壊滅する都心 回復が見込めないインバウンドビジネス
大阪ミナミの地価が大下落した。かつて「づぼらや」が展開していた一角は、マイナス28%にも及ぶ下落だという。しかも今回は、19日に日銀総裁によるETF発言があってすぐのことである。
私は以前に「都心がなくなる日」という記事(2020年6月2日)をNOTEに投稿したことがあったが、折しも1年経たずしてその様相が現実になり始めたのだ。
今回の投稿では、「なぜ日本の都心が消滅の危機に瀕し始めたのか?」書いてみたい。大阪人の私にとっても、こいつは重大事件なんである。
回復が見込めないインバウンド
先の記事で私は都心が淘汰される理由について、主にコロナウイルスによる影響について書いたが、ここにきてもっと重大な問題が出始めた。これこそが、日本をも巻き込んだ「東西冷戦再突入」の可能性である。
もしも再び冷戦に陥るならば、戦争になるかどうかはさておき、日本にとってインバウンドどころの話ではないだろう。実際のところ、日本政府が一番気にしているのはこのあたりだ。今朝も、中国への制裁についての慎重論が報道されている。
2025年開催予定の大阪万博もカジノを誘致してのIR構想も、全てインバウンドを当て込んだイベントである。当然のことながら、今現在進められている主要な都市再開発計画だって、インバウンド有ってこそのプランなのだ。
例えば星野リゾートは今、大阪市の新今宮駅前に巨大ホテルを建造中である。私はかつての職場が近かったので、あの地区のことをよく知っているが、お世辞にも治安が良いとは言えない地区である。
周辺は今もドヤ街であり、日雇い労働者のための職安があり、労働者用の安宿が立ち並ぶ。あの場所の利点といえば、唯一、新世界から徒歩で10分以内という利便さである。
だが日本国内から、わざわざあそこに泊りで観光に出向く人は少ないだろう。当然ながら、狙いは外国客。それも中国人ということになる。そういった目論見が、今頓挫しようとしている。大阪ばかりでなく、日本のあちこちで…。
コロナ以外の要素が世界の危機を招いている
当初、アメリカのバイデン大統領はトランプ大統領よりも穏健派で、中国寄りの外交を展開すると考えられていた。なぜならトランプ大統領がコロナウイルスを「中国ウイルス」と公言したり、中国に対する強硬な発言をしたりで物議を呼んできたからである。
だが既にあなたがご存知のように、就任直後からバイデンの対中国政策・外交は強気一点張りである。
しかも今回は、EUも巻き込んで一層大きな対立が生まれようとしているのである。孤立しかねない中国は、ロシアや北朝鮮と新たな同盟関係を結ぶ可能性が高い。現に昨日、「立派な生活を与える用意ある」と、北朝鮮に対して習氏が親書を送っていたことが明らかになった。
つまり中国は周辺国と手を組んで、新たな東西の壁を築こうとしているのである。今回のアメリカ・カナダとEU諸国による制裁が、そのトリガーを引いてしまった感がある。勿論のことだが、同盟国である日本にとっても重大な影響が懸念される。
八方塞がりの都心
コロナ禍に加え「東西の冷戦復活」となれば、これは誰がどう考えてもインバウンドなど過去のおとぎ話ということだ。つまり、今後インバウンドを当て込んだ催しや計画は衰退・崩壊の一途を辿ることだろう。
特に被害が懸念されるのが都市部である。各企業がどんどんと撤退し、人口が流出し、都市そのものが意味を持たなくなった暁に、都心は消滅する可能性が高い。
あのパソナが、昨年から淡路島に本社機能を移し始めた。その理由については、地方創生だとか、豊かな自然だとか、社員からの熱い要望だとか、健康的だとか、体裁の良い言葉で散りばめられているが、実際は「東京に居る価値がなくなった」というのがホンネだろう。
勿論、淡路市の地方創生にチャッカリと乗っかり、いずれ淡路島の住人全員を顧客とした「パソナ島」にしてしまうという魂胆もミエミエである。なにせ指揮を執っているのがあの竹中平蔵氏なのだから、とっくの昔に東京に本社を置くデメリットに気付いていたはずである。
廃墟となった繁華街
デパートの消滅
空室しかない駅ビル
取り壊し不能のタワマン
復旧不能のインフラ
雑草だらけの広場
これらの悪夢が現実となり、都心の崩壊は予想以上に速いテンポで進むかも知れない。そしてそれは人類が減るという目的におけるプロローグのたった一つに過ぎないのだろう。(奥井 隆)
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