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民法改正「共有」のお話(11)
(前回のブログで想定した)相続と共有が複雑に絡みあう以下のケース・・・
この絡んだ糸を解いて、皆ハッピーに「共有関係の解消」をするには、どうすれば良いのか?
現行民法でできることに加えて・・・このブログでは2023年4月1日施行の「改正民法」で、できることを考えていく予定です。
今回は・・・現行民法で、できることを話ます。
※ 相続と共有が絡みあうケース
① とある別荘を(友人同士の)AさんとBさんが共有している
② AさんとBさんの共有持ち分は、50:50
③ そんな中、Bさんが死亡した
④ Bさんの法定相続人はCさんとDさんの二人
⑤ Cさんは不要な(お荷物の)別荘を早く処分したい
⑥ でもDさんは行方不明・・・
⑦ Aさんは(別荘の)Bさんの共有持ち分を買い取りたい
本シリーズのブログはこちら・・・
「民法改正「共有」のお話(1)」
「民法改正「共有」のお話(2)」
「民法改正「共有」のお話(3)」
「民法改正「共有」のお話(4)」
「民法改正「共有」のお話(5)」
「民法改正「共有」のお話(6)」
「民法改正「共有」のお話(7)」
「民法改正「共有」のお話(8)」
「民法改正「共有」のお話(9)」
「民法改正「共有」のお話(10)」
まずは問題点の整理・・・
行方不明のDさんが現れない限り・・・(別荘の持ち分が確定していない)相続人のCさんは、Aさんに別荘の自分の持ち分すら買ってもらうことはできません。
もちろん・・・Cさん単独で、別荘をAさんに売り渡す「処分行為」(=CとDによる全員合意が必要)こともできません。
またAさんが別荘をきちんと管理したいと思っても、持ち分が過半を超えないので、合法的に管理行為ができません。
ということで・・・
たぶん、このままだったら別荘は塩漬け状態(負の資産化)に陥りそうです。
建物って貴金属とは違います。そのまま放置して時間が経つと劣化(経年劣化)が進行し始めます。
その劣化って、実は加速度的に(2次方程式的に?)進行するからやっかいです。(例:屋根が水漏れし始め・・・漏れた雨水で屋内がメチャクチャになる等)
このままでは・・・この別荘に関し、誰も幸せになれませんね。
現行民法での対処法
こうした問題を解決するために現行の民法下では、「不在者財産管理人制度」と「失踪宣告」といった方法が存在します。
①不在者財産管理人制度
家庭裁判所に申立てをして・・・不在者の財産を管理する人(「不在者財産管理人」と呼びます)を選任してもらい、その不在者財産管理人に不在者の財産を管理してもらう制度のことを言います。
相続人が行方不明で遺産分割協議できない時でも、「不在者財産管理人」を選任すれば代わりに遺産分割協議に参加してもらって相続手続きを進められる・・・という訳です。
不在者財産管理人になれる人
① 不在者の親族や友人
② 弁護士や司法書士などの専門家
※ ただし不在者の相続に利害関係が無い第三者であること
※ 申立て時の書類に不在者財産管理人の候補者の記入欄あり
※ 不在者財産管理人の選任は家庭裁判所が行います
不在者財産管理人制度の問題点
それは・・・予想以上に時間とコストがかかる!ということです。
行方不明のDさんのせいで相続や共有解消の協議が整わないからと(AさんかCさんが、または合同で)「不在者財産管理人」の申し立てを行なったとします。
そうやって選任された「不在者財産管理人」は、問題の別荘に関することだけでなく、Dが所有する全ての財産(負債も含む)を管理することになります。
制度の性質上、それは仕方ない(そりゃそうなる)なあ・・・と思います。でも申立人側は、別荘のことで困って申立てしているのだから、(Dの)他の財産の管理は不要なことに感じることでしょう。
こうした事情によって・・・「不在者財産管理人」が登場しても協議がナカナカ前に進まなくなることが多いようです。
また「不在者財産管理人」の業務が終了するのは、以下の3パターンがあります。(いずれにしても期間は長くなりそう・・・)
① 不在者が現れたとき
② 不在者の死亡が確認されたとき
③ 不在者について失踪宣言がされたとき
つまり一度「不在者財産管理人」が選任されると・・・上記の3つに該当する事案が起きない限り、原則的に「不在者財産管理人」は解任されません。そして就任期間中は・・・実費(経費)だけでなく「不在者財産管理人」に対する報酬が毎月発生します。
不在者財産管理人の経費
いろいろ調べると・・・
① 報酬の相場は月額2~6万円くらい
② 申し立て時に20万円以上の予納金納付を求められることも
・・・と書いてありました。
「不在者財産管理人」の就任期間を考えると・・・支払う経費(=報酬+実費)は、大きくなりそうですね。
もっとも経費は、最終的に不在者の財産から支出(清算)されることになりますので、申立人の腹は痛まないかもしれません・・・
ただ・・・後になって本人が現れたり連絡が取れたりした時は、不在者だった人と「不在者財産管理人」の申し立てを行なった人の間でトラブルになる可能性が否めないのでは?と思います。(もっと泥沼な争いに発展?)
「不在者財産管理人」の不動産処分
また「不在者財産管理人」は不在者本人ではないので、職権で不動産を処分することはできません。裁判所の許可が必要です。
裁判所の許可は「今すぐ処分しないと不在者の不利益になる!」と認められる場合等に限定されると思いますが、それってどんなケースなんだろうか?・・・いずれにしても許可が下りるのは希ではないかな?と思います。
「不在者財産管理人」まとめ
こうやっていろいろ調べて感じたことは・・・
他に方法が無ければワラをも掴む思いで!となるけれど・・・
正直なところ・・・この制度は経費がたくさんかかりそうな割に、あまり使い勝手は良さげに思えない・・・と言うことでした。
次回は、「失踪宣言」を取り上げます。 (つづく)