仮定法:Conditionalと言われる文法事項ですが、これがまた非常に興味深い。かれこれ5年以上英語学習を続けておりますが毎度実例に出会すたびに味わい深い気持ちになります。
ところでネット上では仮定法の用例についてあまり網羅的にまとまったサイトがないように思われます。もちろん2nd conditionalはこうで3rdはこうで〜のような教科書の再生産のような説明サイトはあれど、「仮定法時制の伝播」といった現象や、「実際は3rd conditionalだけど2nd conditionalになっているパターン」などなど英語圏の実例を除くと非常に変則的なパターンが多いのが実情です。
そこで私の観測範囲で可能な限り網羅的なconditionalityの実例をパターン別にまとめていきたいと思います。より実際の英語圏の肌感覚に近づきたい!という学習者の方のお役に立てば嬉しいです!
前提認識:
① 仮定法/conditionalは、if節がないのが「基本形」:
そしてその基本形の文にはwould, could, mightなどの助動詞が伴う。
if節の役割はこの「基本形」が仮定する内容の条件=conditionを明示するだけなので、if節でなくともbut for〜やwithout〜などのバリエーションが存在する。
② 仮定法と時制の関係:
現在or未来の仮定=2nd conditional
過去の仮定=3rd conditional
仮定法は原則「時制の一致」の影響は受けないので、過去の事柄については2nd conditionalを使ってもいいし、本来の3rd conditionalを使ってもいい。
そもそも英語圏では「過去完了形 (had p.p.)」は避けられる傾向にあるので、極力3rd conditionalは会話などでは用いない。
もっと言うと、「聞き手も、仮定している出来事が過去のことだとわかっているだろうと思われる時」には、わざわざif節に3rd conditionalを用いずに、2nd conditional(=過去形)でOK。
また、If I were you, や、If I were a bird、のように、「過去にも現在にも絶対にありえないこと」を条件とする場合にも、if節は2nd conditionalでオッケー
つまり、if節は基本的に現在の内容であろうと過去の内容であろうと、2nd conditional (形としては過去形)にしておけばオッケー
むしろわざわざ主節を3rd conditioalにしている場合は、その文意は「過去の仮定」ではなく、「現在完了」の意味である可能性がある(後述)
③ 仮定法と直説法の識別:
if節が現在形の場合は、基本形にwould/could/mightがあっても仮定法でなく直説法 (非現実を仮定しているわけではない) である。
そしてそのwould/could/mightはただの推測の助動詞で、仮定法のニュアンス(=反実仮想)は意識されていない。wouldはwillの、couldはcouldの、mightはmayのそれぞれ控えめバージョンにすぎない。
この「控えめバージョン」というのは教科書的な表現で、実際のニュアンスとしては「ためらい」のニュアンスが近い(後述)。
とにかくこの3つの理解だけ持っていただけると仮定法はすんなり理解できるようになります!
基本形の実例(if節のない仮定法)
① S would do:「Sだったら〜する(実際にするとは限らないが)」
前半のwould notと後半のdid notが、仮定法と直説法とで対応関係になっていることに注目!
② S could do:「Sはやろうと思えばdoできる(でもしてない/しないかも)」
Trump could issue a statement calling for them to stay calm.
[トランプは彼らに落ち着くように声明を出すこともできる(でもしてない)]
③ S might do:「Sはdoするかもしれない (wouldよりもさらに実際に~するとは限らない)」
if節ありの仮定法
If節=基本形の文章で示される仮定内容の「条件」を明示している
If節の時制と、基本形の時制は臨機応変に組み替え可能!!!!
構造としては、
基本形の文=現実と反する内容
If節=話者が非現実だと思っている事柄
① if節と基本形どっちも2nd conditional
② if節と基本形どっちも3rd conditional
③ if節が3rd conditional、基本形が2nd conditional
④ どちらの節も2nd conditionalだけど、if節は過去の事柄をあえて2nd conditionalのまま表現してるパターン
if節は2nd conditonalだけど、普通に過去形を指していることに注目!
本来は If you had made the hard decision once in a while,
だけど、口語的なので普通の過去形になっている、ということ。
⑤ if節が2nd conditional、基本形が3rd conditional
Aパターン:「過去にも現在にもありえないこと」がif節にある場合
(If I were you などが定番)
Bパターン:過去の話だということが明確なのでif節をあえて2nd conditional(=過去形)にしている場合
このような用法自体は新聞や雑誌等では普通に良くあるため、修正すべきものというわけではない。
Cパターン:基本形のwould have p.p.が直説法においては「現在完了」を意味していた場合
このパターンは教科書等ではあまり解説がないのでとても重要!!!!
つまり、「過去についての反実仮想=3rd conditional」を表しているのではなく、元々が現在完了だったものが仮定法で過去完了になっている。
見分け方としては、今回であれば主節のwould haveとby nowの関係が3rd conditionalであれば成り立たないことに注目する。
⑥ If節が現在形、基本形にwould/could/might
=これはただの『直説法』!!
この場合に用いられるwould/could/mightは仮定法のニュアンス(=反実仮想)は意識されず、この時のwouldはwillの、couldはcouldの、mightはmayのそれぞれ控えめバージョンにすぎない。
ここのmightはmayとほとんど変わらない扱いになっている。
If I go into → トイレから侵入することは決まっているので直説法
I could climb through → 侵入してファイルを盗めるかどうかはわからないので控えめなニュアンスでのcould(〜かもしれない)
派生形:if節がただの過去形で、主節がwould/could etc.
=これもただの直説法!!!
「彼が近かったら」というのはあり得ないことではないので、ただの条件として言っている。
そしてここのwouldは「その場合は〜だろう(でも確信はない)」という控えめのニュアンス
if節が省略されてる場合:『現実味のcould』『普通は〜のwould』
ここのcouldは「〜という可能性が高い」というニュアンスなので「控えめなcould」ではなく「現実味のcould」
ここのcouldも非常に現実味の高い話をしており、be expected to doと近いニュアンスを持つ。
⑦ 仮定法と時制の一致
ただし、過去時制に合わせて
I told my men that they wouldn’t have been able to kill you if they had tried.
[私の部下にはお前を殺そうとしても殺せはしないと伝えてあった。]
としてもオッケー!!
What would happen if I was flying solo again. は2nd conditional。
I was scared what would have happened if I had been flying solo again. としてもOK。
I knewがなければ、
If I did もしくは If I had done, I would have stabbed you in the face.でオッケー
⑧ 仮定法の伝播
⑨ even ifのevenが省略された仮定法
ifが文頭にあってもevenが省略されることはある!!!!