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マイナ保険証で見えたこと…報酬だけが指針?揺れる薬剤師の使命感【後編】
マイナ保険証導入にあたって見えてきた、薬局、薬剤師の課題について書いています。
マイナンバーカードと健康保険証を紐付けした、いわゆる〈マイナ保険証〉が誕生。
しかし、放っておいても勝手に普及するものではなく…じゃあどうやって使われるようにするか?
というので国の偉い人が考えたのが、
・利用者に対して、マイナンバーカードと保険証を紐付けるとポイントを付与する。(カードを作ったら…電子マネーと紐付けしたら…等々の〈マイナポイント〉付与=お金配りを延々とやってましたね〜)
・医療機関に対して、マイナ保険証の読み取り装置や、その他利用に必要なソフトなどの購入補助金を配る
であったわけですが、利用率が伸びず。そのほか、
・医療機関のデジタルトランスフォーメーション推進・マイナ保険証の利用率アップに対して、加算を新設し、補助金を出す ことも、現在進行中。
で、最終的に「紙の保険証を廃止する」まで持っていくようですけれど、さて、どうなりますか。
医療機関を補助金で釣って無理やり導入させて…!と、文句をつけるのは簡単ですが…
そもそも、保険制度のなかで医療を提供している以上、国がお金を出すことをやる、というムーブになるのは必然。
診療報酬をどう設定するかによって、医療機関の行動は操作されると言っても過言ではないと思います。ていうか、望ましい行動をさせるための診療報酬の配分でしょう。
医療機関がある程度の儲けを出して仕事を続けるためには、制度で評価され点数がつくことをしなければなりません。
本来は良い医療、つまり患者QOL向上のためにやったことが、評価されて点数がつくべきですが、「制度があるからやる」ものになっているのでは。ひいては、「制度がないからやらない」ということに…。実際、儲からないことに人や資源を割く余裕はないのですよね。
なんらかの点数がつくと、報酬のためにそれをやろうとするのがもう当たり前の動きになっているので、目の前の人に今それが必要なのかどうかを吟味せず、数を稼ぐのに一生懸命になってしまう悲しい性…。これ、行き過ぎるとみんな(国も医療者も患者も)不幸になりそう。
調剤報酬制度に一応は乗っかって、大筋の方向性は守りつつ、でも薬剤師としてやるべきと思ったことは、たとえ該当する報酬がなくてもやっていくべき。少なくとも、「薬剤師会」の偉い方とかは、ただお上に従って、下々に言うことを聞かせるだけのオペレーターにはならないでほしい。
薬局に関して言えば、制度自体はなかったが、自発的に行ったことに結果としてあとから評価がついてきたという例も、じつはあります。先人たち、偉い!
具体例を二つ、挙げますと。
ブラウンバッグ運動は、飲み忘れなどで余った薬を薬局に持ってきてもらおう、という取り組み。これがいまの「残薬調整」の点数につながりました(2016年度の法改定で新設)。
そして、おくすり手帳も、最初は点数などはなかったはず。併用薬がわからないまま薬を出せない、という薬剤師の意識から、いまやなくてはならないものになっています。Wikipediaによると、薬剤師なら誰でも知っている(と思う)1993年の「ソリブジン事件」がきっかけだったんですね〜。大学の薬学部で、ちゃんと薬の化学構造式を見ろ!って教わるやつよ。おくすり手帳は、震災の際の服用薬把握などにもかなり役立ってきています。2024年元旦の能登地震のときは、オンライン資格確認が大活躍でしたが。
対して、わたしが個人的に「??」と思っている制度は、「がかりつけ薬剤師」ですね。これも2016年度新設。患者さんから同意書を取って、常に私が対応します!いつでも電話してね!服薬指導時には少し支払いがアップする代わり、アナタのすべてを把握するよ!という制度なのですが…
もちろん、薬剤師がわも患者さんがわも、双方が納得してハッピーに運用されている場合は、良いと思う。そういう方は気にせず続けてほしい。
わたしが思う「かかりつけ薬剤師」制度のデメリットは。
1.ひとりの薬剤師がつねに対応する⇒他の薬剤師の目が入らないので、なにかを見落とす可能性がある
2.薬剤師が時間外や夜間に(電話などで)患者対応する必要がある
3.かかりつけ薬剤師になれる要件がわりとシビア(当該店舗での勤務経験、勤務時間など)⇒会社側からすると人事異動がしづらい!
かかりつけは薬剤師個人じゃなく、薬局単位でええやん、と思います。
薬剤師個人としては、患者さんに「あー、今日アンタいてよかったぁ、ちょっと聞きたいことあるんよ」とか言っていただけるととても嬉しくはあるんですけどね。でも毎回毎回、わたしじゃなくて良いし、むしろ複数の薬剤師がいろんな視点で対応したほうが、質の高い医療になると思っています。
というわけで、話が散らかりましたが。
調剤報酬云々以前に、わたしの今の方針(目標)は、
・処方せん応需時、「患者に早く薬を渡して早く帰らせて現場を回す」モードに全振りしない。
・得られた患者情報はスルーしない。
・正確な、最新の情報に基づいて判断する。
・必要最低限プラスαの説明を心がける。
です… エラソー… そして無理かも… でも目標だからとりあえず書いておく。必要なのは勉強だ。勉強しろ、自分。で、やったことが調剤報酬の算定要件を満たしていたら、すかさず算定するのだ。がんばろーねー。