10月5日
フットボールの試合中にテレビに映ったサンフランシスコの夜景。高層ビルが増えてしまったけどやっぱり美しい。
残念なことは本当にここ4、5年で街の中が変わってしまった。去年、大きな会社がコンベンションはもうサンフランシスコでやりませんと発表したくらいだ。それまでは、もちろん危ないエリアというのは昔からあったが今ではどこにいてもちょっと気を張っていなければいけないという状況。5年以上は前のことだがある日の午前中、私は仕事が休みで夫は仕事に出かけた。ちょっと買い物にと思い部屋のドアを開けると大きな男性が倒れていてその周りになぜかキャンディやチョコレートが散らばっていた。
「ひえっ」
倒れていてもわかるほどの大男だったが男性は私がドアを開けて出て来ても身動きしない。恐る恐る覗き込むと息はしているようで怪我はないようだ。血痕などもパッと見ではなかった。縛られてはないけどガリバー旅行記の小人の国編のような状況。一度男性の側をそおっと通り過ぎたが買い物をして戻ったときに自分の部屋に戻れるのだろうかと思い、そおっと後ろ歩きでもう一度自分の部屋に戻った。書いてみるとまるでコントのようだけどその時は本当に怖かった。こういう時は警察?警察を呼んでも10分以上は来ないだろうし、私の部屋から下のアパートの入り口は開けられない。警察が到着したら私が下に行ってドアを開ける?またこの倒れている大男の横を通る?無理無理、それはありえない。起き上がったら暴れるかもしれない。私の部屋は廊下の突き当たりなので後ろから来られたら私は逃げ場がない。混乱する頭で考えて自分の部屋から携帯で大家さんに電話をした。大家さんは普段はここではなく、車で1時間くらい離れた街に住んでいる。この築100年以上のアパートは香港から移民して来たご両親が買い、それを大家さんとお兄さんが相続したらしい。アパートには管理人が住んでいたが日中は仕事に出かけている。大家さんには緊急以外は電話しないがもちろん今回は緊急も緊急だ。大家さんが「こんにちは。どうかしましたか?」と答えるのを待って「私の部屋の前に男性が倒れてます。怖くて外に出れません。」大家さんは「僕は今用事があってそこへ向かっているんだけど倒れてるってどういうこと?」私は大家さんが向かってることを聞いて少し安心した。ところが逆に大家さんは不安になったのか「どうしよう。怖いな。警察呼んだ方がいいかな?」私は「呼んでもすぐ来ないだろうけどとにかく警察呼んでください。」と大家さんにお願いした。
私は状況からその男が最近空き家になっていた隣の部屋から出て来たような気がして大家さんに警察と一緒に全部アパート中をくまなくチェックして欲しかった。古い建物で地下も屋上階もあるので隠れる場所は沢山ある。隣人が引っ越した後、ペンキを塗り替えているのは知っていた。確かめてはいないけどもし空いている部屋の鍵をかけ忘れていたら誰かが住み着いても不思議ではない。その頃には、サンフランシスコのオフィス街とユニオンスクエアといういわゆる観光地でデパートや専門店が固まっているエリアに近い私の住んでいた場所もホームレスが急激に増えていた。うちの反対側には私立の小中学校があり昔は学校が終われば静かだったがいつからかストリートに駐車している車のガラスが毎日のように破られたりしていた。ホームレスと一言で言っても変化があった。ここ数年のホームレスは若者達が薬物中毒になり、家にも帰れずそのままというパターンがパッと見てわかるようになった。夜中に叫び声がしたり、よく行くドラッグストアの商品が見る見るうちに鍵のかかったケースに入った。洗濯用洗剤が鍵のかかった扉をこじ開けて全て盗まれていたこともあった。盗んですぐ道端などで売るらしい。
20分ほどして大家さんから電話がかかって来た。「僕が着いたときにはもう誰もいなかった。でもキャンディなどが散らばっていたからそこに倒れていたんだね。一応空き家や地下階の倉庫もチェックしたから。お知らせありがとう。」私は「うちの隣、ペンキ塗りとかしている間鍵開いているんじゃないですか?鍵は絶対閉めて下さい。お願いします。」私の想像ではあるが夜中にアパートに忍び込み、トイレもシャワーも使える隣の部屋で過ごし朝になったので慌てて出て行こうとしたが薬物でフラフラで倒れたってとこだろうか。
やっと安心して外に出れると思い部屋から出ると同じアパートの住人の女性が私を睨みつけた。「片付けなさいよ。あなた何でそんなことするの?」私がキャンディなどを自分の部屋の前に撒き散らしたとでも?カチンと来た私は「私じゃないです。」とだけ言い、ロバートデニーロのように両手のジェスチャーをしてまだ何か言いたげな女性を無視して外に出た。その大男はどこから来て、どこへ行ったのか謎だけどあのアパートに住んでいる間に起きた3大事件の一つであったことは間違いない。これはランキング第3位。後の2大事件もそのうちに日記に書きます。