新型コロナQR 11/26 オミクロン株について
先週WHOは南アフリカ由来のオミクロン株を要注意変異株に指定し、世界各国は南アフリカなどからの入国禁止や措置などを処した。そこで、オミクロン株がどのくらいの感染力を持つのか統計的に調べてみると、あららっなデータが出てきたので紹介したいと思う。まず、次の地図は、21年47週(11/20-26)時点での陽性件数が増加中の国減少中の国を表している。
オミクロン株の懸念があるアフリカ南では陽性件数増加傾向(赤)や陽性件数の減少が止まったところ(黄色)が増えた。日本政府は11月26日から南アフリカだけでなく、アフリカ南の国地域をほぼ全て水際措置に関わる指定国地域にリストし、検疫所での待機期間を0日から10日間に延長した。11月30日には原則再入国拒否が加わった。リストされた国地域の中にはまだ陽性件数が減少中のところもある。
またドイツなどヨーロッパ西の国もオミクロン株に関しての注意国として新たに指定された。ヨーロッパ西はほぼ全域で陽性件数が増加傾向である。ヨーロッパ西に11/22号で取り上げた。ヨーロッパ東で流行していたものが西へ移動した可能性が高いが、それに加えて、ドイツやオーストリア近辺で流行していたものが、まるでRailJetに乗車したかのようにチェコ、ハンガリー、スイス、イタリアへと広がった可能性があることがわかった。これがオミクロン株である可能性は高い。
A. アフリカ南では感染拡大中である。
新型コロナクォータリーリポートではアフリカを3地区に分け、下の地図で桃色に塗られた赤道から南のアフリカに位置する20国地域をアフリカ南に分類した。西は白、東は水色に塗られた部分である。
オミクロン株に関連して水際措置に関わる指定国地域にリストされた国地域は全てアフリカ南とヨーロッパ西とヨーロッパ東の西部に位置する(註:12月2日にアラブ首長国連邦などそれ以外の大陸の国地域も追加された)。アフリカでの12月2日時点での水際強化措置に係る指定国・地域は次の地図の通りである。
コンゴ民主などアフリカ南の北の方、マダガスカルなどの島国は今の所指定されていない。ガーナ、ナイジェリア、ケニアなどアフリカ西や東でも指定された国も出てきた。ここではアフリカ南の感染状況とその傾向及びワクチンの接種状況とその効果について考察する。
A1. アフリカ南では陽性件数が増えたり、減少が止まったりしている。
次の表はアフリカ南の4期の陽性件数の指標たちである。
アフリカ全体の4期の陽性件数増加係数は1.3で、やや増加傾向である。アフリカ南は2.5と高い増加傾向を示している。一方アフリカ東と西はそれぞれ0.8、0.6と減少傾向である。したがって、アフリカ南では高い感染力を持ったウイルスが広がっていることは確かである。
アフリカ南では21年4期に10万2042件の陽性件数が確認された。世界全体の約0.4%と非常に小さいが、アフリカ3地域の中では東よりは少ないが、西よりは多い。昨年同期からは30%、前期からは88%の減少となったが、42週から減少の勢いが弱まった。ちょうどこの時、南アフリカの北にあるボツワナで、一時的な陽性件数急増があった。45週からは増加傾向となり、47週は3万2357件の陽性件数の確認された。46週に比べて4倍以上の伸びとなった。45週以降は南アフリカの陽性件数増加に引っ張られる形となった。
国別では南アフリカがトップで、4期は5万1021件の陽性が確認され、アフリカ南全体の約半分を占める。Worldometer の20年からの累計陽性件数では18位になるが、21年4期だけなら61位である。昨年同期からは50%以上、3期からは90%以上減少している。人口100万人あたりでは、平均で1日に15件の陽性件数が確認される程度で世界平均の58.1人の約4分の1で感染がかなり治まってきていた。しかし、47週の陽性件数は2万7040件で、4期全体の半分以上を占める。また、アフリカ南全体の80%以上を占める。46週からは9倍以上の増加となった。これで3週連続の増加である。
アフリカ南の陽性件数2位はボツワナで1万5689件であった。南アフリカの3分の1以下であるが、人口100万人あたりでは、平均して1日に115.9件で、南アフリカの15.1件の7.5倍の密度になった。昨年同期からは120%以上増加したが、前期からは75%以上減少している。しかし42週から3週連続で増加し、ピーク時の陽性件数は増加前の5倍以上になった。この小さな波は45週から減少に転じた。今は3週連続で減少中である。
3位以下は4期の陽性件数が1万件未満である。
4期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数の最多はセーシェルで333件である。トップ4のボツワナ(115.9)、レユニオン(106.0)、モーリシャス(80.3)までが世界平均より多い。
4期の陽性件数が増加傾向のところは、係数の大きな順にマダガスカル(6.7)、南アフリカ(4.2)、レユニオン(2.8)、コンゴ民主(1.7)、セーシェル(1.6)、モーリシャス(1.4)、コモロ(1.1)、マヨット(1.0)である。オミクロン株に関する指定国は南アフリカとレユニオンを除いて、全て1未満で、減少傾向である。しかし、エスワティニとナミビアは47週の陽性件数を46週に比べ倍増させ、レソトとジンバブエは長く続いた減少が止まり、モザンビークは基本は減少しているものの、陽性件数が先週を上回る回数が増えた、つまり上がったり下がったりという様相を示している。
A2. 死者数は南アフリカとモーリシャスで急増している
次の表はアフリカ南の4期の死者数の指標たちである。陽性件数の順に並べてある。
アフリカ全体の4期の死者数増加係数は0.8で減少している。アフリカ南は1.0で死者数のペースは微増である。しかし、アフリカ東と西はそれぞれ0.9、0.5と減少傾向である。また、アフリカ南の陽性件数増加係数は2.5なので、死者数の伸びは陽性件数の伸びに比べて半分以上も低い。
アフリカ南では21年4期に3065人の死者があった。世界全体の約0.8%と非常に小さいが陽性件数の割合からすれば2倍である。人口100万人あたりでは0.14人で世界平均の0.9人の5分の1以下で非常に少ない。アフリカ3地域の中では東(0.23)よりは少ないが、西(0.08)よりは多い。昨年同期からは24%、前期からは73%の減少となった。しかし、45週目から減少のペースが弱まった。47週は374人の死者があり、46週に比べて70%以上の伸びとなった。
国別では南アフリカがトップで、4期は2078人の死者が出た、アフリカ南全体の3分の2以上を占める。21年4期の順位は28位である。日本の21年4期の死者数は705人で、南アフリカの約3分の1で、59位である。人口100万人あたりでは0.6人でアフリカ南の平均よりはるかに高いが、世界平均(0.9)よりもかなり低い。
4期の死者数は昨年同期からは50%近く、前期からは90%近く減少している。しかし、47週の221人の死者があり、前週から138%の増加となった。46週までは途中何回かの小さな増加はあったが、実質17週連続で減少していた。47週はオミクロン株の流行が南アフリカの陽性件数の増加の原因なら、オミクロン株の感染者の死者がで始める頃である。陽性件数は大幅な増加傾向なので、死者数もこれから大きく増加に転じると考えられる。
アフリカ南の死者数2位はモーリシャスで371人であった。人口100万人あたりでは、平均して1日に5.2人で、アフリカ南では最も高い。昨年同期は死者数が0なので、無限大となったが、前期からも9倍以上死者数が増えた。47週の死者数は122人で46週よりも45%増やしている。8月から4ヶ月の間、基本的に増加傾向である。モーリシャスの4期の死者数増加係数はは2.6で、陽性件数増加係数の1.4のほぼ2倍である。モーリシャスは今の所オミクロン株の指定はないが、すぐ近くのレユニオンは指定されているので、関連はあるかもしれない。
死者数の3位はアンゴラで166人である。ここまでがアフリカ南で死者数が100人以上である。アンゴラの人口100万人あたりの死者数は0.1人と非常に低い。昨年同期はよりは8.5%増えたが、前期からもは約60%減である。47週は前週の3人から一人増えて4人となったが、8月以降は死者数は順調に減少している。
4位以下は4期の死者数は百人未満である。
人口100万人あたりの1日平均の陽性件数はモーリシャスとセーシェル(1.8人)を除いて、0.6人未満である。昨年同期から死者数の増えた国は多いが、前期からはモーリシャス、コモロ、マヨット以外全て大幅に減少している。
4期の死者数が増加傾向のところは、マダガスカル(2.7)、タンザニア(2.2)、モーリシャス(2.6)、コモロ(2.7)、レユニオン(1.1)のみである。タンザニアを除いて島国ばかりである。オミクロン株の指定国地域では南アフリカとレユニオンを除いて死者数は減少傾向である。47週の死者数は南アフリカ以外は一桁台である。
A3. 要注意国にリストされていない島国で感染拡大中
南アフリカ、オミクロン株指定に関係なく、陽性件数は増加傾向である国地域が多い。減少傾向でも、今週の陽性件数が増加に転じたり、減少のペースが落ちたりと、増加の兆しを見せている。死者数は南アフリカと島国を除いて今の所減少傾向である。また、島国では全て陽性件数も死者数も大きく増加している。しかし、レユニオン以外は要注意国地域に指定されていない。
B. アフリカ南の接種回数は微増
次の表はアフリカ南の4期のワクチン接種回数の指標たちである。陽性件数の順に並べてある。
アフリカ全体の4期のワクチン接種回数増加係数は1.1で、増加している。世界平均とほぼ同じである。しかし接種率は10.67%、完了率は7.08%と非常に低い。ブースターはアルジェリアとチュニジアで実施されている。エリトリア、西サハラ、レユニオン、マヨットの4国地域でワクチン接種が0である。セントヘレナでは6月以降接種が止まっている。ブルンジは10月19日から接種が始まったが、11月26日までの総接種回数が1500回に満たず、平均して1日3回しか接種が行われていない。
アフリカの3地域の中では東は増加、西は減少、南は横ばい傾向である。接種率は南が一番高く(11.38%)、完了率は西が一番高い(8.22%)。
アフリカ南では21年4期に2906万1750回の接種をおこなった。世界全体の約2%である。人口100万人あたりの1日平均の接種回数は1288回で、世界全体の3506回の約3分の1である。21年47週は約380万回の接種をおこなった。46週に比べて約25%の減少であるが、4期全体では横ばいである。
国別では南アフリカがトップで、4期は773万3431回の接種をおこなった。アフリカ南全体の接種回数の3分の2以上を占める。21年4期の順位は30位である。人口100万人あたりでは2288回でアフリカ南の平均よりは高いが、世界平均よりは低い。
4期の接種回数は前期から約13%減少している。しかし、47週は前週から20%の増加となった。月初めに回数が増え、だんだん減少していくというパターンを繰り返しているので、本来なら48週に接種回数が増えるはずだが、感染急増のせいで、1週間早めたものと思われる。
接種回数2位はモザンビークで606万2053回であった。人口100万人あたりでは、平均して1日に3332.6回人で、南アフリカよりも多く、世界平均にあとわずかというところである。前期からは3倍増となった。47週の接種回数は81万5230回で同週の南アフリカよりも多いが、前週からは43%の大幅減少となった。
接種回数3~5位はアンゴラ、ルワンダ、ジンバブエで、ここまでが接種回数100万回以上である。
4位ルワンダの人口100万人あたりの接種回数は6620回でアフリカ南だけでなくアフリカの中で一番高い。2番目に高いのが、セーシェルの5344回、3番目がボツワナの5339回である。3位アンゴラの3期からの伸び率は477%で、伸び率無限大のブルンジに次いで高い。一方ブルンジはわずかに3回、コンゴ民主は10回で、世界で1番目、2番目に少ない。3桁台も5国ある。
完了率はセーシェルとモーリシャスがそれぞれ78%、72%で欧米並みの高さであるが、ぞれ以外では最高でもレソトの26%である。一桁台のところも7国地域ある。アフリカ全体に言えるが、完了率は面積の小さな国では高く(せいぜい20%ほ程度だが)、面積の広い国では低くなっている。
オミクロン株の指定国地域は、南アフリカ以外は4期の接種回数増加指数は1以上で接種回数を増やしている。しかし、アンゴラ、ボツワナ、エスワティニ、モザンビーク、ザンビア、ジンバブエでは47週の接種回数を減少させた。アメリカやイスラエルなどでは日本よりも厳しく入国禁止としてしまったので、ワクチンの輸送に支障が出た可能性も考えられる。これから先、ワクチンの接種回数も減る可能性がある。
C. ワクチンは死者数を増やすかもしれない
C1. 完了率と死者数の弱い正の相関がある
下のグラフはアフリカ南での完了率と4期の人口100万人あたりの陽性件数との相関である。
完了率の極端に高いセーシェルとモーリシャスは含んでいない。R2=0.0004なので、線形な相関関係は全くないと言える。つまり、ワクチン完了者が増えても、陽性件数の減少は見込めないということである。因果関係は次のように説明できる。ワクチン接種を完了していても新型コロナには感染する。しかし症状は軽くなるケースが多いので、感染していてもそれを自覚しない者が増える。彼らは、マスクをしたり集近閉を避けたりなどの予防をしない。しかし、ウイルスは持っているので、自由に行動をすれば、感染源となる。ワクチン完了者が増えれば、このような無自覚な感染者も増える。それゆえ、感染が拡大する。ワクチン未接種者は基本的に公共の場から締め出されているので、感染する可能性は逆に低い。
データから除いたセーシェルとモーリシャスはそれぞれ完了率が78%、72%である。しかし、セーシェルは4期の陽性件数は、人口100万人あたり1日平均で333.7件あり、アフリカで一番大きい。モーリシャスも80.3件とアフリカ南で3番目に高い。セーシェルは4期に接種回数を減らしたが、モーリシャスは増やした。しかし、両国とも4期の陽性件数は増加傾向である。ワクチンはオミクロン株には効かないと考えられる。
下のグラフはアフリカ南での完了率と4期の人口100万人あたりの死者数との相関である。
完了率の極端に高いセーシェルとモーリシャスは含んでいない。R2=0.2053なので、弱い正の相関関係がある。つまり、ワクチン接種回数が増えると、死者数が増えるということである。接種回数を増やしたセーシェルは死者数は減少傾向だが、接種回数を増やしたモーリシャスは死者数が倍増している。まだデータとしては不十分であるが、オミクロン株は致死力が高い可能性がある。
C2. ワクチンは感染をさらにひどいものにするかもしれない
ところで、アフリカでは中国製のシノファームを接種ひている国が多い。アフリカ南では接種をしている18国中13国で中国製ワクチンを接種している。下のグラフは、中国製ワクチンを接種しているかしていないかで陽性件数を比較したものである。
青い棒が4期の人口100万人あたりの1日平均の陽性件数で、赤が47週の1日平均の陽性件数である。4期の陽性件数はそれほど変わらないが、47週では中国製を接種している方は30%減少したが、そうでないところは3.6倍も増えた。したがって、非中国製ワクチン、主にアストラゼネカとジョンソンは、オミクロン株には効き目が薄い可能性がある。
下のグラフは、中国製ワクチンを接種しているかしていないかで死者数を比較したものである。
青い棒が4期の人口100万人あたりの1日平均の死者数で、赤が47週の1日平均の死者数である。スケールの関係で大きく見えるが、4期の死者数はそれほど変わらないが、47週では中国製を接種している方は60%増加したが、そうでないところは逆に20%減少した。
したがって、中国製ワクチンは死者数を増やし、欧米系ワクチンは陽性件数を増やす可能性があるといえる。
D. アメリカも危ない
トップの増加中減少中の地図では、カナダは陽性件数増加中、アメリカとメキシコでは陽性件数の減少が止まった。アメリカではニューヨーク州などで緊急事態宣言が出た。ミューヨークの総領事館から、オミクロン株の感染者がニューヨークで行われた、参加人員3万人ほどのイベントの参加していたと発表されたというニュースレターを受け取った。イベント来場者で症状のあるものには至急PCR検査をするように声明が出ている。感染者はイベントに参加したくらいだから、おそらく症状はないと思われる。症状があってもなくても、来場者は感染を疑った方が良いのではないだろうか。また、感染者はミネソタから来ているので、滞在したホテルや、利用した交通機関でも感染している可能性がある。何回も指摘しているように、PCR検査陰性はウイルスを感染していないことを証明するのではなく、感染しているけれど数は少ないという可能性もある。PCR検査で陰性なら、自分は大丈夫と勘違いをして、マスクもせず集近閉も守らず自由の行動するかもしれない。なので、PCR検査はしない方が良い。それよりも、日本政府がやっているような、一律待機の方が感染防止の点では効果がある。
人口、陽性件数、死者数はWorldometer のものを、ワクチン接種回数などは Github のデータを利用している。Worldometer や Github で扱っていない国地域の統計は Google のデータを用いる。北キプロスの陽性件数と死者数は、政府の発表するデータを用いる(https://saglik.gov.ct.tr/COVID-19-GENEL-DURUM)。面積、GDP、地図、その他の情報はウィキペディアと外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)を利用している。それ以外のもの、例えばニュース、に関しては出典を本文に記す。数値はアメリカ中部時間の11月27日22時時点で得られた最新の値を利用している。11月28日以降に修正あるいは追加する国地域もあるが、その分は含めない。従って、他の新型コロナ統計サイトの数値とは異なることもある。毎月初のレポートではこの修正されたデータを跳ねいさせている。したがって、過去のものとは異なったものとなる場合もある。テーマ地図は mapchart.net のサービスを利用して作成している。