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コロナ禍でのアメリカ旅行


Taishoken Sanfrancisco 店内


2022年9月、3年ぶりでアメリカを訪れた。
コロナ禍だったが、なんとしても行きたい気持ちがあった。
というのもサンフランシスコ市のミッション地区で大勝軒の新店が開業予定になっていたのである。
旅の日程は春先に計画していた。
それでもはたして渡航できるのか、直前までは不確定で落ちつかない日々だった。
渡航できなければ航空券、ホテルなどの予約チケットが全て無効になってしまう。
もしアメリカでコロナ陽性になってしまったら帰国困難になる可能性もあるなど、不安の種は尽きなかったのである。
それでも嬉しいことに夏も終わりに近づく頃、感染者数は激減し渡航可能となった。
またアメリカ滞在期間中に済ませなければならない帰国時の現地陰性証明書の提出が廃止になり、予定した現地での検査をキャンセルして丸1日の自由時間を得るという思いがけないご褒美があった。




Taishoken Sanfrancisco 外観



成田からロサンゼルス行きでサンフランシスコに移動、その後またロサンゼルスに戻り日本へ帰国という2週間ほどの日程にした。
ロスから国内線利用で乗り継いでサンフランシスコへ行く方が、往復の旅費を安く抑えることができる。
利用したzipairは日本航空系列の格安航空会社で、乗客が必要とする食事、飲み物等を必要に応じてオプションで提供するシステムになっている。
従来の機内サービスとは全く異なり、注文は端末から申し込んで現金を使わず乗務員との会話もなくサービスが座席に届く仕組みだ。
食事はいたってシンプルでメニューも色々あり、価格も比較的リーズナブルになっている。
お決まりの映画などのエンターテイメントは座席では利用できず、各自の端末を持参して楽しむことになっている。
机の上のパソコンで航空券、ホテル、その他のチケットをすべて予約、決済することができる便利な世の中である。
予約したアメリカ国内線の時間を変更してキャンセル料を払ってしまったり、カリフォルニアディズニーランドのチケットの券種を間違え、ゲートで足止めされてしまったことなど、多少の失敗もあったが無事楽しんで旅を終えることができた。

ロサンゼルス経由にしたのは他にも理由があった。
それはMLBの大谷翔平選手の在籍するエンゼルスの試合観戦である。
ロサンゼルス国際空港からウーバーでアナハイムへ直行し、初日にヤンキース対エンゼルスの3連戦を観戦した。
ホテル到着後試合開始まで時間があり、近くのマーケットで買い物をした後ウーバーで10分ほどのエンゼルスタジアムへ向かう。
試合前のスタジアム周辺ではヤンキースのユニフォームを着たファンがあちこちで目立ち始めた。
気のせいか地元のエンゼルスのユニフォームを着たファンが少なく感じる。
広い駐車場を通り抜けていくと、突如として球場の外観と大きなヘルメットの形をしたファサードが見える。
ゲートでは既に長い行列ができていて、大きく飾られたチーム主力メンバーのタペストリーに圧倒されると、この地に来た実感が湧いて気持ちも高揚してくる。

今回は一塁側の席を確保した。
というのもダグアウトでエンゼルスの選手たちの試合中の様子を見たかったのである。
しかし予想はしていたが、スタンドではほとんどのヤンキースファンで周りを囲まれることになった。
今年のアメリカンリーグMVPを獲得したアーロンジャッジが打席に立つと、観客は総立ちしてMVPコールをした。
さすがに全米にコアなファンを持つ人気球団ならではの光景だった。
今回の3連戦で、これほどの客入りはエンゼルスタジアムでは近年になかったのではないだろうか。
この日の試合で大谷は二安打とホームランこそ打たなかったが、両チーム2人のスーパースターが大活躍して旅の記憶に残ることになった。



エンゼルスタジアム





 MLB観戦の翌日は、早朝にホテルから徒歩圏内のカリフォルニアディズニーランドへ向かった。
孫のいる年齢になっても夢と魔法の国は、私たちを童心に帰らせてくれる。
48年前、初めて訪れたこの地は憧れの異空間だった。
そのころは東京ディズニーランドは未だ開園しておらず、園内で夜遅くまで楽しむシニアのカップル達は当時20歳の私には刺激的で、日本には全くない風景だったのを覚えている。
今回の訪問では、無くなったアトラクションもある反面スターウォーズ関連のアトラクションやレストラン、そして隣接のカリフォルニアアドベンチャーランドも新設されていた。
この日のカリフォルニアは記録的な暑さのインディアンサマーだったが、東京の盛夏の暑さと比べれば許容範囲ではあった。
暑さに慣れているといってもさすがに高齢者なので体力と時差ぼけも考慮して、はめを外さないように早々と日没前にはホテルに引き返した。

今回のロサンゼルス滞在は短期間で、美術館やハリウッドなど行きたい観光地は多数あったが、治安が悪いことを心配しアナハイムで止まることにした。
個人旅行なので、あまりあちこちウロウロ行動するなと長男から釘を刺されていたのである。
アメリカ生活の長い長男はこれまでにも苦い経験をしていて、この国は個人が自由である反面さまざまな問題を抱えていて、その怖さをよく知っている。
旅をすればその楽しみを奪ってしまう事故、事件に巻き込まれる可能性はいつもあり、何処へ行っても危険はつきものだという気構えは必要だろう。

雨の降らないカリフォルニアの青い空、広い大地とどこまでも続くハイウェイ、そして多民族で個性豊かな人々。
60年代によく観たテレビのホームドラマやハリウッド映画、音楽に影響されてこの国が好きになった。
コロナ禍前の2019年にアメリカ旅行から日本に帰国した時、暗鬱な風景が印象に残った。
梅雨の季節でもあったせいか駅のホームで観る通勤の多くの人々は、ことのほか肩を落としていた風情だった。

長男家族はサンフランシスコ国際空港から車で10分ほどの住宅地に住んでいる。
3年前の訪問時は私一人で長期間だったのでこの近辺で民泊をしたが、今回の渡航は妻も一緒ということもありホテルを選択した。
私はかつてシリコンバレーの名称もない時代にこの地でホームステイを経験しているので、民泊はまったく気にならない。
むしろ宿のオーナーと知り合いになる機会のあるairbnb等の民泊が希望だった。
しかし民泊は一人だと選択肢が多いが、二人で短期滞在なるとベッド数やらバス、キッチンのシェアなど制約もあったり価格が3年前と比べて割高になっていた。
近年の周辺の家賃高騰が原因しているのだろうか、周辺ホテルと価格的にはそれほど変わらなかった。

シリコンバレーでは近年、企業が優秀なエンジニアを獲得する競争が激しく、これが原因で人件費の高騰を呼び、つられて住居費が値上がりしている。
ある人の話によるとサンフランシスコ市内は、観光客もまばらとなったホームレス居住地域があるらしい。
これもコロナの影響なのだろう。
今回の滞在で街の中を隈なく見たわけではないので、一概に詳細な事は言えないが、かつての住人が郊外へと移動しホームレスが増えるという現象が起きているそうである。
私たちは土曜日のファーマーズマーケットが開催されるフェリービルディングを訪れたが、この日は地域住民と観光客が入り混じり物価高を除いて以前とは変わらない気がした。
ITに関連したビッグテックなど少数の企業人が莫大な富を手に入れ、中間層は住みにくくなった街を離れホームレスが徘徊する。
過去に観たことのあるSF映画のような未来が既に起きている。


Tokusei Tsukemen




今回のアメリカの旅は外食、日用品、ウーバーなどの交通費が物価高と円安で私達日本人旅行者には厳しい環境だった。
最近はインバウンドが戻って日本の繁華街、観光地で多くの外国人を見かける。
国内の物価高がニュースになっているけれども、我が国は宿泊や飲食の出費も比較的少なくて済むので滞在しやすいかもしれない。
アメリカでは日本と比較すると平均年収にも大きく差をつけているが、店で食事する場合チップ、税を含めて3倍程度の費用がかかる。
以前から計算して支払うのもなんと煩わしいものかと思っていたチップだが、この時代にこれがグローバルスタンダードなのかと思えてきた。
レストランは給仕を調理と切り離してサービス料で捉え、これをメニュー価格に転嫁すべきなのかもしれない。

消費者にとって安くて美味しい食事ができればそれにこしたことはない。
我が国ではお茶の間のテレビで何処何処の店のメニューがボリュームタップリでお値打ちですとか、お決まりの放映をしている。
飲食店はパパママストアの心意気が庶民を支えていて、サービスは心づけなのだという意識が暗黙の了解としてあるのだろう。
心あるおもてなしは無料ではなく、その対価としての金額がどの店にもあってもいいと思うが、それをできない日本独自の慣習がある。
中小の個人飲食店は減少傾向となって、安価なチェーンの飲食店とそれなりのサービスを備えた高級店に二極化していくのだろうか。
栄枯盛衰は世の習いかもしれないが、今まで継続してきた老舗の有名店がある日突然店じまいしてしまうのは寂しく、日本文化の損失かもしれない。


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