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【発狂頭巾ディストピア】ドブガグチ・イン・ネオリベラリズム

以下は発狂頭巾オンリーイベント(キチケット)で配布されたものです。Noteはルビが打てないから畜生!テキストカラテ。

発狂頭巾基礎知識

発狂頭巾とはTwitterの集団妄想から発生した「昔放送してたけど、今は放送できない、主人公が発狂した侍の痛快時代劇」という内容です。クレイジーなダーク・ヒーローです。狂化:EX。

あらすじ​

20XX年、日本は新自由主義勢力による決断的クーデターによって『金融ビッグバン(セカンド・インパクト)』が起こされ、超格差社会へと変貌を遂げた。暗黒メガコーポと極道(ヤクザ)によって支配され、国民総背番号制によって一級国民に富裕層(セレブ)は都市部である東京23区で快適に住み、二級国民は東京周辺(グンタマチバラギ)の重汚染地域で重労働(オツトメ)を強いられ、反抗的な三級国民や犯罪者にもなれば、軍艦島厚生施設で浄化される。そんな狂気的(マッポー)な東京の辺縁部(ハズレ)、かつて「溝の口」(ミゾノクチ)と言われ、今では「溝の口」(ドブノクチ)と呼ばれる川崎の二級市民勤労工場(ブラック・ファクトリィ)にて一つの事件が起こった。

重酸性雨が降りしきる東京近郊、ドブノクチ。夕暮れ時には、この街も光化学スモッグを通した赤黒い光に包まれる。この工場では一級国民向けに贅沢品を作っている。工場第一班長のハチヤマ(通称ハチ)は今日の分のノルマを達成したことを確認する。

「オツカレサマデシター!!!」ハチヤマが決断的な終業の合図をかけると、二級労働者達は「「「オツカレサマデシター!!!」」」とアイサツを返す。労働態度は全ての基本、きちんと感謝して労働しているかは全て本社からの遠隔確認(テレワーク)によりチェックされている。実際、アイサツが出来なくて軍艦島送りになったものも多い。二級労働者達は職場では決して気が抜けない。

労働者達は一列に規則正しく、着替室(ロッカールーム)へと移動する。無駄口は叩かず、本社直通カメラに向かってオジギして労働への感謝を示す。ハチの管轄下にある第一班は、ドブノクチ工場でも優秀な労働者が集う部署である。優秀とは特段技能が良いわけではなく、従順というだけのことだ。二級国民には技能(スキル)は求められていない。ただ勤労(ワーク)のみが求められているのだ。

ハチはたまたまこの班の取り仕切りを任されているだけの班長であり、二級国民である。それでも面倒見がよく、いさかいを起こさず、ノルマを守らせるハチはそこそこ重宝されているのだ。

「ヨッ、オツカレサン。クルイ・ガイくんだっけ? ここに来て一ヶ月だけど調子はどうだい?」一人の若い工員に声をかける。クルイと呼ばれた工員はここに来て日が浅い。工場前で倒れていたところを、ハチが拾い、身元を引き受け、工員として工場で働かせていたのだ。

「ウッス。お蔭様で……」クルイは帽子(キャップ)を取ると、感情を見せない表情(ツラ)で、ハチに返す。「そうか、何か困ったことがあったら、何でも言ってくれ」ハチは優しく声をかける。

実際、クルイは優秀な技術を持っており、良いライン工であった。面倒を見ていたハチも、クルイには愛着がわいてくるものだ。今度給料が出たら合成焼肉でも奢ってやろうか……いや、ホリノウチ・スゴイエロイ・タワーにでも連れて行ってやった方が喜ぶかな?ハチはこう見えても世話焼きである。

キャバーン! キャバーン! 着替室に突如、警報が鳴り響く。これは工場上層部の人間が来ることを意味する。「ハイ、オジギの用意してー!」ハチは急ぎ、声を上げた。この警報が鳴った時は、工員は全員、土下座する事を義務付けられている。

自動扉が開くと、一級国民である工場長の老人とかなり高価そうなスーツを着た男、そして黒塗りの極道(ヤクザ)達が入ってきた。この時代、極道をボディガードとして使うのは特級国民の間では常識的な事であった。おそらくスーツの男は、特級国民であろうと皆思った。都内に住める一級国民の上にある上級国民、特級国民は超法規的(マジハンパネ)え権力を持つ雲の上の存在である。

「えー、皆さん。オツカレサマデス……」工場長が声をかけると、工員から一斉に声が上がる。「「「オツカレサマデス!!!」」」一糸乱れぬ統率である。「本日は本社の方が皆さんに、特別に、有難いお言葉をくださることになりました。感謝してお聞きするように」工員達は一糸乱れぬ声で返す。「「「アリガトウゴザイマス!!!」」」

僅かな沈黙の後に、高級スーツの男が話を始める。「俺、オポチュニティの名において貴様らに知らせる」オポチュニティ、機会(チャンス)を意味するネオリベラル・ネームだ。特級国民の間では下々の者には名乗らず、それぞれの権威を神格化したネオリベラル・ネームで名乗るシキタリがある。

オポチュニティのスーツにはプラチナ社章のほかに24金の特級国民証、この日本を牛耳るケイダンレン・バッジが輝く。その輝きに工員たちは怯え、頭をさらに床にこすりつける。ハチは怯えながらも、クルイを確認した。よかった、きちんと土下座していると少しほっとした。ハチはつくづく面倒見のいい男だった。

「お前達は日々『目標』を達成していると聞く。当たり前だな。自己責任! なせばなる!」これでも目標を達成したお褒めの言葉のつもりである。「だが、非常に残念な事がある」そういうと、オポチュニティは指を鳴らす。極道の一人が、アタッシュケースを開く。中からゴロリと首が転がる。

「アイエエエエエ生首!!!!」工員の間でざわつきが起こったが、すぐに極道による極道暴力で黙らされた。「他班でのことだが、労働環境が悪いと、労働基準監督署に駆け込んだ者がいた。非常に残念だ。勿論始末した」もう一度、指を鳴らす。今度は複数の生首が転がる。「このままでは外聞が悪いので機密を知った監督署の人間も始末した。インガオホーだ」なんたる無法か! しかし工員達は怯え、震えるしかなかった。

「連帯責任。違反者を出した班の工員は全員セプクした。これから工場長にもケジメしてからセプクしてもらわねばならん」見れば工場長が震えている。その右手の指は一本も残っていなかった。なんたる非道、2班から6班まで、それぞれの前で見せしめにケジメされていたのだ。オポチュニティは表情も変えず、もう一度、指を鳴らす。

ジュワァァァ……極道によって熱々に赤熱した鉄板が運び込まれる。これは現代社会にあってスゴイ=シツレイを犯した者に対する合理的私刑、ヤキセプクである。熱々の鉄板の上で正座し、土下座してからセプクするのだ。

「さあ、狂った工員の責任を取るのだ」工場長はもはや逆らう意志すらないようだが、極道達は鉄板へと無理矢理連れていく。公開私刑こそ規律を守るというネオリベ暗黒儀式が行われるであろうその時、工員達の中に一人立ち上がり、声をあげる者がいた。

「狂っているのは…手前(てめえ)らの方じゃねえか!」(カァ~~~~)(例の音)

それは新入りの工員、クルイ・ガイであった。その目は復讐と狂気に燃え、赤黒い炎が噴き出し、クルイの全身を覆い、物質化していく。

「なんだ。貴様、ふざけているのか?」オポチュニティは冷静に、護衛極道達に私刑(リンチ)の指示を出す。「ク、クルイくん?!何をやっているんだ?!」まさかこの少し覇気が無いが、あどけない青年がこのような大事をするとは思っておらず、ハチも大慌てである。実際、一級国民以上への口答えは国民自由競争法により無期懲役または死刑という重罪である。

「「「叛逆(ザッケ)ンナコラー!!!」」」「「「処刑(スッ)ゾコラー!!!」」」極道達は一糸乱れぬ44口径制圧射撃の後に、象も殺す超電圧を帯びた電磁ドスを構えてクルイに向かって突進する。クルイはこのまま制圧(シメ)られるのか!?

「ギョワーーッ!」おお、見よ!クルイは超人的(マジヤベエ)手刀ですべての弾丸を叩き落す。だがそれで怯む反社会的団体構成員ではない。電磁ドスを構えて突進する。「「「反抗(ダッテメ)コラー!!!」」」「「「度腐(ドグサレ)ッガー!!!」」」

クルイは僅かに体をひねると同時に、流れるように三歩進む。ヤクザとすれ違いの瞬間に手刀を一閃させ、首を宙に飛ばす。「「「グワーーッ!!!」」」「「「殺(ヤ)ルジャン!!!」」」今やクルイの手刀は名工によって鍛えられた二振りの刀(ヤッパ)と同じ鋭さを帯びていた。狂人奥義(クレイジースキル)・『気違いに刃物』、練られたカラテと極限に達した狂気により手刀を本物の刀と同じものとするワザである。

「な、なんだ貴様は……いったい何なのだ……」思わずオポチュニティは後ずさる。工員達は思わず失禁していた。「アイエエエエ、狂人!!!」かつて江戸時代、八百八町を恐怖のどん底に沈ませた伝説的狂人の存在を知覚する事による狂人知覚精神障害(ハッキョウ・リアリティ・ショック)である。

「ドーモ、オポチュニティ=サン。ハッキョーズキンです」狂気とカラテの炎をその身に包み、頭に『発』『狂』の決断的ショドーが描かれた頭巾を生成し、静かにアイサツを行う。発狂頭巾の名を継ぐものは礼を失してはならない。発(クレイジー)にして狂(マッド)だが卑(シツレイ)にあらず。「バカな……それは……魂を物質化させる……」「《狂気の衣》(クレイジー・フィール)…メイドのミヤゲに教えてやる。そんな事はどうでもいい」クルイは懐から写真を取り出す。

「今からお前を拷問(インタヴュー)する。この男を知っているか?」クルイは強く、迫る。「ズガタッキェーー下級国民!!!」だが、その瞬間、オポチュニティは吠え、そしてマッポー時代におけるビジネスマンの必携品『スーツに忍ばせられる伸縮日本刀』を頭巾に向かって振り下ろす!

「イヤーッ!」「ギョワーーッ!」ガキン!クルイの手刀とオポチュニティの伸縮日本刀がぶつかる。クルイのカラテは実際強かったが、それでも受けた際に僅かにバランスを崩し、ふらつく。「イヤーッ!」だが、その隙をオポチュニティは見逃さない!「イヤーッ!」斬る!受ける!「イヤーッ!」突く!払う!防戦一方、ジリー・プアー(徐々に不利)だ。

「ムッハハハハハハ!所詮、地を這う下級国民(レッサー・シチズン)にイーグルの考えなどわからぬであろうが教えてやろう。俺の名はオポチュニティ、『機会』を司る新自由主義108星(ネオリベ・ワン・ハンドレッド・アンド・エイトスターズ)が1人よ!どのような隙であろうと機会は見逃さぬ!ビジネスも、剣もだ!そして……」

「イヤーッ!」大上段!払う!「イヤーッ!」小手!飛びのく!「この剣こそ自由競争に打ち勝ったカチグミのみが習得できる御留流、自由なる剣よ。貴様の如き下賎の剣とは異なるわ!イヤーッ!」切り上げ!バク転!オポチュニティの刀は実際変幻自在、タツジンのものであった。

「なんだと……御留流……」「ほう、柳生新陰流(ヤギュー)を知っておったか。その通り。ショーグンしか修める事を許されぬ王者の剣。貴様如きに破れると思うな、このマケグミ・イナカモンがっ!イヤーッ!」薙ぎ払い!ジャンプでかわす。柳生新陰流の剣士は一人で米軍一個小隊(ヤンキー)にも匹敵するのはもはや常識である。焦るクルイの額に、脂汗が浮かぶ。

「イヤーッ!」横薙ぎ!このまま受け続けていては負ける。クルイは僅かに姿勢を低くして一気に間合いを詰める。「イヤーッ!」「馬鹿め、わが剣は不動、しかして自由にあらねばならぬ!イヤーッ!」おお、見よ。剣の究極の境地、禅の境地、そして新自由主義の境地を同一視する新時代の柳生新陰流・ネオリベラル剣禅一如である!

「グワーッ!」クルイは袈裟斬りをもろに喰らう!「イヤーッ!」「グワーッ!」逆袈裟!喰らう!「イヤーッ!」「グワーッ!」二段突き!喰らう!「イヤーッ!」「グワーッ!」足払い!喰らう!「イヤーッ!」「グワーッ!」ローキック!喰らう!

クルイは実際意識が途切れそうであったが、まだ立っていた。やはり柳生新陰流とカラテでは勝てないのか。「まだ立つか…次でトドメだ、イヤーーーーーーーァッ!!!」オポチュニティの刀は大上段に構え、今度こそ両断を狙う。

『クルイよ、ヨイヨイ。後はワシに任せてフートンで寝ておれ』クルイの精神の奥深くから涅槃めいた狂人の声が聞こえる。(くっ、黙れ。発狂頭巾!)だが、徐々にクルイの魂は、異なる狂人によって乗っ取られていく。クルイの瞳がセンコめいた赤い光を放つ!

『ギョワーーッ!』一瞬にしてバランスを取り戻したクルイ、いや、『発狂頭巾』は刀を押し返す。もちろん素手で。「なんだと?この死にぞこないのマケグミが!イヤーッ!」『ギョワーーッ!!!』今度は刀をさらに弾く。先ほどとは全くワザマエが違う。

そして今までよりも濃厚な狂気が周囲を包む!瘴気と化した狂気が周囲の工員達を襲う!ある者は気絶し、ある者は発狂して外に走り、ある者はその瞳に頭巾の男と上級国民の対峙を見続けていた。

『どうした?坊ちゃん剣法では狂人一人にも勝てぬぞ』「ダマラッシェー下級国民!イヤーッ!」『ギョワーーーッ!!!』「グワーッ!」オポチュニティの胴を手刀が切り裂く!

『もう少し楽しませてみよ。ほれ、ギョワーーーッ!!!』「グワーッ!!」手刀が右手の腱を切り裂く!『ちとお主は常識に囚われ過ぎておるな。ギョワーーーッ!!!』「グワーッ!!」手刀が左足の腱を切り裂く!クルイ、いや『発狂頭巾』はその様を見て、笑みを浮かべた。まるでキャンプ地の殺人鬼(シリアルキラー)のように、痛めつける事を楽しんでいるのだ。なんたる邪悪な狂気、新自由主義者相手でもここまでされるいわれはない!

『さあさあ、抵抗してみよ。ギョワーーーッ!!!』「グワーッ!!」手刀が右足の腱をぷちりと斬る!『このままでは死んでしまうぞ?ギョワーーーッ!!!』「グワーッ!!!」手刀が左手の腱をザクリと斬る。

「ば、馬鹿な。望みはナンダ?金か?地位か?やめろ…やめてくれ。ヤメローヤメロー!!」だがその質問を赤黒い奔流が包む手刀の腹部への抜き手が遮る!「グワーーーッ!!!」『つまらん……こやつは狂う価値の無い者だ。ではオヌシの命を貰おう。ハッキョウ!!!』腹部内で腸を掴んだ発狂頭巾は、怨念を帯びた瘴気を噴出させながら引き抜く!腸、消化器、血管、骨髄、心臓まで!サツバツ!「アバーッ!!!」

ぶちりと、臓物を握りつぶすと、もう一本の手で首を撥ね、死体を工場の超巨大ボイラーに叩きつけ、貫通させる。カブーム!ボイラーは大爆発し、一気に熱と煙が押し寄せる。僅かに発狂頭巾の呼吸が乱れた瞬間、クルイはその意識を取り戻した。

「ちっ、狂人め……情報を聞き出せなかったか」同時に、前進に痛みが走る。オポチュニティによって与えられた傷は、クルイに逃げる体力を残していなかった。「このままじゃ、火に巻き込まれてお陀仏か…」バタリと倒れたクルイに駆け寄る影があった。

「おい、しっかりしろ」班長のハチである。戦闘の間、「ああ、班長か……悪い……」クルイが何か言おうとした瞬間、ハチはクルイを担ぎ上げた。「班長、俺を助けるならやめとけ。いまやお尋ね者だぞ。それとも連中に突き出すか?」「関係あるか。お前は俺の部下だ!見殺しにはできんわ」

カブーーーーーム!連鎖的に工場は爆発を続ける。逃げ遅れたり、気絶した工員を炎は容赦なく巻き込んでいった。消防車が来たのは実に1時間後、そう、誰も誰も消防車を呼んでいないのである!

宵闇に包まれ、炎に照らされた工場から一台のバイクが裏口から去っていった。「オイオイ、やめておけ。班長もお尋ね者になるぞ」「構わん。そんな事よりしゃべるな、傷が開くぞ」ハチ班長とクルイは工場狂人爆破事件のMIA(ハードラックと踊っちま)った者として処分された。彼らの行方は、誰も知らない……