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【発狂頭巾】秋月の激突!発狂頭巾vs発狂天狗【天狗向け】

発狂頭巾基礎知識

発狂頭巾とはTwitterの集団妄想から発生した「昔放送してたけど、今は放送できない、主人公が発狂した侍の痛快時代劇」という内容です。クレイジーなダーク・ヒーローです。狂化:EX。

秋も深くなってきた夕暮れ時、発狂頭巾・吉貝何某の友であるハチは豆腐を片手に大路をいそいそと歩いていた。何せ吉貝は一人では飯もろくに作れぬ男である。「変な事に巻き込まれておらねばいいが」と、いつも心中穏やかではない。その時である。聞きなれた声色の人物に、声をかけられた。

「おお、ハチではないか。ちょうどよい所におった」

おお、みよ。血塗れ白衣に強化アクリルギヤマンで脳が丸見えで、奇妙な笑みをみせている人物がハチの後ろにいた。お江戸のマッドサイエンティスト、人類悪兼万能の天才と名高い平賀=ストレンジラブ=甚内である。

「これは平賀先生。お元気そうで何よりで……」

ハチは『嫌な奴にあった』というそぶりを見せないように気を付けながら、甚内に挨拶を返す。うっかりそんな態度を見せてしまったらお江戸八百八町は核の炎に包まれ、人が死ぬ。

「いやいや、吉貝の奴めに渡すものがあってな。あ奴が武器に困ったら、この絡繰印籠を押すがよいぞ。じいぴいえすにて位置を把握し、最強の武器を瞬時に届ける仕掛けをこしらえたのだ」

「はあ、ありがとうございます」

ハチは、何とも言えない顔で、印籠を受け取る。ずっしりと重い。

「ではまた面白い非人道的兵器が出来上がったら持ってくるとしよう。吉貝にはよろしく伝えておいてくれ」

それだけ言うと、平賀=ストレンジラブ=甚内は愛馬にしている尊厳蹂躙実験生物キメラ・モンスター町娘『お鏖』の背中に乗り、天高く、どこかへ飛び去って行った。

「まあ良いか。早く行こう」

ハチは見なかったことにして、印籠を懐にしまい、吉貝の住む発狂長屋へ向かい、足を速めた。

「美味い。美味い。やはり胡乱屋の豆腐は美味いな。いやいや、喰った喰った」

湯豆腐をぺろりと平らげた吉貝は囲炉裏の前で胡坐をくみながら茶をすする。

「ちゃんと飯ぐらい作ってくださいよ、旦那」

ハチは文句を言いながら皿を片付ける。

「感謝しておる。それはそうと、ハチよ。近頃よからぬ連中が江戸で暴れているそうだな?」

「よからぬ連中というと……ああ、あの押し込み強盗の事ですかね?」

「それよ」

吉貝の目がキラリと光る。ハチはしまった、と顔を覆った。吉貝の変な好奇心に火をつけてしまったようだ。

「奴らのような悪党をのさばらせておいては、わしの名折れじゃ。今から一つ、皆殺しにしてやらねばならぬ」

そういうと、吉貝は刀を手に立ち上がり、頭巾を被った。

「いや、皆殺しといっても、連中の居場所なんかわかるんですかね?」

「おう、勿論よ。奴らは千駄ヶ谷村(現在の東京都渋谷区千駄ヶ谷。当時は朱引内と呼ばれる江戸の郊外の新市街)の外れにある荒れ寺を根城にしておるわ」

「い、一応聞きますがその根拠は……」

「わしを甘く見るなよ。江戸の事など、使い魔鴉によってお見通しよ」

見れば部屋の窓にカラスが一羽止まっており、豆腐をくわえている。ハチが見ても『パネェ~~』としか鳴かず、どう見ても意思疎通ができるとは思えない。

「まあ、わかりましたよ。でも居なかったら、帰りますよ」

やれやれという態で、ハチも出立の準備を整えた。

この時代、灯りは貴重であり、江戸ですら夜は闇に包まれる。ましてや江戸の外れなど、真っ暗である。しかしこの日は満月であり、道にも僅かに月明かりが射していた。野は銀色に照らされ、秋風は既に冬の気配を感じさせつつある。

その月明かりの下を、弓張り提灯を持ったハチと吉貝が歩いていく。千駄ヶ谷村の外れ、雑木林の中に、確かに荒れ寺はあった。そして中から明かりが漏れており、確かに人の気配はあった。

「見てみよ、ハチ。奴らの根城よ。このような所で悪だくみをしおってからに」

「まさか本当にあるとは…しかしその割には静かですねえ。それに何か臭いませんか?」

それは鉄のさびた匂い。血の匂いが秋風に乗って流れてきた。

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!

突如、寺の敷地内から猛烈な勢いの銃声が聞こえ、「ギャアアアアアアア!!!」という野太い断末魔が聴こえた。

「むう、何者かがわしの手柄を横取りしようとしておるな?こうしてはおれぬ。ハチ、突入するぞ」

「あ、待ってくださいよ旦那!」

あっという間に吉貝は寺の中にすっ飛んでいき、ハチも走り出した。中には無数の荒くれ者達が銃殺された死体が転がっており、見るも無残な光景である。

「うへえ、な、なんですかね?」

その時である。二人の目の前に、巨大な影が現れた。

「何奴?」

吉貝は刀に手をかける。それは8尺(242.2cm)はあろうかという大男であった。顔を日本三大デーモンの一つである赤い大天狗の面で隠し、全裸に巨大数珠を胸に巻き付け、股間を紐で止めた天狗面で隠し、全身の八割を絡繰仕掛けに置換し、無数の絡繰兵器で武装した偉丈夫であった。天狗面が月明かりに照らされ妖しく光り、面に空いた瞳の穴はらんらんと深紅に発光していた。

「へ、変態!?」

「おのれ、わしの名は姓を吉貝、名を何某、人呼んで発狂頭巾!名を名乗れ、天狗!」

二人に対し、ゆっくりと手を合わせた天狗の男は、静かに合成音声で答える。

「我は発狂天狗……全てを狂わせる最強の狂人にして、偉大なる天狗。押し込み強盗は所詮弱者にして狂いきれぬ者……故に成仏させた。貴様らは強者にして狂者か?弱者であれば、成仏させる……強者にして狂者であれば、天狗とする!!!」

プシュー!と音を立てて、天狗面(股間)から白い蒸気が排熱された。

「おお、狂人と狂人が逢えば戦うが必至!よかろう、その勝負、この発狂頭巾が受けてたってやろう!ハチ、塀の裏に隠れておけ!」

「へ、へい。狂人の相手は任せましたよ」

そそくさと隠れたハチを見届けると、発狂頭巾は刀を抜く。それを見ると、静かに発狂天狗は武器を構えた。

「では、狂人同士、いざ尋常に参ろう……」

月影の差し込む境内で、二人の狂人が10間(18.1m)の間で対峙する。

「狂うておるのは……」

「貴様か、わしか!?」

カァ~~~~~~~~~~!!!(例の音)

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!

それと同時に発狂天狗の左腕に装着された巨大ガトリングガンから凄まじい弾幕が展開された。額にピキィーン!というエフェクトを発生させた発狂頭巾は、紙一重のステップでその弾丸をかわし、その弾丸を刀で弾き、前進を開始する。

「その程度の豆鉄砲でわしを止められるとは、随分と舐めてくれたものだな!」

だが、そのかわした隙を狙い、発狂天狗の両乳首虹色殺人光線が火を噴く!

ピュドゥシューン!ピュドゥシューン!

「おおっと、男の乳など要らぬ!」

これは受ける訳にはいかず、発狂頭巾は大きく空中へ跳び上がる。しかしそこに、発狂天狗の両肩ウェポンベイコンテナから狂気誘導式多連装てつはうが火を噴きながら宙に逃げた発狂頭巾を追う!

バシュバシュバシュバシュバシュ!

「ええい!面妖なものばかり使いおって!ギョワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

刀を一閃すると、そこから生まれた剣閃がてつはうを薙ぎ払い、誘爆する。着地すると同時に駆け出し、早く一撃を入れねば。そう発狂頭巾が思った瞬間であった。

「だ、旦那!あぶねえ!」

物陰から覗いているハチの声が響くと同時に、発狂頭巾の腹部にどでかい衝撃が襲う。

ドォォォォォン!!!!!

てつはうは囮、発狂天狗は煙で隠れた隙に右腕のアームストロング砲をぶっぱなし、見事に発狂頭巾に命中させた。大きく吹き飛び、塀まで突き飛ばされ、白壁を崩す!これぞ発狂天狗重装型必殺の陣、電脳化された脳によるバイナリ思考での高速武器連続使用である。

「こやつも天狗に相応しくない弱者であったか……つまらぬ…」

小さく発狂天狗は残念そうに呟いた。

「何を勘違いしておる?」

砂煙の中から、頭巾の男が再び現れる。発狂頭巾だ。その身体はダメージを受けたものの、まだ致命打とはなっていなかった。再び、発狂天狗に向けて駆け出す!

「勝負はまだこれからよ。ニギャーッ!!」

「無駄。天狗の前には貴様など所詮は弱者に過ぎぬ…再び、この連撃を喰らわせてやろう。我が弾丸はまだたんまりとある故な」

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!

再び弾丸の嵐が発狂頭巾に襲い掛かる!しかし発狂頭巾は今度は斜めに動き始める。それも適度に速度をあげ、適度に速度を緩め、時に跳び上がり、時にスライディングを挟む不規則で胡乱な動きでだ。

「むう!」

発狂天狗はまたガトリングガンとてつはうを発射するものの、重装備による旋回速度の低下は、発狂頭巾の凄まじい脚力には追い付けなかった。3間、2間とじりじりと螺旋の動きで間合いを詰める動きは、まさに捕食者のそれであった。

「貰ったぞ発狂天狗!ゴボーーーーーーーーーーーッ!」

奇声とともに、発狂頭巾は刀を発狂天狗の心臓へと、下から抉るように突き立てた。

「グオオオオオ!!!やりおる!!!よい、良いぞ!だが、わしの心臓はもう一つある。この程度では止められぬ!」

刀を素早く引き抜くと、追撃として「狂」の字に斬り裂く!秘剣・狂一文字が決まった。各種武装を強制的に切断させたのだ。もはや使えまい。

しかし、発狂天狗は、不敵に面の奥の瞳を真っ赤に光らせ、何の惜しげもなく装備を全て振り落とした。それと同時に、凄まじい速度で天に上っり、一気に加速を始めた。

「なるほど、これで終わりというのはつまらぬと思っていた。良いぞ!」

ここで、二人の戦いの第二幕が始まろうとしていた。


秋の夜空、美しい満月を背景に、二人の狂人が宙を舞う。

「わしの脚力に対して速度勝負の空中戦に出るとは良い度胸だ。ギョワァーーーーー!!」

追随するように発狂頭巾も地面を蹴り、宙へ跳び上がった。ぐんぐんと秋の夜空へ逃げた発狂天狗を追いかける。が、その時であった。

『モード変更。重装天狗モードから高機動烏天狗モードへと変更します。超高精度カメラセンサー、起動、セット。疑似神通力慣性キャンセラー、ハウチワ・バーニア展開、点火開始』

合成音声が絡繰の変更を告げる。それと同時に発狂天狗の背中の機構がガクンと開き、可変天狗翼を展開させる。ヤツデの葉っぱの形をした紅いロケット噴射炎が噴き出し、『アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!!』と奇妙な絡繰駆動音を立てながら猛烈な加速を開始した。

「ぬっ?」

発狂頭巾が驚いたのも無理はない。その速度は瞬時に最高速度まで達し、マッハ2.42(時速2575km。F-35ライトニングⅡより速く、F-22ラプターと同じ)での起動を開始したのだ。しかも円形軌道の動きや急カーブなど複雑な動きをもってしてだ。音の壁が凄まじいソニックブームとして衝撃波を発生させ、荒れ寺をさらに破壊し、荒くれ者の死体や石灯篭を吹き飛ばす。

「だ、旦那?何があるんですかい?」

物陰に隠れ、即席塹壕の中にいたハチは無事であったが、もはや首も出せない状態だ。

『アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!!!!』

あわれ発狂頭巾は全方位に襲い来る衝撃波に潰されてしまうのか!?

「これが空の王者、天狗の速度よ。人の身でついてこれる者など皆無」

「それはどうかな?」

おお、見よ。凄まじい発狂天狗に並行して、空を飛ぶ…いや空を走る人影が一つ。

「この程度の芸当、発狂空中歩法の基礎中の基礎よ。貴様の専売特許ではないわ」

発狂空中歩法とは、『水面に右足がつく前に左足をあげる』という烈海王水面歩行の発展版である。『空中で右足がつく前に左足をあげる』ことにより浮力を発し、空気を蹴り込む力で更なる加速を発生させるものである。

「真横であれば相手の音の壁は通らぬ」

宙を走りながら腕を組みながら、懐から大麻煙管を取り出し、一服し、余裕で吹かしていた。シンクロナイズドスイミングのようにぴったりつきながら、脳にテトラ・ ヒドロ・カンナビノールを補給し、脳内の狂気思考を加速させる。こやつを相手にするには本気の狂気がいる、発狂頭巾はそう考えた。

「速度だけついてこれても無駄……貴様は天狗には勝てぬ。空は天狗の領域……そして我が纏う天狗外骨格は三千世界の天狗を殺し、三千の天狗の魂を内包する……最速の烏天狗すら凌駕する空の戦に勝てると思うのか、いや思えまい(反語法)。落ちて死ねぃ、狂人!」

そういうと発狂天狗は両手両指を突き出した。背中の天狗ロケットは全速で飛行中であり僅かにも減速しない。彼の全身は絡繰仕掛けに改造しており、全ての指も斬り落とした末に指バルカンを装備されている。

『アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!』

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!

十条の曳光弾の跡が発狂頭巾周囲に襲い掛かる。それでも空中を走りながらも余裕のある発狂頭巾は僅かに身体をそらしてよける。

「相変わらず芸がない。狂うておるのか?」

一服、煙を吐き出すと、煙管を懐にしまいながらも、危なげなく避け続ける。

『アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!』

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!

「阿呆!飛び道具は貴様の専売特許ではないわ。あの重装備ならともかく、その程度の豆鉄砲に対抗できぬと思うたか。くらえい!ギャヘーッ!!」

すっと、懐に手をやった発狂頭巾はシュババババと連続で何かの金属片を投げる。

ビュンビュン! ズバズバズバッ!

ビュンビュンビュン! ズバズバッズバズバッ!

それは『発』の字と『狂』の字の形をした二種類の発狂手裏剣であった。異様な形状が作り出す不規則な軌道のみならず、特殊な磁鉄鉱で作られており『癶』の部分と鳥居型の部分、『犭』の部分と『王』の部分が分離しては離散し、極めて複雑な火線を描き、その刃は鋼鉄すら容易に斬り裂く。

「ぬん!?」

「まだまだ発狂手裏剣は沢山あるぞ。それ、このまま切り裂かれて落ちるがよい。天狗の空流れという奴だ」

いかに強靭な天狗外骨格とはいえこれにはたまらぬ。だが、天狗の鼻は折れておらず、妖しく深紅に光るのであった。

「ほう、ならば……」

『オオ、コワイコワイ。連装式空気減速機(ダブル・スポイラー)、作動』

アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!

なんと、可変式天狗翼の二機の空気減速機(スポイラー)が作動し、発狂天狗は急減速を始める。空を走る発狂頭巾は急には止まれない。

「何?」

「空中の戦いは『狗の戦い』(ドッグ・ファイト)……すなわち天狗の戦いであり、天狗の戦いは後ろを捉えた方が勝つ……」

アヤヤヤヤヤ!!!!アヤヤヤヤヤ!!!!

発狂天狗が今、発狂頭巾の後ろに回ると同時に大天魔計器で計測を開始し、武装が展開する。

「地の利を得たぞ!ではさらばだ……落ちよ狂人!情け無用の天狗最大火力を喰らえぃ!」

ロックオンが終わると同時に大腿部と腕部のミサイルハッチを開き、指バルカンを構え、発射された。

アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!!!!

ドシュシュシュシュ、ドシュシュシュシュ!!!

弾丸とミサイルの嵐が発狂頭巾の死角から襲い掛かる。照準のしやすさから、背後にいる発狂天狗が圧倒的有利であろう。

「あ、あぶねえ!吉貝の旦那~!」

ハチの悲鳴が聞こえた。

「ええい、こしゃくな」

空を蹴り、海老ぞりになって発狂頭巾は空中を回転しながら次の狂気的な手を考える。このまま狙い続けられてはいずれ撃ち落とされてしまうに違いない。いわゆるジリー・プアー(徐々に不利)だ。

しかしこの程度で降参する発狂頭巾ではない。サムライは大空でもまたサムライなのだ。そして発狂麻薬脳内思考(でたらめ)をまとめ、瞳を七色に光らせると奇声を上げ、決断的に弾丸のひとつを『踏んだ』。

「ギャヘーッ!!」

瞬時に加速する。空気よりも弾丸の方が質量が大きく、踏み込んだ時の推進力は加速する。次々と飛来する弾丸を踏んで、空中で加速を始める。それと同時に空中でひねりながらも発狂手裏剣を投げ続ける。背後から追尾中の発狂天狗に対して相対速度が2倍になった手裏剣の嵐が襲い掛かる。

「これぞ発狂八艘跳び也、貴様のうろたえ弾など空に浮かぶ船に等しいわ!ウンダバーッ!!」

おお、みよ。伝説的な狂人将軍ヨシツネめいた空中機動で、距離をつめるではないか。

『相対距離500尺…400尺…300尺…危険!』

アヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!

超高精度カメラセンサー、大天魔レーダーが、発狂頭巾の異様な接近を警告した。その瞬間にも意味不明な軌道で発狂手裏剣は襲い、発狂天狗は回避行動を余儀なくされる。

「ぬぅ?」

接近されてしまっては元も子もない。勝負を焦った発狂天狗は、一斉に再度ミサイルを発射した。

ドシュシュシュシュ、ドシュシュシュシュ!!!

それを見て、発狂頭巾の虹色の瞳はニヤリと嗤い、口元はニィと上がった。

「この時を待っていたぞ、弾幕ごっこは終わりだ!」

「何?」

そう、発狂頭巾は発射されたミサイルを片手で掴んだ。弾丸上の不安定さとは異なり、一瞬だけ安定した足場としてミサイルを活用する魂斗羅の戦術を取り入れたのだ。すかさず刀に手をかけ、一気に懐に接近し、居合抜き一閃!

「狂うているのは…貴様ではないか!!!!ギョワーーーーーーーーーーァッ!!!!」

140文字もの『狂』の字の剣閃で相手を斬り裂く発狂剣術奥義・狂百四十字-狂呟鳥-が発狂天狗の指を、ミサイル発射機構を、天狗エンジンを、可変天狗翼を斬り裂き、デュアル天狗心臓のもう一つに狂の文字を刻み込んだ!

「ギョワーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

「グワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

アヤヤヤヤヤヤヤ!!!アヤヤヤヤ!!!アヤ……プツン!

飛行機能を喪失し、それでも必至に逃れようともがく発狂天狗の手足を発狂頭巾がガッチリと固めた。

「逃さぬぞ発狂天狗!トドメだ。ギョワーーーッ!!!!」

これぞ発狂柔術にして、発狂星の発狂王族に古くから伝わる発狂奥義の一つ、発狂スパーク(アタル版)!発狂二人の狂人が急速に過減速(ストール)を起こし、錐もみ状態で地面に激突し、大爆発を起こす!

チュドァン!!!

撃墜と同時に、衝撃を殺して脱出した発狂頭巾は地面に着地し、見得を切る。

「や、やった?!」

ハチの素っ頓狂な声に対して、発狂頭巾は無慈悲に告げた。

「いや、仕留め損ねた」

「へ?」

発狂頭巾の刀が、ポッキリと折れる。超音速の世界で無理がたたったのだ。

「逃げよハチ。いや、もう間に合わんかもしれん。念仏を唱えた方が早いな」

そう、爆炎の中から人影が見えた。発狂天狗はまだ生きていたのだ!!!

「発狂頭巾……善き敵……この発狂天狗が奥の手の奥義を持って葬ろう!!!」

ハチはその姿を見て、怯えるような声を出した。

「ば、馬鹿な。心臓を仕留めたんでしょ、旦那!?」

「わからぬ……だがこのわしも狂人の端くれ、受けてたとう!」

発狂天狗はあまりにも禍々しい紫色の闘気を発していた。

「おそらく、2つの心臓に代わる奥の手を持っておるのだろう。それも極限まで狂った奥の手をな……」

突如、発狂天狗は数珠を千切り、腕に巻き付ける。

『高機動烏天狗モードから大天狗モードに移行します』

俄かに雲がかかり境内の月光は消え、天狗の闘気が周囲にほとばしる。

『仮想論理狂人:崇徳天皇の魂に接続します。テングロ率109%

電子音性が無慈悲に告げる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

空気が震える。

ドドドドドドドドド……

大地が揺れる。

バチバチバチバチチ……

紫色の稲光が発狂天狗と数珠を覆う。そして『封露夢の構え』奇妙な構えをとり、突撃の準備を開始する。

「な、なんだと?!馬鹿な、あの伝説的な狂人の魂を得ているというのか!?そうか、あのお方は死して天狗になられたお方……」

折れた刀を構えながら、発狂頭巾は目を七色に発光させる。

「ううむ、この刀では……止められぬなあ……」

「そんなぁ!!!旦那!!!」

ハチの悲鳴をよそに、発狂天狗の数珠は凄まじい熱と電撃を発しながら回転し、変形し、ほとばしる鋸刃を形成していく。

『不明なユニットが接続されました』

『システムに深刻な障害が発生しています』

『直ちに使用を停止してください』

ギュイイィィィィィィィィィィン!!!!!!!!

おお見よ、これぞ発狂天狗の奥の手、崇徳天皇の魂を得てしか使えぬ変形大天魔数珠型チェーンソー、全てを砕く《対江戸幕府規格外百八連振動突撃数珠》!狂気の末の狂気を持つ者にしか使えぬ、末法の武器に外ならぬ。折れた刀ではいかな発狂頭巾と言えども止める事能わず。

「ぬう……」

「さらばだ。発狂頭巾……」

これには発狂頭巾も額の脂汗を禁じ得ない。

その時、ハチは一つの事を思い出した。

「……そういえば甚内先生に変な印籠を貰ったんでしたっけ……」

ハチが印籠の仕掛けを押す。するとほぼ同時に東の方で何かが爆発した。見れば江戸城が大爆発を起こしているではないか。そして輝く飛翔体がこちらに向かって飛んできている。

「だ、旦那!なんか飛んできます!!!」

「何い?!」

それは巨大な柱がロケットを吹かして、発狂頭巾めがけて飛んできていたのだ。

ガチィィィィィィン!!!!!!!

その柱は発狂頭巾の刀に合体した。おお見よ、これぞ江戸城の柱にロケットブースターとヒヒイロカネ製スパイクで強化した武器《真州刀》(マス・ブレード)だ!武器とは言えぬ、しかし恐るべき破壊力を持つ純粋な暴力、これもまた規格外の刀にして狂人にしか振るえぬ一振りである。

「おお、これよこれ。これならばあの数珠に対抗できるわ!」

後に平賀甚内は「江戸城の柱を武器にしようと思ったのはなぜですか?」と聞かれて、こう答えている。「(´甚`)ちょっと質問の意味が分からない……武器にしちゃダメなのかな?」と。

「ウオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

数珠チェーンソーの展開を完了した発狂天狗は右手を突き出し、突進を開始している。

「参る!グワギャーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

発狂頭巾はただの純粋な暴力と化した刀を背後に構え、刀身のロケットブースターを点火すると同時に駆け出し、二重の推進力で持って、全膂力で、発狂天狗めがけて恐るべき一撃を振りぬいた。

それは剣技ですらなく、ただ一刀を死狂いで振るのみ。

ギュイイィィィィィン!!!!

ガコォォォォォォォン!!!!

チュドォォォォォォン!!!!

KABOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!

二つの規格外武器が衝突し、轟音と閃光と共に衝撃が大破壊を引き起こす。荒れ寺は完全に吹き飛ばされ、物陰に隠れたハチも吹き飛ばされぬように必死にしがみついた。

「だ、旦那ァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

月影が境内を照らし、砂煙が消えた。

立っていたのは、二人の男だった。

発狂頭巾の構える《真州刀》がボロボロと崩れてゆく。

「……見事な狂いであったよ、発狂天狗」

発狂天狗の機械の身体がサラサラと粒子に置換して消えてゆく。

「……善い狂いであった。礼を言うぞ、発狂頭巾」

発狂天狗の身体は一片まで全て素粒子へと消え、発狂頭巾だけが立っていた。静かに、二枚の天狗面を拾い、発狂頭巾は合掌し、冥福を祈った。

ゴォォォォォォン…………

どこか遠くの寺の鐘の音が鳴る。

「だ、旦那。か、勝ったんですね!」

ハチは喜んで駆け寄る。

「ああ……僅かに俺の狂いが勝っただけさ。だがこれからよ」

ゴォォォォォォン………

再び、鐘の音が鳴る。

「あの鐘の音を知っておるか?」

「い、いえ……知らないですが……」

「あれぞ狂泉寺の鐘の音。あの鐘が鳴らされた時、七人の狂人による熾烈な戦いの連鎖《発狂聖杯戦争》が始まるのだ。今、わしは一人の狂戦士を倒した。これから、更なる五人の狂戦士がやってくるであろう」

そう、これは戦いの始まりに過ぎなかったのだ。時を同じくして、大江山で全長100尺の巨大な鬼神が、紀州道成寺では全てを焼き尽くす情炎の権化が、神田明神では江戸の守神たる悲運の将が目覚めた。

これより発狂頭巾は修羅の戦いに巻き込まれる。発狂頭巾とハチの戦いはまだまだ続く…………