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世間の大波をサーフィンする

あなたは今どんなことに、はまっていますか?
実は私、今、NVCにはまっています。-Nonviolent Communication-を略してNVC。非暴力コミュニケーションのことです。


NVCとの出会い

私がNVCに出会ったのは4年前。気の重いことがいくつかあったのを覚えています。まあ、その頃に限ったことではありません。人間関係の悩みは多かれ少なかれずっと感じながら生きてきました。

相手の言動に対応しきれない時、私はどちらかというと言いたいことを十分に言えないことが多いです。そしてよく落ち込んでいました。私のこれまでの人間関係に対する姿勢を表現するなら、「頭を抱えて座り込んでいる」ようなイメージでした。

NVCでサーフィン

NVCの本を読んだ後、講座やワークショップに参加して学ぶようになりました。その中で、聞いた話があります。この世には様々な出来事がおこる、困難もやってくる。だから、NVCを使ってサーフィンしていく、というのです。

実際には運動音痴でサーフィンなど縁遠い私なのですが、その話を聞いて心がときめきました。大波を上手にサーフィンしている格好いいサーファーをイメージしました。私もサーフィンをしたいと思いました。NVCを身につけたら、私も世間の大波を波乗りしていけるような気がしたのです。

 どんなふうにサーフィンするのでしょうか。まず、いま起こっている状況をありのままに観察するところから始めます。次に、その時の自分の感情を確認します。そして、その感情の奥にあるニーズ(大切にしていること)は何かを探します。そして自分のニーズを満たすためにはどうしたら良いかを考えてリクエスト(お願い)をするのです。これをお互いにやりとりするのが、NVCが勧めるコミュニケーションです。

 このNVCを学ぶようになって、私は生きるのが楽になってきたと感じています。4年前、気が重いと感じていた人との関係も、なんとかぼちぼち続いています。以前は「頭を抱えて座り込んでいる」私でしたが、今はちょっとずつサーフィンできはじめているのかもしれません。


セルフイメージ

セルフイメージが高くなってきていることもうれしいことです。以前の私は、やってしまった失敗を思い出すたびに、自分に「大嫌い」と言っていました。そうやって何度も自分を責めて、たたき続けてきました。自分自身への「暴力」です。自分の中に平和はありませんでした。それまでも、自分自身を責めることは「良くない」と教えられていました。ですから、自分を責めている自分を、さらに責めていました。意識して自分に肯定的な言葉をかけるようにも努力していましたが、残念ながらずっとセルフイメージは低いままだったんです。どうしたらいいか全くわかりませんでした。

でもNVCの新しいやり方でやってみると、明らかに大きな変化がありました。失敗した時やその失敗を思い出した時、自分にはどんなニーズがあるのかを探り、そのニーズが満たされなかったことを嘆くようにしたのです。(注1)

例えば、「私には、つながり・自己表現・ユーモアのニーズがあるのに、それが満たされなかったのは残念だったなあ。悲しいなあ」と嘆いたのです。自分に共感したわけです。そうすると、自分がどんなことを大切にしているのかを確認できて、うれしくさえ思うのです。ニーズを満たす方法が悪かっただけで、そもそも私たちのニーズは、どれもすべて美しくすばらしいからです。

このようにして満たされなかったニーズを嘆くことによって、自分に対して「大嫌い」と言わなくなりました。つい言ってしまっても、すぐに自分のニーズ探しにもどる事ができています。自分に共感すると心が平和です。とっても居心地が良い。長い間低いセルフイメージのまま生きてきたのに、だんだんとセルフイメージが上がってきたのです。以前より生きるのが楽なんです。

母との関係

 母との関係も変化しました。客観的には普通の母です。でも私は、母に愛されている実感があまりありませんでした。母は弟を大切に扱う一方で、ずかずかと私の心に入り込むところがあります。思春期から母との関係はこじれ気味。そんな母の口癖は「ほなけんど」という接続詞で、これは阿波弁で「だけど」「しかし」を意味します。母は、私が言った同じ話をする時にでも、必ずはじめに「ほなけんど」と言います。私は母の「ほなけんど」を聞く度に、否定されたように感じてムカムカしていました。

けれども、私がムカムカしていたのは「つながり」という私のニーズが満たされなかったからだとわかったのです。もし私が「つながり」のニーズを持っていなかったら、それほどムカムカしなかったはずなのです。(注2)

私は、自分が母とつながりたいと思っていたことに気づいてびっくりしました。同時にその発見をうれしく思いました。私のイガイガした悲しい思い出が、切なく暖かな思い出に上書きされたのです。

母は今も「ほなけんど」「ほなけんど」「ほなけんど」。でも、案外、さらっとスルーできています。NVCのおかげです。これからも人とつながりたいというニーズを持っている自分を大切にしたいと思っています。

わかりあえないを越えていきたい

 大学を卒業して、就職し、結婚し、子育てをしてきました。いろんなことがありました。「愛したい・つながりたい」という気持ちはあっても、その方法がわからなかったように思います。だからわかりあえないまま、流れに身を任せてジタバタ生きてきたと言えるのかもしれません。ですから正直、もっと早くNVCを知ることができていたらどんなに良かっただろうと思います。

でも、良いことを始めるのに遅すぎるということはありません。とにかく私はNVCと出会えて、本当に良かったと思っています。自分自身とつながり、相手とつながり、コミュニケーションを重ねて、愛していきたい。私らしく正直でありたいし、成長していきたい。そう思っています。NVCサーフィンを続けるつもりです。

夫との関係や子どもとの関係も、姑との関係も。友だちとの関係もご近所の関係も。一つひとつ、ニーズを探りながら、NVCサーフィンでチャレンジです。楽しみながらやってみたいと思っています。

 

リクエスト(お願い)

そして、皆さんへ、私からリクエストがあります。これから進学したり就職したり結婚したり子育てしたりする若い皆さんに、このNVCを知っていただきたい。是非とも非暴力コミュニケーションの世界を味わってみてほしい。

なぜならNVCという平和のことばによって、お互いにつながりあい愛しあえる未来がくるに違いないと、大きな期待を持っているからです。


おすすめ図書

 最後になりましたが、NVCのおすすめ図書を紹介します。日本にこの平和のことばをさらに広めたいと願って、翻訳チームが時間をかけてていねいに翻訳してくれた新しい本です。読みやすくて、とてもわかりやすい本です。

 『 「わかりあえない」を越える  
目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション 』
マーシャル・Bローゼンバーグ著 
安納献・今井麻希子・鈴木重子訳
  2021年12月 海士の風(株式会社 風と土と)発行 
詳細はこちら



(注1)望ましくない行動をしてしまったときの第一歩は「嘆くこと」、つ     まり、ニーズが満たされずにいる自分自身に共感することから始めます。(P.105)


(注2)私たちの感情の原因は他者の行動にあるのではなく、私たち自身のニーズにあるのです(P.65)

上記おすすめ図書より

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