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9月7日

昨日は珍しく熱帯夜だった。エアコンはないので扇風機2台を今朝もつけたまま。Noteを始めてからもうすぐ2ヶ月。始める前からいつか書きたいと思っていた日本での出来事。伝えたいことが頭でまとまらずうまく書けないけどやはり書いておこうと思う。

世の中、全てを変えてしまったウィルス。でも一番恐ろしいのは人間だねと誰かが呟いていた。今でも懸命にお仕事されている医療従事者への心ない差別や、神経をすり減らして暮らしていたのに感染してしまった人への暴言。もちろん中には、どうしてこんなときにと思う様な行動をとっている人のニュースも見るが。言葉は時々人を傷つける。鋭いナイフよりも深く。言った方はそんなつもりはなくても発した言葉によっては一生爪痕を残すこともある。

5、6年ほど前に私は一人で羽田空港に到着していつものコースで京急に乗って品川を目指していた。普段から仕事がオフの時はカジュアルな服装が好き。旅の時は特にカジュアル。10時間以上のフライトの後の移動も考えて動きやすいスニーカー、カーゴパンツと水色のシャツを着ていた。品川からまた移動するので頭の中で色々考えている時に車両の向こう側に立っている小学生くらいのお兄ちゃんと妹とそのお母さんと目があった。目があったというか久々にフレンドリーではない視線を感じた。新幹線の時間を調べようとスマホをいじっているとその妹らしき子の声がはっきり聞こえた。

「あの人、絶対レズビアンだよ」

私は顔を上げてその女の子を見た。意地悪な目で私を指差している。違いますけど私のことですかと思いつつそのお母さんと目があった途端お母さんはくるりと私に背を向けた。電車に乗ってるだけなんだけど。私何かしたかしら?カーゴパンツとこのブルーのシャツを見てそう思ったのか。長いフライトでろくにお化粧もしていないからそう思ったのか。グルグル考えているとその親子は私の頭に波紋だけ投げかけて違う車両へ次の駅で移って行った。

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私が長年暮らして、仕事をしていたサンフランシスコには大きなLGBTQコミュニティがある。今年は中止だったが毎年、6月最後の週末にはパレードなど色々な行事があり世界中から観光客が来ていた。パレードはLGBTQでなくても会社や団体みんなで参加するお祭りだ。

私の友達にも周りにも普通に自分はゲイ、トランスジェンダー、レズビアンという人はたくさんいた。会社で働いていた時に尊敬していたハリウッドスターの様なボスは赴任早々、麗しいボスがやってきた!と目がハートマークだったおばさま社員達からの『結婚は?ガールフレンドは?』の質問に対して『僕には一生を誓った素敵なパートナーがいます。今度ここにも連れて来ます。』とハンサムなパートナーの写真を見せて一瞬でシャットダウンした。厳しい上司だったけど彼自身オープンな方で18歳でご両親にカミングアウトした時の話など後で聞かせてくれた。

一緒に働いていた管理職のおばさま社員には何かの拍子に『あれ?私の旦那、以前は女性だったことあなたにまだ言ってなかった?』その旦那様は当時警察官で私はちょっと身の周りで起きた困ったことを相談していたからお会いしたこともある。性転換手術をしようという時に知り合い、随分前に結婚もされている。娘が小さい頃には、プリスクールでお父さんが二人というお友達もいた。カリフォルニアは特にオープンというのもあるがここでは誰かが誰かを見て「あの人、レズビアンだよ」とか「あの人はゲイ」などどは言わない。州によって差はある様だが会社では毎年、セクシャルハラスメントのトレーニングを受けるのは規則だしその内容も随分前から男性、女性間だけではなく同性同士でもハラスメントは起こりうるので言動や行動によって誰かを非難したり傷つけてはいけないからだ。とは言うもののもちろんアメリカでも差別はなくなっていない。特に人種差別は根深い問題だと思う。

その時、もし私の娘が隣にいたら「うちのママに今なんて言った?」などとその親子に噛みついていたかもしれない。それは、私がレズビアンと間違われたことに対してではなく人を見た目でレッテルを貼り、さらに見下した様な言い方が許せないからだ。もちろんその女の子にそこまで悪気があったかどうかはわからない。今頃、高校生か大学生くらいの年齢。私は起きたことにショックだったけど別に傷ついてはいない。それよりもあの女の子が今でもああやって誰かを指さしたり、本当の気持ちを言えない身近な人を傷つけていないといいなあと思う。





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