11月8日
何年か前の京都の朝。子供の頃は月に一回は日曜日に母が京都のデパートに連れて行ってくれるのが楽しみだった。京都は何度訪れても美しいし、まだまだ行ったことのない場所がある。またゆっくり訪れてあの美味しいあんかけのおそばを食べたい。
夫の名前はちょっと珍しい名前で夫は自分の名前が好きではない。長い名前なので家族からはニックネームで呼ばれているが私はぺんちゃんと読んでいる。その辺は私がRとLの発音が苦手だったり色々な理由なのだがきこぺんのぺんはこのぺんちゃんから来ているはず。多分(笑)
夫ぺんちゃんと京都駅の新幹線側のタクシー乗り場にいた。平日の午前中だったがでほとんど人がいなかった。駅の管理職風のおじさまとスーツ姿の男性4人が何やら打ち合わせをしているのが見えた。スーツ姿の男性の耳にはくるくるとしたコードがついている。夫の中で日本人の俳優さんの『カッコいいガイ』グループがあって岡田准一くんもその一人なのだがSPというドラマを随分前に観た。その耳からくるくるコードの出ている男性はまさにSPだった。私はきっと誰か有名な人が来るのではと思い夫に「ぺんちゃん SP SPだよ」夫はくるっと背中を向けて聞こえないのか私はさらに大声で「ぺんちゃん!SPだってば」その瞬間駅の改札口から一人の女性が出てきた。東京都知事の方だ。きれいなスーツ姿。テレビで見るよりと言っては失礼だがお見かけした時すでに60代。色々お手入れなさってるんだろうなあと思った。私はミーハーおばさんなので近づいてご挨拶しようと乗り込まれた車のそばに行こうとしたが秘書のような女性と一緒に乗られた車は早々と走り去った。
「ぺんちゃん東京都知事さんだよ。」とはしゃいでいる私が夫に近づくとなんだか怒っている。「君が大声でSP SPと騒ぐからSPは君を不審者と認識して4人全員が君の動きを見ていたんだよ。外国人の僕まで近寄ったら間違いなく怪しまれて捕まっていたかもしれない。」と呆れた顔で言われた。確かにお車が去った後はSPの4人はどこかに消えて行ったが私の行動はSPも冷やっとしたのかもしれない。そもそも護衛のために来ていたのだから。
京都ぺんちゃんSP事件後の日本旅行ではいつも利用するはとバスでの東京観光の日にちょうどペンス副大統領も来日中だった。なぜわかったかというと道路規制があってバスがいつものルートを走れないとあらかじめ聞いていたからだ。浅草寺でもバスがいつもの駐車場に止められないので違う場所から乗るように言われた。そしてまたあの耳からくるくるコードの今回はアメリカ人の背の高いスーツ姿のおじさん達が大勢で突然浅草寺境内に現れた。映画みたい!興奮した私が夫に何か言おうとした瞬間、夫が真面目な顔で「しーっ」と指を口に当てている。緊迫している中「ぺんちゃん! シークレットサービス」なんてまた私が騒ぐのがわかっているから。