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エレベーターで絶望した話

失望。通り越して絶望。もうやだ。

スーパーで買い物をして、部屋に帰ろうといつも通りエレベーターを待っていた。
エコバッグの重みを感じながら虚空を見つめていると、マンションの入り口が開いた。冷たい風が吹いて、おじさんとおばさんが大きなカートを押しながら入ってくる。
カートに乗せられていたのは大きな段ボールだった。視界の端で中をちらっと見ると、食べ物や飲み物。すぐに仕送りだと分かった。マンションに住む誰かの親なのだろう。
ふたりは仲良く雑談していた。その時点でわたしは死にたかったが、ため息をなんとか抑え込む。エレベーターが下りてきたので、彼らと一緒に乗った。
ふたりはわたしより先に降りた。大きなカートを押していたからわたしが「開」のボタンを押していると、ふたりは丁寧にお礼をしてくれた。余計に悲しくなった。

死にたかった。どうしたって、自分の親と比べてしまう。鬱だと伝えても心配の一言もなく、連絡もひとつもこない。カウンセリングでは親の話ばかり。
他の家庭なんて見たくなかった。仕送りを持って子どもの家を訪れる仲のいい家族がいること、知りたくなかった。

わたしもエレベーターを降りて、俯きながら自分の部屋に入る。自炊しようと買った食材をぜんぶ冷蔵庫にぶち込んだ。もう何のやる気もない。

自分の親にも家を訪れてほしいとか、LINEを送ってほしいとか、そんなんじゃない。
もっと、心の穴を埋めてほしかった。支えになってほしかった。
これがわがままじゃないこと、こんな願いすら持たずに生きてる子がいること、さっきの家族を見て知ってしまった。
失望絶望。もう今日はベッドから出てあげない。

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