雪に耐えて梅花麗し
壁際に積まれたたくさんの段ボールに囲まれて、生活感がまるでなくなった部屋の机の横にぽつんと置かれたヒーターとそこで暖を取る自分。
「いつだって独りじゃない いつだって傍にいよう」
配信されたばかりの曲が手の中のスマホから流れ無機質な空間に響いた。わたしは明日4年間住んだ家を出る。
年齢を重ねて、この時間が止まれば良いのに、ずっとこの空間が続けば良いのに、そう非現実的な考えを持つことが減った。一定のリズムで刻まれる秒針を気に留めることもないし、朝が来て夜が来れば、また朝が来る。そういうものか、で納得することも増えた。幼い頃に外で遊んでると聞こえてくる帰りましょうの放送までの時間、地元を離れる前の中学卒業までの最後の1ヶ月、汽車が来るまで駅のホームに座ってくだらないことから将来の夢まで語り合った日々。あの時宛先のない誰かに祈っていた感情は成長と共にどこかに置いてきたのだろうか。戻りたい、訳ではないけど懐かしくどこか恋しい。
一年前の今日、わたしはまだ「JO1」というその名前さえも知らなかった。もともとテレビをあまり見ない方だったし流行の音楽にも疎かった。周囲に勧められたドラマも最終話までちゃんと見切ったことはなかった。そんなわたしの生活の中に偶然が重なりスッと入り込んできた11人は今や日常に欠かせない存在となった。
11人は毎日をいろんな色で彩ってくれる。彼らを好きになってから行きたい場所や見たいもの、食べたいもの、欲しいものが増えた。自分のために使う時間とお金が増えた。自分以外の人のことで笑顔になったり嬉しくなったり、時にはちょっぴり心を痛めることもあったけど、そんな毎日はなんだかとても楽しい。
輝きを放ち舞台に立つ彼らは選ばれし者なのか。わたしは11人は選ばれし者である以上に選んだ者だと思う。感染症が猛威を振るう中でのデビュー。叶ったはずの夢が、手に入れたはずの夢が、実感できない日々。見えないところにいるファンは本当に自分たちを見ているのか、応援してくれているのか。形あるはずのものを確かめることができない。そんな中でもJAMを信じ、彼らは自分自身の足で1歩ずつ前に進んできた。
映画「未完成」の主題歌冒頭。もうすぐ公開されるその映像でわたしはまた11人のことを何も知らなかったんだということを知るんだと思う。それが楽しみなようで実は怖かったりもする。夢を追う努力を惜しまない彼らは眩しい。ときには目を背けたくなるくらい。でも背けたくなる気持ち以上に彼らの歩む道を見たいという気持ちが大きい。彼らの心の中を全て知ることができないのは当たり前だけど、それでも可能な限り知る努力をしたい。選ばれし者である以上に一人ひとりが自分自身でその道を選んだ者であるという強さを感じさせる11人だからこそ、これから先進む道を照らす小さな小さな光の1つでありたいと人に思わせるのだろう。
少しのことでも何かが違ったら出会うことがなかったかもしれない11人。彼らはたくさんの人の頑張れる理由になっている。わたしも同じ、彼らのあたたかさと届けてくれる言葉にたくさん支えられた。強く逞しく夢への道を歩く11人に比べて、自分はどうしようもなくちっぽけで中途半端な人間だと苦しさを感じる時もある。それでも人は置かれた場所で咲くことができる、今の自分も全て意味がある過程だ、そう思うことができるのも11人がいてくれるから。
2周年という今日までの間に開き始めた彼らの美しい花の蕾は、3年目待ち望んだ大きな花を咲かせるんだと思う。でも花が咲いたらそこがゴールではない。その先を求め続ける11人がいる限り、その花は更に大きく、強く、美しいものになっていくんだと思う。「未完成」という言葉の意味を初めてちゃんと噛みしめたかもしれない。彼らが追い続ける「未完成」は常に今ある「完成」を越えていく気がする。そんな11人の3年目を共に歩めることが誇らしく、幸せだ。
自分以外の人について考えることが増えたのはもしかしたら少し大人になった証拠なのかもしれない。だいすきな11人がずっと笑顔でいられますように。たくさんの光が降り注ぎますように。夢への道を明るい太陽が照らしますように。でも、自分が心で願ったからってどうこうなる訳ではないものを宛先のない誰かに祈っているのだからやっぱりまだ子どもなのかな、とも思ったり。でもそれならずっと子どものままでいい。子どものままでいいから、時間は止まらなくていいから、みんなが幸せでありますように。
デビュー2周年ほんとうにおめでとう。
そして、いつもありがとう。
3年目も11人で。Never Ending Story。
雪に耐えて梅花麗し
意味:厳しい雪の寒さに耐えてこそ、梅の花は美しく咲くこと。多くの困難を経験してこそ、人は大きなことを成し遂げられるということ。
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