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これは危険がアブナイ?(12)

 今回は、「エレベーターリニューアル工事」の基礎知識をまとめてお話したいと思います。

前回のブログはこちら・・・
  これは危険がアブナイ?(1)
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「エレベーターリニューアル」基礎知識

 エレベーターは、きちんとメンテナンスをしていても・・・経年や利用回数が増えることによって、製品の劣化が進み性能も低下します。
 2重3重の安全装置が付いているので、カゴ落下事故の発生リスクは(ほぼ)無いと思いますが・・・劣化が進むことで(特に電気制御系の不具合が生じて)扉が開かなくなったり、建物と(エレベーターの)カゴの床に段差ができた状態で停止し扉が開く等、人身事故が発生するリスクが高まる可能性もあります。

 また、メンテナンスに必要な交換部品も・・・だんだんと製造中止(=築30年前後の頃にメーカーからアナウンスが届くパターンが多いかも?)になっていきます。
 どのメーカーからも「エレベーターも他の建物設備と同様に利用者の安全と安心のため、適切な時期でのリニューアルをお勧めします」のようなアナウンスを出されています。

 とあるエレベーターメーカーのホームページを確認すると・・・「リニューアルは20~25年毎に」と書いてありました。
 また国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」の「長期修繕計画標準様式」を確認すると・・・エレベーターの修繕周期は「補修15年、取替30年」となっていました。(たぶん・・・フルメンテナンス契約をしている場合は「補修15年」は不要)

 中には、築40年を超えてもエレベーター未更新のマンションもありますが、私の肌感覚的には、築30年を超えたらボチボチリニューアルのことも視野に入れ・・・築40年くらいまでにはリニューアル実施みたいなイメージがあります。

3つのリニューアルパターン

 主に「全撤去リニューアル」「準撤去リニューアル」「制御リニューアル」の3種類があります。
 「株式会社 日立ビルシステム」さんの「エレベーター:リニューアル」というホームページに詳しい記述がありますが・・・今回は、その説明をしたいと思います。

 なお、これ以外にも既設の巻上機はそのまま使用し、モーターと制御装置や操作盤等だけを更新する方法もあるようです。
 でも・・・この方法は、「リニューアル」と言うより大掛かりな「メンテナンス」という感じなので、今回は省きます。

 当たり前ですが・・・予算的には「全撤去リニューアル」➡「準撤去リニューアル」➡「制御リニューアル」の順に安価になります。(「巻上機モーター&制御装置だけリニューアル」はもっと安価になるでしょう)

①「全撤去リニューアル」

 コンクリートと一体化しているエレベーター扉枠も敷居も全部取り外して新しくするリニューアル工事です。
 この方法で工事を行なう場合は、事前に各行政庁等の「建築確認」(=工事着手前の審査)を受けて許可をもらわなければなりません。

 また「建築確認」を受けるということは・・・「エレベーターについての現行法規をクリアしなければならない」ということですので、エレベーターの「既存不適格」状態が解消されます。(下記2009年と2014年の改正に適合させる必要がある)

「既存不適格」とは?
 あなたの建物は、当時の法令等で合法的に建てられましたが、その後の法令改正等に合致しなくなりました。「既存不適格」です。
 でも直ぐに「適合させろ!」と言っても無理ですし、当時の法令は遵守されてますから「不法」ではないです。でも「適格」になるよう努力してください・・・といった状態の建物や設備を言います。

エレベーターに関する最近の主な改正内容について
 【2009年(平成21年)9月28日改正】
   ・戸開走行保護装置の設置義務付け(ブレーキの二重化)
   ・地震時管制運転装置の設置義務付け
   ・駆動装置の耐震対策強化

 【2014年(平成26年)4月1日改正】

   ・釣合おもりの脱落防止構造の強化
   ・地震等に対する構造計算の規定追加

 耐震補強が必要になると・・・エレベーターシャフトスペースが狭くなり、カゴが小さくなる(=乗員数が減少する)場合もあるかもしれませんね。

 また「全撤去リニューアル」は、扉の三方枠や敷居を撤去するため、躯体のコンクリートを斫(はつ)る(=壊す)工事が含まれます。
 斫り工事は、音や振動がもの凄く・・・住みながら工事を行なう必要があるマンションには向きません。(工事期間も4週間以上必要)

 予算は・・・耐震設計&工事も必要になるかもしれないので一概に言えませんが、(「(耐震)強度計算書」を含む「建築確認」を提出しなければならないことも考え合わせると)最低でも1500万円以上は必要になるのでは?と思います。

②「準撤去リニューアル」


 エレベーターの扉枠や敷居は再利用しますが、(カゴや扉本体を含め)その他は新しくするリニューアル工事です。エレベーターメーカーから出される提案は、殆どが「準撤去リニューアル」だと思います。

 「建築確認」は不要な場合が多いです。
 コンクリートの斫(はつ)り工事も、原則的にありません。

 ただし上記の「2014年改正」には対応できないので、いわゆる「既存不適格」は解消しません。(「2009年改正」は適合可能なケースが多い)

 工期は、マンションの状況にも因りますが・・・最低2週間は必要なのでは?と思います。(予算は1000万円以上必要かな?)

③「制御リニューアル」

 エレベーターの制御関連機器(制御盤、電動機等)を中心に機器を入れ替えて、制御方式を更新するリニューアル方式です。
 巻上機(ロープ等も含む)は、リニューアルされますが、扉三方枠や敷居だけでなく・・・カゴや扉本体も既存のまま(内装を化粧する等して)使用します。「建築確認」は、不要です。

 なお、国内主要エレベーターメーカー5社の中で「制御リニューアル」をメニューに加えているのは、「日立」と「FUJITEC」だけです。(「三菱」「東芝」「OTIS(≒Panasonic)」は非対応)
 ということで・・・(エレベーターメーカー以外の)独立系メンテナンス会社等からのリニューアル提案は、この「制御リニューアル」が最も多いと思います。(それ以外は「巻上機モーター&制御装置だけリニューアル」提案かな?)

 また、「制御リニューアル」であっても「車椅子仕様」「地震時管制運転装置」「停電時自動着床装置」「遠隔監視装置」等をつけることも可能です。
 「準撤去リニューアル」同様、「2014年改正」には対応できないので・・・「既存不適格」は解消しませんが、「2009年改正」には適合可能な場合(提案)も結構多いと思います。

 なお「制御リニューアル」工事は、エレベーター機械室を中心に行われるので、工事が行われる部分(範囲)が限定的です。また建築工事もほとんど不要なので・・・(3つの中で)工事期間をもっとも短くできます。
 各社のホームページを見ると・・・「工期は最短3日!」と謳っている独立系のメーカーもありましたが、工期は1週間以内くらいかな?と思います。

 そして予算は・・・「準撤去リニューアル」の半分くらい(500万円~)から実施可能なのでは?と思います。

 今回は、これまで!
 次回は、予算だけではなく・・・3つ紹介した「リニューアルパターン」の中から、自分たちにフィットした「リニューアルパターン」を選ぶためのヒントをお話したいと思います。  (つづく


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