「ワクチン接種率が50%を超えれば感染が落ち着く」のは本当か
初めに
過去数週間分のデータを解析して、地域的な偏り、と来週どうなるかを予想している。人口や国地域、陽性数死者数はWorldometer のものを、ワクチン接種数はGithub のものを1次データとして利用して、陽性数、死者数、ワクチン接種数の2021年の累計、7月3日から9日までの合計とその増加率、連続増加週数、人口100万人あたりの数をリストしている。ランキングは2021年の累計陽性数を元に作成したが、増加具合などは別にベスト10を作成した。
「ワクチン接種率が50%を超えれば感染が落ち着く」という発言があったので、接種率が50%を超えた国で感染が落ち着いたのかどうかを検証した。通常は2021年新型コロナランキング 7/16 としての投稿になるが、今回はこの検証部分を強調したいと思う。
A. オリンピック中に陽性数2億件突破
7月10日から16日までの新規陽性数は世界で345万件で、2021年の累計感染数は1億575万5638件になった。新規陽性数は4週連続増加中である。新規陽性数の増加率は15.8%で、増加率は8週連続で上昇している。2020年からの累計では1億9000万件強であるが、このペースでいけば、オリンピック開催期間中に2億件を超えるだろう。
7月16日の世界各国の2021年累計陽性数によるランキング(100位まで)は下の表のようになった。
A1. ヨーロッパで陽性数が上がり始めた。
今週は順位の変動が激しく、上位100カ国のうち変動がなかったのは34の国と地域で、普段の週より10国以上少ない。
上位100カ国では、32カ国で順位が上昇した。地域別内訳はアジア11国、アフリカ9国、南米が1国、北米が3国、ヨーロッパが8国である。先週はヨーロッパではジョージアのみが順位を上げたが、今週はそのジョージアも含めて8ヵ国で順位を上げている。西ヨーロッパが5ヵ国、東ヨーロッパが3国となっている。アフリカは9ヵ国中、北部アフリカが3国、南東部アフリカが5国ある。
この32ヵ国中18ヵ国は先週も順位を上げている。アフリカ7ヵ国、アジア6ヵ国と、アジアアフリカに連続して順位を上げる国が多い。順位が上昇した32ヵ国中22ヵ国(69%)が中国製ワクチン使用国である。また。ヨーロッパは西から、イギリスやポルトガルから、スペインやフランス方向へ、感染が広まっていると書いたが、今の所その通りになっている。
反対に順位が下がった国は34ヵ国あった。内訳はアジアが7、アフリカが3、南米が2、北米が1、ヨーロッパが21である。圧倒的にヨーロッパに多い。しかし、21ヵ国中、今週の新規陽性数が先週を下回ったのはウクライナ1国のみで、他の20国では、今週の新規陽性数が先週よりも、少ないところで6.5%、多いところで84.2%も増えている。新規陽性数が増えたのに、順位が下がったということは、順位が下がらなかった国はそれ以上の新規陽性数を出していることになる。
アジアで順位の下がった7ヵ国中、6ヵ国が中東である。この中で新規陽性数が増加したのは、レバノン(45.8%)とカタール(5.3%)の二つで、クウェート、パレスチナ、バーレーン、オマーンでは減少した。アジアで順位の上がった国のうち、アラブ首長国連邦とバーレーンは実は新規陽性数を減少させている。サウジアラビアは増加したが、増加率は0.9%と低い。従って、アラビア半島では新規陽性数が減少しつつあると言える。
南米の二つはウルグアイとパラグアイで、同じ南米のコロンビア、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルーでは順位はそのままだが、新規陽性数は先週よりも下げている。ベネズエラは順位を上げたものの新規陽性数は減らしている。それゆえ、南米でも新規陽性数が減少しつつあると言える。
中国製ワクチンを使用している国は上位100ヵ国で51ヵ国あるが、そのうち、22ヵ国(43%)で順位が上昇した。また、32ヵ国(63%)で新規陽性数が先週から増加している。
A2. 東南アジア、中米、アフリカ西部で陽性数の増え方が大きい
7月10日から16日の新規陽性数上位10ヶ国は次のようになった。( )内は2021年累計陽性数順位、新規陽性数、+ーは前週からの増加率、矢印一つで1個のランク変化
1。インドネシア(13位) 324,891、+43.1%、8週連続増加中 ↑↑
2。ブラジル(3位) 287,610、−13.6%、3週連続減少中 ↓
3。イギリス(8位) 274,278、+34.9%、10週連続増加中 ↑
4。インド(1位) 269,231、−8.3%、10週連続減少中 ↓↓
5。アメリカ(2位) 218,440、+66.5%、4週連続増加中 ↑↑↑
6。ロシア(9位) 174,781、+1.7%、7週連続増加中
7。スペイン(12位) 163,030、+57.8%、4週連続増加中 ランク外
8。イラン(11位) 141,818、+27.3%、5週連続増加中 ↑↑
9。コロンビア(7位) 129,713、−25.6%、2週連続減少中 ↓↓↓↓
10。南アフリカ(18位) 137,681、−19.1%、10週連続増加でストップ ↓↓↓
28。日本(28位) 17,217、+40.5%、3週連続増加中 ↑↑↑
インドネシアとイギリスがまた順位を上げた。アメリカも大幅増である。テキサスやフロリダなどの南部で大幅に増加している。1ヶ月ほど前規制緩和を実施したニューヨークやカリフォルニアで新規陽性数が30%以上増加している。先週まで10週連続で新規陽性数を増加させていた南アフリカは今週は20%近く減少した。南アフリカでは4週連続で増加率を減らしているので、しばらくはこの傾向が続くと考えられる。アルゼンチンがランク外に落ちた。替わってスペインが60%近い増加率で上がってきた。
29の国と地域で、7月10日から16日の新規陽性数が0件であった。このうち、北朝鮮などの13ヵ国は昨年からの累計でも陽性数が0件のままである。また、タンザニアなど4ヵ国は2021年の新規陽性数が0件を継続している。残りの12ヵ国も累計陽性数も少なく、順位はいずれも190位以下である。ワクチン接種を開始していない国も10ヵ国ある一方でフォークランドなど接種可能な者には接種が完了したと思われる国もある。
今週新たに新規陽性数が0件になった国はない。反対に、カメルーン、マルティニク。モンセラートでは先週新規陽性数が0件であったが、今週は0件ではなくなった。しかし、カメルーンとマルティニクは7月9日の週だけが0件で、他の週では2桁あるいは3桁の新規陽性数を出している。また、順位もそれぞれ103位、147位と高い。従って、その週の新規陽性数の報告をしなかっただけであると考えられる。今のところ修正はされていない。これに対しモンセラートは20週間ほど新規陽性数が0件を維持していた。
新規陽性数の1か月ごとの平均を取るとカメルーンは減少しているが、マルティニクは増えている。カメルーンはアフリカの中部にあり、マルティニクはフランスのモンセラートはイギリスの海外領土でカリブ海にある。
増加率がプラスの(新規陽性数が先週より増えた)国と地域は先週より25増えて、143になった。100%以上増加した(新規陽性数が2倍以上になった)国と地域は33、30%以上増加したところも51ある。ここ1、2週間で減少から増加に転じた国地域が41ヵ国地域と約半数に上る。一方増加率がマイナスとなった国と地域は、先週から22減って63になった。増加率−30%以上となった国と地域は20にとどまる。これらの国地域の地域的分類は、下のグラフのようになる。
アジアで30%以上での増加率を持つ国はは16カ国あるが、そのうち中東は、イスラエルとレバノンの2国だけである。東南アジアが7ヵ国があり一番多い。アフリカも西部の国が多い。また南米は0である。
A3. イギリス帝国で感染拡大中
7月10日から16日の人口100万人あたりの新規陽性数上位10カ国は下のようになった。( )内は累計陽性数順位、今週の人口100万人あたりの新規陽性数、先週からの増減、今週の陽性数
1。バージン諸島(181位) 5,500.3、+3,486.7、1,172、4週連続増加中
2。チャネル諸島(163位) 1,131.3、+569.6、1,390、6週連続増加中 ↑↑↑↑↑↑↑
3。フィジー(129位) 912.6、+237.4、5,770、8週連続増加中
4。キプロス+北キプロス(98位) 815.8、+158.0、6,947、4週連続増加中
5。セーシェル(125位) 801.0、–385.5、555、 ↓↓↓
6。ジブラルタル(175位) 644.7、+449.6、152、2週連続増加中 ランク外
7。ボツワナ(95位) 639.4、+404.6、10745、2週連続減少でストップ ランク外
8。チュニジア(39位) 616.3、+30.6、51,539、9週連続増加中 ↓↓
9。イギリス(8位) 574.0、+148.3、274,278、10週連続増加中 ↑
10。オランダ(22位) 570.3、+386.7、68,562、2週連続増加中 ランク外
133。日本(28位) 19.5、+5.6、17,217、3週連続増加中 ↓↓↓↓↓↓
1位のバージン諸島はさらにこの数字を上昇させ、五千人を超えてしまった。日本に換算すると、70万人の新規陽性数があったことに匹敵する。現地ではさぞや混乱していることだろう。ここと、2位のチャネル諸島、6位のジブラルタルがイギリスの海外領土である。フィジー、セーシェル、キプロス、ボツワナは旧イギリス領。オランダは王室同士で姻戚関係と、イギリス帝国関連が上位を占める。日本は、この数字を上昇させたが、順位は下がった。つまり、日本以上にこの数字を上げた国がかなりいるということである。
世界の人口100万人あたりの新規陽性数は62.9人で、先週より6.7人増えた。先週より8多い、61の国と地域で、この数字が100以上であった。このうち42の国と地域でこの数字が上昇している。
B. ヨーロッパはこれから死者数が増える。
7月10日から16日までの死者数は56,663人で、先週より15.8%増加した。その結果7月16日までの2021年累計死者数は2,158,402人となった。2021年累計陽性数に対する、累計死者数の割合(致死率)は2.04%と先週より0.01%減少した。
下の表は7月16日の世界各国を2021年累計陽性数のランキング(100位まで)である。
100位までの国で順位が上がったところは、20ヵ国あった。内訳はアジアが11ヵ国、アフリカが7ヵ国、南米2ヵ国である。また順位の下がったところは、44ヵ国あった。ヨーロッパが21と半数近くを占める。ただし、ヨーロッパでは、ここ1、2週間で新規陽性数を増加させたところが多く、死者数の増減はは新規陽性数に3ないし4週間遅れで追従するので、ヨーロッパではこれから死者数が増加する国が多くなるだろう。すでに死者数の増加のはじまったイギリス、ポルトガルでは、死者数が先週より50%以上増加している。
B1. 死者数0の国地域の多くで死者が発生
7月10日から16日の死者数上位10ヶ国は次の通りである。( )は累計死者数の順位、今週の死者数、+ーは前週からの%増減、連続週数
1。ブラジル(1位) 8,723、−10.2%、4週連続減少中
2。インドネシア(12位) 6,766、+32.7%、7週連続増加中 ↑
3。インド(2位) 5,950、−2.5%、8週連続減少中 ↓
4。ロシア(6位) 5,367、+8.7%、6週連続増加中
5。コロンビア(7位) 3,602、−10.1%、3週連続減少中
6。アルゼンチン(8位) 3,010、+8.8%、2週連続減少でストップ
7。南アフリカ(15位) 1,898、−1.1%、5週連続増加でストップ
8。アメリカ(3位) 1,898、+22.7%、5週連続減少でストップ
9。バングラデシュ(33位)1,461、+19.2%、9週連続増加中
10。メキシコ(5位) 1,282、+6.0% 2週連続増加中 ランク外
47。日本(26位) 97、−15.7%、8週連続減少中 ↓
南アフリカは新規陽性数と死者数が同時に減少に転じた。先週までの増加率に比べ今週に減少率がかなり低く、新規陽性数は減少に転じたばかりなので、来週は、死者数が増える可能性もある。
75の国と地域で今週の死者数が0人であった。このうち北朝鮮など13ヵ国は昨年から陽性数が0件なので、死者数も必然的に0人である。また、バチカンなど14ヵ国は陽性数は0件ではないものの、死者数は2020年からの累計でも0人である。タンザニアなど、昨年は死者を出したが、今年はまだ死者数が0人である国も5つある。
シントマルテン、サンマルタン、仏領ポリネシア、バルバドス、香港、ガボン、ニジェール、イエメン、ノルウェーの9の国と地域で今週死者数が0になった。サンマルタンは先週(7月9日)だけ26人の死者が出た。サンマルタンは2021年累計で1500件近い陽性数を出しているが死者が出たのは初めて。陽性数が0の週もたびたびあるが、0の週の翌週はいつも3桁近い数になる。おそらく、何らかの理由で報告できなかった分を翌週まとめて発表していると思われる。平均すれば毎週約50件づつ陽性数が報告されている。6月に入ってから、カリブ海の島々では陽性数も死者数も増加傾向にある。一つの島をサンマルタンとに分するシントマルテンでも6月に入って初めて死者が出ている。しばらく死者が続くかもしれない。
イエメンとノルウェーは4月半ばから、徐々に死者数を減らしていって、今週ゼロになった。他の国は元々死者数が少なく、死者0人の週も多い。来週はまた0でなくなるかもしれないが、一桁台前半の数字が繰り返されると思われる。ただしノルウェーはヨーロッパでの感染再発を受けて、新規陽性数とともに死者数も急増する可能性がある。
また、13の国と地域で先週は死者数0人であったが今週は0人でなくなった。多くは0を含む一桁台の数字が繰り返されている。最大はスーダンの16人である。
今週の死者数が1000人以上の国は13ヵ国ある。死者数が先週より減少したのは僅かに5ヵ国である。減少率もせいぜい15%と低い。一方、ミャンマー、タイ、ナミビア、アフガニスタン、ジンバブエ、キューバ、カザフスタン、ザンビアは累計死者数順位が50位以下と低いが、今週の死者数は30位以内と高くなっている。アフガニスタンとザンビアを除いて、死者数は先週よりも増加しており、増加率も高い。アフガニスタンとザンビアは、死者数が減少しているが2、3週間前までは増加傾向であり、その時の増加率は100%お嬢であった。
B2. カリブ海諸国で死者数が増加中
7月3日から9日までの人口100万人あたりの1日平均の死者数のランキングは次の通りである。( )内は累計死者数順位、今週の人口100万人あたりの1日平均死者数、先週との差、今週の死者数。
1。ナミビア(71位) 26.93、+10.53、488 ↑
2。バージン諸島(189位) 23.47、+14.08、5 ↑↑↑↑
3。チュニジア(26位) 13.92、+3.5、1,164 ↑↑
4。セーシェル(151位) 10.10、+5.77、7 ランク外
5。コロンビア(7位) 10.00、−1.13、3,602 ↓
6。アルゼンチン(8位) 9.42、+0.76、3,010 ↑
7。スリナム(116位) 9.41、−2.41、39 ↑
8。バハマ(141位) 7.55、+6.09、21 ランク外
9。パラグアイ(27位) 7.36、−6.07、372 ↓↓↓↓↓↓
10。南アフリカ(15位) 5.97、−0.07、2512 ランク外
124。日本(28位) 0.11、−0.02、97、↓↓↓
世界の人口100万人あたりの1日平均の死者数は1.03人で、前週より0.03人増加した。人口100万人あたりの死者数が2人以上の国は36ヶ国ある。先週よりも1ヶ国増えた。地域別の内訳はアフリカが7、南米が11 北米が7 アジアが8、オセアニアが1、ヨーロッパが2となっている。南米には14の国と地域があるがそのうちの11の国で死者数が2人以上である。
B3. 致死率も上昇した
致死率とは、新型コロナウイルスに陽性で亡くなった人たちの、陽性数に対する割合である。この数値が高ければ、新型コロナに感染した時に死亡する確率が高くなる、ことを意味する。感染症などではその危なさを表す指標である。しかし、現地の医療事情にも左右されるために致死率が高いからといって、危険なウイルスが蔓延しているとはいえない。
新型コロナの場合は、2020年前半では病理がよく分かっておらず、それに対する薬もなく、また、患者が急増したために、診察すら受けられないも場合もあり、いわゆる、手遅れになることが多く、致死率は5%あった。特にフランスで20%近い致死率を出すなど、ヨーロッパでは10%であった。医療事情も落ち着いた現在は2%前後で推移している。
従って致死率は、その数字の大きさでなく、昨年と比べて増えたかどうかで判断すべきであろう。
2021年7月16日致死率の高い国は下のとおりである。( )内は累計死者数順位、致死率、2021年死者数。
1。バヌアツ(201位) 33.33%、1
2。イエメン(108位) 15.52%、756
3。スーダン(86位) 9.46%、1,308
4。ペルー(4位) 8.80%、93,369
5。シリア(92位) 8.30%、1,186
6。メキシコ(5位) 7.45%、89,621
7。ソマリア(112位) 6.28%、651
8。エジプト(34位) 6.07%、8,774
9。ボスニア・ヘルツェゴビナ(45位) 5.99%、5,580
10。台湾(109位) 5.19%、756
11。スロバキア(31位) 4.95%、10,274
12。ブルガリア(30位) 4.80%、10,565 ↑
13。エスワティニ(115位) 4.46%、485 ↓
14。アフガニスタン(52位) 4.44%、3,887 ↑
15。コモロ(137位) 4.30%、137 ↓
16。ハンガリー(20位) 4.21%、20,348
17。北マケドニア(57位) 4.13%、2,977 ↑
18。ニジェール(145位) 4.07%、88 ↓
19。ウガンダ(74位) 3.74%、2021 ランク外
20。ルーマニア(23位) 3.70%、16,484
12位と13位、14位と15位、17位と18位で入れ替えがあった。いずれもアフリカ勢が順位を落としている。相手も致死率は下げているが、エスワティニ、コモロ、ニジェールはもっと下げている。つまり、死者数が少なかったことを意味する。同じアフリカでもウガンダは死者数を急増させている。
C. 4人に一人は少なくとも一回ワクチンを接種している
7月10日から16日までの間に、世界全体で2億3000万回が接種された。先週よりは約1200万回増加した。累計では3,611,095,940回となった。今週はニウエで新たにワクチン接種が開始された。ニウエはオセアニアにある独立国で、世界で2番目に人口の少ない国である。今のところ新型コロナウイルス陽性の報告はない。GitHubによればワクチン接種は6月21日から始まっているらしいが実際の接種者報告は29日が最初である。すでに国民の72%以上が接種を受けている。接種ワクチンはアストラゼネカである。
これで、ワクチン接種が実施されていない国は20となった。そのうち13カ国地域で2021年に陽性数が少なくとも1件確認されている。レユニオン、仏領ギアナ、マヨットのフランス海外領土は陽性数が1万件以上ある。
ワクチン接種人数は先週より9000万人以上増え、2,038,010,489人と、20億人を超えた。接種率は26%弱で四人に一人はワクチンを少なくとも一回接種したことになる。ワクチン完了者数も6500万人ほど増え、998,540,842人で、10億人まであと少しとなった。完了率は12.5%を超え、八人に一人はワクチン接種が完了した。接種人数と完了者数を公表していない国は接種人数=接種回数とし、完了者を0にして計算した。また過去に公表している場合はその数字を使った。接種人数は接種回数よりも少なくなるので、実際の接種人数はこの統計よりも少ない。また、完了者も0というわけではないと思われるので、実際の完了者数はこの統計よりも多い。
ワクチンを接種した人たちのうちの半分ほどが完了している計算になる。接種が一回ですむジョンソンのワクチンを接種している国や接種率の高い国は、完了している人の割合が高く、接種回数が少ない国では完了している人の割合は少ない。先週までワクチン完了者数が0人であったイエメンで完了者が出た。現在完了者が0人であるところも16ヵ国になり、そのうち8ヵ国がアフリカで、5ヵ国が太平洋の島国である。ワクチン完了率が最も高いところはジブラルタルで115.72%になる。人口より多い住人がワクチン接種を完了している。完了率50%以上の国地域は先週より2増えて、24カ国となった。完了率10%未満は24減少して、105国・地域となった。
ワクチン接種は地域的な偏りが大きい。西欧はバチカンとチャネル諸島を除いてどこも接種率が50%以上になった。東欧で50%を超えるのはハンガリーとチェコのみである。5%のところもある。ロシアを含む旧ソ連構成国でEUに加盟していない国が25%以下と特に低くなっている。中東はアラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、イスラエル、サウジアラビア、以外はどこも接種率が25%に満たない。中東を除くアジアはシンガポール、モンゴル、ブータン、中国、香港、マカオ、韓国以外では25%未満となっている。中南米はチリやウルグアイなど70%近い接種率を持つが、約半数の国が25%未満となっている。オセアニアは半数以上の国で接種率が25%未満である。アフリカは90%以上の国が接種率10%未満である。
C1. シノファームは感染の少ない国で多く使われる
先週2週間以上ワクチン接種が滞っている可能性があると指摘した18ヵ国のうち、次の4ヶ国で接種が再開された。国名の後の数字は接種停止期間前後の人口100万人あたりの1日平均の陽性数と接種回数の変化、接種ワクチン。
ベラルーシ 83.8→99.6、143,487→2,042、スプートニク、シノファーム
モーリシャス 8.7→0.0、251,706→194,582、アストラゼネカ、バーラト、シノファーム
シリア 2.3→0.4 、36,757→22,945 スプートニク、シノファーム、アストラゼネカ
北キプロス 0.0→n/a、 4,495→65,039、ファイザー、シノバック、アストラゼネカ
全ての国で中国製ワクチンが使われている。再開後の摂取回数は再開前の接種回数よりも少ないという共通点がある。ベラルーシでは陽性数が増加したが、モーリシャスとシリアでは減少中であった。北キプロスはWikipedia 等での報告が途絶えていた。
次の8ヵ国は2週間以上途絶えていたワクチン接種が7月に入って再開された国で、7/2 号と7/9 号に載せたものである。
ベナン 0.3→0.3、13,690→19,484 アストラゼネカ、シノバック
ガンビア 0.5→0.8、2,320→2,165 アストラゼネカ、シノファーム
ミャンマー 0.3→25.1、451,138→373,142 アストラゼネカ、シノファーム
パプアニューギニア 6.8→0.3、16,772→12,994 アストラゼネカ、シノファーム
コモロ 1.3→3.5、453→6,520 アストラゼネカ、シノファーム
クウェート 237.7→400.2、388,000→555,455 ファイザー
レソト 1.9→6.7、20,759→19,563 アストラゼネカ
ルワンダ 7.5→65.0、178,473→67,105 モデルナ、アストラゼネカ、ファイザー
ここから、人口100万人あたりの1日平均の陽性数が低い国ではシノファームが提供されているとがわかる。チャドなど最近中国からのワクチン提供が始まった国は、この数字がどれも低くなっていることからも、シノファーム再開の条件として、人口100万人あたりの1日平均の陽性数が低いことが必要であったと考えられる。
例外がミャンマーとレソトであるが、接種再開前の人口100万人あたりの1日平均の陽性数はミャンマーで11.7、レソトで24.9である。ミャンマーはそれほど高くなかったので、ワクチンを提供したが、レソトは十分高かったので、提供を諦めたと思われる。しかしこれで、レソトはシノファーム接種開始の条件がそろったので、来週あたりに再開されるかもしれない。
ベラルーシはこの数字がが非常に高いので、中国がワクチンの提供を再開するとは考えにくいが、中国がベラルーシと仲良くしておきたいと考え、提供を再開した可能性はある。中国からベラルーシへのワクチン提供が始まったのは5月23日からだが、その週からワクチン接種回数が前週の10分の1に落ちている。おそらく、中国からの提供を良しとしないロシアが、スプートニクの供給を取りやめたのだろう。その後すぐ接種回数が増加しているがスプートニクなのか、シノファームなのか、それとも両方なのかは分からない。今までより摂取回数が極端に少ないので、別のワクチンかもしれない。そして、7月20日に再確認したところ、7月16日に接種があったたという報告が消されていた。何かがあったことは間違いない。
アルジェリア、オランダカリブ海、ジブチ、フォークランド、キルギス、ニカラグア、パラオ、ピトケアン、セントヘレナ、トーゴ、トンガ、トルクメニスタン、ツバルでは接種再開はなされなかった。ジブチとキルギスが中国製ワクチン接種国である。セントヘレナ、ピトケアン、フォークランド諸島は接種をほぼ完了したと思われる。
中央アフリカ、マダガスカル、マラウイ、スーダン、ウズベキスタン、クック諸島パプアニューギニアで、接種が止まったようだ。スーダン、ウズベキスタン、パプアニューギニアが中国ワクチン接種国である。
パプアニューギニアとジブチは2、3週間前に接種再開をしたがまた接種を停止したようだ。両国ともアストラゼネカ、シノファーム接種国で、人口100万人あたりの1日平均の陽性数も低い。
C2. 密かにスプートニク接種国が増えている。
最新のワクチンブランド別勢力は次の通りである。複数のブランドを接種していることがあるので合計は217にはならない。赤字は増加、青字は減少を表す
アストラゼネカ 174
ファイザー 100
モデルナ 51
スプートニク 48
シノファーム(北京) 60
シノバック 35
シノファーム(BBIBP) 0
その他中国製 8
ジョンソン 28
バーラト 6
その他 5
中国製ワクチンを接種している国は、中国を除いて86ヶ国ある。先週より二国増えた。内分けは。アジア33、アフリカ26、中南米15、東欧10、オセアニア2である。アフリカではシノファームまが、中南米ではシノバックが多い。アジアは半々である。またスプートニク接種国もここのところ毎週その数を増やしている。ロシアでもここ1ヶ月ほど接種回数は上昇しているので、スプートニクに供給量はかなり増えていると思われる。
C3. インドが世界2位の接種国に
7月16日までのワクチン総接種数上位20ヶ国は次の通りである。()内は2021年累計陽性数順位。累計接種数、接種率、菅両立、接種ワクチンの種類数とその開始日。* は推定
1。中国(154位) 1,437,623,000、43.21%*、15.51%*、4(12/15~)
2。インド(1位) 399,695,879、22.86%、 5.81%、3(1/15~)
3。アメリカ(2位) 336,604,158、55.68%、48.25%、3(12/15~)
4。ブラジル(3位) 121,802,482、43.05%、15.63%、4(1/16~)
5。ドイツ(14位) 85,615,430、 59.04%、45.44%、4(12/27~)
6。イギリス(8位) 81,702,466、 67.63%、52.07%、3(12/23~)
7。日本(28位) 66,714,528、 32.48%、20.44%、2(2/17~)↑
8。フランス(4位) 63,174,862、 56.20%、41.38% 、4(12/27~)↓
9。トルコ(5位) 62,537,504、 45.51%、23.62%、2(1/13~)
10。イタリア(11位) 60,571,341、 60.21%、42.26% 、4(12/24~)
11。インドネシア(13位) 57,011,439 14.80%、 5.82%、2(1/12~)
12。メキシコ(16位) 53,342,673、 28.62%、16.42%、5(12/24~)
13。ロシア(8位) 52,329,289、 21.76%、14.08%、2(12/15~)
14。スペイン(13位) 50,239,048、 62.07%、49.97%、4(1/4~)
15。カナダ(25位) 44,726,461、 69.42%、48.01%、3(12/14~)
16。ポーランド(15位) 32,413,199、 46.65%、42.08% 4(12/28~)
17。アルゼンチン(6位) 26,511,672、 46.72%、11.39%、3(12/29~)
18。チリ(21位) 24,248,545、 68.92%、59.51%、4(12/24~)
19。コロンビア(7位) 22,942,717、 28.31%、19.20%、2(1/6~)
20。パキスタン(31位) 22,222,701、 5.23%*、 1.97%、5(2/2~)↑
中国は接種人数、完了者数共に発表していない。しかし6月10日だけ発表したことがあるので、その数値を使って接種率と完了率を計算した。その時より接種回数が70%以上増えているので接種人数完了者も同じくらい増えている可能性はある。パキスタンは完了者数は発表しているが接種人数は発表していない。接種しているワクチンが二回接種のものならば、接種回数から完了者数を引いたものが接種人数であるので、その数字を使って接種率を計算した。
日本は7月3日から9日の間にフランスの倍以上の接種を行ない、フランスを抜いて7位に上がった。韓国は先週よりも接種回数は増えたが、コロンビアの3分の1、パキスタンの4分の1しか接種を行わず、ランク外となった。
中国のワクチン接種数は14億を超えた。ほぼ中国の人口と同じである。またブラジルが7月9日より、ジョンソンのワクチンを接種し始めた。これで4種類目である。しかし先週よりも10%近く接種回数を減らしているので、おそらくどこかのワクチンの供給が止まったのではないかと考えられる。止まったのは、しばらく前に物議を醸した中国製シノバックか。
C4. ワクチン接種回数もやや減少
7月10日から16日までのワクチン接種回数上位10ヶ国は次の通りである。
()内はワクチン接種数順位。+ーは前週からの増減
1。中国(1位) 72,160,000、 −10,128,000
2。インド(2位) 30,319,657、 +2,614,771
3。日本(7位) 9,364,304、−1,736,948
4。ブラジル(4位) 9,028,180、−966,026
5。インドネシア(11位) 6,376,295、+385,079
6。ロシア(13位) 5,703,046、+898,597 ↑↑
7。トルコ(9位) 5,288,670、+144,554
8。イタリア(10位) 4,668,171、+1,447,993 ランク外
9。ドイツ(6位) 4,049,951、−1,270,088 ↓↓↓
10。フランス(7位) 4,049,951、−591,617 ↓
世界では、今週2億2000万回近い接種が行われた。これは先週よりも900万回以上少ない。中国では1000万回以上接種を減らしているので中国以外では接種回数が増えている。パキスタンイタリア、サウジアラビア、エクアドル、コロンビアで1000万回以上接種を増やしている。アメリカは接種回数をまた減少させとうとうランク外となった。接種率が50%を超えるとどの国も接種回数が減ってくる。また、93ヵ国でワクチン接種回数が先週よりも増加した。一方、102カ国で接種回数が先週よりも減少した。
D. 「接種率が50%を超えると感染が落ち着く」は幻想
先日テレビを見ていたら、医療ガバナンス学会の上昌弘会長が、「接種率が50%を超えると感染が落ち着く」というような発言をしていた。もしかしたら、「感染が収まる」と言っていたかもしれない。また河野太郎規制改革大臣も「どこの国も接種率が6割くらいで、だいたい横ばいになっている」と発言していた。
D1. 接種率50%以上は半分がヨーロッパ
「接種率」は接種人数、つまり接種を少なくとも一回した人の数をその国の人口で割ったものである。WHO もこの指標を使っている。7月16日時点で、60の国と地域で接種率が50%を超えている。このうち6カ国は2020年から新型コロナウイルスに感染したという報告はない。中国は接種人数を発表していないが、一回だけ発表したことがある。その時の割合と接種回数の伸びから、6月半ばには接種率が50%を超えていると考えられる。7月16日時点では接種率60%も超えていると思われる。またキプロスは接種率49.7%であるが、北キプロスを除くと接種率が50%を超えるので、載せることにした。
接種率が50%を超えている国の地域的割合は次のグラフの通りである。
接種率50%以上の国はそのほとんどが西欧に偏っている。西欧で接種率が50%を超えていないところは、バチカンとチャネル諸島のみである。両国地域ともワクチン接種をしていない。一方アフリカでは56カ国中、セーシェルとセントヘレナの2箇所しかない。セントヘレナはイギリスの海外領土である。東欧もチェコとハンガリーの二国でしか接種率が50%を超えていない。
D2.感染が落ち着くとはどう言うことか
上氏の言う「感染が落ち着く」あるいは「収まる」というのは、おそらく、新規陽性数が少なくなることを表すと思われる。一般的に、感染症に対して、ワクチンの摂取率が上がれば、その感染症に感染する人の数が減少する、と言われている。例えば、日本で麻疹が2006年から08年にかけて大流行した。安佐医師会の調査によれば、2008年で10万人以上の麻疹患者が発生したようである(http://www.asaishikai.jp/tayori/tayori13.html)。この時「1回の接種を2回に改め、全医療機関に対し麻疹の届け出を義務化し、さらにウイルスの遺伝子検査を義務化する」ことにした結果、2009年は3桁の数字にまで一気に落とすことに成功し、以降は減ったり増えたりを繰り返しながらも全体としては、その数字を少しづつ減らしている。また、発生したウイルスも、国内で長く継続して伝播してきた「土着株」ではない「輸入株」ばかりである。この二つの条件を満たした時が上氏のいう「感染が落ち着いた」状態であると考えられる。現在の新型コロナ対策は、この施策を元にしていることは明らかである。
河野氏の言う「横ばいになっている」は、累計陽性数のグラフが水平になることを意味すると考えられる。累計陽性数のグラフが水平になるのは、毎週あるいは毎日の新規陽性数が少なくなっていく時なので、感染が落ち着いた」状態と同じであると考えられる。割合は違うが要は二人とも同じことを言っている。つまり「接種率が50%を超えると感染がおさまる」という状態は、ワクチン接種率が50%に達してから、毎週の新規陽性数が減少傾向にある状態と考えるのが妥当である。毎週の新規陽性数も上下することが多いので、多少の上昇は構わないが、波と言えるほどの大きな期間の長い陽性数の増加があれば、それは減少傾向ではないと考えられる。
D3. セーシェル
例えば、7/9 号で取り上げた、セーシェルでは、2月25日に接種率50%を超えた。次の図はセーシェルの新規陽性数の時系列グラフである。
赤棒は接種率が50%を超えた週である。青の折れ線が毎週の新規陽性数、緑の曲線は、それより下の部分の面積が青の折れ線グラフの下の部分の面積と同じで、折れ線グラフの極大極小のうち重要なところを押さえ、なおかつ微分可能にしたグラフである。
これによれば、2月25日から4月9日までは、減少傾向である。しかしそれ以降は上昇に転じた。そして5月14日の週に新規陽性数がそれまでの4倍に増えた。5月21日以降はまた急速に減少した。
5月14日の週の大量の新規陽性数はおそらく「輸入株」である。5月7日で陽性だった人が全員隔離もされず動き回ったとしても、ここまで新規陽性数が増えることは難しい。セーシェルでは5月14日で完了率も65%あったので、国民の多くがマスクをしていなかったことは予想に難くない。また、ワクチン接種を完了していれば、入国者は国内を自由に動き回ることができる。もし彼らがウイルスを保持していれば、当然感染が広がる。この週に大きなイベントがあり、普段より多くの入国者がれば、このような感染爆発も十分考えられる。しかも、イベントが終われば新規陽性数が急速に減少している。このことから、この時にセーシェルで流行した株は、自国で流行したものではない可能性が高い。
7月16日の時点では、新規陽性数は接種率50%時の約2倍である。人口100万人あたりの1日平均の新規陽性数は800件と非常に高い。日本は20件なので、日本より40倍ひどい状態であると言える。いくら「輸入株」が原因とはいえ、これでは「感染が落ち着いた」とは言えない。そもそも、接種率が50%未満の頃の方が陽性数が少ない。これでは、巷で言われるようにワクチン接種で感染拡大すると言われても仕方がない。
D4.「接種率50%で感染が落ち着く」の定義
そこで次の3つの条件を満たすとき、「接種率が50%を超えると感染が落ち着く」ということにする。
① 最新の新規陽性数が接種率が50%を超えた週の新規陽性数の20%未満である。
② 最新の新規陽性数が、その1ヶ月前の新規陽性数の2倍以下である。
③ 最新の人口100万人あたりの1日平均新規陽性数が50件未満である。
ウイルスの型について区別して発表しているところはないので、土着株か輸入株であるかは問わない
条件①は減少傾向を、条件②は最近は上昇傾向になっていない、条件③は十分に数が少なくなった、ことを意味する。これらの条件はイスラエルの現状を参考にした。下の図はイスラエルの新規陽性数の時系列グラフである。
イスラエルでは昨年の12月19日からワクチン接種が始まった。1月26日には接種率が30%に達していた。それより少し前から、新規陽性数が減少し、5月末には100件台になった。接種率が50%になった時の200分の1以下である。ところが6月25日から新規陽性数が再び急増し、7月16日には5月末の30倍以上の値となった。新規陽性数の増え方も上昇している。そこで、イスラエルは、感染再発と判断し、再び、規制を実施するようになった。
D5. 接種率50%以上の国のプロファイル
下の表は接種率50%以上の国地域の、7月16日新規陽性数と人口100万人あたりの1日平均新規陽性数、ワクチン接種率、ワクチン完了率、接種ワクチンとその開始日、接種率50%に達した週とその時の新規陽性数、7月16日の新規陽性数の50%時に対する伸び率である。伸び率でランクしている。比較のために日本も入れている。
ワクチンの記号は下の通りである
AZ アストラゼネカ
PB ファイザー
Mo モデルナ
Sp スプートニク
SB シノファーム(北京)
SW シノファーム(武漢)
CS カンシノ
SV シノバック
JJ ジョンソン
記号の前の - は取りやめを意味している。4/14 -AZ は4月14日以降アストラゼネカの接種を取りやめたと言う意味である。
D6. 感染が落ち着いたと言える国
フォークランド諸島、セントヘレナ、ケイマン諸島、ハンガリー、バミューダ、カナダの6の国と地域がこの3つの条件を全て満たしている。下のグラフはセントヘレナを除く5カ国の新規陽性数の時系列グラフである。赤線が接種率50%になった週である。
フォークランドは1時期だけ陽性件数が上がったがすぐに元に戻ったので、条件は満たされる。ケイマン諸島は上下動が激しいが、3条件を満たしている。上記56カ国以外にも、クック諸島、ガーンジー島、ジャージー島、ナウル、ニウエ、ピトケアン島の6の国と地域は、累計陽性数が0件(従ってこれらの国のグラフは省略している)なので自動的にこの3条件を満たす。これらの11の国と地域で今の所感染が落ち着いていると言える。今の所、というのは、イスラエルのように、ある日突然新規陽性数が急増する可能性があるからである。実際5月末ならば、イスラエルは3条件を満たしていた。
D7. 落ち着いていたのにそうでなくなった国といまいち落ち着かない国
接種率50%を超えて感染が落ち着いた国地域のグラフは、赤線から右の部分が右下がりか、横軸に近いところで水平になっている。とこどき上昇することもあるが短い期間で元の位置に戻っている。そしてグラフの右端が上がっていない、と言う共通点がある。しかし、イスラエルなどのように、せっかく落ち着いていたのに、最近上昇傾向になった(条件②に反する)とか、ちりなどのように新規陽性数が下がったがまだまだ多い(条件①に反する)国もある。これらの国の時系列グラフを下に示す。面白い点はカリブ海とヨーロッパは前者に分類され、アジアと南米は後者に分類される。おそらくワクチンの種類と関係する。イスラエルは基本ヨーロッパ系である。
D8. 感染拡大した国。
下のグラフに挙げた12カ国は、残念ながら、接種率が50%を超えて、新規陽性数が上昇した。セーシェル、ブータン、モルジブ、モンゴル、中国は接種率が50%未満の時の方が陽性数は少なかった。残りは接種率が上がるにつれ感染が落ち着いてきたが、接種率50%を超えて、再び上昇に転じた。
D9. 感染が落ち着いたと言えるほど十分な時間が経っていない
そもそも20カ国以上でワクチン接種率50%以上になってから1ヶ月経過していない。イスラエルやイギリスの例からもわかるように、接種率50%以上になって2ヶ月以上感染数が少なくなったとしも、感染が再開した例もある。したがって、現時点で「接種率が50%を超えると感染が安定する」とは結論するには十分なサンプルはない。60%以上についても同じである。おそらく麻疹では「接種率が50%を超えると感染が安定する」から、新型コロナでもそうなると思っているに過ぎない。麻疹と新型コロナでは、感染の仕方が違う。そのやり方を押し通すのはいかがなものか。麻疹の対処と同じやり方をしたために、新型コロナがこれだけ流行した可能性も考えられる。