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8月31日

今日も霞んだ空。明日から9月だ。もうすっかりおばさんなのに今でも8月31日って見るだけでなんかドキッとする。山ほどの宿題とか課題とかあったなあ。アメリカは学校で違うだろうけど9月8日までは夏休みで宿題など一切ない甥っ子は幼なじみと日曜日にレモネード売りをして$50を稼いだらしい。妹からやるらしいと聞いた時に感染対策をお忘れなくと言っておいたら届いた写真は甥っ子達がマスクに手袋。カップには触れないようにしかも買ってきたレモネード(本来は手作り)を恐る恐る注いでいる。それでも楽しかったのかまたやるらしい。この間私が送ったポケモンのTシャツを着て笑顔の甥っ子が元気そうで何よりだ。

夫実家に住んでいるが下宿人がいる。昼も夜も頑張って働いているお母さん。詳しいことは私は知らない。ほとんど顔を合わせることもない。彼女の娘は甥っ子と同じ歳らしい。普段はお婆ちゃんと住んでいて週末母親のところに来ていたが最近は事情があるのかずっとうちにいる。忙しい合間に母親が様子を見に短時間帰ってきたり、叔母が時々面倒を見ているようだ。私もお節介なので時々気にはなるのだがいろいろ考えて本当に困った様子の時だけ助けている。先月の初めごろ、このエリアの小学校が始まるのかオンライン授業になるのかニュースが毎日のように流れていた。部屋がお隣の子は学校が始まったらお婆ちゃんの家に帰ってもらった方が良いと義姉と夫が夕食の時に話していた。おそらく母親は仕事で小学校の送り迎えできないだろうし、日中誰かが常にそばにいる方が良いからだ。

ある日義母が私たちだけの夕食の時に「あの子何かいろんな声が聞こえるらしいのよ。心配だわ。」元校長だった義母は退職した今でも元校長の雰囲気を醸し出しているのでその子は優しい叔母によく懐いてるのは見ていてわかった。助けが必要なときはまず叔母に行き、叔母がいないと私のところに来ていた。夫が「やっぱりお婆ちゃんの家に行った方がいいんじゃないか」私もうなずいた。それから様子を伺っているとその子が義母の部屋に出入りするようになった。義母が「またいろんな声がするらしいのよ。」と言う。私以外カソリック教徒のこの家では「エクソシスト」とかいうワードも飛び交い出した。あの映画のテーマ音楽が頭をよぎる。

日中家にいると隣の部屋からは時々、笑い声や誰かと携帯電話で喧嘩しているのがたまにうっすら聞こえていた。私にはそんなに病んでいるようには見えなかった。つい先日もキッチンでご飯がよそえなくて困っていたのでお皿に盛ってあげると嬉しそうに「サンキュー」と大盛りご飯を受け取りにっこりしていた。顔色も悪くないし、アイコンタクトもできるし犬も尻尾を振っているから大丈夫。家族で共有の衛星放送のレコーダーをのぞくと彼女が好きなアニメ番組がぎっしり録画されていて毎日見ているのがわかった。

ある日彼女の噂もピタッと止まった。義母と彼女が一緒にいることも見なくなった。前と同じように叔母が時々「お腹すいた?」などと声をかけている。小学校のオンライン授業が開始した途端、彼女がいろんな声が聞えると言わなくなったのだ。ストレスで本当に声が聞こえるほどまいっていたのかもしれない。学校が始まってお婆ちゃんの家に帰りたくなかったのかもしれない。私の頭の中の映画のテーマ音楽も止まった。子供なりに誰に助けてもらえば自分はここにいられるのか考えたのだろうか。子供だからこそ自分を守れることは大事だ。私は引き続き彼女が本当に困ったときだけ助けてあげる隣の部屋のおばさんでいようと思う。

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