出会わない系人間が出会った人の話(序)
華がない上に悪目立ちする人間だった。
授業で差されたくない時に限って先生と目が合ってしまう。何かの代表として称賛を得ることはできず、面倒な役回りはお似合いと思われて推薦される。買い物中に店員と間違えられて他の客に質問される。チラシ配りは他の通行人を無視してでも私にチラシを押し付け、駆け込み乗車する奴はだいたい私に向かって突進してくる。そのくせパーティーでは風景。
とくに男性の99.9%には私の姿が不可視らしく、合コンでは空気、ナンパスポットでは石ころ。居酒屋のキャッチには認識されることもあるが、ホストなんて実物を見たことがないし痴漢にも遭ったことがない。あんなの都市伝説だろ。
ただ、否が応でもアイデンティティをお互いに認識する存在としての「出会い」は当然ある。人生の折り返し地点に立ち振り返れば、思い出深い顔があまた見え、忘れられない一言がリフレインする。
その中から50人を選び、エピソードを書き残す。時期も期間も関係性もバラバラだが、決して真っ直ぐでも美しくでもない私の道のりは、彼らによって花を添えてもらったのだ。
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