ではわかりづらいですが発見。あれが今回の”推し”だな…。
緊張してきました。依頼である以上、最高のサービスをする必要があるからです。糞みたいな自己完結では済まされません。
プロとして、ベストパフォーマンスを叩き出す。その責任が、私にはあります。
やるぞ。
「アレ〜?アレアレアレ〜!?」
意を決して飼い主さんと猫に近づいていきます。
(小走り 異常者)
そして…
「え…?ウソ! もしかして、あの"白猫のん"さんですか…?」
人混みをかきわけ、蚊が鳴くような声を絞り上げます。
「会えるなんて信じられない」
「私、のんさんの大ファンなんです!」
「あ、急に、話かけてすみません!笑」
隣にいる依頼主・飼い主のYさんに「これが、今日の正解なのか?」という目くばせはしつつ、本来想定していた「人間へ憧れるためのフォーマット」を次々と”のん”さんにぶつけていきます。
「私がファンである証拠に、ホラ!」
「好きすぎて、壁紙も変えちゃってます笑」
これは慣れないフォトショで一生懸命、推しのために手作りしたもの。
果たして、反応は…?
???
「のれんに腕押し」かな?
猫に「あなたのファンです」ということを理解させるのは、不可能なのでは…?
そんな不安と「この場、どうしよう感」が全身を駆け巡りますが、すぐに甘えは頭から排除しました。
なぜなら、人間でも動物でも、本当に推していたら絶対にわかってもらえるはずだからです。そして私は、プロだからです。
そもそも、この程度の努力で理解されるはずありません。私には第二・第三の秘策があります。
「こんなのも作っちゃってるんですよ〜笑」
俺、何やってるんだろう
とは、決して思いません。推しの応援うちわ。推しのロケットペンダント。どちらもファンしか持ち得ない必携アイテムです。
当然この二つも手作り。ただただ、推しに振り向いて欲しい。そんな気持ちから、不気味なほど不器用な私が、試行錯誤の末にやっと完成させた汗と涙の結晶です。
果たして、反応は…?
????
流石に悲しくなってきました。なぜ、気持ちが届かないのか。
多くの時間と労力をかけて推しているというのに、なぜそれをわかってもらえないのか。胸が、苦しくなってきます。
そして私はいよいよ、最終兵器をぶつけることにしました。
「いつかお会いした時に渡そうと思ってたんです!」
「もし良ければ、受け取ってもらえませんか…!」
それは、ファンレター。推しに対して「自分はファンです」ということを純度100%で表明する最後の手段です。
今回の依頼にあたり、私は白猫のんさんのツイッターを全て読んでいます。そして、私はいつしか本当にのんさんの大ファンになっていました。
まるで彫刻家が木を掘るように、一文字一文字、丁寧にしたためたファンレターなのです。
さぁ、どうか──
・・・
ですよね。
最後は推しと記念写真を撮ってもらい、サービス終了。
そして私はこの瞬間、全てを理解しました。
それは「推しに自分の気持ちなんか、伝わらなくて良い」ということです。
推しは、ただ健やかに居てくれれば良い。それだけで尊いもの。
それを願う私の気持ち自体もまた、非常に尊いものであると。
相手から何も見返りを求めない。
つまり「無償の愛」こそが「推しを推す」という行為に他ならないと、やっと心で理解できたのです。
それがわかっただけで、今回の取り組みは非常に実り深いものでした。
【飼い主のYさんに話を聞いた】
それにしても、なんでこんな糞サービスに依頼しようと思ったんですか?
飼い主のYさん「その前に背景をお話すると、のんは近所で一人で暮らしているおじいさんと一緒に飼っている保護猫です。」
「そのおじいさんとは仲が良いのですが、最近高齢のお母さまを亡くされ、元気がありませんでした。」
「また、コ口ナ禍で以前のように友達にも会えず、ますます家に塞ぎ込んでしまうようになりました。」
「もし猫が家にいれば、生活にハリが出てまた元気になるのでは?と思いました。」
「なので、里親希望の保護猫を代わりに探したのですが、独身や高齢だと、猫の面倒を見られるか、という部分でなかなか許可が出ず…」
「なので私も一緒に面倒を見る、という形で何とか許可が下り、のんを飼えることになりました。」
「ですが、のんは人に慣れず、そのせいか最近は人間を噛んでしまうことも多かったんです。」
「そんな中、天竜川さんのサービスを拝見して”他人にたくさんチヤホヤしてもらえれば、人間に慣れて噛むのも多少やめるのでは?”という一心で依頼させていただきました。」
「それにしても、猫を飼うのは初めてですが、のんは、まるで自分の子供みたいに、どんどん大きくなっていく。その姿を見られるだけで凄く嬉しいんです。」
「おじいさんも最近は”猫が家にいると楽しい”と言ってくれて、以前よりも元気になっている気がします。」
「家にいて、すくすく育ってくれる。たったそれだけで、本当にのんが来てくれて良かったな、と思っています。」
その後、もう少しだけYさん・のんさんと公園や街を歩くなどして解散しました。
こんな糞サービスにも関わらず、「天竜川さんのプロの技により、本当にのんのファンとして会いにきてくれたのだと自分も錯覚を起こした」「また機会があれば、ぜひのんに会いに来てくださいね」と言ってくださったのがありがたかったです。
のんさん、Yさん、ありがとうございました。
【あとがき】
今回、交通費代や各アイテムの原価・制作代として5000円をいただいたのですが、全額、保護猫・保護犬のために募金しました。
Yさんのような素敵な飼い主が、今後ますます現れてくれるように。その一助として使っていただけることを心より願っています。