8月15日
娘から久しぶりに美味しそうな写真が届いた。1週間仕事を休んでゆっくりステイケーション(お家でバケーション)をしていたはずなので先週私からは連絡しなかった。私は仕事の内容は良くわからないのだがとにかくずっと忙しいらしい。たまに休息のために携帯などを一切見ない週末もあるので休み中は、邪魔をしないのが暗黙のルール。久々の連絡にうれしくなって私のお寿司もどきの写真を送ると「ぺったんこすし!どうしたの?」と返事がくる。娘もお寿司は大好きで彼女の父親(私の元夫)は離婚のちアメリカで突然すし職人になった。娘が小さい頃から3人でよく行きつけのお寿司屋さんに行った。凝り性の彼は自分で勉強を始め最終的には結構こちらでは有名なお寿司屋さんで働いていた。そしてアメリカが大好きでその昔、10年かかって永住権を取ったのにもかかわらず彼はある日あっさり、日本へ帰国した。理由を聞くと「いやあ なんか気がついたら日本食を毎日食べて日本のテレビ番組ばかり見るようになっちゃったからもうアメリカいいかなと思って」と彼らしい返事だった。娘は大学を機にカリフォルニアを出ていたが父親が日本へ行ってしまうことを「寂しくない?」と聞くと「パパが日本でママがカリフォルニアでちょうどいいよ。お休みに会いに行ける場所があるから」と言われた。娘がまだ小学校の頃に週末を父親と過ごすか私と過ごすかの相談をしながらなんとなく申し訳ない気持ちになった。「ごめんね。パパとママ離婚してなんだかややこしいよね。」と言うと娘は「えええ何言ってるの。うちなんてシンプルだよ。全然ややこしくないじゃない。」聞くと離婚した両親がいる友達は普通に沢山いるし、中には離婚した両親がそれぞれ再婚して再び離婚したために今週が父親、来週は母親そしてその次は継母と週末の行き先がどんどん広がっているらしい。週末になるとその友達は同級生とは遊べずに重たいバックパックを背負って決められた大人のところで過ごすそうだ。とはいえ娘なりに色々不満も葛藤もあったと思う。私の今の夫のことは歳の離れた兄のように慕っている。そうなるまでは色々あった。再婚してしばらく経ってから日本へ3人で旅行した。2008年3月、高校卒業を前にあちこち回りながら私の父や親戚にも会いながら前半は良かった。娘の父親方の親戚に彼女だけが会いに行く朝、ホテルの部屋でニュースを見ていた私の夫と娘が突然険悪になっていた。出かける支度をしていた私は耳だけで様子を伺っていたが忘れもしないハイブリットカーについてのニュースが発端だった。娘はちょうど高校で環境問題のテーマをたっぷり勉強していたこともありかなり知識があった。私の夫がさりげなく言ったハイブリットカーの事が気に入らなかったのか口論になってしまった。車好きな夫は、恐らくこんな醜い車誰も買わないみたいなことを言ったのだと思う。それに大して娘は今の時代環境問題がどんなに大切か大人のくせに知らないのと怒ったのだ。どっちが大人なんだか。そしてふと夫を見ると真っ赤な涙目になっていた。大人を議論で泣かした娘はプンプンしながら出かけて行ってしまい、悔し涙の夫だけが目の前にいる。そんな夫も大学の卒業式で娘の晴れ姿を見てまた目を真っ赤にしていた。2歳までは人見知りが激しく私と家にいたので日本語が最初の言語でおかあさんといっしょのビデオを毎日見ていた。出先で誰かにフレンドリーに「ハーイ」と言われてもすぐベソをかいていた。私が自分の英語の勉強を始めたときにそのそばにあったデイケアに入れた。最初は毎日泣いていた。1週間くらいしたらどんどん活発になり英語もすぐ覚えた。そして迎えに行くと先生から直訳して言うと「超フレンドリーでみんなのリーダーよ」みたいなことを言われてびっくりした。中学校では歴史の授業で宣戦布告のレターを作ってみましょうと言う課題が与えられた。紙に紅茶を浸し、先端を少し燃やしいかにも歴史的な手紙を上手に作っていた。親が両方とも移民で宿題を助けられないことを身をもって理解している娘はなんでも自分で頑張っていた。「このお手紙何書いたの?テーマは宣戦布告なんだよね」インクペンを使って美しい筆記体で長々と文章が書いてある。「うちの中学校の校長は毎朝ファーストフード買って学校に来るの。毎日だよ。私たちにはヘルシーに好き嫌いするなとか言うのに。そのことに宣戦布告してみた。だって矛盾してるじゃん。」私は椅子から転げ落ちた。娘は堂々と仕上げた手紙を提出し、幸いにも学校からお呼び出しはなかった。武勇伝だけ書くと随分強い子に育ったようにも思えるが意外と繊細なところもある。たまに相談事のような電話が来るとあまり助けにはなれないがうれしい。仕事も趣味の音楽もずっと楽しんでは欲しいが母親としてはどうしても気になる質問を30歳を目前にしたある日ドキドキしながら娘に聞いてみた。「結婚はまだしたくない?」「うーん。結婚したくないわけじゃないよ。2回か3回くらいしてみようかな。うふふ」聞くんじゃなかった。とにかく健康で彼女が寂しくないのなら良しとしよう。