8月29日
朝から久しぶりのドーナツ。チョコレートの付け方が進歩したようだ。外は相変わらず北と南の山火事の煙がちょうど私の住んでいる街の真上で混ざり合っている。ニュースで健康のために外に行かないようにと言っている。
最近、日本のニュースを読んだりテレビでも日本のニュースを見るのだが気になることがひとつあるので日記に書き留めておく。先日おきた警察官の発砲によって抗議のデモなどが起きている。悲しいことにこの部分は私がアメリカにきた31年前からあまり変わっていない。そして私自身、アメリカで働いたり住んでいると差別とは全く無関係ではない。一度かなり前だがショッピングモールのフードコートで並んでいると後ろから来た子供づれの女性に突然順番を抜かれたので私が並んでいることを伝えると私のそばにきて耳元で「この国ではね。あなた達はちゃんと並んで待ちなさい。」と訳のわからないことをささやかれものすごく不愉快になった。何か言い返そうかと思ったが言ってることがクレージーだったので相手にしなかった。違う州に行けばエリアによっては歩いているとジロジロ見られるような場所もある。一番強烈だったのはアメリカに来てすぐに出かけたカントリーミュージックのコンサート。200人くらい来ている観客の中で私を含めてアジア人は二人しかいなかった。アメリカで初めてのコンサートだったし楽しみにしていたがものすごく居心地が悪く途中で帰った。今だったら全然平気だろうけどカントリーミュージックのコンサートはあれが最初で最後だと思う。
今年3月から世間を騒がせているウイルスの件でアジア人が差別を受けたとニュースを時々見かけた。幸いにも私の住んでいるこのサンフランシスコベイエリアは人種のるつぼなのでどこに行ってもいろんな国の人が行き交う。サンフランシスコで10年以上住んだボロアパートもチャイナタウンのすぐそばだったし、世界中の観光客の写真に私は映り込んでいるはずだ。夫の両親はフィリピンからの移民で夫や兄弟はみんなアメリカで育ったのでアメリカ人。おばあちゃんからのスペイン人の血も少し受け継いでいる。肌が少し褐色なので日本ではよく「あんた沖縄から来たの?」と言われて喜んでいる。背が高く、英語もネイティヴな夫だが買い物などでお出かけするときはある程度きちんとした格好で行く。最近カリフォルニアではレストランもあまりドレスコードもないし、私などたとえブランドのお店だろうがデパートでもトレパンで行く自信と実績があるのだが夫は違う。もっとカジュアルでいいじゃんと言っても着替える。これも昔の話だが夫が私に急がされ珍しくジャージで朝ごはんを食べに行き、そのそばにあったブランドもののお店にたまたまお財布を見たくてふらっと立ち寄った。「ハーイ」とフレンドリーではあったけどベースボールキャップでジャージの夫の真後ろにセキュリティがぴったりついて回る。その時に夫がいつもきちんとした格好で出かける理由がわかった。夫がジャージで外を歩き回るのは日本へ旅行した時のみだ。そんな複雑な環境にいると日本のニュースで飛び交っている『白人』『黒人』という言葉がなんだか引っかかる。せめて2020年の現在メディアはもう少し繊細に言葉を選んでくれないだろうか。起きてはいけない事件だけど単に肌の色ばかりを連呼してほしくない。あの取り上げ方ではもっと奥の深い問題であることが認識されないと思う。だって誰も私たちのことを公に『黄人』とは呼ばない。あくまでも私個人の考えだけど。