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キクチジュンコ / 布
大通り沿いよりも、ちょっと小道に入った路地裏のほうが心地よいカフェがあったり、隠れ家のようなお店があったりするものだ。
キクチさんの展示でお見かけした一枚の布は、まさにそのような出会いだった。
周囲には大きめの布が展示されている中で、
帯のようなテーブルランナーのような細めの布からは、通りすがりの小道のような軽やかさを感じた。
札幌を拠点として、国内外の古い布を集めて柿渋染によって制作を行うキクチジュンコさん。暮らしに寄り添った、カバンやエプロンなどを手掛けられており、そのひとつひとつが何度も染めを繰り返して作られている。
媒染の色に正解はない。染める季節によっても色には細やかな変化がある。
柿渋染の他にも、鉄や銅の媒染によって制作された作品も多い。
色との出会いもまるで一期一会のようだ。
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はじめに「細い布」と表記したが、その言葉とは裏腹にその存在は凛々しく頼もしい。
しなやかさと丈夫さ。両方を兼ね備えているキクチさんの布は我が家のテーブルランナーとして活躍いている。
(我が家の文机にぴったりの長さと幅だったのです!)
巻物のようにくるくると巻いたりするのも楽しい。
キクチさんの布で、うれしいことがもう一つ。
それは、生活のなかで作品の色を育てることができるということ。
化学媒染にはない自然本来の色の味わいがあるからこそ、それは四季と同じように変化していく。
自分の暮らしの色に染まっていく様子も、きっと楽しい。
かつては誰かの日常品として生活のなかで使用されていたもの。
その布に再び新しい色を宿して、誰かの生活へと紡がれる。
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キクチさんご自身からは、太陽のような明るいエネルギーと、柔らかい母性を感じる。
キクチさんが布や媒染に向き合う姿は、どこか家族を想う姿と似ているようだ。
小道のような布は、今日も生活へと続いている。