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民法改正「共有」のお話(5)

 本シリーズは、管理を行なうための「共有者間の合意形成」について・・・2023年4月1日に施行される「改正民法」が使えるかも?というお話をしたいと考えています。
 前回は、その前に「現行民法」では(それが)難しいことをお話しました。
 今回は、区部所有されているマンションの場合を見ていきたいと思います。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   民法改正「共有」のお話(2)
   民法改正「共有」のお話(3)
   「
民法改正「共有」のお話(4)

分譲マンションの保守管理は?

 分譲マンションの管理は、「建物の区分所有等に関する法律(以下『区分所有法』と記します)」という法律(特別法)により法整備されています。
 「区分所有法」によると・・・分譲マンションが成立(2以上の区分所有者+1以上の住戸)すると自動的に(強制的に)管理組合が結成(設立)されます。

 そして・・・様々な(保守管理等の)決め事は、「区分所有法」に定められた作法に基づく「集会」を開催(開催要件:管理者または1/5以上の区分所有者が議案内容を明示し、原則開催の1週間以上前に招集・・・標準管理規約の「総会」は原則2週間前)し・・・原則、区分所有者の過半数(標準管理規約では原則・・・半数以上出席で「総会」成立&出席者の過半数で決議)できます。

 当たり前の話ですが、集会(総会)決議されれば・・・決議に反対した(または参加しなかった)区分所有者も決議事項に従わなければなりません。

 この法律(区分所有法)が施行された背景には・・・前回お話したとおり「(現行)民法」に準拠しマンション管理するとなると、全員合意(=保留や賛否不明も実質的に反対票にカウント)が無いと前に進まなくなる危機感があると思います。

マンションの建替えも

 私がマンション管理に関わるようになる前後に・・・日本では幾つかの大きな地震を経験しました。
 主には・・・①阪神淡路大震災(1995年)、②東日本大震災(2011年)、③熊本地震(2016年)、④北海道胆振東部地震(2018年)、⑤大阪府北部地震(2018年)等々が発生しました。
 特に①・②・③の地震では、全壊した(=住めなくなった)マンションもたくさん見受けられました。

 分譲マンションが成立する要件は? ➡ ①+②で成立します!
  ① その建物に1以上の住戸があること
  ② 複数の専有部分(例:店舗・テナント・住戸等)があること

 マンションの修繕も建て替えも・・・「民法」ならば間違いなく「全員賛成」が必要です。
 しかしながら震災で行方不明(=連絡が取れない)になったりお亡くなりになった方がたくさんおられた中で、全員賛成なんて絶対に不可能です。

 この時は(区分所有者数 AND 持ち分の)3/4で修繕が・・・または4/5の賛成で建て替えが可能な「区分所有法」があったお陰で、再建できたマンションもたくさんあります。 学者の中には「自分の所有物なのに(大多数の)他人による意思で権利が侵害されるので・・・区分所有権は所有権とは言えない」とおっしゃる方もおられたようです。

 ミクロの視点では確かに一理ありますが・・・社会的な大きなインフラ(社会的資産)として存在するがマンションです。マクロの視点からも考える必要があると思います。
 つまり、個人的には・・・「所有権」という権利が多少侵害されても壊れたマンションが再生するメリットの方が大きいと思うのです。(高名な「権利保護」と「社会的資産の維持・再生」のバランスが・・・3/4とか4/5ということ?)

 また、阪神淡路大震災後に「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」や「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」等が整備・施行されています。
 特に地震等に因る被災マンションは、(それまでに比べると)随分とスムーズに建替えに舵を切る(=合意形成ができる)ことができるようになりました。

 阪神淡路大震災の時は「マンションが全壊したら分譲マンションではなくなる(建物は無くなり敷地だけになる)ので『区分所有法』は適用されない!全員合意が必要!」とか、「区分所有者に招集通知すらできないので・・・建て替え手続きに必要な管理組合の説明会や総会(集会)が開けない」とか、色々大変だったことが教訓として生かされている訳です。

 また、近年問題化してきた耐震性能不足マンションや管理不全マンションの敷地売却も法整備が進んできました。

一方・・・分譲受駐車場設備は?

 本シリーズで話題にしている(共有者100名の
機械式駐車場設備(専有部分)を管理する場合または撤去する場合・・・
 当然に「区分所有法」も「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」も「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」も適用されず、「民法」が適用されます。
 これまで何度もお話しているとおり・・・「民法」という一般法に基づいて決め事をしなければなりません。(原則:全員合意)

 2023年4月1日の施行される「改正民法」でも・・・さすがに撤去するとなると「全員合意」が必要ですが・・・機械式駐車場設備をオーバーホールしたり、塗装したりする「管理」を行なう場合は「全員合意」なくてもOKになりそうな感じです。

 次回は、いよいよ「改正民法」の本題に入りたいと思います。  (つづく

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