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「お前が言うな」って言葉が大嫌い

しばしばネットで使われる「お前が言うな」っていう言葉。
これがあまり好きじゃないんですよね。
なんで好きじゃないのかを文章にして説明してみたいと思います。

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「お前が言うな」っていう言葉は、特定のものごとについての意見表明について「資格がある」ことを前提にしています。
そして、その「資格がある」かどうかは、その人が過去にどういう行動をしてきたか、その人がどういう立場にあるかに左右されます。

「お前が言うな」の思考パターンを2つにわけて説明してみます。

■パターン1 意見の表明者の過去が問題にされる
意見の表明者が清く正しく行動していればその人には意見をいう資格がある。
意見の表明者が(意見に関連する内容について)過去に批判される行動をしていれば「お前が言うな」って言われがちである。

過去に交通事故を一度でも起こせば、5年後に交通ルールについて語ったとき「お前が言うな」と言われる。過去に一度でも不倫をしていれば、10年後に夫婦の在り方について語ったとき「お前が言うな」と言われる。

■パターン2 意見の表明者の立場が問題とされる
意見の表明者がその意見についてよくわかる立場なら、その人には意見を言う資格がある。意見の表明者がその意見についてよくわからない立場なら、その人には意見を言う資格がない。

例えば、未婚者が結婚生活について語ること。子どものいない人が育児について語ること。
「結婚してないのに結婚のなにがわかるんだ」
「子どもいないのに偉そうに言うんじゃねぇよ」

女性が男性の仕事について語ること。あるいはその逆。
「お前に俺の仕事の何がわかるんだ」
「あなたに私の仕事の何がわかるのよ」

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このような文脈で語られることのある「お前が言うな」というセリフについて「好きじゃない」って思うのは、つぎのような理由からです。

1  社会問題や個人の問題について「解決策」を発見するために大切なのは「意見の内容」であって、それを誰が言ったかはあんまり重要じゃないと思うから。

2 意見について資格が求められるなら、多くの人が意見を言いにくい社会になってしまうから。ものごとについて本当にわかっている立場じゃないと意見を表明できないとか、過去に失敗した人は同じことについて意見を表明できないなんて、どう考えたっておかしい。それを突き進めれば,意見の内容について本当にわかる立場にいる聖人君子でないと意見表明ができなくなる。

3 せっかく表明された意見についてそれを意見として受け止めずに意見表明した相手の人格をあげつらう点でとっても幼稚なセリフだと思うから。

誰かが意見を言ったとき、その意見が適切なのかそうじゃないのかは吟味すればいい。意見の内容についてはピントのずれたこともあるかもしれない。その場合は「それは違うんだよ」と説明すればいい。そういう意見交換がお互いの理解を深めるから。

けれど、意見の表明自体を封じ込める「お前が言うな」というセリフを言ってしまったら、そこに進歩はない。意見の表明者を傷つけるだけ。意見が出にくい社会が作られるだけ。その人の人格や立場や行動によって「議論のスタートラインにさえ立たせない」なんておかしいと思うのですよね。

だから、わたしは、「お前が言うな」って言葉が嫌いです。

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【お知らせ】
noteのネームを「考える猫」から「かんねこ」に変更しました。
今後もよろしくお願いします╰(*´︶`*)╯

#コラム #コミュニケーション #成熟した社会 #スタートライン #エッセイ


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かんねこ(弁護士、社会福祉士)
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