新型コロナクォータリーリポート 9/24


初めに

9月からタイトルを新型コロナクォータリーリポートと改題して、新型コロナの感染状況とワクチン接種状況を四半期ごとに集計して、その動向を数学的に解析している。

人口、陽性件数、死者数はWorldometer のものを利用ている。Worldometer で扱っていない国地域の統計は、Google を用いる。北キプロスの陽性件数と死者数は、政府の発表するデータを用いる(https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM)。ワクチン接種回数などは Github のデータを利用している。面積はウィキペディアのものを使っている。GNPはGLOBAL Note(https://www.globalnote.jp/post-1339.html)を、各国の情報は、Wikipediaと外務省の各国紹介ページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)を参照した。

A. 9月に赤道付近の国地域で新たな波が発生

先週は日本の第5波と世界で第3期に起こった波について考察した。世界では170ヵ国以上で第3期に大なり小なり波が発生した。この中で、陽性件数が減少している国地域は60ヵ国だった。残りは増加ないしは、あまり減少していないかのどちらかである。9月24日のデータで再確認すると、シンガポール、ジンバブエ、エリトリア、ブルンジ、中央アフリカ、コンゴ、スーダン、南スーダン、中国では9月に第3期2回目の感染の波が発生していた。また、ロシア、ブラジル、トリニダードトバゴ、ドミニカ共和国、モルジブ、ジブチ、ガボンでは第3期の間陽性件数が減少し続けてきたが、9月に入って小波が発生した。これらの波が第4期には大きな波となる可能性もある。ロシア以外は赤道に近いくに地域が多いので気候的な要因も考えらる。


A1. 現在陽性件数の上昇していると考えられる国の一覧

下の地図は9月24日時点での陽性件数の増減を表している。

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地図は mapchart.net で作成。増加中とは減少がないかあるいは一回の少ない減少を含んで3週以上連続で陽性件数が上昇しているところである。増加ストップとは、波のピークを迎たあと小さい増減が繰り返される状態、上がったり下がったりは大きな波とは言えないが増減が繰り返される状態、減少ストップとは、減少中であったが9月初めくらいから少し上昇あるいは増減が繰り返されるようになった状態、減少中とは増加がないかあるいは一回の少ない増加を不国で3週以上連続で陽性件数が減少している状態である。

65の国地域が増加中である。赤道近辺以外には東ヨーロッパに多い。増加ストップが21国地域、上がったり下がったりは10国地域あるが、ワクチン接種率が高いところが多い、減少ストップは14ヵ国地域、減少中が100ヵ国地域ある。陽性件数ほぼ0の国も11国地域ある。


A2. 日本の第6波は水際対策次第

日本の第5波は、引き続き減少し、今週の減少率は50%以上で、先週のほぼ半分の陽性件数となった。第5波の始まる直前に比べればまだ2倍になっている。昨年7月に発生した第2波とよく似た振る舞いをしている。発生時期(7月第1週と第3週)と平均増加率(41%と44%)がほぼ同じである。第2波ではGoTo キャンペーン、第5波ではオリンピックという人の動きが大きくなるイベントがあった点も同じである。減少率は第5波の方が高いのはワクチンのおかげであろうか。もし第2波と同じなら、あと1ヶ月ほど減少が続いて、1日平均の陽性件数が1000人程度まで下がると予想される。ここから先は外務省の水際対策次第では再び陽性件数が増える可能性がある。

GoTo キャンペーン同様、オリンピックはあまり感染数増加には影響しなかったと考えられる。21年7月に来日したオリンピック関係者はNHKによれば4万2681人になる。そのうち430人で陽性が確認された。しかし、選手村での生活は一般からは隔離されている状態なので、彼らからの感染の可能性は少ないと思われる。しかし、7月の空港検疫による陽性件数は364名(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21431.html)で、厚労省がデータを取り始めてから最大となった。8月も361名で2番目に多かった。こちらが問題になる。下のグラフは、空港検疫で発見された陽性件数である。

空港検疫-Sheet 1-1

データは厚生労働省から(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21431.html )。日本国籍と外国籍とを分けているがあまり意味はない。入国者の陽性件数が20年7月、20年11月、21年4月、そして21年7月に陽性件数が極大になっている。ちょうど、第2波がら第5波の発生した時期と同じである。

20年5月以来入国しようとする者は、国籍を問わず入国72時間以内に入手した検査陰性証明書を提出する必要がある。証明書を得るために受けた事前検査では彼らは陰性であったはずである。しかし、空港の検査では陽性になった。ということは、(1)証明書を偽造した、(2)事前検査以降に感染した、あるいは、(3)事前検査の時にすでに感染していたが、感染初期のため、PCR検査で感知できなかった、のいずれかである。

PCR検査陰性は新型コロナウイルスを持っていないと証明するものではなく、検知できるほど大量のウイルスを持っていないということを示すものである。下のグラフは新型コロナに感染してからの体内でのウイルス量の時間的変化である。横軸が日数、縦軸がウイルス量を表す。

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感染してから5日目くらいに最大になり、この時発症する人が多い。しかし健康な人などは発症せずそのままのケースも多い。また、感染力も実は発症直前が一番強い。発症するとウイルス量は減り、感染力も薄れる。PCR検査ではこれ以下ならは感知できないウイルス量というのが存在する。グラフで示した赤線がその量で、感染してから2日以内は陰性になることが多い。1発症してから1週間ほどでウイルス量が赤線よりも下になる。陰性、つまり、治ったというこであり、他人にもうつらない。新型コロナに感染してから1〜2日はウイルス量も少なくPCR検査では感知できない。この時期にPCR検査をやっても陰性とでてしまう。空港検査で陰性となっても、感染していないとは限らないので、10日前後の隔離期間が設けられている。それは、発症してもしなくても、10〜12日ほどで感染しないレベルのウイルス量に下がるからである。14日にしているのは個人差があるから、念のために。

ところが昨年秋はビジネストラックという名の下、アジア各国からの入国に対してではあるが、陰性証明を提出すれば、入国時の検査不要、自主隔離不要ということにした。本来なら空港検査で陽性を確認できたケースがあったかもしれないが、それをを見逃してしまった、また、それらの人々を自由に行動できるようにしてしまった。一応状態を毎日厚労省に報告する義務はあったのだが、それをも守らない入国者が多いという報道もあった。昨年11月12月の入国者の陽性件数は合わせて700名強であるが、実際はもっと多かったと考えられる。その結果が12月からの第3波となって現れた。実際、第3波はビジネストラックの停止とともに収束した。

今年は、引き続き入国者には自主隔離を要請するらしいが、有効なワクチン接種者には条件付きで、隔離期間が短くなる。また、指定国からの入国者は特別な場所での待機が必要であったが、これも、不要になる。ワクチン接種が進んでもなお、世界で波が発生していることからも、ワクチンの接種していても感染する変異株が発生している可能性はとても高いので、次の外務大臣、厚労大臣には水際対策は厳格にやってもらいたい。そうしないと、昨年の二の舞になる。

B. 7月3日以降のランキング

7月3日以降のランキングをしばらくやっていなかったので再開したいと思う。


B1. 陽性件数はアメリカがダントツ

次のグラフは第38週(9/18-24)の7月3日以降の陽性件数ランキングの上位50位である。

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アメリカがダントツの1位で、2位インドのほぼ3倍となっている。8月末の時点で4位だったイギリスが順位を上げ、ブラジルと入れ替わって3位になった。7月の陽性件数で世界1位だったインドネシアは、8月以降が減少に転じ、イランと入れ替わって6位に下がった。トルコ(11位→8位)、タイ(12位→10位)、日本(16位→15位)、フィリピン(18位→16位)、ベトナム(20位以下→18位)のアジア勢が8月末から順位を上げ、スペイン、フランス、南アフリカ、コロンビア、バングラデシュ、イラクが順位を下げた。20位以下ではキューバ、ドイツ、イスラエル、パキスタン、セルビア+コソボ、カナダ、コスタリカ、ウクライナ、ベラルーシが8月末から順位を上げている。

次のグラフは第3期の陽性件数上位50国の陽性件数の増減がどれだけ続いたかを表している。

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左へ伸びれば減少期間が長くなり、右へ伸びれば増加期間が長くなる。世界では6週連続で減少中である。50カ国中26カ国が減少中である。増加しているのは、ブラジル、ロシア、トルコ、ウクライナ、ベラルーシとなっている。A章の地図では、−1であっても長い増加期間を持つところは増加にした。

B2. 人口100万人あたりの陽性件数トップはワクチン未接種

次のグラフは第3期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数トップ50国である。

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1位のグアダルーペと2位のマルティニクはカリブ海のフランス海外県である。グアダルーペは7月末に増加率120%超の巨大な波があった。増加は5週間続いた。ピーク時の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は2911件になる。すでに減少しているが、9月24日でもまだ235件の陽性がある。マルティニクも同じ頃、増加率43%の波が発生した。ピーク時の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は1610件、9月24日では304件まで減少した。致死率はグアダルーペが1.27%で世界平均以下、マルティニクが1.72%で世界平均より上である。両県ともワクチン接種は始まっていない。グアダルーペの一人当たりGDPは約2万7000ドル(2017年、INSEE (October 2018). "Insee Analyses Guadeloupe". Retrieved 5 November 2020.)マルティニクで、2万4000ドル(2006年、INSEE-CEROM. "Les comptes économiques de la Martinique en 2006". Retrieved 2008-01-13.)と世界ランクでは30位から35位に相当するので、貧困が原因でワクチン接種を開始していないというわけではなさそうである。ワクチン接種をしていないので巨大な波が発生した、と言われれば、それを否定する証拠はないが、ワクチン無しでも収束する、という仮説も却下できない。


B3. ブラジルは死者数も再上昇し始めた

第38週の死者数は58,268人で先週からは7%の減少である。これで4週連続の減少である。21年第3期の累計は75万5221人となった。累計では475万人を超えた。次のグラフは第3期の死者数上位50国である。

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長らく1位だったインドネシアがとうとうアメリカに1位の座を明け渡した。インドネシアは第31週(7/31~8/6)をピークに死者数が減少している。一方、アメリカは同じ第31週の死者数のランクは8位(陽性件数は3位)であった。6月末に規制緩和を実施してから2週間後の第28週(7/10-16)から死者数が増加している。ただし、アメリカの陽性件数は第38週(9/18-24)からは減少傾向となったので、10月中旬くらいから死者数も減少するだろう。

次のグラフは第3期の死者数上位50国の死者数の増減がどれだけ続いたかを表している。

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上位50ヵ国中39ヵ国では死者数が減少中(ー2以上)かあるいは増加が止んでいる(ー1)。アメリカ以外では、ブラジル、イギリス、ウクライナ、ルーマニア、エクアドル、コスタリカで2週以上連続で死者数が増加し始めている。この中ではイギリスが増加率が小さくなってきているので、来週には減少に転じると考えられるが、他の国は陽性件数も上昇傾向なので、さらに増加する可能性がある。特にブラジルは増加率が高いので要注意である。先ごろWHOから要注意株に指定されたミュー株の発祥の地であるコロンビアとは境界を接しているので、ミュー株の影響かもしれない。ただし、コロンビアは陽性件数も死者数も減少傾向である。


B4. 致死率はアフリカで上昇している

第3期の致死率は1.57%で、先週の1.56%より0.01ポイント上昇した。致死率の微増は陽性件数の減少が大きくなったためである。

次のグラフは第3期の致死率上位50国である。

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第36週(9/4-10)にイエメンが台湾を抜いて1位となった。時折減少するがイエメンの死者数は第31週から増加に転じ、平均増加率は40%、最大増加率は200%であった。今週は先週よりは減少した。陽性件数は減少傾向、つまり、分母が大きくなるので、今後しばらくは致死率がさらに高くなる。

イエメンはアラビア半島の最南端に位置し、東にオマーン、北にサウジアラビアと国境を接している。また紅海を挟んで西にエリトリア、ジブチと、アデン湾を挟んで南にソマリアと向かい合っている。イエメンの人口は約3000万人ほどで、面積は約53万㎢で日本よりも広い。一人当たりのGDPは620ドル(180位)で最貧国のひとつである。他のアラブ諸国と違って石油の産出量は極めて低く、日本と大差ない(2012年でイエメン16万バレル、日本14万バレル)。昔はコーヒーの輸出で栄えた。南西部にモカという港があるが、ここから積み出されたコーヒ豆がモカと呼ばれた。この豆はカカオの香りがするので、普通のコーヒーにチョコレートシロップを混ぜたものをカフェモカと呼ぶようになった。

イエメンのワクチン接種は5月9日と非常に遅かった。アストラゼネカを接種していたが、9月12日からジョンソンを追加した。接種率は1.0%と非常に低い。人口100万人あたりの1日平均の接種回数は21回と世界平均の4434.4回と比べ極端に低い。ワクチン接種が始まった国では、現在接種が停止しているいくつかの国を除いて、世界で2番目に低い(最低はコンゴ民主共和国)。

また、リベリアが第35週の1.6%から、11.89%と急増して、72位から3位になった。アフリカと南米で致死率は相変わらず高い。

B5. インドのワクチン接種回数が世界1位になった。

第38週(9/18-24)のワクチン接種回数は世界全体で2億1600万回行われた。これは先週よりも300万回ほど少なくなっている。それでも第3期のワクチン接種回数は世界全体で29億回3700万回を超えた。累計では61億回を超えた。第3期だけで第1期第2期を合わせたものと同じくらいの接種回数になると予想される。次のグラフは第3期のワクチン接種回数上位50ヵ国である。

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上位は9月3日の順位とあまり変わらない。次のグラフは第3期のワクチン接種回数上位50ヵ国の第38週の接種回数である。

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インドの接種回数が中国のほぼ3倍となっている。インドは9月に入ってから接種回数をそれ以前のほぼ3倍に増やし、その数を維持している。一方中国は9月に入ってからものすごい勢いで接種回数を減らしている。中国では累計で22億回近い接種を行なっており、完了率は70%を超えている。従って、ワクチンを打つべき人の数がすくなったということが理由の一つに挙げられる。また、中国では接種開始以来シノファームらシノバックなど中国製のワクチンのみを摂取し続けてきたが、8月26日からはついに欧米系のファイザーを接種開始した。7月にはBBIBPという世界20ヵ国以上に提供していたワクチンの接種を取りやめているので、中国製ワクチンに何らかの不備が発生したとも考えらる。


ワクチン接種率は44.27%、完了率は32.43%で先週よりもそれぞれ2.0%、1.3%数値が上がった。下のグラフはワクチン接種率上位50ヵ国である。

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地域別で見れば西ヨーロッパ29国地域と圧倒的に多い。ついで、オセアニアの5、カリブ海の4となっている。一方下のグラフはワクチン接種率下位50ヵ国である。

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地域別ではアフリカが38ヵ国あり圧倒的である。このほかに15の国と地域で接種を開始していないが、その中の4つの国と地域がアフリカである。次のグラフは地域別のワクチン接種率である。

C. アフリカのワクチン格差の原因は実感がないからではないか

C1. ワクチン格差一層拡大

9月26日付で「ワクチン格差一層拡大 アフリカ、接種完了3% 新型コロナ」と言う記事が時事通信から配信された。記事では、二回接種率の高い国としてG7のカナダ、イタリア、イギリス、フランス、日本、アメリカを上げ、これらの国はブースターすでに実施あるいは計画をしていると書いてある。一方、アフリカでは二回接種率が3.6%であるとしている。供給不足や国内問題から接種が進まない国が多い。グティエレス国連事務総長の言葉を引用して、貧困者層の多いアフリカへ公正な配分がなされていないと結んでいる。

まず、ワクチンの中にはジョンソン製や一部のシノファーム製のように1回で接種が完了するものもあり、2回接種率は完了率よりも低くなる。例えば南アフリカでは9月24日時点で約836万人が接種を完了している。完了率は13.9%である。南アフリカではジョンソンとファイザーを接種している。ジョンソンは1回接種、ファイザーは2回接種なので、完了した836万人の中には1回しか接種していないものも含まれる。Github では南アフリカのワクチン別の接種回数を発表してないので、それぞれ50%づづと仮定すると、2回接種したものは418万人しかいないということになり、2回接種率は6.9%と大幅に下がる。2回接種率を完了率として使うのは正確ではない。

C2. 完了率の比較

GitHub データからは二回接種率はわからないので、完了率で比較する。下のグラフは地域別の完了率である。

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西ヨーロッパが70%近くで最大である。次がアジア東の54%、アメリカ北の48%である。アフリカは東で僅かに1.9%である。西が5.7%、南が4.5%である。アフリカ全体では4.1%になる。

次のグラフは、完了率の上位50ヵ国である。

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47位のイスラエル以上が完了率60%以上である。47ヵ国中23ヵ国が西ヨーロッパで圧倒的に多い。オセアニアとカリブ海から5国地域づつ、中東やアジア東からも4国づづランクしている。アフリカでもセーシェルが72%モーリシャスは62%と高い国もある。いわゆる先進国であるG20参加国は45カ国中18ヵ国が完了率60%以上である。

次のグラフは完了率の下位50ヵ国である。

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15の国地域でまだ接種を開始していない。完了率0のパラオとトケラウは接種を開始したが、接種を完了したものはまだ出ていないようである。50ヵ国中32ヵ国がアフリカである。そのほかオセアニアとカリブ海で5国地域づつりいストされている。


C3. ブースター

WHOはブースターを格差の象徴としているようだが、Github で確認できる範囲では世界20ヵ国で始まっている。下の表はブースター実施国の接種状況である。

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記事ではアメリカはブースター準備中とあったが、遅くとも8月26日には始まっていた。また、イギリスはすでにブースターが始まっているとも書かれていたが、Github にはブースターが始まっているとの記載はなかった。おそらく記者がアメリカとイギリスを取り違えたのだろう。

ブースター接種回数1位のトルコでは、ワクチン接種回数の約20%がブースターになっている。イスラエルでは78%がブースターである。他にもチリ、ドミニカ共和国、ウルグアイ、ハンガリー、セルビア、アイスランドでブースターが20%以上となっている。ハンガリーは100%を超えている。ハンガリーは8月31日以前からブースターを始めていたのは確実であるが、いつから始まったのかが不明である。従って、第3期以前に始めた分んも含まれていると考えられる。ドイツでは昨年12月から、フランスでは2月からブースターを実施している。

ブースター接種国の人口100万人あたりの1日平均陽性件数は13ヵ国で平均より高くなっている。連続減少週数からフランス、イタリア、ドイツ、マルタ、タイが減少傾向(ー2以上)を示しているが、他は一時的な減少(ー1)あるいは上昇となっている。ブースター接種国のワクチン完了率は高い。タイなど完了率が低くてもブースターを始めたところはある。従って、ブースターを始めた理由は、陽性件数が急増したためであると考えられる。接種が完了した人でも念のためもう一回打っておけば、という考えからであろう。インフルエンザでも毎年ワクチンを打つ人は多い。実際、接種率が30%を超えると、ワクチンの摂取回数を減らさなけれは、陽性件数が伸びないことを、数週間前の投稿で指摘した。陽性件数が減少傾向を示しているフランス、イタリア、ドイツ、マルタ、タイはブースターによってワクチン接種回数の減少を少なくしていることの影響があるかもしれない。


C4. 完了率の低い国は陽性件数も少ない

一方、完了率の低い国の第3期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は以下の通りである。

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レユニオン、サンマルタン、サンバルテルミー、仏領ギアナ、グアダルーペ、マルティニクのまだワクチン接種を開始していないフランスの海外領土とリビア(こちらも元フランス領)を除けば、世界の平均よりもはるかに少ないところばかりである。日本の基準で言えば、緊急事態宣言など必要のないレベルである。次のグラフは完了率の低い国の陽性件数増減の連続週数である。

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エリトリア、ブルキナファソ、シリア以外は、上がったり下がったりするところもあるが減少傾向である。

C5. ワクチンの種類を増やしても接種回数は低いまま

過去何回か指摘しているが、アフリカでは多くの国でしばしばワクチン接種が止まることがある。大抵は翌週に再開されるが、中には数週間続く場合もある。第38週ではタンザニア、アルジェリア、セントヘレナ、シエラレオネ、ニジェール、ガンビア、モーリタニア、リベリア、ベナンで接種回数が0であった。このうち、セントヘレナは16週間。ベナンは2週連続、リベリアは4週連続で接種回数が0である。接種開始以来継続してワクチンを接種しているアフリカの国は12しかない。このうち9ヵ国で複数のワクチンを接種している。

アフリカでは1種類しかワクチンを接種していない国地域が20ある。うち15がアストラゼネカのみ、3がシノファームのみ、ジョンソンとスプートニクのみが1づつである。これらの国地域の第3期のワクチン接種回数は862万回であった。全世界の接種回数の約0.3%である。人口100万人あたりの1日平均の接種回数は約560回で世界平均の4434回の約8分の1である。2種類以上のワクチンを接種している国は33ヵ国あり、それら国地域の人口100万人あたりの1日平均の接種回数は約1673回で、1種類しか接種していない国の約3倍になっている。

1種類しかワクチンを接種していない国はアフリカ以外では世界に27ヵ国あるがそのうち17ヵ国がオセアニア、7がカリブ海と小さな島国に集中している。これらの国の第3期の接種回数は787万回とアフリカよりは少なめである。しかし、これは人口が少なく、それほど多くの回数を必要としないからである。人口100万人あたりの1日平均の接種回数にすれば、4381.5回で世界平均にほぼ近い。半数以上の国で完了率60%以上を達成している。

したがって、ワクチン接種種類数に関係なく、アフリカでは人口に比例した分だけワクチン接種されていないことがわかる。


C6. ワクチン接種回数の低さに貧困はあまり関係ない

記事では接種が進まない原因として、(1)供給不足、(2)行政上やインフラの問題を挙げている。また、グティエレス国連事務総長の言葉を引用して、ブースターなど、裕福な国がワクチンを独占しているから貧困国に配分されないと主張している。国の貧困を表すのに一人当たりのGDPがよく用いられる。次のグラフはアフリカの一人当たりGDPとワクチン接種率の相関を表したものである。

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R2=0.3367なので、統計的には弱い相関があると言える。GDPが高くてもフランス領のマヨットやレユニオンのように接種を開始していないところもあり、GDPが低くてもジンバブエやコモロのように10%以上の完了率をもっているところもある。従って、アフリカでワクチン接種が進まないのは、貧困以外にも原因があること考えられる。

まず供給不足であるが、BBCはアフリカには新型コロナやそのワクチンに対する誤解、例えば、新型コロナにかかるのは白人だけとか、ワクチンは毒性が強いとか考えている人が少なくなく、そのためワクチン接種を希望するものが少ないと指摘している(https://www.bbc.com/news/health-57028747)。例えば、コンゴ民主共和国ではCOVAXを通して受け取った170万回分のワクチンのうち130万回分を期限前に返却したと書かれている。これは接種回数の低さは供給側の責任ではないことを示している。

次に行政上やインフラの問題であるが、アフリカは割と国土の広い国が多い。交通事情は一般に良くない。高速道路はもとより鉄道すらない国もある。あったとしても管理がが十分でなく、満足に物資も運べない状態である国が多い。国交省のホームページ(https://www.mlit.go.jp/kokusai/kokusai_tk1_000047.html)アフリカでは「大規模な交通インフラ整備への需要が見込まれています」と書かれていることからも、交通インフラはほぼ未整備であることは間違いない。ワクチンは首都あるいは大都市の空港へまず運ばれる。しかし、国土が大きい場合、首都あるいは大都市からワクチンを地方都市へ運ぶ手立てが無いに等しい。首都近辺でのみワクチン接種が進んで地方では全く接種されないケースも考えられる。

また、感染状況もそれほどひどくない国地域が多く、ほとんどで増加傾向ではないことはすでに指摘した。ワクチン接種にお金を使うよりも他のことに使うと判断して、接種回数を抑えている可能性も考えられる。

アジア東では第2期から第3期にかけて大きな波が発生した。下の表は各国の波の発生週とその増加率、7月2日と9月24日のワクチン接種率を表したものである。

asia1-接種率

7月2日はモンゴル、シンガポール、中国を除けば30%未満ばかりであったのが、9月24日は60%70%となっている。各国とも大規模接種をし始めた結果である。マレーシアやカンボジアのように増加率の低い国の接種率の伸びが一番高いのは、周辺の感染爆発を目の当たりにして、ワクチン接種にさらに力を入れたものと考えられる。また、波の始まった週が遅いところほど、接種率が低くなっている。これは、大規模接種の開始が遅れたためと考えられる。これらの国も第4期に入れば接種率も高まると予想される。日本もワクチン接種を開始した2月3月はなかなか接種回数が伸びず、4月2日の接種率は僅かに0.7%で、OECDでは最低などと揶揄されていたものだが、第2期に発生した第4波で一気に24%、第3期の第5波で68%にまで推し進めた。

アフリカも南部では接種率が比較的高い、これは南アフリカで感染が急増したので、近隣諸国でワクチンの必要性が認識されたからとも考えられる。アフリカでは、陽性件数が他の地域に比べ低い。もし、東部や西部でもこのような感染爆発はあれば、接種率は増えるかもしれない。しかし、ワクチン接種の目的は新型コロナ撲滅である。このまま、アフリカで感染爆発が起こらなければ、接種を急ぐ必要はないのではないだろうか。

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