新型コロナクォータリーリポート 11/19
初めに
いつものようにデータ集計をしていると、あららっな統計があったので、紹介したいと思う。まずは、陽性件数が増え続けている国とそうでない国を確認しておく。
上の地図で、茶色に塗られたところは10週間以上陽性件数が増え続けているところで、ヨーロッパ東に集中している。赤は3週間以上10週間未満増加しているところで、ヨーロッパ西、アメリカ南、アフリカ西に多いが、世界各地にちらほら見られる。橙色は陽性件数がピークを迎え、今後減少に転じる可能性の高い国である。水色は10週間以上、青は3週間以上10週間未満減少を続けているところで、オセアニア、アジア、アフリカ、カリブ海などに多い。黄色は陽性件数の減少が底をうったと思われるところで、今後上昇する可能性が高い。桃色は減ったり増えたりの幅が大きいところである。
色の説明の横にある数字は国の数である。10/29号で同じ地図を載せたが、その時に比べ増加中長期増加中の国の数は60から68に増え、減少中長期減少中の国の数は100から89に減った。アメリカは中米とカリブ海の一部を除いて、陽性件数の減少が止まったところが増えた。また、アジアでポツポツと陽性件数が増加している国が増えた。アフリカでは、内陸部で陽性件数の減少が止まった。
A1. 21年の陽性件数は20年の2倍を超えた。
21年46週目(11/13-19)までの累計陽性件数は約2億5690万6194件であった。20年は8458万4132件に対し、21年は11月19日までで1億7232万2062件あり、20年の2倍を超えた。11月12日時点では約1.996倍だったので、小数点以下1桁にすれば、2倍になるけれど、今週は正真正銘2倍以上となった。
次のグラフは21年の陽性件数が20年に比べると何倍になった国地域がどのくらいあるかを表しているしている。
この統計で取り上げている世界231国地域のうち136国地域で21年の陽性件数が20年の2倍以上となった。100倍以上 Or 無限大が13あるが、セントヘレナ(∞)を除いて、全てアジア東かオセアニアにある。最も倍数が高いのはラオスで1460倍であった。ラオスの20年の陽性件数は41件だったが、21年は11月19日の時点で約6万件となっている。次がフィジーの1070倍(49→52453)である。1000倍超はこの2国だけである。ミクロネシア、パラオ、トンガは昨年の陽性件数が0なので倍率は無限大であるがフィジーなどと違い21年の陽性件数は1桁台である。10倍以上100倍未満は26国地域あるがカリブ海から12とほぼ半数を占める。一方20年からの陽性件数が0の国地域9を含めて、21年の陽性件数が昨年の半分以下の国地域は16あるが、そのうち9国地域がオセアニアである。
同じく21年46週目までの累計死者数は515万4907人であった。20年は194万5701人、21年は320万9206人で、21年の死者数は20年の1.66倍である。次のグラフは21年の死者数が20年に比べると何倍になった国地域がどのくらいあるかを表しているしている。
21年の死者数が20年の2倍以上となったのは126国地域で、陽性件数よりは少ない。しかし100倍以上 Or 無限大が19と陽性件数の時より多い。特に、昨年は死者数が0であったが今年は死者数が0でなくなった倍率無限大のところが14ある。アジア東とオセアニアからは3づつの他、カリブ海から5、アジア中、ヨーロッパ西、アフリカ南から1つづつある。この中で最大の死者数が出たのが、カンボジアの2891人である。4桁の死者を出したのはカンボジアだけで、後は3桁台が5、2桁台が4、一桁が4となっている。一方20年からの死者数が0の国地域23を含めて、21年の陽性件数が昨年の半分以下の国地域は33あるが、そのうち13国地域がオセアニアである。オセアニアは感染がほとんどないか、あるとすればものすごい勢いかのどちらかになっている。
A2. 島国ほど昨年比の伸び率が大きい。
次のグラフは陽性件数の昨年比の各クラスのうち島国の占める割合である。
島国とは5大陸上に国境を持たないところで、世界に79国地域がある。カリブ海は全て、オセアニアはオーストラリア以外は全て島国である。イギリスはアイルランドと地上の国境を持つが、アイルランド島は大陸ではないのでアイルランド共々島国である。香港はメインは島だが、半島部がユーラシア大陸上で中国と国境を接しているので島国にはしなかった。
倍率が0に近くなるほど、あるいは高くなるほど島国の割合が多くなる。死者数も同じ傾向である。日本を含めた多くの島国では20年の新型コロナ対策は成功していた。いち早く、入国規制を行ったからである。しかし、日本の国際的な人の往来再開に向けた段階的措置やカリブ海のトラベルバブルなど、経済復興を目指してせっかちな緩和をおこなったところは大規模な感染の波が発生した。そのため島国は両極端になりやすい。
B. 21年4期(10/2−11/19)のグラフを数学的に解析
B1. 東地中海近辺で陽性件数が減少し始め、それ以外で増加がはじまりかけている
21年46週の陽性件数は373万958件で、45週よりも11.2%増えた。これで5週連続の増加である。伸び率も44−45週のものよりも大きくなった。前年同週(20/11/14-20)と比べれれば10.4%の減少となっている。4期の陽性件数は2184万2314件となった。4期の人口100万人あたりの陽性件数は56.5件で、3期に比べて約20%の減少である。しかし、増加が続いているので最終的には4期の陽性件数が3期よりも多くなる可能性が高い。
次のグラフは大陸別の21年4期(40〜46週、10/2−11/19)の陽性件数の推移である。
赤は46週、青は40〜45週を表している。
ヨーロッパ東のグラフは数学で言うところの、上に凸の形をしている。45週まで10週間以上陽性件数が増加し続けてきたが、ここ3週間は徐々に伸び率も小さくなり、46週は減少となった。トップにある増加中減少中の地図でも、ヨーロッパ東では減少中あるいは増加ストップの国が多くなったので、このまま減少傾向になると予想される。ロシアやルーマニアなど東部は減少傾向となるだろうが、ポーランドやクロアチアなどの西部は、ヨーロッパ西からの影響も受けているので、もうちょっと増加が続くと思われる。
ヨーロッパ西のグラフは、東とは逆に下に凸(の右側)の形をしている。つまり、陽性件数が増え、その伸び率も徐々に大きくなっている。新型コロナでは、陽性件数の増加は8週間から10週間続くことが多い。ヨーロッパ西では増加が始まってから7週間経った。今週あたりが変曲点でグラフが上に凸の形になる、つまり、来週から増加はするが、率はだんだん小さくなって、12月中にピークを迎えると予想される。しかし、この感染拡大ががヨーロッパ東から移動してきたとすれば、増加期間がもうちょっと長くなり、ピークは来年1月末になる可能性もある。ヨーロッパ西では全域で増加し始めた。D章でヨーロッパ西の国別の感染状況を考察する。
アメリカ北のグラフも下に凸になっている。グラフの形からすれば、今後は陽性件数の増加と伸び率の拡大も見込まれる。アメリカ、カナダ、パナマで減少が止まったが、これからは上昇に転じると思われる。メキシコなど中米では減少が続いているが、減少率が下がってきており、程なく減少ストップ、そして、増加となる可能性が高い。
カリブ海のグラフは下に凸である。しかしアメリカ北とは違って、グラフはまだ上昇傾向とはえない。3期のトラベルバブルによって発生した波が大体収束したものの、ハイチやドミニカ共和国などカリブ海北部で感染が拡大しているからである。特にケイマン諸島は20年45週(11/6-13)以来1年ぶりに死者が出た。ケイマン諸島では21年の8月までほぼ完璧な感染対策をしていたが、9月以降感染急増となった。同諸島にとっては初めての感染の波である。また、人口の多いハイチやドミニカ共和国で増加しているので、陽性件数はこれ以上は下がらず増加傾向になると思われる。年末の休暇のシーズンが始まるので、寒いカナダやアメリカから、暖かいカリブ海を訪れる者はは増えるだろう。トラベルバブルはまだ続いているようなので、やっと収束した地域で感染拡大しなければ良いが。
アメリカ南はグラフに多少の上下があるがほぼ水平になった。21年3期の間続いていた長い減少が止まったと考えられる。21年4期の陽性件数は90万件以上あり、これで止まってしまっては感染収束には程遠い。北部のカリブ海沿岸では減少が続いているが、21年4期陽性件数世界4位のブラジルでは減少が止まり、コロンビア、ペルー、ボリビア、チリ、パラグアイ、アルゼンチンでは上昇傾向となった。今後は再び増加傾向となる可能性が高い。
アジアのグラフは東と中は下に凸の形になる。インド、インドネシア、タイ、日本など3期から長期に減少している国が多いが、4期になって、マレーシアで減少が止まり、韓国、ベトナム、ラオス、スリランカ、アフガニスタンで感染拡大となったために減少のペースが鈍ったからである。アジア西は、トルコでようやく増加が止まった。そのため、引き続き直線的に減少している。
アフリカのグラフは多少の上下はあるがいずれも線形に減少している。しかし、グラフを3期のものと合わせると、アフリカ西と南は下の凸の形になる。これは、4期になってどちらの地域も内陸部で減少が止まったり、増加傾向になったからである。沿岸部は引き続き減少しているので、何か理由があるのかもしれない。
オセアニアも陽性件数が減少中であるが、上に凸から下に凸に変わったばかりで、まだ底にはなっていないようである。オセアニアはオーストラリアとパプアニューギニアの2国で陽性件数の90%を占める。両国とも減少傾向であるが、ニュージーランドで急増中で、両国の減少分を打ち消している。
まとめると、ヨーロッパ東、アフリカ東、アジア西という東地中海近辺で陽性件数の増加が止まり、それ以外の地域で感染拡大が始まったか、あるいは始まろうとしているといえる。
B2. 死者数はヨーロッパ西で急増中である。
21年46週(11/13-19)の死者数は5万1099人で、45週よりも1.5%増えた。21年4期は毎週5万人前後で推移している。前年同週(20/11/14-20)と比べれば27%の大幅減少となっている。4期の死者数は34万9348人となった。4期の人口100万人あたりの死者数は0.9人で、3期に比べて約19%の減少となった。4期に入ってから増えては減るを繰り返しており、増えてはいないものの減少の兆しも無い。
下のグラフは大陸別の21年4期(40〜46週、10/2−11/19)の死者数の推移である。
ヨーロッパ東のグラフの高さが他と比べ極端に大きいが、グラフは上に凸の形になった。まだまだ増加中ではあるが、伸び率は徐々に小さくなっている。陽性件数は45週がピークだったので、死者数は今週あるいは翌47週がピークになるであろう。陽性件数の減少傾向につられて、ロシアやルーマニアなどの東側で死者数の増加が止まったと思われる。しかし、ヨーロッパ西と国境を接するポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、スロベニア、クロアチアでは引き続き増加中である。
一方、ヨーロッパ西のグラフは下に凸の形で上昇中である。上昇中なのはここだけである。46週の死者数は4885人で、20週(5/15-21)以来半年ぶりの4000人台である。陽性件数同様、ヨーロッパ西全域で死者数が増えている。陽性件数が増えて続けているので、死者数も増加が続くと思われる。
アメリカ北のグラフはヨーロッパ東に次いで高い。減少中であるが下に凸の形である。つまり、減少のペースが鈍ってきている。陽性件数が増加に転じたので、今週あるいは翌47週以降に死者数が増加すると考えられる。
カリブ海のグラフは下に凸の形となってきた。21年3期の感染爆発がようやく治まったきたが、ドミニカ共和国やジャマイカなどで死者数の減少が止まった。これらの国では死者数は増加すると思われる。
アメリカ南のグラフも下に凸の形である。陽性件数が増加傾向なので、今後死者数も増加傾向になる可能性が高い。ボリビア、チリ、コロンビアで増加中、ペルーとブラジルで減少が止まったようである。
アジアはどの地域も下に凸の形になった。東と中は増加傾向、西は減少傾向である。東では韓国、ラオスで死者数が増加中、フィリピン、ベトナム、マレーシアで減少がストップしたことが原因である。アジア中ではインドで43週(10/23-29)に死者数が前週比2.5倍に急増した。以降は順調に減らしているが、急増前の水準には戻っていない。アジア西はヨルダンとレバノンを除いて死者数が減少中である。
アフリカはどの地域のグラフもも直線的に減少中である。グラフの傾きは南が一番大きく、西、東の順である。東は死者数がそれほど減少してはいないといえる。
オセアニアは死者数が少ないので、グラフが振動しているが、基本的には減少中で、上に凸の形になっている。46週に急増が見られるが、これはパプアニューギニアで前週比7.5倍の急増があったためである。同国では45週の死者数が極端に少ないので、45週に発表するはずだった分がいくつか46週に発表されたと考えられる。パプアニューギニアは死者数の増加が止まったといえる。オセアニアの他の国地域は減少中である。
まとめると、ヨーロッパ西では死者数が増加がしばらく続き、アメリカ北南、カリブ海で死者数が増加に転じると思われる。その他の地域では死者数の減少が続いている。
B3. 接種回数が増えない時は陽性件数は減少し、接種回数が増えたときは陽性件数が減らない
21年46週(11/13-19)の接種回数は2億456万2663回で、45週よりも2.9%減った。21年4期は毎週2億回前後で推移している。4期の全接種回数は13億3218万回あまりとなった。4期の人口100万人あたりの接種回数は3443回となり、3期に比べて約30%の大幅減少となった。接種率は53.07%、完了率は41.46%である。ここしばらく、ワクチン接種が増えると陽性件数が減るという関係が続いてきたがそれが停まったようである。
下のグラフは大陸別の21年4期(40〜46週、10/2−11/19)のワクチン接種回数の推移である。
アジア東の接種回数が飛び抜けて多い。43週目までアジア東とアジア中は同じくらいの接種回数であったが、44週目以降アジア東で接種回数が急増した。これは中国でブースターが始まったからである。ブースターは中国以外でもシンガポール、カンボジア、マレーシア、韓国、タイで始まっている。日本の12月から始まるという報道があった。接種回数は台湾とフィリピンは増えたが、台湾では陽性件数が増え、フィリピンでは陽性件数は減ったが死者数が急増した。ワクチン接種回数が減少中のインドネシア、タイ、日本では感染縮小が続いている。同じく減少中のシンガポール、マレーシア、韓国で陽性件数、死者数が増え、マレーシアで減少が止まった。増えているところはブースターをしているので、ブースターがよくないのかもしれない。接種が止まったラオスでも陽性件数、死者数が増えている。
アジア東のワクチン接種回数と陽性件数のグラフと比較すると、接種回数が増えない時は陽性件数は減少し、接種回数が増えたときは陽性件数が減らないという状況になっている。
アジア中は接種回数のグラフがほぼ横ばいである。陽性件数のグラフと比較すると、アジア東と同様に接種回数が増えないので陽性件数が減少しているといえる。アフガニスタン、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタンといった完了率の低い国で接種回数が増えている。接種回数が増えている国もそうでない国も、陽性件数、死者数は減少している。完了率がアジア中で一番高いブータンでは接種が止まった。陽性件数は3期に比べ90%減で、死者も14週間出ていない。2番目のモルジブではブースターが始まった。こちらでは陽性件数は微減であるが、4期の100万人あたりの1日平均は206件で世界平均の56.5件の3倍以上である。
アジア西の接種回数は線形に減少中である。陽性件数も線形に減少中である。46周は接種回数が増えたが、同時に陽性件数も増えた。16ヶ国中11ヶ国で接種回数が減少している。この中で陽性件数が増えたのはレバノンとヨルダンだけである。両国は死者数も増えている。パレスチナとシリアでは陽性件数は減ったが死者数が増えた。また接種回数が増えた5ヶ国中キプロスだけが陽性件数を増やしているが死者数は減らしている。
ヨーロッパ東の接種回数は直線的に増加中である。しかし、接種回数が増えているのは、ルーマニアやブルガリアなど東部が中心である。頭部は陽性件数を確実に減らしている。ポーランドやアルバニアなど西や南へ行くほど接種回数を減らしている。西は陽性件数を増やしているが、南は減らしている。死者数は接種かキスの増減に関係なく全体的に増えている。
ヨーロッパ西は43週から接種回数が急増した。おそらく陽性件数が増え続けているためにあらためてワクチン接種を実施したと思われる。多くはブースターで、接種回数の半分以上がブースターである。しかし、陽性件数は減らず、むしろ増加率が大きくなった。また、死者数も3期に比べ平均3倍増のペースで増えている。
アフリカ東は接種回数が減ったり増えたりしているが、平均すればほぼ横ばいである。しかし3期に比べれば約3倍のペースで増えている。アジアと同様に陽性件数は減少中である。4期の接種回数が最も多いのはエジプトの1865万回で、ヨーロッパ西のどの国より多い。しかし人口100万人あたりの1日平均は3624回ほどで、世界平均より少し高いぐらいである。完了率も13%しかない。これでも3期の接種回数のほぼ3倍のペースで接種回数が増えている。しかしエジプト以外は、1日平均は1700回で世界平均の半分程度である。それでも3期に比べれば、増えているところが多い。スーダンではワクチン接種が止まった。陽性件数や死者数も0なので、単に発表していないだけであると思われる。
アフリカ西は接種回数のグラフが上に凸の形でピークが過ぎ、接種回数は減少中である。3期に比べても微減となった。アフリカ西26ヶ国地域中17国で中国製のワクチンを接種している。ちょうど中国でブースターによる接種回数急増があった時に、これらの国では接種回数が減少している。関係があるかもしれない。アフリカ西の陽性件数や死者数は海に面した国では減少しているが、内陸国で増加している。
アフリカ南は接種回数のグラフが上に凸の形である。接種回数は3期の約77%増しのペースで増えている。ほとんどの国で3期よりも接種回数を増やしている。3期より減っている国でもここ2、3週間は接種回数を増やしている。陽性件数は、アフリカ西と同じく、内陸部で増えている。
アメリカ北では44週(10/30-11/5)で突発的に接種回数が増えた以外は、毎週ほぼ変わらない。アメリカでは3期に比べ50%増のペースで増えているが、メキシコなどその他の国では5%から80%の減少率で接種回数が減っている。接種回数が増えたアメリカでは陽性件数の減少が止まり、死者数は増えている。カナダ接種回数が減っているがアメリカ同様陽性件数の減少が止まり、死者数は増えている。一方、接種回数を減らしている国で陽性件数も死者数も減らしている。
カリブ海での接種回数は、増加傾向であったが、10月末に急激に減少した。しかし、ここ2週間は増加傾向に戻った。ドミニカ、ケイマン諸島、セントビンセントグレナディーン、ハイチなど接種回数の増えたところで陽性件数が増えている。
アメリカ南の接種回数は増加傾向であるが46週は半減した。しかし3期のペースよりも1%ほど低いペースで接種か続いている。4期は人口100万人あたりでは1日平均6419回接種しており、世界で2番目に多い。しかし、陽性件数は減少が止まったかあるいは増加しているところが多い。
オセアニアも接種回数は線形に減少している。しかし、4期は人口100万人あたりでは1日平均7071回接種しており、世界で1番多い。陽性件数は同様に減少している。
C. アフリカ南各国からの旅客だけを隔離入国拒否しても無意味
報道では、南アフリカで新たな変異株が見つかり、WHOが要注意変異株にリストしたらしい。日本政府は11月26日付で、アフリカ南のエスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、南アフリカ、レソトを、27日にザンビア、マラウィ、モザンビークを水際強化措置に関わった指定国地域にリストした。今まで検疫所での待機日数が0であったが、今後は10日間に延長された。また、アメリカなどでは入国禁止措置を出した。しかし、あまり効果はないと思われる。
なぜなら、アフリカ南各国からの入国者を入国禁止にしたとしても、それ以外の国からの入国者はそのまま入国できるからである。空港利用者は客にしろ従業員にしろワクチン接種は完了しているし、72時間以内のPCR検査では陰性である。しかし、そんなものは、新型コロナウイルスを持っていないという証明にはならない。PCR検査時にすでに感染していたが、感染直後で陰性だった可能性がある。また、検査後に感染したケースも考えられる。ワクチンを接種していても感染しないとは限らない。むしろワクチン接種者では新型コロナウイルスの体内の増幅が抑えられるので、症状が軽くなると考えられている。つまり無症状の感染者となる可能性が高い。ワクチン完了率が増えて、空港でもマスクをしないものが多い。つまり、空港にオミクロン株に感染した人がいれば、アフリカ南以外からの渡航者にも十分感染する可能性がある。彼らは感染したばかりなので、空港検査ではほぼ100%陰性で、見た目も健常者と変わらない。しかもアフリカ南からの渡航者ではないので、検疫所で待機することもなくそのまま入国できる。基本的に自由に行動できるので、入国後発症するまでの潜伏期間に多くの人に感染させる可能性がある。
昨年末のアルファ株、今年初めのデルタ株の時も一部の国に対し入国禁止などの措置を出したが、結局は世界中で大きな波が発生した。最終的に、緊急事態制限やロックダウンを実施したのでその波が収まったという経緯もある。無症状の感染者は本人も感染しているかどうかわからないので、無意識に感染させてしまうとWHOも指摘している。
しかし、感染していたとしても2週間でウイルスの感染力はほぼなくなる。したがって、アフリカ南からの渡航者を入国させても、入国後2週間の隔離をすれば問題はないと考えられる。したがって、入国者一律に10日ほど隔離する方が望ましい。
オミクロン株の発生した南アフリカは、4期の陽性件数は2万3981件で世界では76位である。3期に比べて95%の大幅減であるが、ここ2週間は10%、47.5%の率で増えている。44週までは17週連続で減少していたので、減少が止まった、むしろ増加傾向になったと考えられる。また4期に1857人の死者があった。世界では27位である。3期に比べて87%の減少である。45週は少し増えたが、46週は再び減少で、実質17週連続で減少中である。しかし、陽性件数が増加に転じたので、来週中には死者数も減少が止まり、増加傾向となる可能性が高い。致死率は7.7%と非常に高い。これは、陽性件数の減少が大きいからである。
南アフリカの4期のワクチン接種回数は696万5852回であまり多くはない。人口100万人あたりの接種回数は1日平均2356回で世界全体の約3分の2程度である。3期からは10%の減少となった。4期の接種回数も減少中である。完了率は22.8%と低い。
日本政府の水際措置対策にリストされた国は、全てアフリカ南で、B章で述べたように、陽性件数、死者数は減少中である。しかし冒頭の地図でも指摘したように、南アフリカだけでなく、内陸部のコンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、マラウィ、ルワンダでも陽性件数の減少が止まった。ナミビアやモザンビークはまだ減少中であるが、南アフリカと隣接しているので、これらの国にもすでにオミクロン株が入り込んでいる可能性がある。
疫学的にオミクロン株は感染力が高いと思われている。南アフリカで陽性件数の減少が止まったのは、オミクロン株の影響かどうかはまだわからない。陽性件数の減少が止まったので、オミクロン株はちょっと注意した方が良いかもしれない。
そういえば数ヶ月か前にもペルー由来のミュー株で騒いでいたことがあった。ミュー株も感染力が高い可能性があると指摘されていたが、統計的にはそのような証拠は見当たらなかった。発生国のペルーとその周辺国では順調に陽性件数死者数を減らしていたからである。致死率も下げていた。なので、それほど慌てる必要はないと結論したが、結局その通りになった。
D. ヨーロッパの感染の中心が東から西へ移っている
11/12号ではヨーロッパ東に感染状況を報告した。今週は感染の中心がさらに西へ移動した。今号ではヨーロッパ西がどうなったのか、これからどうなんるのかを考察する。
D1. ヨーロッパ西ほぼ全域で感染拡大している。
下の表はヨーロッパ西の陽性件数の指標達である。
4期陽性件数ヨーロッパ西1位は、水際強化対策に関する指定国にリストされているイギリスである。46週は27万8851件の陽性件数が確認され、4期は累計で192万4007件となった。これはアメリカに次いで世界2位である。46週の陽性件数は45週から13.4%増えた。人口100万人あたりでは、平均で毎日574件の陽性件数が確認されている。これは世界平均(56.5回)の10倍以上である。イギリスの陽性件数は上がったり下がったりを繰り返している。ジョンソン首相は特に対策は施さないと述べていたので、今後年末にかけて昨年同様に大きなん編みが発生する可能性もある。
4期陽性件数ヨーロッパ西2位はドイツである。ドイツは水際強化対策に関する指定国にはリストされていない。46週は31万8975件とイギリスより多くの陽性件数が確認され、4期は累計で104万2092件となった。これはアメリカ、イギリス、ロシア、トルコに次いで世界5位である。ドイツが46週の陽性件数はアメリカに次いで世界2位で、過去最悪だった45週を30%以上も上回る。これで5週連続の陽性件数増加である。
ヨーロッパ西28ヶ国中12ヶ国が4期の陽性件数トップ50にランクされている。イギリス以外全て順位が上がっている。4期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数は、スペインとバチカン以外は全て世界平均よりも上である。加えて、3期からの伸び率が100%以上となっているところは、28カ国中8カ国ある。多くが過去最悪のペースで増えている。先週のヨーロッパ東に比べれば幾分感染状況は良いが、東はようやく収束の兆しを見せているのに対し、西はまだこれからもっと伸びますよという感じである。
ヨーロッパ西では5〜7週間連続で陽性件数が増加中であるところが多い。ということは、40週目(10/2-10/9)から陽性件数が増加し始めたということになる。増加が続いている最中に1、2週くらい陽性件数が増減することはよくある。例えば、フィンランドはまだ1週しか増加していない。これは、45週は減少となったからである。しかし、44週まで6週連続で増加していたので、また45週46週の平均は44週よりも大きい。そこで、45週も増加と見做して、実質8週連続増加と考える。この実質増加週数で見れば、ヨーロッパ西で実質増加が始まったのは39週目(9/25-10/1)で、フィンランド、デンマーク、ドイツ、オーストリアからである。デンマークを除けば、ロシア、ポーランド、チェコ、ハンガリーと国境を接する。40週目にオランダなど、41週目にフランス、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルなど、42週目にスペイン、ノルウェー、スイス、イタリアなど、45週はノルウェー、46週はイギリスで増加になった。ノルウェーやイギリスは増加傾向になったっと断定するにはちっと早いが、周りが増加しているので、今後増加すると思われる。実は、ベルギーは37週から、アイスランドは38週からとちょっと早めに増え始めたところもある。しかし大まかには、ドイツから放射状に広がっていくように見える。
表の1番右の列は4期陽性増減係数で、46週の人口100万人あたりの1日平均陽性件数を4期の人口100万人あたりの1日平均陽性件数で割ったもので、1より大きければ過去数週間の平均より多くの陽性件数が確認されたことになり、2より大きければ、2倍以上に増えたことになる。世界全体では1.2となった。ヨーロッパ西全体では1.7でこれは世界最大である。先週よりも0.2ポイント上昇した。先週取り上げたヨーロッパ東は1.2で2番目に高いが、先週からは0.07ポイント減少した。他にはアメリカ南北が1以上で、他の地域は全て1未満である。各国で規制され始めたアフリカ南は0.7でそれほどの増加は見られない。ヨーロッパ西では、マン島だけが減少、イギリスが横ばい、他は全て増加でとなった。ドイツやフランスなど16国地域で係数が2以上になっている。
C2. ヨーロッパ西はヨーロッパ東と国境を接する国で死者数が増えている。
下の表はヨーロッパ東の死者数の指標達である。4期の陽性件数の順に並べている。
4期死者数ヨーロッパ西1位、2位は陽性件数同様イギリスとドイツである。イギリスが6927人の死者数があり世界11位である。ドイツは4820人で世界13位である。陽性件数に比べて順位が低い。3位は陽性件数では8位のギリシャの2308人で、フランスやイタリアよりも多い。
46週の死者数1位はドイツで1349人であった。45週よりも22%の増加で、5%減少したイギリス(1038人)と入れ替わった。3位はギリシャの552人である。先週より33%の増加である。
4期の人口100万人あたりの1日平均の死者数は世界では0.9人、ヨーロッパ西では1.1人で20%ほど高くなっている。世界平均の0.9人以上になったところがイギリス、ドイツ、ベルギー、オーストリア、ギリシャ、アイルランドなど9ヶ国ある。
ヨーロッパ西で一番高いのは、死者数3位のギリシャで4.5人となっている。世界では32位である。ギリシャと国境を接する北マケドニアが7.1、ブルガリアが18.3(世界2位)と高いので、感染が両国から広まった可能性がある。ギリシャは致死率が1.1%とヨーロッパ西で唯一1%を超えた。世界平均は1.6%なので、それに比べれば少ない。
3期からの伸び率が100%以上となったところは14国地域となった。一番高いところはモナコの無限大で、次がフェロー諸島の1600%であるが、4期の死者数はそれぞれ3人、9人である。2番目はオーストリアの476%増である。
死者数は4ないし6週連続で増加中のところが多い。感染してから2、3週間経ってなくなるケースが多いからである。
ヨーロッパ西の4期死者増減指数は1.5で世界で最も高い。2位がヨーロッパ東の1.2、3位がアジア東の1.01で、死者右羽が増えているのはこの3地域である。ヨーロッパ西では4期死者増減指数が1.0以上のところは28国地域中17ある。2以上もドイツ、オランダ、ベルギー、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、フェロー諸島、モナコと8国地域がある。
ヨーロッパ西は世界でも死者数の少ない地域であった。しかし21年4期はかなりの勢いで死者が増えている。致死率は0.44%と世界最低水準を維持しているが、これは陽性件数が特に多くなったためである。特にギリシャ、オーストリア、ドイツのヨーロッパ東と接している国でひどくなっている。
D3. ブースターで接種回数は増えた
下の表はヨーロッパ西のワクチン接種回数の指標達である。
ヨーロッパ西の完了率は70%以上である。一番低いモナコでも58%に達する。したがって4期の接種回数は減り、3期に比べれば38%減少した。国別に見ても、増えているのはイギリス、オーストリア、チャネル諸島、マルタ、ジブラルタルの4国地域のみで、あとは全て減少している。80%以上減少したところも北部を中心に6ヶ国ある。モナコでは接種を取りやめたようである。4期に入って突然の感染拡大で、接種回数は増えた。なので、ブースターが増えたことになる。ブースターを実施している国は13国ある。4期の増減指数はブースターを実施している国の方がそうでない国よりも高い。ブースターを実施していな国ではしすうも1未満、つまり、接種回数が減少傾向である。も高くなっている。ブースターは数も率もイギリスが一番多い。しかし、陽性件数も死者数も増加傾向である。