4/20実装G.R.A.D.福丸小糸編を読む
ご機嫌いかがであろうか。拙者はいれぶんと申す者でござる。こちらは4/20に実装されたG.R.A.D.福丸小糸編の感想文兼怪文書となる記事です。以下注意点です。
・記事というよりかはただの自分用の感想まとめなのでいろいろ話が飛躍してる気がします。
・コミュ内容のネタバレを含みます。さらに今までのノクチル全体のコミュの内容を前提としつつ絡めるのでさらにネタバレと妄想が飛躍します。お気を付けください。
・私個人の好意的・拡大解釈および誇大妄想を含みますが、それらを押し付ける意図のものでありません。むしろ自分の考えとの違いを発見してより幅の広い解釈を見せてくれ…。
・ゲーム内プロデューサーのことは名前が分からんので「シャニP」と呼称します。
では以下本文となります。
オープニング「いつかとべるように」
さて、開幕では小糸がレッスン室にいるようですが、「これって前にも雛菜ちゃんが言っていた何のためでもない練習なのでは…」「多分何かにはなるはず」と不安がっています。うおお小糸…いきなり凹み気味ですね。この「雛菜の言っていた何のためでもない練習」というのは「天塵」での生配信で事件を起こしてしまって干され気味になった後の2人の会話で出てきたものなので、一応時系列的には少なくともあの事件の後であるということだけは間違いありません。
そうしていると直帰のはずだったシャニPがやってきて小糸は驚いています。はづきさんにまだ小糸がいると聞いてやってきたらしいですが小糸は「自分のせいで戻ってくる羽目になってすいません」と謝罪します。相変わらず自分を責めすぎです。そのことを否定して、シャニPは小糸と話がしたかったんだと言いますが、小糸は安心したようにしながら「話って…自分はまた何かしてしまったのか…」と言います。いやどうしてそうなる。あまりにもネガティブです。「また」って言うほどやらかしてないだろうに、なろう系主人公みたいなセリフを本当にネガティブな態度で言うんじゃないよ小糸。
ここでシャニPが持ってきた話というのは「G.R.A.D.に挑戦してみないか」ということでした。小糸は自分なんかが出ていいのかという風ですが、シャニPとしては出て欲しいのでしょう。加えて「G.R.A.D.は個人戦になる」ということも伝えますが、そのことに小糸は少し表情を曇らせます。やはりあの4人の関係に多少なり依存してしまっている小糸としては、ノクチルとしてではなく、福丸小糸個人としてのステージになるということは不安でしょう。しかしそこは我らのシャニP、「俺が最大限のサポートをする、1人でステージに立つからと言って1人で挑まなきゃならないわけではない」と小糸を励まします。心強い励ましの言葉!いつもの流れだ!勝ったな!ヨシ!!(指さし確認)
小糸は当然不安でしょうが、「ゆっくり考えてくれ」というシャニPに対し「やりたい」とその場で即決しました。その事にはシャニPも少し驚いて「焦らなくてもいい」と言いますが嬉しそうです。よかったねえ。
しかしどうにも小糸は「みんなを笑顔にするためには、ちゃんと何かのために頑張らないと」と言います。うーんこれは…焦っているとしか…。ここで小糸がG.R.A.D.に出場することを決めたのは、当然ですが冒頭での「何のためでもない練習」に対する漠然とした不安によるものと見てまず間違いないものでしょう。小糸は目標を見失ってしまっています。
【ポシェットの中には】や【はれのひ喫茶店】なんかがそうですが、小糸のコミュのいろんなところからは小糸がそういう「漠然とした不安」みたいなものにすごく弱いというのは良く感じられます。色んな物事に際してなんとなく「自分だけが、自分なんかには」みたいに感じてしまい、そのたびに自分を責めては縮こまっていくのが小糸の弱い部分です。今回のG.R.A.D.編では「何のためでもない練習」しかできていない、こんなんじゃ前に進めていない気がする、またみんなに置いて行かれるという不安が小糸を苛んでいるというところにG.R.A.D.出場の話が来て、それに飛びついてしまったというように見えます。これはどうにも結果を焦っているという風に感じられてしまいますね。果たしてこの状況がいい方向に転ぶかどうか…少し不安な幕開けとなりました。シャニP…頼んだぞシャニP…。
1つ目のコミュ「空で呼吸する方法」
さて、小糸はいつもの如くレッスン室で練習中ですが、なにやらその様子を写真やら動画やらを取っているような描写がされます。そばにはシャニPがいるようで、レッスンを頑張る小糸の事を労っています。今まで以上に手厚いサポートをしようというシャニPに対し小糸は「もういろいろしてもらってる」「自分よりシャニPの方が気合入ってる」なんて言いながら嬉しそうです。良い関係ですね~この2人3脚感、いかにもアイドルモノって感じです。やっぱり小糸は王道アイドルなんだ…。
その流れでシャニPはさらに小糸に対して提案をします。「G.R.A.D.では他のアイドルがSNSなんかを使って自己アピールをしている」「今まで小糸はこういうことしてこなかったからやってみたらどうかと思う」と言います。小糸は「やっぱりそういうの必要なんだろうか」「上手くできるといいんだけど」と不安げですが、そういう部分も見越して小糸の言葉も載せつつ基本的にはシャニPが更新しようということらしいです。スタッフがやるTwitterみたいなやつですね。まあやり方としてはアリでしょう。
そしてシャニPは「小糸が練習しているところとかを記録してG.R.A.D.までリアルタイムで発信していけたら」と言いました。
あ??????????
え??????????
待て待て待て待て待て!!!この流れでそんな綺麗に地雷踏み抜くことある?!?!!?!?!オイ!!シャニPお前!!!!!お前お前お前お前!!!!!!どうすんだこれオイ…。
我々福丸小糸を守護って笑顔にする委員会の者どもにとって、「福丸小糸は自身の努力を他人に見られるのを嫌がる」というのは常識中の常識なんですが、まさかのこの男、「福丸小糸の努力をインターネットに晒す」とかいうとんでもない提案を小糸にしてしまいました。血の気が引きましたね。地雷原ド真ん中もいいところです。当然小糸は表情曇らせまくりですがシャニPは気づいていません。
小糸は何か言いたげですが、諦めたようにひきつった笑いで「そういうのわからないから」とシャニPにそのことをお任せして、そそくさとレッスンを切り上げて帰ろうとします。ほらー!こうなるじゃん!もー!!小糸はもうシャニPにもその「努力」を見せたくなくなっています。撮られちゃうからね…そうだよね。いつもは時間いっぱいまで頑張っているのに…。この一瞬で相当な亀裂が入ったのは間違いありません。ぐぅぅ…(苦悶)。
さて、まず大前提ですが、シャニPは当然小糸を苦しめようとしてこの提案をしたわけではないでしょう。「今まで以上にサポートしたい」という言葉通り、今までは外に見えていなかった小糸の舞台裏を魅力の1つとして発信し、G.R.A.D.で結果を残すための後押しをしてやろうという意図で提案したのはまず間違いありません。それはプロデュースの作戦として間違っているわけではないでしょうが、ここでのシャニPは小糸がそういうのを嫌がるということになぜだかあまり気づけていないのが伺えます。
W.I.N.G.編の3つ目のコミュでシャニPは「小糸は努力を見られるのが嫌かもしれないけど」というような発言していて、つまりあの時点では小糸のそういう部分にある程度気づけていると思います。しかし何をどうしてこんなことになってしまったんだ…?今まで小糸のコミュに出てくるシャニPがあまりにも有能だというのは良く言われていましたが、まあそんないつまでも上手くはいかないかあ…このゲームシャイニーカラーズだからな…なんて思います。まあシャニPが結構人間臭いのがこのゲームのいいところなんですけどこれは中々しんどいですねえ。
また、シャニPに対する擁護というほどのものではないんですけど、私として思うところがあります。この一連の出来事の中のシャニPの「小糸が頑張っているのを見たらみんなもっと応援したくなる」という発言があって、それに加えて「俺もそうだからさ!」と言う発言が出てきます。これにハッとしてしまいました。
考えてみると、この怪文書を書いているこの俺も「そう」なんです。シャニPだけじゃなくて。福丸小糸の魅力はそういう「必死に頑張るところ」であるというのは全く否定できません。そんな小糸の姿勢に何度も涙腺が爆発してきたし、そういうことがあって小糸にクソデカ感情を抱いているのも間違いありません。そしてそんな小糸の魅力が色んな人に伝わったらいいなと願いたい感覚があるのも最早疑いようがありません。そんな俺ではここのシャニPのやらかしを頭ごなしに否定することなど全くできるわけがありませんね。ごめんシャニP。
さらに考えてみると、小糸のそういう「頑張るところ」を直に見ることができているのはシャニPや周りのアイドルたち、そして神の視点でこの物語を見ることのできる我々プレイヤーくらいのものです。周りのアイドルたちがどうかは置いておいて、もしかしたら小糸のそういう部分を見て、それを魅力的に感じていたのはシャニPと我々だけだったのかもしれないですよね。シャニPは向こうのファンにもそれが魅力に映るだろうと思ってこの提案をしたのでしょうが、おそらくこの時点ではシャニPは小糸がそう感じていることをわかっていません。だから仕方ないっていうのもなんか違う気もしますけど…偶にはシャニPも失敗します。
というか、小糸自身がそういうところを見られたくないと感じていることを知っていたのに、自分が神の視点であるのをいいことに小糸のそういった「舞台裏」の魅力みたいな部分にばかり偏った眼差しを向けて、小糸の思いを汲み取ってやれていなかったのは誰よりも俺だった…。なーにが「我々福丸小糸を守護って笑顔にする委員会の者どもにとって、『福丸小糸は自身の努力を他人に見られるのを嫌がる』というのは常識中の常識なんですが」じゃ!!!ボケがよ。そんなことを抜かす勘違い野郎は摩美々の角に頭をぶつけてくたばってしまえ。
そんな反省を初手からさせられてしまったわけですが、私にできることはありません。やらかしてしまってはいますが、こういう時はやはりどうしてもシャニPになんとか解決を望むしかありません。シャニP頼むぞ本当に!!!小糸が辛そうなのは耐えられんのじゃ…。
2つ目のコミュ「わたし」
小糸はどうやら昨晩問題集をやっている途中で寝落ちてしまった様ですがなんだその部屋!??その独房みたいな部屋は何?!!そんな風に結構話題になった部屋です。ここで初めて小糸の家の中の背景が使われましたが果たしてこれは小糸の部屋なんでしょうか?あまりにも狭すぎるように見えるのですが…。多分小糸用の勉強部屋かなんかなんじゃないかなあと思うんですけども。まあそうだとしても「小糸のために専用の勉強部屋が用意してある」となるか「小糸をこんな狭い部屋に押し込めて勉強させている」となるかと言ったところですが…なんにしても小糸はちゃんとお布団で寝てね。
小糸はSNSにアップされた内容と自身の練習風景の動画を見て「全然できてないのに」「今日もまたこうやってレッスン(を撮られるのだろう)」と不安げです。多分もうレッスン行きたくないんだろうな…。小糸…。それでも「もう何のためでもない練習じゃないんだからちゃんとやらなきゃ」と言います。小糸ぉ…。
そうしてレッスンに臨んだ小糸ですが、イマイチ調子が出ていないらしくトレーナーさんからも心配されていますが、小糸は相変わらず強がっています。さらにトレーナーさんから「今日はプロデューサーが来れないから心配してて、無理しないようよく見てて欲しいと頼まれた」「何か悩んでいることがあるなら誰かに相談してみたら?」と言われて何かを口にしそうになりましたが、やはり口を噤んでしまいレッスンを続行します。「シャニPに心配されている」ということがより小糸の劣等感を強めている感じもします。
そうして帰路に就いた小糸は「プロデューサーさんに話してみようかな」と考え込んでいるうちに、ちょうどシャニPから電話が来ます。ナイスタイミングだ!!!小糸が話し始めるとともにすぐシャニPはレッスンに付き合えなかったことを謝罪し、「まだ仕事があるから話はあとで」と言います。暗雲。さらに「もし今日のレッスンで撮った写真とか動画があるなら送っておいてくれればSNSにアップする」と言いました。スーパーウルトラバッドコミュニケーション!!今回のシャニPだいぶ調子悪いな…。
そうして小糸の気分はどん底に落ちてしまい、「それって今じゃないとだめなのか」と口にします。シャニPは単純にそれが動画なんかを送るタイミングの話かと思って頓珍漢なことになっていますが、加えて小糸は「やっぱり自分はそういう風に『自分は頑張っているんだ』というところを見せないとだめなんだ」と言います。うがああ(発狂)!!違う…違うんだ小糸…そう言いたいのに言えない…だって俺もそういうところばかり見てきたから…。しかしここでようやくシャニPも今の小糸が追い詰められていることに気づけたはずです。さてどうなる…頼むぞ…。
さて、ここで状況をまとめる意味も込めて「もうなんのためでもない練習じゃない」ということについて考えます。
この言葉はオープニングコミュで小糸が、自分のしているこの練習がなんのためにもなっていないんじゃないかと不安がっていたことから来るものであるのはまず間違いないでしょう。小糸はその「なんのためでもない(かもしれない)練習」という何も残せない(かのように思える)時間の中で、やはり「自分だけが何もできない」みたいな感覚を強めてしまったのだろうと思えます。
そんなタイミングでシャニPからG.R.A.D.の話を持ちかけられた小糸はすぐさまその話に乗りましたね。それはきっとその「なんのためでもない練習」を「なんのためでもない練習じゃない」ようにするために、半ば焦燥感に追われるような形で飛びついたのだろうということは述べました。とはいえ、その小糸の考えは間違っているとは言えないでしょう。おそらくその事で小糸はクヨクヨせずにレッスンに身が入れられるようになっただろうと思えます。この練習は「G.R.A.D.で結果を出すための練習」となりました。
がしかし、そこで例のシャニPの提案ですね。「小糸の練習風景をSNSで発信する」とかいう暴挙です。当然この提案に悪意はなく、小糸の魅力を世に発信してやろうというものです。しかしこのことによってどうなってしまったかというと、その「G.R.A.D.で結果を出すための練習」という、言い換えれば「目的を持った練習」がそのまま「目的そのもの」になってしまったと言えるのです。これは小糸の望んだ状況ではありません。
小糸はあくまで練習して「G.R.A.D.で結果を出すこと」を目的として練習がしたいと思っていたはずなのに、その練習での結果なんていうのを無視した形に落とし込まれてしまっています。これはある意味では最早小糸の努力の結果の否定と言っていい状態で、小糸としては「必死こいて頑張ってさえいれば結果がでなくてもいい、その部分こそが小糸の魅力だ」と言われてしまったようなものです。そしてその練習は「練習を人に見せるため」という形になってしまいました。
この提案は「小糸の頑張ってるところを発信する」という目的があるという点で、小糸の練習を「なんのためでもない練習じゃない」ようにしてあげたということは間違っていません。しかしこれは小糸の望んだ状況ではないはずですが、なまじ自分の練習がシャニPの提案によって「なんのためでもない」ものじゃなくなってしまったことで声を上げられなくなってしまっていました。それがとうとうここで爆発してしまいましたね。
どうにもシャニPと小糸の間に大きな溝があってイマイチ噛み合っていないように感じられてしまいます。この流れで予選に突入とか怖過ぎるな?小糸とシャニPの間にここまでの乖離を感じるのは初めてのことなので戦々恐々です。助けてくれ…。
G.R.A.D.予選
予選ではなんだか2人はギクシャクしているように見えます。まあ2つ目のコミュの後だと考えるとそうもなりますわな。お互いに気を遣ってしまっています。
そして小糸はポツリ「ちゃんと頑張ってる後の結果をみせないと」と呟きます。シャニPはその言葉の意味するところがあまり理解できていないようで、そのまま小糸はステージへと向かっていきます。
この言葉からもやはり、先述した「練習そのものが目的になってしまっている」ということが感じられますね。小糸はその練習の後の結果を見せたいのですが、例の提案のせいでそういう部分が見えなくなってしまうのではないかと思っているのでしょう。
予選を勝った場合でも、シャニPの労いをよそに小糸は全然嬉しそうではありません。「練習よりはマシだったと思ってもらえただろうか」と絞り出すように言い、シャニPもその様子に困惑しているように見えます。
先程述べたように、小糸はあくまで練習によって結果を出したいという気持ちが大きいだろうと思えます。そう考えると、この言葉からは「ちゃんと練習の成果が出ただろうか」という不安を強く感じているのだろうと思えます。結局、シャニPのした提案は小糸にの「何のためでもない練習」からくる不安を払拭できていませんね。シャニPのしたことは明確に失敗であると言えます。
予選を負けると、小糸は申し訳なさそうにしますが当然負けたことをシャニPは責めません。「まだチャンスはある」と声をかけ、「小糸と話さなきゃならないことがあるんだ」と伝えます。よかった…シャニPも小糸が追い詰められていることに気づいてしっかり話し合いをしなければと思っているようです。ここまで来たらもうシャニPが何とかして小糸の気持ちをしっかりと汲んでやるしかありません。シャニPは上手くいくよ。絶対。
3つ目のコミュ「カナリヤは歌わない」
さて、小糸が追い詰められてしまっていることに気づいたであろうシャニPはさっそく小糸に謝罪の言葉を述べています。先ほどの予選敗退後からの流れだと考えると自然です。
ここでのシャニPはもう土下座してんのかってくらい謝り倒しで、めちゃくちゃ自分のことを責めています。「小糸が頑張ってるところを見られたくないって知っていたはずのに失敗した」「小糸のことをわかってたつもりになって小糸の望まない方法を取ってしまった」「それは一番やってはいけないことだった」ともう反省しきりです。ここまでガチ凹みしてるシャニPもあまり見られるものではなくてそれはそれで胸が締め付けられます。
そんなシャニPを見た小糸はシャニPを気遣いながら、「自分がアイドルやっていくならそういう部分も見せて応援してもらわなきゃダメだって思った」「オーディションも受からないし仕事はユニットとしてのものしかしてない」「自分には応援するきっかけも魅力もない」と言いました。うええ(号泣)。そんなわけないだろ…そう言いたいのに…俺は…。
シャニPは「そうではない、そのきっかけを作るのが俺の仕事だ」「G.R.A.D.もそのきっかけのひとつにするつもりだった」と言います。そのことには小糸としても一定の納得があるようで、そういう意味でシャニPの提案してくれたSNSでの発信について「それが自分がアイドルをやっていくのに必要なことだって思った」と言いました。
ここまでのやり取りを見ると、実は小糸もシャニPも、2人とも結構焦っていた部分があったのではないかという風に思います。小糸が「何のためでもない練習」から来る不安に苛まれ、シャニPからのG.R.A.D.出場の話に飛びついてしまったということはこれまでに述べました。
しかし、そんな小糸を見たシャニPもまた小糸と同じように焦ってしまったんだと思います。オープニングコミュで、シャニPは小糸に対してG.R.A.D.出場についての話を持ち掛けると同時に「ゆっくり考えて欲しい」という風なことを伝えています。シャニPは本来そういうスタンスで、あまり事を急いては危ういという考え方をする男だったように思いますが、ここでいつになく勢いよく出場を即決した小糸の姿を見て、「小糸は物凄いやる気だ、俺も負けないように頑張らなくては」という風に感じてしまったんだと思います。だからこそ「最大限のサポートをする」という言葉が出たのでしょう。当然これは小糸が焦燥感を覚えていたことが悪いとかシャニPが安直過ぎたのが悪いとか、こういう2人の姿勢が間違っているとかそういうわけではないと思います。ただちょっとタイミングが悪すぎただけなんだ…2人とも真面目だから…。まあそういうこともあるよ。
しかしその「最大限のサポート」というのは、小糸の思いを汲んでサポートするというよりかは、「小糸がG.R.A.D.で結果を出すためならなんでもする」という方向に舵を切ってしまいました。実際この時点ではまだ小糸もシャニPもG.R.A.D.で結果を出すという同じような目的を見据えてはいます。しかし、その小糸の「結果を出したい」という部分にあまりにも引っ張られ過ぎていたシャニPは、小糸の「頑張った後の」結果という部分を蔑ろにする提案をしてしまい、小糸もそれを「自分にはそういうのが必要なんだ」と辛い思いをしながらも受け入れてしまいます。そのせいで2人の間には大きな溝が生まれてしまいましたね。結局のところ、2人は結果を焦るあまりにちぐはぐな状態で走り出してしまっていたと言えます。オープニングコミュのところで「いつもの流れだ!勝ったな!」とか書いた奴がいるってマジ?全然いつもの流れじゃなかった…まさかこんなにすれ違っていたとは…(節穴)。
そんな小糸は「どんな形でも応援してもらえるのはありがたいことだと思う」「自分以外の人間だって辛い思いをしながらも頑張って、そういう思いを抱えて向き合っているのかもしれないと、ちょっとだけ分かった気がした」と気持ちを伝えます。シャニPのした提案はそういう気づきを小糸にもたらしていた側面もあったようです。これは【おみくじ結びますか】での気づきと同じようなものですが、やはり小糸は「どうして自分だけがこんな思いを」と感じている部分があり、それはW.I.N.G.編からずっと見えているものです。しかし、このシャニPの「小糸が頑張っているところを世に発信する」ということが一方でアイドルとしての戦略として一定の効果を持つということがあるということが小糸にもわかっていて、そのことはこの気づきを小糸にもたらせるものだったのかもしれません。
しかし小糸は「そういう風にわかってた気がしていたけど、それでもやっぱり自分はそういうかっこ悪いところをさらけ出して、それが自分の魅力だって言えるほど強くない」と言いました。うーん…どうでしょうこれは。それは本当に強くないと言えるんでしょうかね。確かに自分をさらけ出せるのも強さだとは思いますが、小糸のように「かっこ悪いところを見せたくない」と思ってひたむきに努力して結果を示そうとするのはまたひとつ別種の強さだって言っていいと思いますが…。そういう風に思って頑張れることこそが小糸の何よりの才能なんだよ。
小糸の言葉を受け止めたシャニPは「気持ちを教えてくれてありがとう、本当はもっと早くこうして話し合うべきだった」と言い、小糸はそれに頷いています。この小糸の反応はシャニPを責める意味では当然なく、「自分も早くシャニPに相談していればよかった」という意味での頷きでしょう。こういうアニメーションとかも本当に細かいのがシャニマスらしいところです。
そしてシャニPは今回の反省を踏まえ、小糸のサポートに全力を尽くすことに変わりはないとしつつ、「小糸には俺が小糸の事をサポートするのを手伝って欲しい」と言いました。おお?また何か妙なこと言い始めたかという感じで、小糸も「それは私のサポートのサポートなのでは?」なんて言っていますがどこか砕けた雰囲気になりました。加えて「サポートのサポートのそのまたサポートが必要な時は言ってくれ」と言います。無限ループか?でも言いたいことは何となくわかりますね。
今回の失敗の根本的な原因は、シャニPが小糸の気持ちを置き去りにして走り出してしまったことにあります。シャニPは小糸に結果を出させるために、何よりサポートしなければならないはずの小糸の手を取ることを忘れていました。そしてそれが失敗だったと分かったシャニPは、ここに来てそういう風にお互い手を取り合って走っていくことが「最大限のサポート」だったんだということに気づきました。「一緒に頑張っていくってそういうことだったんだ」とシャニPは言い、小糸も「そうかもしれない」と頷き、2人は再スタートすることができました。
アイドルとプロデューサー、2人で息を合わせ2人3脚で勇往邁進。これめっちゃアイドルマスターです。やっぱ小糸はこれよ。このコミュのシチュエーションは夕方のようですが、大体小糸が悩みや気持ちを吐き出してターニングポイントになるのは大体夕暮れです。W.I.N.G.編の嘘がバレた時も、【ポシェットの中には】の時も、感謝祭編で3人が小糸の抱えているものを聞いていた時も夕暮れでした。今こそ満を持して再度言わせていただきます。いつもの流れだ!勝ったな!!2人は唄を思い出したカナリヤです。きっともう大丈夫!!頑張れ!!
唄を忘れた 金糸雀は
後の山に 棄てましょか
いえ いえ それはなりませぬ
唄を忘れた 金糸雀は
背戸の小薮に 埋けましょか
いえ いえ それはなりませぬ
唄を忘れた 金糸雀は
柳の鞭で ぶちましょか
いえ いえ それはかわいそう
唄を忘れた 金糸雀は
象牙の船に 銀の櫂
月夜の海に 浮べれば
忘れた唄を おもいだす
「金糸雀(かなりや)」西條八十作詞・成田為三作曲(1918)
4つ目のコミュ「ゆううつな受動態」
さあ再スタートを切った小糸、どうやらSNSの方で応援してくれるファンに感謝を述べつつも、これからはG.R.A.D.に向けて集中するためにいったん更新を止めるという告知をしたようで、気持ちを切り替えられた小糸はレッスンに行こうと気合が入っている感じです。2つ目のコミュの冒頭と対照的ですね。
また、ここでしっかりと小糸はシャニPに任せずに自分の言葉として向こうのファンたちにSNSの停止を伝えてるのも偉いですね。きっと今までの発信はシャニPがほとんどやっていたのですが、ここでしっかり本人として気持ちを伝えたことで向こうのファンも少しは安心できるのではないでしょうか。SNS急にストップは割と怖いですからね…何かあったのかなってなっちゃうから。
そしてレッスンに励んでいたであろうところにシャニPが迎えに来ます。本番が近いから少し早めに上がろうというシャニPを引き留め、小糸は少し話がしたいと言います。それを受けたシャニPはとても嬉しそうです。今回生まれてしまった溝はもう無くなっていますね。良かったねえ。
小糸はシャニPに「どういうアイドルになりたいか考えるのが最初の課題だって言ったことを覚えていますか」と言います。シャニPも言う通り、本当に最初のW.I.N.G.編でのことですね。そして小糸はそのことについてずっと考えてきたと言いながらも、「どうなりたいかということばかり考えてきて、どうやったらそうなれるのか考えてなかった」「そんなのは地に足のついていない夢みたいなものだと思った」と述べます。シャニPはそれを否定しようとしますが、小糸はさらに「特別な能力も無くて、かっこ悪いところを見せるのも嫌で、そんな自分がどうやったらみんなに見てもらえるのかっていう難しい部分をシャニPに放り投げていたんだ」という反省をします。真面目!もう小糸本当に真面目な子!!
そんな言葉を受けてまた若干凹み気味のシャニPのことをフォローしつつ、小糸はその反省を踏まえて「自分は『何か』のために頑張りたいと思っていたけど、それはその『何か』が訪れるのをただ待って何のためでもない練習をしてるだけだった、今までずっとそうだった」とし、「今はもうそれじゃだめだと気付いた」「自分の能力も分かった上で、どうやったら目標に近づいていけるのか、しっかり自分で考えていきたい」と言いました。泣いた。まーたこのちんちくりん巨大成長してやがる。
前半の言葉はオープニングコミュでの小糸自身の状態を表しているものです。小糸はその「何のためでもない練習」が「何かのため」になるのをただ待っていて、そのタイミングで転がり込んできたG.R.A.D.の話に乗っかり、そのことでシャニPと噛み合わなくなってしまったことを通して、先ほど述べた通り「自分はどうやったら目標に到達できるのかというのを考えるのをシャニPに放り投げてしまっていた」という風に反省しています。「何のためでもない練習」をしてしまっていたのは紛れもない自分自身で、自分がそんな受け身での姿勢でいたせいでシャニPが空回りしてしまったということから学びを得ていますね。
そして後半の言葉からはそんな反省をしっかり踏まえた上で、目標に近づくためにどうしたらいいか自分で考える、つまり「自分の努力に自分で意味を見出す」と言ってのけたと思います。泣いた。自分が何のためでもない練習をしていたのは、他でもなく自分自身がその「何か」を見つけないでいたからなんだと気付いた小糸は、自分自身の力でその「何か」を見つけることが最高の選択だと思えたのでしょう。その通りだよ小糸。
今回のシャニPがしたあの提案も小糸の努力に一定の意味を見出していたとは思いますが、小糸はシャニPに頼りきりではない形で自身の努力に答えを出すことを選択しました。「小糸をサポートする俺のことをサポートしてくれ」と言った次のコミュにこれですよ。なんなんだよ最強か?
なんとなく感じられるところであるかと思うんですけど、この小糸が反省できたこれまでの己の姿勢を表すのがコミュタイトルの「ゆううつな受動態」でありますが、これはそこからの脱却を表す内容です。そしてその内容は「いつだって僕らは」の「きっと夢は叶うよなんて 誰かが言ってたけど その夢はどこで僕を待ってるの?きっと憧れているだけじゃ ダメだって知ってるんだ 僕の靴はまだ白いままで」と完全に重なるものです。小糸も紛れもなくノクチルの一員ですね。
ノクチル全体のテーマとして「一歩踏み出して見せる」というのがあるとはよく思いますが、今回の小糸の成長もまた、一歩踏み出すということが重要だったのだろうと思います。ちょっと失敗はしてますが、シャニPは結果として小糸が一歩踏み出すきっかけを作れたと思います。というかシャニPのミスをも乗り越えてこれだけの答え出しましたからね。いつもそうですが小糸の踏み出す一歩はマジでデカい。いつもそう思う。
そんな小糸の成長っぷりにシャニPも俺も感心しきりですが、小糸はさらに「目標に近づくために、今の自分にできることを考えてきた」と言います。おお~なんだなんだ!相変わらず考えが定まると小糸は積極的だな!!なんでもかんでも言ってみい!!
泣いた。やっぱり凄いよ小糸は。「今の自分にできること」って言いながら出してきたの、「G.R.A.D.の優勝」ですよ。いやもうできる!できるに決まってる!しかもこれ「目標に近づくためにできること」ですからね。これ暗に「最終的にG.R.A.D.の優勝なんて通過点」って言ってるようなもんです。【おみくじ結びますか】に出てきた中学生モデルの子にそっくりですね。明確に言葉にしてはいませんが、小糸はもうきっとこの道の先にある頑張りたい「何か」を見出しています。最強丸小糸。まあ小糸は世界中のみんなを笑顔にしたいと言い放ったことがあるからな!そりゃG.R.A.D.なんざ通過点よ!!さらに先にある目標まで見据えて「G.R.A.D.を優勝する」という目的ができた小糸はもう無敵です。もう彼女には「何のためでもない練習」などあり得ません。さあ行け小糸!!空で呼吸してこい!!
敗者復活戦
敗者復活戦にて、小糸の気合は十分のようです。相変わらず緊張はしているようですが、まずはここを突破するという意気込みが十分に伝わってきます。
そしてシャニPは小糸に「小糸が頑張ってきたことを自分はちゃんと知ってるからな」と伝えます。すると小糸は「自分もシャニPが知ってくれていることを知っている」と言いました。
シャニPは小糸のそういう頑張るところを魅力に感じていて、それを世に発信しようとしたことで今回のストーリーで失敗してしまっていますが、そのことは小糸のそういう部分が実際に魅力ではないとか、無意味なものだとかいうことにはなりません。やはりシャニPとしても、例えそういう部分を世のみんなに知らしめなくても、小糸のその部分をしっかり知っていたくて、そういう舞台裏が無意味なものじゃないんだということを言いたくて、こういう言葉が出てくるんだと思います。俺もそう思います(クソデカボイス)!!やっぱりそういう小糸の頑張る姿が魅力的なのはどうしたって否定できませんし、それが結果に結びつくのを見守っていたいんだ俺は…。
そこで小糸の返してきた「自分もシャニPが知ってくれていることを知っている」というのは、先述の「サポートのサポート」みたいな発言ですが、小糸はシャニPが自分の頑張りや思いを否定する存在ではないことを知っているということだと思います。
「SNSで小糸の頑張ってるところを発信する」という提案は小糸にとっては「かっこ悪いところをさらけ出さないと応援してもらえない」という感覚を与えてしまい、シャニPは小糸の思いを無視した行動をとった形になってしまってだいぶギクシャクしました。しかしその後にはお互いにしっかりと話し合って、お互いの思いを確認したことで2人は足並みをそろえて走り出すことができています。「頑張っているところを知られたくない」という思いを抱えている小糸が、その頑張りを「知っている」と言ったシャニPの思いに対して同じように「知っている」と返したのは強い信頼を感じさせます。
シャニPはもう小糸の思いに反したような提案はしないだろうし、何より小糸自身ががそうさせないということでもあるのだろうと思います。小糸はシャニPがそういう提案をしてきたのは「受動態」の自分にも原因があるんだと反省し、シャニPに自身の思いを伝える姿勢をとれるようになりました。目標に向かって一緒に歩んでいくためにはお互いが「知っている」「知ってもらう」必要があるということで、そのプロセスを小糸もシャニPも学べたのが今回のG.R.A.D.です。きっとその姿勢はアイドルとしても活きるんじゃないかな~!頑張れ小糸!
敗者復活戦を勝ち抜き、シャニPはブチ上がっています。わかる。小糸にも喜びすぎと言われていますが、小糸の頑張りが結果に結びつくのマジで嬉しいからしょうがないんだ小糸。そしてシャニPは「『次』があるのが嬉しいんだ」と言いつつ、「でも小糸が前に進もうとし続ける限り『次』はずっとあるんだよな」と言っています。この言葉をアイドルマスターのプロデューサーの立場から引き出すの凄いな。普通これ諦めかけてるアイドルに対してプロデューサーが元気づける時に言うやつだと思うんですが、むしろ小糸がシャニPにからこういう反省を引き出しています。
小糸はその言葉に同調しつつ、「ここで優勝して、その次もずっと進んでいく」と言います。コイツ…やっぱつえーわ…。もう負ける気がしない。その頑張りたい「何か」がある限り、小糸はもう歩みを止めません。うお~行け~小糸~!!
G.R.A.D.決勝
決勝に駒を進めた小糸はかなり集中しているようです。小糸は「絶対に優勝したい」と言いながらも「優勝したら何かが大きく変わるってことはないかもしれないけど、少しは目標に近づけるかな」と言いますが、これは当然ネガティブな意味合いではありません。「G.R.A.D.を優勝する」ということの持つ意味が、「何か周囲の変化を伴う結果が出て自身の努力が意味あるものになる」ということではなく、「ずっと先にある目標のために努力して踏みしめたいひとつの通過点になる」ということでしょう。小糸はもう「受動態」なんかじゃなく、自分で目標を見据え、そこにたどり着くための歩みまで自分で考えて、何よりそういう自分のために前に進もうとしています。いいぞ小糸!お前の主人公はお前なんだ!
さあG.R.A.D.を宣言通り優勝した小糸ですが、どうやら実感が湧いていないようです。小糸は「優勝したからと言って何かがすぐに変わることはやっぱりなかった」と言いながらも、「しっかり結果が出せたことが嬉しい」と落ち着いた様子です。良かったなあ小糸…。
しかしながら、ある意味で「何かがすぐに変わることはなかった」というのは、小糸は最初からいつものように頑張っていて、それがそのまま結果として出たということでもあります。「何のためでもない練習」なんて本当は最初からありませんでしたよね、きっと。
また、確かにG.R.A.D.を優勝したことで大した変化は起きていないかもしれませんが、このG.R.A.D.で優勝するまでの過程の中で小糸は「受動態」を止めるという変化を成し遂げています。小糸はもしかしたら何かしらの結果を出して、それで周囲の環境が変わることで自身の成長を確かめられるという思いが今まであったのかもしれませんが、小糸はこの時もう既に大きな成長を遂げていますよね。それはきっと何より小糸の望んだものであったはずです。俺も知ってるよ、小糸が頑張ってそうやって成長できたんだってことを…(バカデカ感情)。
エンディング「すこしだけはねて」
エンディングでは、小糸とシャニPはどこかしらの現場に居るようです。小糸はそこで「G.R.A.D.優勝しても特段大きく変わらないとは思っていたけど、ほんとにほとんど変わらない」と少し残念そうです。まあ言うても優勝なんてしたら流石に少しは期待しちゃうよね~!そんなところも等身大で可愛らしいところではありますけど!
そんなちょっと凹み気味の小糸にシャニPは「だからこそこうやって挨拶回りするのが大事なんじゃないか?」なんて言いながら、小糸を引き連れて知り合いのディレクターさんに挨拶に向かいます。小糸はそんな元気なシャニPに引っ張られながらも懸命について行きます。可愛いね。
そうして小糸がそのディレクターさんに挨拶しようとすると、小糸が名前を述べる間もなく小糸の名前を口にします。なんと小糸の事を知っているではないですか!「G.R.A.D.で優勝したでしょ、知ってて当然」なんて言いますが、小糸はだいぶ驚いています。そしてディレクターさんは「今度はうちの番組にも遊びに来てよ」なんて言い、ひとつ新たな仕事への足掛かりを得ていますが小糸は唖然としたままです。
そんな小糸にシャニPは「こうして名前を覚えてもらえてる、それは結構大きな変化って言えるんじゃないか?」と小糸に語り掛け、小糸はやはり自分の名前が業界の関係者に覚えられていることに大きな驚きを感じていたようです。おそらくここでのシャニPはこのディレクターさんが小糸の事をちゃんと知っているだろうと踏んでいてこうしたんだろうと思いますが、その思惑は見事に的中し小糸にその頑張りの「結果」を示すことができています。これぞ俺たちのシャニP!
このことは小糸にとっては驚きであったようですが、これはシャニPの言うように紛れもない「変化」ですね。今回の物語で小糸の出した答えは「自分の成し遂げたいことは自分で決める」「そのために必要なことも自分で考える」ということで、それ故に「G.R.A.D.で勝つことはあくまで通過点であり、ここで何かが大きくは変わらない」という風に感じていました。しかし、実際にその小糸の出した優勝という結果はこうして福丸小糸の名前を大きく広めるという形になっています。
あくまでこの「結果」は小糸がなにより自分自身のこの先に続く大きな「何か」のために出したかったもので、そう思えたからこそ小糸はこれまでのように頑張ることができたのですが、その努力の結果は小糸の思っていたよりもずっと広く伝わっていますね。つまり「知ってもらっている」んです。
このG.R.A.D.編は、小糸とシャニPの2人がお互いの気持ちを「知る」ことができずにすれ違っていましたが、2人でしっかりと話し合うことでお互いに「知っている」「知ってもらう」という風にできて上手いこと前に進めたということは述べました。
そしてここでこのディレクターさんが小糸の事を「知っている」というのがとても重要ですね。あくまでここまでの物語で、この「知っている」「知ってもらう」という関係は小糸とシャニPの間でのミクロな話でしたが、このことはその形が2人の関係の外にまで波及していることを意味します。「知っている」「知ってもらう」という形にするために必要なのは、言ってみれば「知っていたい」「知ってもらいたい」という「受動態ではない」姿勢で、小糸は一連の出来事の中でそれを獲得していますが、そのことがこうやってどこかの誰かにまで「知ってもらう」形になっています。これはシャニPの言うような「大きな変化」ですね。小糸の気持ちの小さな変化が大きな変化に繋がっていくんです。
シャニPはこのエンディングで「だからこそこうして挨拶回りをするのが大事」なんて言っていますが、これもまたシャニPの「小糸の事を誰かに知ってもらいたい」という思いに基づくものです。そう考えるならば、シャニPがしてしまった例のSNS発信事件も気持ちとしては納得のいくところではありますね。シャニPとしてはやはり小糸の魅力を外に伝えたくて、その焦りからあのミスをしでかしています。シャニPは最初から「受動態」ではなかったものの、なにより大事な小糸の気持ちを「知ろう」としませんでした。しかしその中で、小糸とシャニPがお互いに手を取り合って「知っている」同士になったことが結果として、その外側にいる人間にも「知ってもらう」ことができています。
このことは当然小糸の努力が小糸の想定を超えた結果に繋がって素晴らしいということでもありますが、一方で今回失敗してしまったシャニPへの救済でもあるでしょう。ここでディレクターさんが小糸の事を知っていてくれたことはきっとシャニPにとっても嬉しかったはずです。つい先ほども書いたとおり、あくまでシャニPが望んでいたのは「小糸の事を誰かに知ってもらいたい」というもので、それは間違いなく成功したと言えますよね。シャニPも良かったなあ…上手くいって…!
そうして次の仕事が見えた小糸は嬉しそうながらもどうしようかとちょっと焦っています。いくら成長したとはいえ、まだまだこういう時にすぐ方向を決めることはできません。このことはシャニPからG.R.A.D.の話を持ち掛けられた時に出場を即決してしまったこととは対照的な表現です。
そんな小糸にシャニPは「じゃあ帰ったら今度はその次の仕事について考えよう、一緒に」と言いました。これでいいですね。もう2人とも焦って前に進もうとする必要はありません。G.R.A.D.の出場を決めた時のように焦らなくても、もう小糸の中には辿り着きたい「何か」があって、そこに向かうために一歩一歩一緒に踏みしめていけばいいんです。それが小糸の「次」に繋がります。
「いつかとべるように」なるために必要な「空で呼吸する方法」、それは「ゆううつな受動態」を捨て去り、「すこしだけはねて」見せることです。一見するとそれは小さくはねただけかもしれません。しかしその小さな跳躍が生み出した波紋は思ったよりもずっと遠く遠くまで波を作って、いつかきっと小さな「カナリヤ」の目に大きな青空と見紛うほどの大海を映すだろうと思います。そしてきっとそこには「わたし」の望んだとても素敵なものがあるはずですよね。小糸、頑張れ!精一杯!!きっともう道は開けているぞ!!
一貫して変わらぬ目的をもつということだけで人生を幸福にするというわけにはいかないかもしれぬ。しかしこのような目的は多くの場合幸福な人生のための一つの不可欠な条件である。
バートランド・ラッセル「幸福論」より
感情置き場
はぁ〜小糸最強。また今回も大成長しています。なんかもう安心です。とは言うものの、実際私はノクチルのG.R.A.D.が来る前は「まあ他のやつらは分からんけど、多分小糸だけはいつものようにシャニPがパーフェクトコミュニケーションして上手くいくだろうな〜〜!!」って思ってたのに、まさかのシャニPのバッドコミュニケーションで小糸が曇りに曇りまくるという流れになるのは中々に想定外の出来事で、結構うぐぅ(悶絶)みたいな感じになったりもしました。結構同じようになった方居ませんか?居ませんか。そうですか。
ただそうは言っても、最終的に小糸はそんな状況になってから2人で話し合ったことを通して、むしろそんなシャニPの想定すら上回る結論を出して前に進んで見せていますが、これが小糸の強さだなって思います。小糸はいざ「こうする・こうしたい、それが正しいんだ」って思えた瞬間から凄まじい馬力を発揮します。【しかえし優等生】の時もあの雛菜を振り回す程の行動力を持っていましたからね。このG.R.A.D.編ではシャニPすら引っ張って見せたと思います。やっぱ小糸は凄いよ。いつかノクチルとして最初に走り出していた透、その透の前に走り出していたシャニPすらも抜き去って走っていくような未来もあるかもしれんなんてよく思います。むしろそうあってくれ小糸。
あと「受動態」というモチーフもいいですよね。英文的に受動態を作る時は過去分詞を使いますが、まあだいたい過去形と一緒の活用になりますよね。ということはきっと小糸の「受動態」はもう「過去」なんですよね。小糸素晴らしいなお前本当にな。
ところで、またこじつけちゃうぞのコーナーなんですけど、この小糸のG.R.A.D.編も透のG.R.A.D.編と似ている部分があるようにも感じられます。
透は自分の頑張りたいという「心臓」を見つけるための物語でしたが、この小糸のG.R.A.D.編でも小糸の頑張りたい「何か」を自分自身で見つけることで走り出せるという物語になっています。やっぱりノクチルのG.R.A.D.編は何かしらの「気づき」が大切な鍵になっている感じがします。
この小糸のG.R.A.D.編3つ目のコミュである「カナリヤは歌わない」の部分で「金糸雀」という童謡を引用しています。調べてみたところおそらくこの童謡がモチーフなのだろうと思って引用していますが、これは「歌を忘れた金糸雀が歌を思い出す」という風な詞になっています。当該コミュでは2人が自分たちが焦っていて対話を忘れていたことを反省して、2人での歩み方を「思い出す」という流れでした。私はこの「思い出す」というのはやっぱり「気づき」だなという風に思っていて、そう考えると「海へ出るつもりじゃなかったし」での「風の呼び方を思い出す」という流れにも近しいものを感じます。彼女たちは昔から答えを知っていたはずなのに、それをいつしか忘れてしまっていたけれど、環境が変わっていく中で一歩踏み出してみるとそれを思い出したんですね。
ある意味で、この「思い出す」というのは「回帰」と言っていいと思うんですよね。ん…?「回」帰…?いやこれ「まわるもの」やないかい!!!というように考えることもできますよね。まあこじつけの域をでないかもですが…。この「まわるもの」というテーマ、今まで透についてのキーワードとして見ていましたが、たぶんですけどノクチル全体でかなり大事なテーマなんじゃないかなと最近思います。
小糸のG.R.A.D.編でもその「思い出す」という部分は「まわるもの」であるとも思えますし、小糸とシャニPが答えとして出した「サポートのサポートのサポートの…」という形の堂々巡り感もまた「まわるもの」であるとさえ感じます。また、シャニPが「でも小糸が前に進もうとし続ける限り『次』はずっとあるんだよな」と言ったのも、透や円香のG.R.A.D.編で見られた「終わりと始まりは渾然一体としている」という部分と共通するものを感じますが、やはりそれも「まわるもの」です。加えて言うなら、このノクチルのG.R.A.D.実装前に実装されていた【思い出にもならない】福丸小糸は「季節は巡る」というお話で、これもまた「まわるもの」なんですね。「まわるもの」とかいうワード、もしかしたらノクチル学的にハチャメチャ重要なものなのでは…?どうにもそんな気がします。
とまあ、そんな感じで存在するかどうかも分からない深い沼に勝手に嵌っていっているような気がする私でございますが、ここいらで記事を終えます。もうノクチルのG.R.A.D.実装から1ヶ月経過したのにまだ雛菜G.R.A.D.とノクチルのカードコミュ3つがまだ残っていて気が狂う!!お助け~!!しかもそろそろ3rd福岡も来るぜ!!そのうちLPも来る!!供給過剰だよほんとに。ありがとうございます楽しいです。
なんにしてもここまで読んでくれた方、もしいらっしゃるなら人生の貴重なお時間を頂きありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。それでは~。ぴゃ!