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今回は6月2日から4日にかけて
高松のC'est bien(セビアン)というお店で
僕の気になっていた抽象作家kuromaさんが
絵を描くということで写真を撮りに行った。

これはその3日間を写真を通して伝えていく
エッセイ。

そもそもkuromaさんを知ったきっかけは
lKUNASっていう香川で販売されている雑誌に
掲載されてた、マックスボウルの写真

(カメラマン  日高慎一郎)

圧倒的すぎた

何も言わせないような圧倒的な存在感に
魅せられた。

kuromaさんのInstagramアカウントです↑

この時はまだ何でkuromaさんの線にここまで惹かれるのかをよく分かってなかったです。

ただ、この人に会って写真を撮ってみたい!
っていう想いが芽生え始め始めました。

FAV HOTELに展示されてる作品
モチーフは波

5月下旬にTwitterでkuromaさんが線を書くらしいという情報が流れてきたのでこれは行くしかない!!!!と思って持ち前の一眼レフを
装備してセビアンに赴いた。

めちゃくちゃドキドキした6月2日当日

お店の前でkuromaさん、瀬戸内サニーさん(香川県ご当地YouTuber)、ととなりのラボレームスの店主さんが話してて、最初誰がkuromaさんか分からずドギマギしながら、せ、瀬戸内サニーさんですか……
と、とりあえず声をかけた。

kuromaさんから丁寧な挨拶を頂く
初めてまして抽象作家のkuromaと申します。
今日は来てくれてありがとうございます。

思ったより声が高くてびっくりしたのが記憶に
ある。めちゃくちゃかっこいいものを作る人だったから、もっと渋い声かと思ってた。

私クセがない女なんですよ〜 なんて言う。

大試合前にワインボトルに線を書いている

何考えながら書いてるんですか?と聞くと

『基本的に何も考えてないよ、
だけどね、いい線を書こうとしてるよ。
その代わりいい線ができるってことはその周りにある線を殺すってことだから、うん。』

kuromaさんにとって線の優劣はあるんだっていうのに驚いたのと、絵に対して線って言葉を使ったのに驚いた。

Instagramの写真を見る限り落ち着く絵だな
と思ってたけど製作者からするとそれらは線の集合なのかもしれない、そこはよく分からないからこのnoteでは絵を線と呼ぶことにする。

それからあれよあれよ流されてこの辺の記憶は
緊張しすぎて無い。

線はお店の中に書くことになっていて、
お酒のお店だったから一銭も払えなかったけど
写真撮っていいよの許可を店主さんが出してくださった。本当にありがたいです。


構図を考えての一筆目、死ぬほどかっこよかった。本気で絵を描く人を今まで見たこと無かったから。

下書きと絵の具とお酒

今回いっぱい時間あるからお酒飲みながら
ゆっくりくかけますね〜なんて言葉が
飛び交う。


ここでkuromaさんと交友のある方が登場する

名前は知らないからInstagramの名前から取って、ここではatamaさんと呼ばせてもらう。

少しイカつい風貌で話し方がめちゃくちゃ
優しい人でした。
僕が筑波大学落ちたんですー
浪人生なんですーIKUNASでkuromaさん知ったんですーなんて話をしてるとジュースを
奢ってくれた、ちょっと苦味のあるジュースで
美味しかった。ありがとうございました。

少しづつ進む、円弧を大胆に滑るように書いている。

kuromaさんが、大阪芸術大学にいた時の話をしてくれた。

教授が好きでさ、入ったんだけど中退したんよね。だってさ、子供が書いたリンゴと大人が
色んなこと決めつけてに書いたリンゴって絶対子供が書いたリンゴの方が良くない?
そんで教授とウマが合わなくてやめたんよ。
これ以上いると教授のこと好きになっちゃうから。
生徒はさ、やっぱその教授が好きで入学しとんよね、けどその代わりみんなその教授がいいと思う抽象的な絵にどうしても似てしまうんよ。
だからそれに腹たって教授が嫌いそうなハートばっか書いて紙を提出したら
「ほんとお前はかわいいな〜」
って大人の対応されて、もうめっちゃ悔しくて!だからしばらくしてから言ってやったんよ
「あんたがいいと思う絵しか生徒は書けるようになってないから、結果的に個性を潰してんのはお前なんだよ!お前が全部悪いんだよ!」
って
そしたらその教授、こんなに反抗してくれる
生徒を待っていた!!って感動して職員室で失禁しちゃって、その後2人でそれ掃除した後に大学やめてやった笑

ぶっ飛んでた
kuromaさんの生き様が最高にロックなのと
教授が気持ち悪すぎて面白かった、僕には理解できない脈絡も含めて面白かった。

芸術大学って変な人しかいないんですか?
って聞くと

まともなやつもいるし変ぶってる奴もいるし
ガチで変な奴もいる
真冬に汗めっちゃ書きながら道端で絵書いてるやつもいた。

世界が違いすぎてよく分かんないけど
変ぶってる奴がいるのは意外。

次に最初から線を書いてたのか聞く、

最初はゴリゴリの油で、けど油ってめっちゃ書くのにお金かかるんよ。だからどうしようかなって思ってた頃、だんだん線とか傷が愛おしくなってきて、ピッてキャンバスに入ってしまったやつ。それで線だけの絵書いたら
これは一生やっていける!って思ってそれから
線書いてる。

そんなこんなの話をしてatamaさんが帰ることに

atamaさんが帰る夕暮れ
King Gnu常田さんみたいな渋さがあって
カッコよかったぜ

(後にカメラを忘れたことに気づいてatamaさんは帰ってくる)

他のお客さんも増えて来て、kuromaさんが
そのお客と話をしたり絵を描いたりしている。

ただ忘れてはならないのは僕はここまで一銭も払ってないということ、お店の席の1部に図々しく居座っていること。

明らかに浮いてるし、店主さんに対しても
かなり申し訳なくなってきて、kuromaさんにそろそろ帰ります……と言う。

ああ、じゃあお見送りするね。
(お店のドアを開けてくれて)
今日は来てくれてありがとうね、3日間あるから明日も来るでしょ?また明日来たら
今から(営業終了までに)作った分が分かるね、
うん、じゃあねばいばーい

すごく丁寧に話してくれるから、これがkuromaさんの魅力なんだなぁと思う。

心の中に長く居座ったためにできた申し訳なさが残る。

ーー2日目ーー

予備校が終わり次第せっせせっせと荷物を持ってセビアンに行く。

これは予備校に行く時にいつも遭遇する
にゃんこ達。その写真を撮る。
だけど今考えるとこの(自然物を撮るという意味で)当たり前すぎる写真はセビアンに対するの申し訳なさのアンチテーゼだったと思う。

かなりドキドキしてた。事実として2日目の写真の枚数が格段に少なかった。

そして、kuromaさんが明るく迎えてくれる
右手を上げてやっほーをしてくれたので
右手を上げてやっほーをした。

僕が帰ってから結構進んでるな、
遠くから撮っても近くから撮っても
線の繊細さに美しいなと思う。

kuromaさんの写真を撮ってる時間は
勉強の何もかもを忘れる。レンズ越しに
対象をみて、息を止めてシャッターを押す。

高一の頃東京でスマホで写真を撮ってて
違和感を感じて、一眼レフを買ってもらったのだけれど、本当にいい買い物ができたなと思う。良かった。

この日は好きなアーティストの話をしてくれた。kuromaさんは猪熊弦一郎に影響を受けて
描き続けている。

猪熊弦一郎の作品は押し付けるようなものじゃなくて、絵もめっちゃ上手いんよ。立体も作っててそのバランス感がヤバくて!

多分僕がkuromaさんの作品に興味持ったのは
線達のかっこよさとバランスだったんだろうな
と思った。今のkuromaさんの目標は猪熊弦一郎の美術館に招待されて絵を展示することらしい。
線を書くのはお客さんが来てからなので
それまでは時間潰しに落書きもしてた。
落書きが上手すぎて欲しかった、そしてちょうどZみたいな形の線を書く。kuromaさん曰く
これはバランスがいいとの事。

ここがこう、奥になっててここが床で安定してる。見ると安心する。

その線は3次元に拡張した図としても捉えれるのか、思考が柔軟すぎる、

次作品を書くのは7月1日2日らしいけど、残念ながら予備校の授業と被る。
予備校と被るので予備校をさぼる。写真は
アイデンティティだから、kuromaさんの写真を撮らないと死んでしまう気がする。

2日目はハシゴを使っての作業
1日目より構図を考える時間が増えた気がする

制作に3ヶ月かかったマックスボウルを振り返る。実際は制作は1ヶ月だけど1日書いて2日休んでを繰り返したとの事。その2日はストイックにいい生活を繰り返した、それが重要なのだと熱弁してくれる。

朝起きて朝ごはん食べるやん、その後本読むか2度寝するかしてその後は散歩して家に帰って
めっちゃ美味しい晩御飯を作る。めちゃくちゃ規則正しい生活をするんよ、お風呂はいって
化粧水して、この繰り返しがね〜ほんと大事なの。

次にどうやって名を広めてきたのか話してくれた。最初は当然無名だからこれはもう詐欺師として生きていくしかない!と決心したらしく
そこから専門学校に通って自分のサイトを作る
方法を学んだそう。そして自分のサイトに作品を投稿して自分があたかも今まで活躍してたアーティストかのようにでっち上げて名刺も作って、それで詐欺師として活動してたそう。
個展を開きたかったから片っ端から尋ねたけど
1件しか許可が降りなかった。
だけど色んなところで広告してたからその個展は結果的に人が集まりに集まって成功した。
kuromaさんのパワフルさに痺れる

この日は3日間で1番客足が伸びて、気がつくと
満席になってた。
やっぱり居ずらさってのは感じて、自分の図々しさが嫌になってくる。
お客さんからすると写真を取りに来てる
元気な痛いやつとしか思われてないんじゃないかって不安なまま写真を撮ってた。精神状態と
写真のクオリティは恐ろしく相関があって2日目はろくなものが取れなかった。

気分転換に僕が古本を出しているbiblioに逃げに行った。なタ書やルヌガンガ、solow、
biblioは自分にとって安心できるところだから。そういえば1日目も合間を縫ってルヌガンガの写真を撮りに行った。これも多分不安を
払拭したかったんだと思う。
biblioで岡野大嗣「たやすみなさい」が500円で売られてたからさすがに買ってしまう。

またセビアンに戻っていたたまれない時間を過ごす。
kuromaさんがたやすみなさいの帯に
七尾旅人さんがいることに気づいて七尾さんについて熱弁してくれた。

この人めっちゃいい曲作るの、多分あっちの席に座ってる人全員知ってるよ。映像もめっちゃかっこよくてすごい好きなんよ!

この中央部から上にある曲線がエロすぎる、
完成頃にはもう少し厚みが出てくるんだけど
この時だけのエロさってのもあると思う。

いよいよ店主に対する申し訳なさと
周りの目が怖くなってくる。はちきれそうな
気まずさと緊張感に挟まれている。

そろそろ時間なんで帰りますね

今日も来てくれてありがとね

なんか長居すると申し訳なくなってきて

いや、全然そんなことないよ。
店主さんも私も誰も迷惑なんて思ってないよ
優しい人には甘えときなよ
だってせっかく甘えさせてもらえるんだったらそうした方が良くない?私もそうしてきたし
店主さんめっちゃ優しいからそういう事気にしないと思うよ
明日も来るんでしょ、なんか奢ってあげるよ
せっかく3日間も来てくれるんだから

ずっと孤独な思いで押しつぶされそうだったからkuromaさんのこの言葉にすごく助けられた。その優しさにあまりにも感動してしまって
泣きそうになりながら自転車をこいだ。


ーー3日目ーー

1日目、2日目と同じ場所に自転車を止めて
同じ道順でセビアンまで歩いて行ったの
だけれど、今までより肩の荷が軽く
絶対にいい写真を撮ってやる、と燃えに燃えていた。

そして、kuromaさんが明るく迎えてくれる
右手を上げてやっほーをしてくれたので
右手を上げてやっほーをした。

なんの種か忘れたけど皮をむいて脱脂綿の上に
置いておくと芽が出てきてかわいいらしい。
kuromaさんは植物が好きなそう。

髪型がマックスボウルの時の髪型に似てたから
今日髪型変えました?と聞くと
毎日変えてるよ!とのこと、アーティストって
キャンバスの上だけの話じゃなくって自分や
自分の周りに対してルール決めて工夫しながら楽しく生きてる人達なのか。

りんごジュースを奢ってくれた
3日とも来てくれたありがとうって言われた

2日目僕が帰ってからの経過を確認。
中央部の線が増えて作品の重量感が増している。 

緊張はしてたのだけど申し訳なさとか
恥じらいは一切なく、自分でもここまで切り替えれるのかと少し驚く。

写真の枚数は
1日目150枚
2日目80枚
3日目270枚

圧倒的に3日目の写真が多いし、自分で納得できる写真も多かった。

1枚目は線とkuromaさん自身が一体化しているような写真。本人のうねりとマッチしていいのが撮れたと思う。
逆に2枚目はブレたけどそのおかげで動きが激しくなった。

kuromaさんにサインをねだった。
快諾してくれた。ありがとう。
以前マックスボウルを制作した際に善通寺高校の生徒さんからサインをねだられた時

名前は?

○○って言います

はーい(サインせずに名前だけ書く)

ちょっとこれ私の名前だけじゃないですか!

あはははは

みたいなくだりがあったらしい。
ドンマイ高校生。

その後僕の予備校のクラスではスピーチが強いられていて高松の古本屋とkuromaさんについて熱弁する予定なんですーって話すると
kuromaさんのスピーチ法を伝授してくれた。

私はね、何も考えない。めっちゃ緊張しいやから。まずみんなの前に立つやん。それでその後
30秒ぐらいクラスのみんなを睨むんよ。
で、人間って興奮した状態と緊張した状態の時の区別がつかんのよ、ドーパミンがでてどっちがどっちかわからんくなるんよね。だから私は
今、緊張を克服しました。
ってゆう話をする。だけどこれ仲いい子は
ああまたやってんなって思うけど初見の人は
結構ビビるんよね。あははは

まぁ、こんなのやつるもりは
全くないけど確かにガチガチに話決めるんじゃなくてゆるくライブ感を演出できたら面白いかもっていう意味で参考になった(?)。

kuromaさんがおふざけ体質ということが分かった。

邪魔で仕方なかった脚立だったけど、3日目にしてそのサビが愛おしくなってくる。このサビを演出しようとしたことで結果的に脚立の線対称性と線の非対称性の対比になっててかなり
気に入ってる写真。
短歌を作ってて誇張したり卑下したりするものに飽きてしまって、それは写真に対しても同じように感じてありのままの写真がとりたくなった。そういった意味で自分の文脈に納得できた
写真となって嬉しい。

最終日、最初からかなり飛ばして作業を続けて
いたので休憩をとる、僕が撮れる最後の休憩だろうと思ってオフ感のあるkuromaさんを撮らしてもらう。

3枚目4枚目の写真は凄くナチュラルで、
写真撮られ慣れてるんだなって感じた。

そして最終フェイズに移行する
この日の僕の集中力も悪くなかった
多分、お店に居候させてもらえるありがたさが
「申し訳ないな」じゃなくて「いい写真撮ってやる!」の方向に変わっていったんでしょう。

マックスボウルのような圧倒的な印象を与える
写真を撮らないとだめだっていう責任感は
初日から感じててこのアングルはそれを上手く
演出できたんじゃないだろうか。
足腰の力強さにライトが当たってアーティスト
の制作過程ののかっこよさを出せたと思うんですけど、写真家の人これどうですか?あってますか?

途中でatamaさんが入店
そしてそして写真家の方(近藤さん)も一緒に
入店

近藤さんはカメラと手首が一体化してるような撮り方で印象的だった。
この時は(いい意味で)あまりにも集中してた
から写真家さんの前で写真を撮ることの恥じらいとか気後れは一切なく気持ちよく撮れた。目標としてた、文脈に会う写真が撮れてそれが自分の自信になってた気がする。写真を撮る人間としても、人としても少しは成長できた3日間だったんじゃななかろうか。

時刻は8時20分
そろそろいい頃合なので少し名残惜しくも
kuromaさんの写真撮影を切り上げる。
普段できないような体験でめちゃくちゃ
新鮮だった。集中して写真撮るのは気持ちいいし、いい写真が撮れると嬉しい。
こんな特別な時間は一生記憶に残るんじゃないかと思う。
浪人してて良かったな、浪人じゃなきゃ絶対
こんなことありえなかったな。
こうやって周りの人に甘えて写真を
撮らせてもらってるんだから、本分である
勉強を疎かにするのは違うし、来年の3月8日の合格発表日にkuromaさんatamaさん
及びお世話になってる古本屋さんにいい報告をするのがせめてもの恩返しだと思ってる。

じゃあそろそろ帰ります。3日間ありがとうございました。

こんなに長い間来てくれる人なんかいないから
嬉しかったです。ありがとうございました。

次の7月1日のイベント絶対行きますね

はーい。待ってます!

(atamaさんもお見送りしてくれる)

おーじゃあ佐藤くんまたね!
バイバーイ

こういう文脈があって締めくくりの写真が完成する。
線を見に来たのに人との繋がりが生じるのは線の恩恵でしょうか。

kuromaさんatamaさん店主さんには
とても感謝してる。ありがとう

後日完成した線の写真を撮りに行く

セビアンさんに感謝の意とお酒が飲めるようになってから絶対行くことを伝えて、
この線を通して作られた僕の3日間の物語を締めくくらせてもらう。

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