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民法改正「共有」のお話(8)

 共有者が居られる分譲されたAマンションの「機械式駐車場設備」は、登記上・・・共有者100名の専有部分
 でも「管理」を行なうための「共有者間の合意形成」が事実上不可能・・・なので、30年以上の放置プレイ?

 でも、もしかすると2023年4月1日に施行される「改正民法」が使えるかも?ということで・・・前回から引き続き「共有の管理」に関する「改正民法」のお話です。
 今回は、その続き「義務」の明文化についてです。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   民法改正「共有」のお話(2)
   民法改正「共有」のお話(3)
   「
民法改正「共有」のお話(4)
   民法改正「共有」のお話(5)
   民法改正「共有」のお話(6)
   民法改正「共有」のお話(7)

前回の振り返り・・・

 お話は以下のとおりでした。

(前回のPOINTまとめ)
 共有物の「管理」を行なう場合に・・・現行民法では、その行為が「管理行為(=共有者の持ち分の過半の同意で実施可能)」なのか?「変更行為(=実施には共有者全員の同意が必要)」なのか?その判断は、極めて微妙・・・
 となると、安全側を見て「全員の同意」で管理せざるを得なくなり・・・全員から同意を取るのが困難な場合(例:Aマンションの「分譲機械式駐車場設備」)・・・管理が塩漬け状態になってしまう。
 こうした事態を改善するため・・・2023年4月1日から施行の「改正民法」では、具体的に「軽微変更」、「占有者の変更」、「管理者の選任」、「短期使用権の設定」は、持分過半数で実施できると明確化された!
 これは画期的な改正で・・・Aマンションの「分譲機械式駐車場設備」の管理が塩漬け状態から脱却できるかもしれない!

「義務」の明確化

 前回のお話に加えて、「共有者」が適切に「共有物」の運用(利害調整)を行なえるよう・・・共有物を使用する共有者には「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」および「対価の償還義務」を負う旨のルールが追加(明文化)されます。
 これも・・・現場的には有効だと思います!

「善管注意義務」とは?
 使用する共有者の能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。これを怠ると過失に問われることもあります。
例えば・・・車重が1500kg以下の車しか駐車できない機械式駐車場に車重2000㎏の車を駐車し続けて、駐車パレットが変形したら、または駆動用のモーターが故障したら、過失責任を問われる・・・みたいな感じ?

「対価の償還義務」とは?
 共有物を使用する共有者は、他の共有者に対して自分が所有する持分を超えて使用した場合・・・それに代わるもの(対価)を償還する(償い還す・返済する)義務を負うということです。(共有者の間で他の合意がある場合は、その合意の方が優先)
 例えば・・・1パレットが割り当てられている機械式駐車場設備の共有者が2パレット使う場合は、その対価(使用料)を支払う義務がある・・・みたいな感じ?(共有の概念は、持ち分に応じた部分的な分割使用ではなく、全部を持ち分に応じて時間等でシェアして使う・・・みたいなイメージなので、ちょっと違うかなあ・・・)

 実は、「善管注意義務」も「対価の償還義務」も・・・現行の民法でも暗黙的?になっている原則的なルールです。でも「管理」と同様に解釈によって見解が分かれる印象がありました。
 「改正民法」で、そこも明確化されたのは歓迎すべきでは?と思います。

 一般的に所有物が他人に被害を与えた場合は・・・「工作物責任」が問われます。

工作物責任とは?
 例えば、建物の外壁が剥がれ落ちたり看板が落下し人身事故や物損事故が発生し、その建物などの「工作物」に何らかの問題や欠陥があった場合・・・その被害者に対して、所有者に損害賠償責任(共有の場合は連帯責任)が生じる、という意味のことです。

 共有物が「工作物責任」に問われた場合・・・共有者全員に対して連帯保証(「不真正連帯責任」と言うらしい・・・)が問われます。
 しかしながら今回の「改正民法」に「善管注意義務」と明言化されたことで、その使用者に(=単独に)「善管注意義務」を問うこともできし、明文化されたことで「きちんと管理しなければペナルティに問われる」ということが明確になったのでは?と思います。(個人の見解で、確認はしてませんが・・・)
 (共有物であっても)所有物には・・・適正な管理が求められるからです。

 ちなみに・・・不動産である(簡単には取り壊せない)建物には、それが建築基準法により義務化されています。
 「改正民法」に「善管注意義務」と明文化されることで、機械式駐車場設備のような設備にも・・・(以下の)建築基準法の考え方が準用されるのでは?と思います。(これも個人の見解で、確認はしてません・・・(笑))

建築基準法第8条第1項(維持保全)
 築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

・・・建物の所有者・管理者は規模の大小に関わらず、自らの責任において、状況に応じた補修、改修をして安全で良好な状態の維持に努める責任がある!と言うことです。

 次回は「改正民法」で・・・共有関係の円滑な解消を実現するための改正が行われることについてお話します。

 共有関係の解消って・・・「相続」等も絡むこともあって・・・実にややこしいのですが、次回もお付き合いください。  (つづく


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